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上場会見:アソインターナショナル<9340>の阿曽社長、データで審美治療を支援

23日、アソインターナショナルが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の870円を15.06%上回る1001円を付け、790円で引けた。歯並びを矯正するためのワイヤーやマウスピースを製造販売し、およそ3割の国内シェアを持つ。内製化率は35%で、残りは、協力パートナーである51ヵ所の歯科技工所に外注している。大学病院や歯科医院の取引数は6月末で6047件。阿曽敏正社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

―上場の目的は
表では歯科医師が治療をして、技工士が作った物を治療に使う。我々技工士は、飲食店で言えばコックと一緒で裏方になっている。知名度も社会的地位も今のところ非常に低い。当社が上場することによって歯科技工士の認知度を高めなければならない。社会的な地位も上げる。今は非常に厳しい状況にある。技工士が減っており、高齢化で50歳以上が半分以上だ。

当社は、業界を離れた技工士の復職セミナーなど様々なことを手掛けてきたが、一技工所では非常に弱い。上場で知名度が上がり、「こんな歯科技工所でも上場できるんだ、よし俺もやるぞ」と、歯科技工の世界を明るくしたい。

もう1つは、世界に進出するためには、デジタルとAI、機械化に調達資金を投じて世界に広げたい。8000億円あるマーケットを前に黙っているわけにはいかない。国家資格を持った技術が世界で通用するということを、ハワイで実証済みだ。

―製作難易度の異なる製品を作成する際のグループ内での分業の背景は
当社で作っている物は、国内29大学ほとんどの大学病院と取り引きがある。そこで、歯科医師が研究開発をするのに、日本にあったほうが良いので、学生の実習用の物を作る。または、新しい装置を患者にセットするといった、高度な難しくて付加価値のあるものは日本で作る。

汎用品としての矯正装置など、当社が40年間やってきたなかで、難しくない物は海外で作る。急ぎの物も日本で作るというふうに分けている。

―「AI分析によるデジタル歯科矯正製品設計コンダクター」を目指すとのことだが、歯科業界におけるデータプラットフォーマーのようなものになりたいということか
今は完全に製造業だ。日本でも260万件のデータを持っている。そして世界でまずデータを拾い、最終的に製造もするが、そうではなく、歯科医師や患者に、「こういう装置を使ったらこういう治療ができるんじゃないか」、「こういうことをすると早く治るんじゃないか」など、治療計画や診断を我々が行ってはならないが、歯科医師にシミュレーションを提出することによって「これだけのデータを持っているので、アソの言う通りだったら、俺はこう思ったけど、こういうほうがいいな」というヒントになれば良い。そこで決めたもののデータをマニラに送って製造する。

―提供する歯科技工物が増えれば、そこで得られたデータの集積で、例えば、歯科医師が患者に矯正を提供する時に最適な治療方針を提案するのか
AIで分析した情報を持っているので、抜歯の要否などを診断はできないが、シミュレーションとして提案する。「こんなやり方があったんだね」と喜ばれるのではないか。特に、最近は子供たちの間で虫歯が相当減っている。

そうすると歯科医師は、審美・美容、矯正分野に進む。その時に。「矯正をやりたいけど勉強してない。歯の売り上げが下がっている。アソインターナショナルに出してある程度シミュレーションしてもらおう」となる。結果を見て、施術方法を患者へ提供する。あくまでも歯科医師の最終的な審査・診断が必要だが、その近道になるようなことをしてあげたい。

そうするとデータを取って、例えば米国から当社の本社や西海岸で、AIで分析をする。最近はテラドック・ヘルス<TDOC>が米国にあり、そんなイメージだ。

―AIは、画像を使うものなのか
平野拓幹課長:現在イメージしているものは、集積したデータがCAD/CAMの画像データになる。リリースする形態に関してもCAD/CAMを用いたポリゴンのデータの表示だ。またはグラフィックなどでの表示を考えている。

―AI分析をできる人材はいるのか
阿曽社長:外注だ。

―既に始めているのか
平野課長:ベンダーを選定している最中だ。

―いつ頃に始まるのか
2024年6月期中にはプロジェクトを進めるように考えている。ローンチに関しては2025年6月期中をメドに想定している。段階的なローンチなるので、いきなり完成系になるわけではない。

―AIは、歯科医師に提供するのか
現在は歯科医師への提供を考えている。ただ、AI周りの需要がどのように変化していくのか、当社で策定している。情勢に合わせたリリース方法を考えていく。

―学習データは、今まで提供してきた歯科技工物を作る際の患者のデータか
そうだ。

―データは医療情報になると思うが、二次利用できるのか
国によって法律が様々だ。法律の整備ができている国で、順番に取り組んでいければ良い。

―米国はどうか
米国もちょっと厳しい。資格も含めて取っていく必要がある。既に着手している部分もある。

―例えば、米国で取った患者のデータを日本人向けのAIの学習データとして組み込めるのか
規制もある。それ以上に、欧米人とアジア人では骨格にかなり違いがあるので、学習データになるかならないかという学術的な知見も必要になる。社内だけでの精査というよりは、パートナーシップを組んでいる歯科医師からのアドバイスをもとに協議していくことを想定している。

