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上場会見:PostPrime<198A>の髙橋代表、“とんでもない機能”で海外へ

PostPrimeが20日、東証グロースに上場した。初値は公開価格と同額の450円を付け、530円で引けた。金融・経済情報プラットフォーム事業を手掛ける。最新テクノロジーを使って、お金や投資を学べるSNS「PostPrime」を運営するほか、人材紹介事業など新規事業にも取り組む。2024年5月期の売上高は9億3600万円(前期比18.9%増)で営業利益は3億4300万円(同39.1%増)となる見込み。営業利益率は36.7%(2024年5月期予想)。高橋ダニエル圭代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

独自に蓄積したデータで、GoogleやMicrosoftが作るような大規模LLMとは異なるニッチなAIの作成を目指すと話す髙橋代表

―今日の株価に対するコメントや中長期的な見方は
株価についてはノーコメントだ。

―株価についてはノーコメントだが、日本株全体の将来性やポテンシャルをどう見るか
ポジショントークと受け取られるかもしれないが、デフレが終わったのは大きなことだというのは、皆聞き飽きているかもしれないが、これは本当に大きい。日本の消費者物価指数などを見ると、30年間も全然動いてない科目が久しぶりにどんどん上がっている。これは大きい。

アベノミクスでもクロダノミクスでもできなかったことだ。これが今起きている。特にアベノミクスの3本目の矢が、僕は失敗だと思った。それが今どんどん改善されている。

多分これはスローで、すぐに見えるものではない。徐々に進むもので、日経平均株価は軽く10万円には到達する。10年先という考えではない。ただし、ちょっとだけ警戒しているのは円安だ。いろいろな国の歴史を見ると、凄く大きな借金を政府が抱えている場合は、その国の通貨はどう考えても安くなってしまう。紙幣を発行しないと続けられないので、円安は全ての日本人のためには心配だ。

―新NISAの制度が始まり、投資熱が盛り上がっているという状況だろう。それがある程度落ち着いた後に、初心者を取り込み、どのように事業をスケールさせていくのか
相場が落ち着いた時に新しいユーザーを呼びにくいのではないかという質問だろうが、我々としても今まであまりやったことないことがいろいろある。

今までオーガニックに成長しており、広告をバリバリ出しているモデルではないので、武器がまだいろいろ残っている。広告を打つことはできるが、効果が見込めるのは相互送客だと見ている。コストもそれほどかからない。当社に興味がある大きなところと組む。投資に対して興味が落ち着いてもそこからユーザーを取れると想定している。あとは凄くシンプルに日本以外に行かなければならない。英語のマーケットのほうが何十倍も大きく、新しいユーザーを獲得できるので早く行ったほうがいい。

―海外展開について。ポテンシャルが大きい海外のほうが、事業規模がはるかに大きくなる可能性があるのか
そうだと思う。ただ、海外に行く前にとてつもなく凄く強い機能を出さないのであれば行かないほうが良い。日本がテスティンググラウンドだ。そのとんでもない機能は出ていないが、今作っている。実績が日本で出て納得感があれば英語で戦う。英語では競争相手がもっといるので、結構凄いものを作らないと、手を出すべきではない。

―それはどういうものか
「楽しみにしてください」としか言えない。7月中旬に無料のイベントがある。ライブ配信もある。メディア関係者も何人か対面で来る。そこでAIのことも話す。

―なぜ日本で始めたのか。市場が大きい米国から始めるのが自然ではないか
日本で企業を立ち上げると最初は全然考えていなかった。そもそも最初に来る時、日本にずっといるとも思っていなかった。ただ、コロナ禍が起きてこのチャンスを取りたかった。コロナが起きてSNSを試して自分が想像しなかった成長がYouTubeチャンネルで出た。

人生はどういうカードが配られるか分からない。だが、配られたカードで、ベストエフォートでやっていく。僕に配られたカードはこれだった。その観点では日本のほうがスタートしやすい。競争相手のほうだけではなく、やはり僕のYouTubeチャンネルがあるからこそだった。日本の金融リテラシーのほうが少し低いからだということも少しアドバンテージだと見ている。

