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上場会見:フィットイージー<212A>の國江社長、AIでヘルスケア

23日、フィットイージーが東証スタンダードと名証メインに上場した。初値は公開価格の990円を22.53%上回る1213円を付け、1121円で引けた。岐阜市に本社を置き、24時間年中無休のフィットネスクラブ「FIT-EASY」を全国に展開する。「アミューズメントフィットネスクラブ」と「ヘルスケアオートメーション」を標榜し、トレーニング機器のほか、シミュレーションゴルフや個室サウナ、コワーキングスペース、セルフエステなど複数のサービスを利用できる。國江仙嗣社長が東京証券取引所で正午に上場会見を行った。

AIカメラで人の動きを感知し、判断してアルゴリズムを取って、人の運動量を自動的に数値化するヘルスケアオートメーションの開発を進めていると話す國江社長

―初値の率直な受け止めを
IPOも最初から事業計画に入っていて、本当は(創業から)5年の段階で上場する予定だったが、コロナ禍で1年延びた。時価総額180億円が1つのベースで、次のステップとして250億円、次は300億円という目標があった。初値の段階で190億円を少し超え、目標は計画通り達成できた。

1年延びてはいるが、6年でIPO、180億円という数字は達成できた。この先、250億円というのは、スポーツジム業界の主たる企業では時価総額250億円前後が多いので、まずはそこまで行くのが目的だ。プライム上場を目指してスタンダードで上場したので、プライムに行く時には300億円という数字を絶対と考えている。

今後、今の180億円を250億円、300億円にするためには、きっちりした事業計画を練って、計画に沿って今後進めていきたい。

―日本の株高が鮮明になっている状況での上場となったが、本業への期待も含めて今のマーケット環境をどう受け取っているのか
マーケット環境は、バブルがあってこの30年間下がり続けてきたが、これで日本もやっと次のステップへスイッチが入ったタイミングだと認識している。

円相場も踏まえ、世界から見た時に、日本の地位が非常に低い段階ではある。日本の工業生産を踏まえ、日本の力は、世界に対しても確実にまだあると信じている。

現に、このフィットネス業界でも我々がヘルスケアオートメーションに関しても最先端を進んで、世界のいろいろなフィットネス機械メーカーと話をしているが、どこも我々には付いてこれていない。

先頭を切って、フィットネス機械の世界でも、カメラでやるシステムを作っていきたい。我々が日本を代表して世界に打って出る企業になっていきたい。日本はまだこれから伸びてくると思う。

―サウナなどいろいろなことを手掛けているが、コンテンツを増やしていくのか
中森勇樹COO:現在約18のアミューズメントコンテンツを導入しているが、6年ほど前にこれだけのコンテンツがあったかというと当然なく、この6年で少しずつ増やしていった。そういったことで、創業時にオープンした店舗に対して新たなコンテンツを導入して会員を増やし、既存店舗の売り上げを深堀りして実績を積んできた。今後計画的に進めていきたい。

―コンテンツの増やし方について。時流に合わせていろいろなものを積極的に取り込んでいると思う。これからのジムの在り方については
國江社長:ジムとして認識されることはよくある。24時間やっているので24時間のジムとしてFast Fitness Japan<7092>と比較されることはよくあるが、全然違っている。

ジムと勘違いされているのは、フリーウェイトをする人とランニングをする人、筋トレする人の3種類の人がいて、(そうした人向けに)3つのサービスが入っているのが、今のスポーツジムだ。これを3つだけではなく4つ5つ6つ 7つと(増やす)。運動して健康になること、美しくなることなどいろいろなサービスを入れて、第3の場所、サードプレイスとなるような施設を作っていきたい。ジムとはちょっと違う。

必要とされるものをオールインワンで入れたい。例えば、日焼けサロンを作るとかゴルフの練習場を作る時には、賃貸物件を借りて人を置いてと管理費がすごくかかる。(当社では)賃貸料金も管理費も人件費もなしで、ものを注入すればできる。全部が入るわけではないが、(それぞれのサービスがある店舗に)顔認証で自由に行けるので、会員になればいろいろなサービスを、追加料金なしで何度でも通える。このシステムのスケールを大きくすればするほどいろいろなサービスを提供できるので、広げていきたい。

ジムという括りにしかならないが、そこに軸足を置きながらいろいろなビジネスをやっていく。

―店舗数について。chocoZAPを始め、急速に店舗数を増やしている会社もある。フィットイージーの出店について、注力するエリアなどは
岐阜出身で、東海3県下では100店舗を超えたシェアを持っている。東海地方のシェアでは会員数でも店舗数でもトップレベルまで来たと見ている。これから我々がどのようにして伸ばしていくかに関しては、日本中に要望があるので、いっぺんに増やすことは、やろうと思えば簡単にできてしまう。

