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上場会見:ライズ・コンサルティング・グループ<9168>の北村社長、ハンズオンとスコープレスで柔軟に

12日、ライズ・コンサルティング・グループが東証グロースに上場した。初値は公開価格と同額の850円を付け、859円で引けた。スコープ(業務範囲)を設定せずに顧客企業が成長するために必要な支援をハンズオンで行う常駐型コンサルティングサービスを展開している。上場に向けてSunrise Capital IIIなどのファンドによる支援を受けてきた。北村俊樹社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

北村社長の説明によると、コンサルタントの増員とともに、2024年2月期第1四半期末時点でのコンサルタント当たり単価は264万円と20%程度増加している。
北村社長の説明によると、コンサルタントの増員とともに、2024年2月期第1四半期末時点でのコンサルタント当たり単価は264万円と20%程度増加している。

―初値の評価は
マーケットが決めるものなので、そこに対して今日の時点で一喜一憂するつもりはないが、今のマーケットの状況や、ファンド案件のような見られ方があったなかでは順調なスタートを切れたと思っている。

―IPOに向かい成長する過程でのベンチャーキャピタル(VC)の役割について。人材や資金供与の面で有益だったか、いろいろと問題を感じたか
振り返ってみても、その決断自体は良かったし、その成果が、今回のこの上場を遂げられたというところにも繋がっていると思う。

2019年の春頃に、社員数が50人を超え、ビジネスモデル上コンサルタントの人数が最も成長のドライバーになるので、加速するためには、認知・ブランド力を上げての採用力強化が必要だ。その1つの手段としてIPOは有益ではないかと、当時の経営陣を中心に話し合った。

創業時からコスト意識が高かったので、経営管理側が、いろいろな体制やプロセスも含めて脆弱というか、まだ整備できていない状況だった。IPOを実現するうえでは、トップラインが持続的に成長するのと同時に、経営管理基盤の構築が同じように重要なので、そこに我々経営陣が時間を取られると、本来の事業成長の足かせになるリスクがある。ここをどうしたものかという一方で、IPOを最速で実現して、早く採用力強化に繋げたかった。

いろいろリサーチするなかで、2020年に提携したSunrise Capitalは、2016年にベイカレント・コンサルティング<6532>の上場を同じようなスキームで支援していたと察知した。我々からコンタクトして、同じようなスキームで、経営管理側の立ち上げを支援してもらいたい、社外取締役の斡旋や、プロセス、基盤作りに注力してもらいながら、ということでタッグを組んだ。

彼ら自身もプライベート・エクイティ(PE)ファンドという形で、いろいろな投資先があるので、案件を紹介してくれ、中小企業やスタートアップのバリューアップも、彼らが持っている投資先であれば、我々に対してフィーが払える資金もあるので、そうした関係性で、トップラインと経営管理基盤側を一緒になって構築して今回のIPOまで持ってこられた。
―5~6年でVCとともに成長するイメージがあるので2年9ヵ月はかなり早い印象だ。大変だったか
管理側を中心に意思決定をしてから予備申請という形で、最速で1度もスケジュール変えることなく実現できたのは、我々がコンサルティング会社というところもあるので、計画を立てて、自分たち自身がやり切ることを証明できた。

―Sunrise Capitalが入った時には、当時の株主から株式を買い取ったのか
創業代表の朝日竜樹氏からだ。

―今後、ファンドが抜けることによるリスクがもしあれば、話してほしい。抜けるに当たって改めて株主とどういう対話を進めるのか
昨日時点で我々の株主の90%はPEファンドだった。今回の売り出しで、彼ら自身が50%程度売り出し、それでもまだ40%程度残っている。PEファンドという性質上いつかはイグジットするのが一般的だが、ディールが成立したのも2020年で、彼ら自身の最終的な償還もまだ7年ほど残っている。

このPEファンドがベイカレントを支援していた。同社が上場以来ここまで順調に大きく成長している実績と、コンサルティング業界自体が、今のVUCA(予測困難な状況を表す造語)・DXの波を受けて特に国内はまだまだ伸びるので、そこについては、彼らは比較的長いスパンで見ているのではないか。

経営にも一部で関与してもらっているので、そこでタッグを組みながら成長すると同時に、新しい株主は今日を起点に接点を持てているので、そこは対話しながら、お互いの成長に資する取り組みをしていきたい。

