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上場会見:QPS研究所<5595>の大西社長、衛星36機体制へ

6日、QPS研究所が東証グロースに上場した。初値は公開価格の390円を120.51%上回る860円を付け、710円で引けた。同社は、小型SAR(Synthetic Aperture Radar、合成開口レーダー)衛星を開発・製造し、打ち上げた衛星から取得した画像データを販売する。SAR衛星は電波を使って観測対象物を撮像するため、光学衛星と異なり、雲や煙の影響を受けず、昼夜を問わない。衛星重量は170キログラム程度で、画像中の1画素で、地上の46センチメートルの情報を認識できる分解能を持つ。大西俊輔社長と市來敏光副社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

技術的優位性や今後の展望について話す大西社長
技術的優位性や今後の展望について話す大西社長

―初値が公開価格の2.2倍の860円を付けたが、その受け止めについて
値段は市場の人たちで決めるので、こちらから何か深いコメントはできない。私達はこの資金を持って18号機までの打ち上げ計画をしていくなかで1つ1つの衛星を打ち上げていく。それによってデータ販売を広げていくことを社員一同進めていき、会社を大きくしていく。かつ、きちんとした情報開示を行うことで、投資家に信頼される会社になっていく。それをまず進めるべきなので、1つのステップとしてのIPOというイベントはあるが、変わらず複数の衛星の打ち上げを進めていく。

―今のタイミングでの上場について。フィンランドの企業がもう日本に食い込んでいることは御存知と思う。2018年に100キロ級の物を打ち上げ、24機が稼働している。彼らとの競合は日本で起きるような感じもする。上場のタイミングは遅かったのか、これから24機、36機に行くのは、フィンランド企業の状況を踏まえてスピードとしてどのような印象を持っているのか
上場の目的として、実証試験機1号機、2号機を資金調達して作っていて、データをユーザーに届けて、衛星作りからデータ提供までは一通り行った。リアルタイムに見ていくなかで、いかに良い画像を、良い分解能のデータを迅速に提供できるかが肝であるといったなかで、その辺りを改良した実用機である6号機を今年打ち上げた。

SAR衛星は、いつでも観測できる衛星だが、その威力を発揮するには機数をいかに増加させるかが1番の肝だ。ここから実用機をたくさん打ち上げて、データを提供しく際に、上場して機数を増やすための資金を得て、構築していくステップを踏みながら進めていく。IPOは遅い早いではなく、ここでやっていくというのが最も良いと思う。

市來副社長はIPOのディールも含め様々な側面からの質問に答えた
市來副社長はIPOのディールも含め様々な側面からの質問に答えた

市來副社長:世界的にどこも同じだが、小型SAR衛星のビジネスの中心は国の官公庁になってくる。米国も日本も欧州もそうだと思う。現時点で多く衛星を打ち上げているプレーヤーが少ない。ICEYE(アイサイ)やB社ぐらいしかいない。B社もこれまで10機打ち上げてはいるが、何機が稼働しているかは分からない。ICEYE もこれまで28機を打ち上げてはいるが、本当に稼働しているのかはまだ分からない。その半分ぐらいの可能性もある。とはいえ。圧倒的にICEYEは進んでいる。

問題は官公庁がベースになることだ。そうなると基本的には国産がメインになってくる。今は米国も日本も、自国のプレーヤーでそこまで多くの機数を持っているところがないので、ICEYEから買わなければならない。今後、我々などで機数が上がってくると、情報の秘匿性なども含めて、国産がより求められてくるだろう。そう考えた時に、今はバッティングしてしまうところもあるが、どちらを優先するかとなると恐らく国産のほうになってくる。

どこかの1社が最終的に100機や200機を打ち上げて、winner-takes-allになるのかというと、恐らくそうではなく、結局は自分たちの母体となる国の官公庁をベースとしながら、お互いに30~40機ぐらいで止まると、全ての顧客ニーズを満たせなくなってくる。自分たちで満たせないニーズは、例えばICEYE やCapella SpaceなどほかのメーカーのSAR衛星が飛んでいれば、「ちょっと融通してよ」という形で依頼する。逆に我々のほうもお願いされれば融通するという協力関係になっていくと見ている。

現時点では凄く大きなプレーヤーがいるように見えるが、決して追いつけない状況ではないし、今から我々は、機数が増えてくることから十分に逆転が可能なタイミングと考えている。