今でも出店を待つフランチャイジーが70社ほどになっているので、出店をかけるのは簡単だ。ハウスメーカーと組んで新築で作れば簡単にできる。

我々は不動産業を手掛けていて、賃貸期間のリスクがある(ことを認識している)。このビジネスは20~30年続くものだが、20年の定期で借りると途中解約もできない状況になる。また、今は新築工事が高くなっていて、初期に借りる坪単価が高いので、既存店をリノベーションして店舗展開する。

元々営んでいた事業はリノベーション事業や建設業、不動産業で、その部分は得意なので、デザイン性が良く安い建材を海外から大量に入れて、社内で設計・施工・管理もして安く、しっかり地に足を付けた店舗展開をしていきたい。

今期や来期、再来期の出店数は、大幅な増加はさせない。今のスタッフプラスアルファでできる数字しか今後も出すつもりはない。この営業利益率を踏まえ、(成長)曲線を今後とも続けていきたい。

―既存店の増収率は、現状どの程度で推移しているのか
土井崇義経理部長:直営店舗について、今明確な増収率をすぐに出せないが、既存店舗においては収益率が30%前後取れている。減価償却の負担が徐々に小さくなっていくので、優良店舗では実績として40%近い収益率となっている。

―リノベーションすると既存店の売り上げがどのぐらい伸びるのか
中森勇樹COO:直近の事例では、3年ほど前に、既存店舗にゴルフブースを導入した。1つのゴルフブースを作ることで会員が60人ほど増える実績が出ているので、今後も既存店舗で新たなコンテンツを導入することによっての会員増を、地域ごとにマーケティング調査をして計画的に進めていきたい。

―FC(フランチャイズ)について今、70社ほどが待っているとのことだが、オーナーの属性は。業態転換など傾向があれば知りたい。
新たな事業の柱として参入する企業がほとんどだ。フィットネスクラブやフィットネスジム経営から当社の事業に取り組むケースはほぼない。建設業や不動産業、飲食業、介護事業、パチンコ事業を手掛けながら、新たな柱として事業を模索している企業が参入するケースが増えている。

―AIのカメラを使って利用者の運動量を測っていくとのことだが、体を鍛えるということで例えば、AIの画像認識技術で、どのぐらい体を鍛えて絞ることができたかという差分を取りながら健康に寄与していくというような取り組みはあり得るのか
國江社長:パーソナルトレーニングでどういう運動をすれば良いか、どんな動きをすれば良いかということを、AIを使ってトレーニングするわけだが、運動のスピードや姿勢、どのぐらいの重みでやっているか、その辺りを全部データ化する。

5年、10年先は、パーソナルトレーナーを付けるのは非常に高級な部分、これから人件費も高くなり、いろいろな意味で一般の人がパーソナルトレーナーをなかなか付けられない時代になると踏んでいる。我々のAIを使った「ヘルスケアオートメーション」は、今あるカメラで人の動きを全て感知して数値化して自社のアプリに落とす。

車でも自動運転が進んでカメラの性能が上がってきているが、自動運転は人の命を預かる技術なので、進歩はなかなかない。それに対して、人の動きを数値化する、どのぐらいの重みをつけたか、運動量やスピード、姿勢を数値化させることは既にできている。これを当社で施工し、既存の160店舗全てに付ける。コストとのバランスを考えながら開発を進めている。

―そういったデータがどんどん集まってくると例えば、保険会社などとの提携はあり得るのか。ヘルスケアを保険料のプライシングに生かすことなどを含め、ほかの領域との関係は今後どうなるのか
海外のフィットネスを勉強しながら、なぜ日本がこれほどフィットネス参加率が低いか研究してきた。米国ではフィットネスに通っている人は保険料が安くなるシステムになっている。簡単に言えば、日本は社会保険制度がしっかりしているからどうしても保険に頼ってしまう。海外は保険制度がしっかりしていないので、まずは予防医学の観点からも自分の体を鍛えていかないとお金がかかってしまうという認識でいる。

日本国内でも病院との提携を進める。日本でも、車の運転のリスクと同じく距離を乗れば車の保険料が高いように、健康保険でも海外と同じように、日本にもそういうものが徐々に入ってくると読んでいる。1~2社には(そのような仕組みが)もう入っている。

これから保険制度の改革とともに我々はそれを数値化させて、“このような数値がカウントされたので、このような保険料になる”というようなことを、保険会社とも提携を結ぶことになってくると思う。その道もこれから進めていきたい。

―海外進出について、どういった条件が揃えば具体化していくのか、メドがあればそれも聞きたい
ヘルスケアオートメーションというシステムで、カメラを使って12万人のデータを取ってジムを運営しているが、12万人のテスターがいる(とも言える)。顔認証の世界では、日本で民間企業ではナンバーワン、ツーを競うぐらいのデータを持っていると思う。