それが元々の理由だが、考え方も日々変わっていて、僕もこの4年間で事業を立ち上げてIPOだけでなく、個人的に結婚をして子供も生まれた。日本人の子供だ。その将来を考えると、僕は世界を回って日本人だと何回も言っている。経済や投資のことをよく知っている人にとっては、「(日本は)目線はあまり上がっていない経済かな」、「すごく素晴らしい国だけどそんなに上がっていない経済かな」という感覚なので、子供がそういう経験をすることを飲み込むことはできない。

あまり良い回答にはなっていないが、日本でスタートしたのはとても客観的な理由だった。YouTubeチャンネルというアドバンテージがあるから論理的にここで勝てると思った。事業を進めながら、自分の家族のためにというふうになってきている気がする。

―米国ではスタートアップの最終的な出口はM&Aが9割程度という統計があるが、IPOは事業拡大に不可欠だったのか
当社の財務状況を見れば分かるが、資金ニーズはそれほどない。だから、資金調達がなくても大丈夫で、なぜIPOしたのかとおそらく聞いているのではないか。

社会への影響だと思う。もちろんベンチャーキャピタルから資金を調達するやり方もある。そのほうが絶対にコントロールしやすい。その場合、僕の権限とパワーはもっと大きい。だが、IPOすると社会に影響がある。

社会に対する影響は、長期的に見るとインパクトが大きい。いろいろな人にタッチしている。このようなメディアとのつながりももっと作りたい。メディアの役割は凄く大切だ。社会的にいろいろな人に触れることは凄く大切だ。これから我々がやること、良いこと、時々ネガティブなニュースも見られるのは社会への影響だと思う。

―高橋代表は上場企業の社長としては破格にYouTubeの動画を流しているが、今後は
YouTubeはまだ続ける。忙しくなれば、もしかして今より頻度は少し下がるかもしれないがYouTubeをやめるつもりはない。PostPrimeも動画はやめるつもりはない。

―今のSNSを巡る環境に課題感や不満を抱えつつ、PostPrimeもできてきたのだろうが、今のSNSについての課題認識は
僕はSNSのレベルは高くなく、4年ぐらい前に使い始めて、今でも自分がプロだとは考えていない。中級者レベルという感覚から回答する。

SNSは凄く成熟したマーケットだ。最初に始まったのはFacebookで、最初はアイビーリーグの大学だけで使われていた。僕も、コーネル大学の1年生の時に発表されて、自分のドミトリーで使っていた時のことを今でも覚えている。けっこう昔だという感覚だ。SNSは競争が凄く激しい。率直に言うとSNSだけで、PostPrimeの事業を何十倍、何百倍と拡大することはできない。もちろん成長はできるが、僕が欲しいような大きい成長は、一緒にほかのものを伸ばさなければならない。

ただし、SNSには物凄いパワーがある。発言力、ファンベース、特に皆が同じものに凝って取り組んでいるコミュニティ、YouTubeやnoteも大きい。いろいろなサブコミュニティがある。

PostPrimeも凄く強いコミュニティだ。この人たちは友達にも親友にもなって、いろいろな場所で会って、イベントを開く。例えば、米国の雇用統計や消費者物価指数、エネルギー省や農業省が発表した米国の原油の在庫の確認などを解説した元プロのトレーダーが、原油の動きが激しく動いている時に、そのような特殊な情報を生配信できる。

そういうコンテンツはまだあまりない。投稿者のレベルがPostPrimeのほうが圧倒的に上だろう。だからといってこれだけには依存したくない。これはほかのもっと強いものを作れる窓口だ。

PostPrimeから離れて、一般的にSNSはどんどん自動的にAIになると見ている。Facebookなどは投稿がAIで作られているのか本物の人間なのか判定できる機能がある。人間なのかロボットなのか分からないという目線で見ると、SNSはコモディティ化されているが、さらにコモディティ化されるので、とても戦いにくい。ニッチな領域だけで戦わなければならないだろう。