―宇宙分野では2社目の上場だが、東証で、宇宙を含む上場審査の見直し、機関投資家の意見を取り入れるといった新しい審査方法を取り入れたが、上場の追い風になったのか
大西社長:個人の意見になるかもしれないが、上場の審査手続を複数回やったことがなく今回が初めてで、それがどう組み込まれていったのかはあまり分からない。ただ、宇宙のハードウェア銘柄としては2社目で、この先、宇宙分野が1つの産業になってくると国も含めて支援をしていくのを打ち出してもらっているので、そこは追い風になっているのかもしれない。ただ、明確に実感があるかというと難しい。確実に向かい風はないので、追い風であることは実感できる。

―投資家の間では宇宙領域の評価は難しいと言われているが、上場準備の段階で苦労したことはあるか
宇宙銘柄、特に新興の会社が上場していくのは、なかなか事例がない。日本もそうで、米国ではSPACで出るところはあるが、そこまで多くはない。宇宙業界としての中身を深く知っていろいろな会社を信用していく件数は少ない。

私達はその1つ1つの信用を得るための実績を積んでいかないといけない。これは私達が最初に小型SAR衛星で資金調達をした2017年も、同じように「小型SAR衛星とは何なのか」と説明するところからスタートしているのでそこはあまり変わっていない。

ただ、コンステレーションを組むことで会社を成長させていくことはしっかりと信じているので、それを見せていくことが、理解を得ることにもつながる。それが宇宙業界全体としてこういう形で進んでいくのだなということが理解されるようになると思う。

まずは実績を積んでいく、そして信頼される企業になっていくことが、1つのステップだろうと考えている。

―公募株数を増やした背景は
市來副社長:ここに至るまでは、まずはインフォメーションミーティング(IM)で機関投資家20~30社とミーティングして先方の反応を見るという機会があった。日本では宇宙が黎明期で小型SAR衛星では、我々が世界で初の上場だ。そもそも比較対象がない。特に機関投資家からするとどうバリエーションを出したらいいのか分からないと悩んでいて、かなり厳しい反応があった。それでだいぶ絞ったが、その後にロードショーする時に、その間にいくつか案件を取り、販売を今後どう成長させていくのかと説明の仕方も、そこから得た教訓を基に、説明の仕方を変えながら説明した結果、最終的にかなり好印象を持ってもらった。

IMの時に比べると、「明らかに成長しそうだ」と言ってくれるところが増えてきて、少なくとも目論見書で出していたような価格であれば喜んでサポートしたいところが想像以上に多く出てきた。それだけ多く出てくるのであれば、公募数を増やしても大丈夫そうだと主幹事とも話をしたうえで、最終的にそうしようと決めた。

―九州初の製造業ベンチャーとして上場した意義は
大西社長:創業した八坂哲雄ファウンダーが、2000年からずっと九州の企業のなかで一緒に宇宙をやっていくというところを作った。クラスターとして、地域企業と大学と、そこにQPS研究所があり、宇宙に行くための技術・知見を貯めてきた。その土壌を持って、小型SAR衛星という世界でも数社しかできていないものを作ってきた。

それが今回上場することで、コンステレーションを作っていく。製造が一過性ではなく、継続して行われることが凄く大事で、そこで私達の企業も地域企業もそうだし、宇宙で動くものの知見がどんどん貯まっていく。ハードウェアの領域で1つのサイクルができているが、データ活用では、さらにほかの企業も連携していける。それを動かすための最初のスタートとしてSAR衛星があって、皆で作れる土壌ができたのは、凄く意義がある。それをより発展させていきたいというのが、今回のIPOのなかでの1つのステップになる。

―九州の話ではないが、航空宇宙産業では三菱重工業で産業転換がうまくいかなかったなど、サプライヤーネットワークをどうしていくかという問題があると思う。九州あるいは全国の航空宇宙産業のサプライヤーネットワークも含めて、どう立ち回り成長していくのか
だからこそ、八坂ファウンダーが作ってきた土壌が何かこの先継続していかないと、せっかくあったものがなくなる。いろいろな産業で新しいものが作れなくなっていくことの1つの要因ではないかと思う。私達は小型SAR衛星を複数作ることでその継続性が出てくるということだ。当社では、八坂ファウンダーから私や市來副社長への世代交代をしていく。

長い年代でいうと航空機も世代交代しながら今に至っていくなかで、継続するからこそそれが技術力になっていく。世代交代をしていく。協力企業の人たちも20年一緒にやっているので、世代交代している。