ヘルスケアオートメーションが完全に出来上がって、海外でもきっちり運用できることを確認できたうえで出ていく。「アミューズメント型フィットネス」は、我々が調べる限りでは海外に出てはいない。このシステムとヘルスケアオートメーションが完全に仕上がった段階であり、具体的な日時はまだ言えない。今年の年末までにはやろうと思ったが、技術的に厳しい部分もまだある。来期中には何とか完成させたい。それをしっかり国内で実験をして、確かなものにしてから海外にどんどん出ていきたい。

元々、海外に出て海外の物や文化を日本に入れてやっている人間なので、海外の素晴らしさも分かっているので、こういう技術は日本で作り上げて、海外にどんどん広げていきたい。

付け加えるとすれば、その時にはフランチャイズビジネスからちょっと外れた投資ビジネスの形態になってくると思う。海外進出に向けては、企業としても確実にやれるシステムを構築させてからなので、まだ2~3年は、煮詰めるまでに全ての面で時間はかかると思う。

―コロナ禍が明けたとは言われているものの、また再燃してきているとも言われている。コロナ禍の時はフィットネス系の会社はいろいろな配慮をしてきただろうが、その辺りについて運営の方針、衛生面など気を付けていきたいことはあるか
2018年に第1号店をオープンさせているが、その冬にインフルエンザが非常に流行った。そこで我々は「インフルエンザは武器だ」という思いの下、カメラ入館をしていく上で、今は当たり前にしている熱感知を、2018年の冬から2019年にかけて開発していた。

2020年2月になってコロナ禍になった時、当社は3月には熱感知カメラを常に付けて、非接触型を全面に謳い出した。コロナ禍でも我々のジムへの影響は比較的少なかった。会員数が2~3割は減ったが、ほかのスポーツジムに比べれば減るスピードは非常に遅かった。岐阜県からも当社の努力が認められて、非常に優秀なコロナ対策をしていると表彰された。
最初はコロナ禍の時もフィットネスは非常に危ないと言われたが、会員制ビジネスなので、どこに何人入って、クラスターを起こしたかデータがすぐに取れる。

今後とも気を付けていきたいとは思っていて、今のところ次なる手立てを打ててはいないが、健康産業を運営しているので、その辺りに関しては非常に気をつけて事業をしていきたい。

―座右の銘があれば聞きたい
敢えて心掛けていない。だが、私は言葉に表して夢を物語る。発言することによって人に対して伝える。それに対して責任感を持って実行することを自負している。言ったからには必ずやるのが誇りでもあり、強みと言ったら大げさだが、言った以上は必ずやっていきたい。

このヘルスケアオートメーションに関しても、こういう場で発言することが私にとってはビジネスをする上での非常に大事なステップとなっている。

―趣味はインターネットやカーレース、ヴィンテージゴルフクラブの収集だそうだが
今までいろいろな事業をやっていて、どの事業もそれなりに成功して、事業譲渡やM&Aなどいろいろなことをしながら収益がある。ゴルフクラブに関しては世界1だと自負している。世界中から早くミュージアムを作ってほしいと言われている。ワークスカー(レーシングカー)に関しては、お金に糸目を付けず世界中から集めている。日本1を自負できるだけのものは持っている。自動車関係者もゴルフ関係者もそれは知っている。

幼い頃からやる以上には誰にも負けない人間になりたい、1番になりたいという思いが強く、ゴルフクラブやレーシングカーというコアな部分だが、それに関しては、日本1、世界1を目指してきた。これらに関してはできたわけだが、今度はスポーツクラブという世界でも、今は6年だが、5年先、10年先を見越して世界1を目指していきたい。

その前にはまず国内で1番のシェアを誇るだけの企業にしていきたい。まず3~4年でプライム市場まで行って、今度は世界中の投資家とともにステップアップしていきたい。

―カーレースは、自身ではもうドライバーをしていないのか
海外のレースもずっとやってきたが、このように上場して、私も1人の体ではないので、この先は監督業というかコントロールする側に回りたい。カーレースをやることによって良いクルマ、良い人材、エンジニア、良いドライバー、良いものを揃える。私はスーパーGTという日本国内の最高のレースもやっている。そのなかでトヨタや日産、ホンダといった日本の名だたる自動車メーカーにも勝てる。

良い部材を揃えれば大手にも勝てるという自信を持っているので、(スポーツジム業界では)「5~6年で素晴らしいですね」と言われるが、この業界に入ってきた時にも、最初から大手には負けないつもりでスタートさせた。カーレースで掴んだチャンスというか自信を事業に結び付けて、これから良いジムを作り上げるために良いスタッフを入れる。

良いスタッフを集めて皆に協力してもらって株式公開できたわけだが、ものを作るのは人だ。良い人材を集めて、スポーツジムも世界1を目指して頑張りたい。

―株主還元についての考え方。配当や優待について
20%をメドに考えている。既に12万人の会員が見えるので、会員の要望を聞きながら優待も検討している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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