―新規事業の人材紹介事業について。既存の人材紹介事業と少し違うかもしれないが、詳しく聞きたい
「今のビジネスモデルと全然関係ないじゃん」という感想だろう。気付いたのは、日本は人手不足かつ我々のユーザーは平均年収が少し高いことだ。私も人を採用する時にコストがめちゃくちゃかかると気付いてやり始めたら、そんなに悪い実績ではなかった。

仕入れコストのマネジメント方法が鍵なので、人材紹介は業界によって取りやすいところと取りにくいところがある。当社では、人材紹介ビジネスをゼロから立ち上げた経験者と大きな会社にいた2人がいるのでチームを作って挑戦している。

取り組んでいる理由の1つとして、仕入れコストがあまりかからないので我々にとって優位性がある。また、当社の事業は相場と大きく連動している。どのようなことかというと、ボラティリティが凄く上がって株が暴落する時には、我々のユーザーたちはPostPrimeに注目して使い始める。ユーザーとなる率が上がる。経済と逆相関していると考えてもおかしくはない。

経済が普通に(上昇局面にあり)、徐々に上がってつまらない時の相場に対しては、(自社の事業ポートフォリオのなかに)経済と一緒に上がれるビジネスもあってもいい。ほかのビジネスと相関がないようなものもあっても良いと考え人材紹介に挑戦している。

―人材紹介のビジネスモデルは
我々が転職したい人をストックで抱えている。その人の転職活動を手伝い、転職した給与の何%かを受け取る。

―中長期のビジネスモデルについて、プラットフォームができる時期などは
時期は言えない。ただ、我々の実績を見てほしい。2年8ヵ月で上場した。しかもファーストトライで延長なしはあまりない。スピードで動く会社なので、あとは見てほしい。

―AIで投資家のメンタルをケアしていくようなものを作っていきたいという話をしていた。個人投資家向けと機関投資家向けにそれぞれ違った役割を持たせていくとの事だったが、どのようなものになるのか
どのような機能を具体的に作るかは開示したものしか言えない。ただ想像ベースでは、メンタルのケアというよりも、AIはBtoCとBtoBで違う作り方と役目があるだろう。そういう風に分けていきたい。ユーザーのニーズはBtoCで、BtoBは多分違う観点だ。あとは「楽しみにしてください」としか言えない。

―高橋代表がパワフルで会社を引っ張っているのが分かるが、自身に何かあった時に、チームで対応する、代替し得る人がいるかというあたりはどうか。経営組織として
僕に何かがあった時に、会社が成長できるか。やはりそのためには、既存事業では僕以外の有名なクリエイターを呼ばなければならない。それはもう既にやっているが、もっと呼ばなければならない。僕以外の、ちょっと変な言葉だが有名な人を呼ぶことが凄く大切だ。

SNSと関係ないものを作らなければならない。今回のロードショーでいろいろな機関投資家と話して、最後にいつも改善点などのフィードバックを聞いていた。「日本でBtoCモデルは厳しいよ」という意見がよく出てきた。我々はBtoCでこれから伸ばすが、そこ以外にも行かなければならない。

それは、会社の業績にとって良いし、僕への依存度も下がる。僕も毎日動画をやりたいというわけではないので、少し頻度を下げて大きなことに集中していくのは凄く良いことだろう。

―海外に出た場合に、どのような会社がライバルになるのか
金融の情報が集まっているのは、日本でもそうだがもちろんX(旧Twitter)だ。金融に特化したものでは、「Seeking Alpha」という会社がある。そこは配信ではなくブログ系だが、物凄い専門家が集まっている。料金もけっこう高い。日本人としては絶対払わないような金額もある。そういうところがおそらく競争相手になる。記事を読むと金融のレベルが高い。そういう金融リテラシーでは戦えないが、機能では戦えるかもしれない。データを使った特殊な機能では戦えるかもしれないので、まず日本をテスティンググラウンドとして、できるだけ早く進めたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]