同じ思いでこのSAR衛星を作り、世代交代をしながら今に至っているのを見ると、この先もそれが同じように続いていくことを考えれば、土壌がより発展していくことできているのではないか。ここまで長い間やってきたからこそ迎えている経験だし、それが続くからこそ知の伝承ができて、より発展していくものになっている。この先も、もちろん注力して継承していくが、それが1つの希望になっているのではないか。

―福岡のスタートアップで、上場に際しての苦労があれば教えてほしい
市來副社長:少なくとも我々がやっているなかでは当然厳しかったが、基本的に皆凄く協力的だった。宇宙という案件は数が少なく、東証も細心の注意を払いながら、本当に我々が上場に値するような会社なのかかなり厳しく見てきただろう。ただ、裏のところには、宇宙案件のなかでも我々に早く出てもらいたいと思っているような無言のパスのようなものをひしひしと感じていた。我々も何とか期待に応えなければとやってきた。東京に来る(必要があった)ぐらいで、福岡だったから何かマイナスというのは何も感じていなかったというのが本音だ。

―最近の動きとして、JAXAの宇宙戦略基金の創設は10年間で1億円。追い風となる動きだろうが、国の民間支援強化に関し、期待と注文をひとこと
大西社長:何かが今決まっているところはないが、宇宙業界が黎明期で私達が2社目という点から、宇宙産業はこの先必要な産業であると思うし、いろいろなプレーヤーが既に事業を発展させようとやっていくなかでは、加速や発展に寄与すると思う。私達1社だけが成長していくのではなく、データをどう活用するか、衛星のコンポーネントをどう作るか、衛星をどう打ち上げるか、全体を成長させていかないと結局のところ宇宙産業としての層は厚くならない。そこに対して後押しというか支援をするような政策になるのではないかと期待している。

―衛星軌道について、基本的には南北方向に地球の、大体日本の上空にいつも来るような経度を回っているイメージを描いている。サービスは、この地域を撮影した画像を提供するのか
市來副社長:いわゆる南極・北極を通るのは、太陽同期と言われていて、これだと地球全体を見る。地球は自転しているので、北極・南極を通りながら隈なく全体を見る。

最も望ましいのは傾斜と言われる斜めに入れる軌道だ。斜めに入れる軌道になると例えば、北極や南極、場合によってロシアなどは見えなくなる。代わりにその間の場所はより頻繁に見ることができる。1つの例として言うと、太陽同期に入れると日本を通るのは1日1~2回になる。これを例えば、42度ぐらいの軌道に入れると1日に5回ぐらい来る。我々が見たいところにより多く来させることを考えるのであれば、斜めに入れる方が良い。斜めのほうに多く入れていきたいと考えている。

―楕円軌道か
大西社長:円軌道だが、南北ではなく、それを若干倒す。

―売り上げでは、国内官公庁向けが大多数を占めていることに関して、安全保障分野と衛星データについて、具体的にはどういうニーズがあるか
詳細に話すのは難しいところだが、SAR衛星は基本的に夜でも悪天候時でも見られる。いつでも見られるのが1つの特色なので、その特色を使うのがそもそもの用途になる。詳細なところまではなかなか伝えづらいのでこの辺りでニュアンスを取ってもらいたい。

―一方で、民間の需要の開拓が非常に重要であるのではないか。複数の可能性を模索している段階だろうが、いつ頃までにどういう分野でどの程度の蓋然性で民需を掴めるのか。見通しをぜひ教えてほしい
市來副社長:1つのポイントとしては、ある程度機数が増えてこないと頻繁に画像が取れない。民間からしても、1日1回見られれば良いというアプリケーションもあると思うが、3日に1回もしくは1日1回でもそれほど早いほうではないとして、頻繁に画像を出していくとなると、目標として8機以上、8機体制を作ったところから本当の意味での実証が始まるだろう。

そうなってくると、2025年度ぐらいが、本格的に民間のほう、いろいろ進めているインフラ系や保険系、それ以外の海洋関係に画像を供給できるようになる想定している。インフラや保険系については具体的にやりたいと言われている。かつ、同業他社からも同じような課題が寄せられているので、1つのソリューションを作れれば、横展開が見えるだろう。

顧客ごとにカスタマイズしなければならない部分はあるので、100%同じものにはならないと思う。だが、ある程度横展開はできそうだと見えているので、機数が増えた時点、おそらく2025年度以降ぐらいが、民間向けに始まるスタートだろう。