―中長期では、歯科技工物の販売よりはサービスのようなものによる収益を高めていきたいのか
阿曽社長:半々というか、だいぶそれにシフトしていくのではないか。

―データプラットフォーマーになった際に、競合として登場してくるグローバルの会社はどこか
マウスピースだけを製造するインビザライン・システムのアライン・テクノロジー<ALGN>が米国にあって、大きく展開している。ただ、当社はマウスピースもやっているが、100種類以上のあらゆる矯正装置全てに対応している。マウスピースだけであれば、かなり競合になるが、そうではない。マウスピース以外で勝負したい。

マウスピースでも、細かいところや、奥歯の隙間など治らない場所があるので、それを当社がインプラントをアンカーとして上顎に刺して、さらにそのマウスピースを、機能的にスピーディーに、例えば、50枚作るところを20枚で作る。治療期間も短く、精度の高いマウスピースを組み合わせて、様々な矯正装置を作っていくので、競合とは見ていない。

―海外に展開するなかで、特に関心のあるエリアはどこか
第1歩は、(米国の)西海岸だ。当社は、ハワイで歯科医師たちからの(歯科治療に関する)データを集めて、フィリピンのマニラに情報を送り製造して、ある程度の実績を作っている。ハワイで作った実績を、西海岸で成功させ、次は東海岸、欧州へと広げたい。

―アジア圏は照準に入るのか
最終的には中国だが、矯正が進んでいるのは欧米なので、欧米の次にアジア圏だ。今、ベトナムの仕事も始まりスタート地点にある。これからアジア圏でも進めつつ、まず西海岸を確立して、それからアジアに進出する。

―韓国は美容に敏感なイメーだが、商圏としてはどうなのか
美容整形が進んでいる。当社も、韓国で技術やソフトを開発をすることもあるが、マーケットがやや小さい。まず大きいところにターゲットを置いている。

―海外売上高比率50%を目標としており、今は3%だが、どれぐらいの期間で検討しているのか
平野課長:2024年6月期中ぐらいには、米国西海岸の資本業務提携先の歯科技工所と契約し、業務を開始していこうと考えている。2025年6月期中には10億円程度の売り上げを達成する計画を立てている。

―足元の海外売上高は9800万円で、2025年6月期には10億円に持っていく
その通りだ。

―海外の歯科技工士は、国内と差はないのか
阿曽社長:歯科技工士は、日本では国家資格だ。資格を取って作っている技術だ。海外は、国家資格がある国もあるが、米国にはない。私も米国で勉強していたので(分かるが)見た目ではすごく良い物を作れる。

当社ではCTをデジタル化することで、(歯科技工物と歯の)根の部分も一緒に動かしている。そうすると国家資格を取って解剖学などを勉強しないと、プラモデルを作っているのではないので、全く並べられない。見た目よりも機能的なものを日本の技工士は歯科医師と同じレベルで話をしながら、お互いに強みを生かしていきたい。

―海外の売り上げを伸ばしていくに当たって、現地生産はしないのか
マニラは人件費が安いので現地生産もする。何年か前では難しく、当社もあまり手がけてなかった。今までは粘土のような物で型を取っていたが、デジタル化が進み、歯ブラシの先端のような物によって1~2分で型のデータを取る。それを瞬時にマニラや銀座に送っている。このデジタル化で世界に進める。人件費の高い米国で作る必要もないし、国家資格のある日本で作り、マニラで汎用品というか簡単な物を作り、うまく分けていきたい。

―2025年6月期に海外で10億円を目指す話は、西海岸の会社と資本業務提携し、西海岸で取った患者のデータをマニラに送り、そこで生産して米国に戻して販売するということか
その通りで、データ収集と販売する会社の拠点を西海岸に置きたい。

―今期の業績見通しが経常段階から減益になっていて、為替差損が要因と思う。原材料を海外から輸入していると思うので、全体を鑑みて好ましい為替の状況は
詫麻礼久部長:基本的には材料を輸入していて、海外売り上げが少なく、材料の輸入が多いので、現段階では円高のほうが有利に働く。

―中長期的には変わるのか
海外が伸びることによって変わってくる可能性がある。

―これから最先端の設備を導入すると思うが、投資の考え方を知りたい
阿曽社長:デジタル化と高効率化、高付加価値化にシフトできる機械だ。まず、3Dメタルプリンターが1つ。今までは金属を溶かして作っていたものを、プリンターで様々な矯正装置を作ってしまう。そして針金を曲げるベンディングマシーンだ。今あるベンディングマシーンは全ての装置に対応しているわけではないので導入する。デジタル化や機械化に投資していきたい。ソフトウェアも必要になる。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]