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上場会見:パワーX<485A>、健全な市場、まずは知ってもらうことから

19日、パワーエックスが東証グロース市場に上場した。公開価格の1220円を7.38%下回る1130円の初値を付け、1430円で引けた。伊藤正裕CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

主力製品や拠点、蓄電所の役割について説明する伊藤CEO

―初値の受け止めは
株価については投資家が評価することであり、私からのコメントは差し控える。ただ、電力やエネルギーの分野は奥が深く、投資家の理解も「今の日本の電力事情はどうなっているのか」から始めていく状態だろう。我々の方針は、一般の人たちに対し、IR情報を厚めに提供していくことだ。ちょうど今朝も、私が15分ほどかけて会社紹介を行う動画を公開したところ。我々が取り組んでいる内容を、どのような需要や環境のなかで行っているかを含めて透明性を持ってアップデートし、プロだけでなく一般の投資家にも早期に理解してもらえるよう頑張りたい。おそらく、今日初めて我々を知った人も多いだろうし、聞いたことのない会社が急に電池と言っても評価しづらい部分があると思う。そこは、コミュニケーション活動を強化していきたい。

―蓄電池市場はルールの変更なども多く、先が見通しにくいとの指摘がある。今後生き残っていくための戦略は
専門的な話になるが、昨今、需給調整市場というものができた。現在の需給調整市場の上限価格は19円程度だが、この1年間は17円あたりで張り付いた状態が続いている。この場合、蓄電池を持つ人が需給調整、特に一次で運用すると、驚異的なIRR(内部収益率)になる。本来なら5~6年かけて回収するはずの電池コストを、数ヵ月で回収できてしまうようなこともあるため、現在蓄電池に対する需要が非常に多い。

我々としては、どこが正常な価格なのかを考えている。当社の見解としては、現在審議会などで議論されている7円、あるいは揚水発電と同等の4円程度になっても、極めて健全なIRRが出ると見ている。今の熱狂的なブームが落ち着いた後であっても、エネルギー企業が持つインフラとしては、どれだけ固く見積もっても4~6%、場合によっては10%程度のIRRが出る水準にある。ストレージパリティと呼ぶ、電池価格が一定以下になれば、電気を貯めることで確実に元が取れる水準に来ている。今の日本の電力価格から逆算すると、蓄電池市場は一時的な過熱が落ち着いた先でも、健全に伸びていくと想定できる。当社の見解である300GWhという数字も、そうした正常化された市場における需給バランスを見据えたものだ。

―Power Base第2工場は、現在岡山県玉野市で借りている拠点とは別の場所に建てるのか
そうだ。現在、我々が自社で所有している土地の上に1号棟が建っており、これを「Power Base」と呼んでいる。その土地がまだ半分ほど空いているため、その空いている土地を活用して2号棟を建設する。当然、1号棟の常時改修なども含め、生産能力を高めていく。

―現在借りている場所は、そのまま借り続けるのか
当面の間は継続する予定だが、状況を見ながら柔軟に対応していきたい。

―造船関係について、将来的には防衛関連の受注も視野に入れているか
我々としては、この大型電池を船に載せたいという強い思いが元々ある。電気を運ぶための手段として、船の形ではなく、いかだ、バージ(Barge)として検討を進めている。離島など、海上向けの蓄電池やエネルギー事業は非常に相性が良いと考えており、まだ発表していないものの、離島の案件も動いている。エネルギーを貯めなければならない場所という意味では、海上や離島周りは重要で、有事の際への備えという観点からしても、非常に可能性のある産業だと認識している。

―BESS事業が売上の8割以上を占めるが、EVCS事業の拡大進出などは考えているか
EV事業は、今年それなりに投資を行った。年末に向けてEV充電ステーションがオープンするところもある。ただ一方で、EVは国内において鈍化している。車が走っていなければ充電器は売れないし、充電する人も増えない。単純に国内のEV普及率に合わせて投資のペースを調整していく。そのため、現段階においては前年を上回るような投資は控える方向で検討している。来期のガイダンスを出す際に正式な見解を出すが、若干スローダウンしているのは事実であり、それに合わせて事業も調整していく。

―今後の目標や競争力について。また、コストは中国のほうが強い印象だが、どう差別化していくか
まず、中国製の電池との競合についてだが、顧客の種類がかなり違う印象だ。我々が支持されるケースは、長期的に自社で使用する場合が多い。製品をしっかり見極め、長期的かつ安定的に、自社で使用することを前提に購入するエネルギー企業はパワーエックスを選ぶ。一方で、若干「バブリーな蓄電池」は、現在多くの蓄電所が再販、転売されている。とりあえず蓄電所を作り、それを金融系の方に2倍、3倍の価格で転売するということが横行している。こうした人たちは、どちらかというと価格だけで選ぶ。