―民需に関して、SAR衛星の光学衛星との差別化は。市場規模はどの程度か
市來副社長:カメラは皆見慣れているので、どのようなものかは分かると思う。一方で、そことの差異は夜間や天候不良でも見られる。カメラでは見られないような時に、SAR衛星であれば見ることができる。機数さえ増えていけばいわゆる定点観測ができるようになる。

例えば、必ず1日に1回はここを見続けるといったことができる。もう1つは、レーダーならでは干渉解析という撮影の仕方がある。例えば、ある時衛星が東京ドームを撮影した、その 1ヶ月後に同じ場所から、東京ドームを撮影した時に、その地盤が緩んでいて陥没している、もしかすると建物が老朽化してちょっと斜めに傾いているとなると、それをミリ単位で検知できる。

ミリ単位の陥没や傾きとかを見ることで、インフラの劣化の発見といった利用に凄く興味を持ってもらっている。これはカメラではできないことだ。道路や線路、それこそ今実施している九州電力の電力インフラ、鉄塔などでは、人を使って九州や西日中で設備をひたすら1個1個点検している。それを我々の衛星で「何か変化が起きている」と分かったら、それを検査しに行くとなるだけでも、時間と人件費のコストの節約になる。

市場規模をはっきりと出しているところはなくて難しいが、2割少しがSAR衛星で、七十数%が光学衛星だと言われている。大きなポイントは、まだ小型SAR衛星の機数が少なく、十分なデータがない。一方で、成長率で見るとSAR衛星は軒並み10%以上で成長していく。衛星業界の平均成長率は5%程度なので、成長率という意味では2倍ぐらいの成長率で伸びていくと見られている。

データにそれだけ価値がある、今後小型SAR衛星が増えていくと、データはより有効活用されていくだろうと考えられているのが大きな前提としてあると理解している。

―インフラ点検ではドローンの会社も同じようなことをやりそうな気がするが、競合優位性はカメラ衛星の話と同じ話になるのか
市來副社長:おそらく衛星の最大のポイントは見れる範囲だ。ドローンは(高度)20キロメートルぐらいまで行ったら、ある程度バッテリーの問題もあるし、見られる範囲がない。その代わり、より細かく見ることができる。

衛星の場合は、もっと7~10キロメートルぐらいの範囲で観測できる。だいぶ広い地域をカバーするのであれば圧倒的に簡単にできるというのが1つ。あともう1つはドローンであっても天候不良や夜間はなかなか見づらい。そういった点を含めてSAR衛星であればそういったところを見ることができる。

松本崇良取締役:競合するものではなくて、共存するものだと思ってもらえれば良い。

―連携もあり得る
市來副社長:あり得ると思う。例えば、衛星で見たもので何か異常が見つかった、何か起きている、何かずれていると分かったら、それをドローンでさらに細かく見に行くこともできる。

―2027年度に24機体制になるとのことだが、36機体制になるのは大体いつ頃か
大西社長:時期を明確に答えることは難しいが、その時の需要、市場としてデータを、「より早く欲しい」、「より枚数が欲しい」といったところを見て24機から36機に上げていきたい。時期としては明確にここで答えることは難しい。
市來副社長:1点だけ補足すると、需要が大きなポイントとなってくる。24機で、まだまだマーケットがある、特に海外のほうがあるとなってきた場合には、それを36機に増やしていくところは目指していくと思う。24機で十分となるとそれで抑えることもあり得る。万が一、36機にしたいとなったとしても、来年から新工場が稼働することになっており、年間10機の製造体制を作っている。資金さえあれば、2年ぐらいのうちには36機に持っていける。あとは市場を見ながら決めることになるだろう。

―事業上のリスクとして、放射線の機器に対する影響のようなことが挙げられていたが、コンステレーションを構築するまでの間に、スペースデブリなどの影響については考えているのか
大西社長:デブリが衝突することに対するリスクは、コンステレーションを組み上げていくなかではあると思う。ただ、実用機からは推進系を積んでいるので、それによって回避行動を取れる。そこまで逼迫していない軌道での運用を想定している。もちろん注視しており、対策を施して進めていく。

―黒字転換の時期は
時期を明確に答えることは難しいが、衛星の機数に対しての売上とコストに関して、1機では月の売り上げ5400万円に対してコストが4900万円で、ある程度トントンというところだ。そこから機数が伸びてくると、観測頻度も高まり、時間も短くなりデータとしての価値が高まり枚数が増えてくる。そうすると売り上げも伸びてくる。