値段の差がそれだけあるのかと言われると、中国製の蓄電システムと比較すると、システムレベルで10~15%程度は当社のほうが高い印象。しかし、それだけの付加価値はあると考えている。さらに、蓄電池は時間帯によっては主電源になり得る可能性すら出てきている。その主電源を預けるものとして、経済安全保障や電力のコントロールという観点から、安全性とコントロール性の高い製品が求められている。昨今の報道で、太陽光発電もIoT化が進み、サイバー対策が2027年から義務化される。パワーコンディショナーも同様だが、どのような制御システムで、どのようなコンピュータやソフトウェアで動いているのか分からない電池に、電力を預けることはできないというトレンドが色濃い。

したがって、我々の現在の価格差と、国内コントロールによる安全性、さらにメーカーが直接保守を行うという点で、競争優位性がある。長期的な目標については、日本市場に合わせて最大限頑張っていきたいが、投資家に言うとすれば、トップラインだけを追求してボトムラインを削り、マーケットシェアさえ取れればいいとは思っていない。健全な成長企業でなければならないと考えているため、どのような案件でも取ればいいという姿勢ではなく、良い案件を顧客と一緒に進めていきたい。

―パワーコンディショナーメーカーを含め、現在どの程度の企業と関わりがあるか
当社の顧客がパワーコンディショナーを指定するケースも多々ある。パワーコンディショナーとともに認証メーカーで言えば、4~5件程度のパワーコンディショナーメーカーと既に実績がある。ただ、当社で販売しているものについては、1社程度に集中して行っているケースが最近は多い。

―上場維持基準の見直しや株主の圧力などを理由に非上場を選ぶ企業も増えているが、上場を選択した理由について。また、上場で苦労したことは
当社の顧客は、大手企業ばかり。さらにエネルギー業界では、保守的な基準で取引先や製品が選ばれることが多い。スタートアップに数十億円単位の基礎インフラを発注する点に鑑みて、どうしても信用力をもう少し高めたいと考えた。我々としては、逆に厳しい上場審査を経ることで、IPOによって一定以上のガバナンスを含めた取り組みを行ってきたつもり。これは、蓄電池への長期コミットとして理解してもらいたい。

やはり、プライベートラウンドでファンドに買収されてしまうと、今後会社がどうなるかわからない状況で、顧客が長期的に使う電池を購入することは難しい。そこで我々は、電池事業や顧客へ納めたものに対しコミットしていること、長期的にしっかりインフラを構築するという気持ち、決意を示すため、IPOを選んだ。

―セルは主に中国から調達しているようだが、チャイナリスクについてどう考えているか
蓄電池システムのなかでセルというのは、日本語で単電池のことを指す。単三や単四の電池、あれがセルだ。セルには制御系は付いていない。電圧センサーや電流センサーは付いているが、それ以上の機能はない。我々はこのセルを購入し、制御コントロール・冷却・直流電力制御といった部分をすべて内製で作っている。現在、中国産のリン酸鉄電池(LFP)という燃えにくいことで有名な電池を採用している。特に購入しているのは、エネルギー密度が200Wh/L未満の電池。これはコモディティ化しており、自動車用電池の半分以下のエネルギー密度だ。

数ヵ月前、米国と中国の間で中国が輸出規制を発令した際、電池も対象になったが、500Wh/L以上の高密度電池のみが規制対象だった。当社は、サプライチェーンの多様化を進めており、東南アジアからの供給契約を既に締結している。また、国内セルの利用についても前向きに検討している。これは意図的で、我々のビジネスモデルでは、その時点で最も良い電池セルの技術を柔軟に採用できる体制を整えている。現在、電池はコモディティ化し、北米、東欧、東南アジアなど供給源が世界中に広がっているため、安定的な供給が可能になっている。これにより、分散によるリスクヘッジを進めている。現状では、前回の輸出規制の対象外である低リスクのコモディティ電池を購入している。

―セルの自社生産については考えているか
検討していない。

―現在進められている運搬船とバージ、それぞれの開発状況などについて
まず順序としては、電気運搬船よりも先にバージが形になる予定だ。そう遠くなく既に製造に入るレベルまで詰めている。以前発表した通り、最初の案件は屋久島から種子島への電力輸送にバージを活用する計画だ。屋久島には水力発電の余剰電力があり、それを船に貯めて種子島へ運ぶ。先程、離島と電池の相性が良いと言ったのは、離島がマイクログリッドだからだ。太陽光もあれば火力もあり、これに蓄電池が入ることで、エネルギー効率が向上し、安定供給にもなる。特に台風などの災害時にも強いという利点があり、電気運搬船による輸送だけでなく、陸上でも電池との組み合わせが、離島政策上で有効だと見ている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]

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