一方で、コストに関しても、機数が増えると圧縮できるコストが出るので、利益の幅が取れてくる。衛星の機数が伸びてくると利益の幅が見えてくるので、どこかで黒字が見えてくると想定している。現状、実用機と実証機が1機ずつだが、今期中に3機、来年度に4機、再来年度に6機が上がっていくなかで、黒字が見えてくるのではないかと考えてもらいたい。

―あくまでも衛星の製造と運用、そこから取ってきたデータの販売に注力して、ソリューションの提供については他に任せるとのことだが、生データを使ったビジネスに関しては、何かできることがあるのではないかという話だったが、どのようなことが考えられるか
市來副社長:まだ具体的にこういったことができるというプランがあるわけではない。ただ、我々が衛星の運用者であることから得られる1つのメリットは生データだ。

顧客の手元に来る画像は、その生データを処理したものだ。(地上から)550キロメートルの宇宙を飛んでいる衛星が電波を発射し、地球にある物に当たって跳ね返ってきたデータは、その途中に大気などを通ってきているなかで、何かしらいろいろなものが隠れていると思う。

それを解析するのは、ほかの人たちには普通は手が出せない。我々が衛星運用者であるからこそ特権として持てる。そういったデータを解析することで何か新しいものが見えてくるのではないか。ただ、何が見えてくるのかというのは、我々自身もそこに手を付けたわけではないので、まだ見えていない。

―Fusic<5256>が上場した際に、宇宙の活用に言及していたが、協業については
大西社長:私達はSAR衛星のデータをいかに早く届けるかに注力している。一方で、このデータをどう活用するか、どう迅速にユーザーに届けていくシステムを作るか、ここは一緒にやりながら構築するべきところだろう。

そのような技術的特徴を持った企業と一緒に作っていくことはあり得る。この先のユースケースが出てきたなかで、どう作るか考えていくことにはなるが、そのような組み方は、この先でも出てくるのではないか。

―株式保有の54%ぐらいがベンチャーキャピタル(VC)だが、上場して、獲得資金次第で機数を増やせるペースも変わるという話もあった。株主構成、資金調達との兼ね合いでどういうふうに見ているのか。VCは売り抜けるために、24機できるぐらいまでには出口を見てくるような気がする。どうか。
市來副社長:現時点で四十数%だと思う。もう少し持つというところもあれば、もしかするともうちょっと早くロックアップが切れればというところもあるかもしれない。それぞれの事情があるので、それを尊重するというだけだ。出たとしても個人・機関投資家を含めて流動性が高まるところにつながっていくので、むしろそうなるほうが安定的な体制になっていくのではないか。

今付き合っている事業会社以外にも、一緒に協業できるような会社などで、今後いろいろと事業をやっていくなかで我々の株を持ちたいと言ってくれるところもある。事業会社が増えてくるとそこはもう少し長期的にとなってくる。事業を作り上げていくことによってより長く持ってくれる人に興味を持ってもらえるように、とにかく一歩一歩愚直に進めていくことしかないのかと感じている。

あとは、IRを通じて、我々の可能性を、個人も含めて、全ての投資家に大西社長も私も頑張って説明することで、1日でも長く持ってもらえるよう頑張ることが全てだ。

―小型SAR衛星の事業自体が、八坂ファウンダーら創業者がいろいろなビジネスの種を持つなかで、ちょうどマーケットにフィットしたものだったという話があったが、そういったビジネスの種がいろいろあるなかで、今後、今の事業とシナジーがあるもので何か新しいものが出てくる可能性はあるのか
市來副社長:ポートフォリオのなかにはあった。いくつかSAR衛星を組み合わせるような形で、こういったことをやるとかなり面白いデータが取れるのではないかというものもあった。そういった方向に進むのもあり、全く毛色の違う宇宙エレベーターを手掛けるとか、そういったぶっ飛んだものまで含めて、いろいろなものがある。

小型SAR衛星が一段落した段階で、どういったところをやるか。おそらく同じことをやると思う。縦軸に市場の大きさと、横軸に実現可能性をプロットして、今持っているポートフォリオのなかの種から、どれが次かを選ぶ。それがもしかすると小型SAR衛星とシナジーのあるものを選ぶ可能性もあるし、全く違うものを選ぶことも在り得なくはない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]