―ハンズオンやスコープレスなど4つの特長があるが、似たようなことを標榜するコンサル会社を見たことがある。ブロックチェーンプラットフォームの実装例から、差別化要素を聞きたい
元々、これは日本を代表する大手のIT企業が、そういったビジネスを展開したいと、まずは市場リサーチからスタートし、別の総研系の会社にマーケットリサーチを依頼していたそうだ。そこから新規事業を立ち上げるに当たって、餅は餅屋の考え方があって適材適所となるなので、その会社とはなかなか難しかった。我々はその会社に関して新規事業の知見や実績があったので、「まずは小さくやらせてください」となった。

ほかのファームもそういったスタイルを提案するが、彼らはほかでの成功体験をまず型として導入する。最終的には彼らが持っているいろいろなDXのソリューションやITシステムに繋げてシステム導入やアウトソーシングでビジネスとしてフィーを取っていきたい、といった形に繋げがちだ。我々は独立系のファームで中立的な立場を貫いているので、顧客と議論するなかでチューニングして、かなり泥臭くビジネスの立ち上げをした。

貿易関連の会社の事例では、このIT企業以外にも例えば、メガバンクや商社、いろいろな損保会社を巻き込まなければならなかった。我々がアプローチして、いろいろなアライアンスを組むところを泥臭くやって、そこの価値を認めてもらい、最終的に一気通貫まで支援した。

―ハンズオンとスコープレスの関係について。ハンズオンだからスコープレスなのか、スコープレスだからハンズオンなのか、鶏と卵のようなものだと思うが
基本的に併用するスタイルでやっている。ハンズオンというのは、顧客の近くで一緒になって進めることで、かつそれをスコープレスという形で、それは何でもかんでもやりますというスタイルではなく、プロジェクトの提案時点で、顧客が本当にやりたいことを100%当てにいくのは難しい。顧客自身も見えておらず、やってみて初めて見えてくる課題もある。あとは、昨今の市況変化のスピードが激しい状況なので、そうであれば、プロジェクト提案をきちんとやって、プロジェクトを開始するまでに1~2ヵ月の時間をかけるよりも、ある程度初期仮説ベースで「こういった方向性ですけど」と小さく入って、一緒になってアジャイルに進めていく。

まずはプロジェクト期間と提案・支援のスコープのなかで、コンサルタントとして一定の知見を持ったメンバーのチーム提案をする。その表面積の範囲であれば、顧客の現場にいるので、密にコミュニケーションを取って柔軟に優先順位を変えながら、「今はこの課題にフォーカスしましょう。新しいことが見えてきたのであればそこを組み替えてでも先にやりましょう」と提案する。それをハンズオンとスコープレスという両輪で進めている。

―今後、スタートアップや地方の中小企業、またはグローバルといった今までとは違う顧客層を広げていった際に、単価の戦略はそれぞれ異なるだろうが、基本的な考え方は
まず基本方針として、普段得意にしている首都圏・大企業向けの顧客と単価の部分を大きく変えることは考えていない。今も実績が出ているなかでそういった事実もない。

足元で注力しているのは、中小企業であっても例えば、ファンドが入っているような案件や、スタートアップでもいろいろなシリーズを経るなかで資金調達を行ってIPOやその後の成長に向けて、外部の支援を活用しようとしている会社は、きちんとした資金があるので、大企業がコンサルティング会社に支払うようなフィーが払える。

我々はほかの大手のコンサルファームと比較しても、金額がよりリーズナブルなので、そこできちんと支援していく。特に中小企業やスタートアップは、オーナー経営者を中心に、やりたいことが戦略領域やマーケティング、採用、ITと本当にいろいろなことがある。

我々が彼らの近くで経営参謀として、まさにハンズオンとスコープレスを提供するニーズが高いし、大手ファームはなかなか手を出せない領域だと見ているので、まずは今話したような価格戦略や取り組み方で価値を出していく。

グローバルについては、グローバルの大企業も存在し、そこを得意としている大手ファームやグローバルファームがいるので、その棲み分けを注意しながら、まずは中国で、外部でも中国国籍メンバーを中心に、一定の知見と実績が出ているので、グローバル展開についても、まずはそこから丁寧に進めることを考えている。

―目論見書記載のリスクで、NTTデータなど特定の取引先に依存する傾向が強いとあったが、それについての対応は
全体の売り上げの8割程度は既存の顧客のリピートで成り立っている。これ自体は、我々が現場で価値を適正に評価されていることでポジティブに捉えている。我々の顧客は、各業界を代表するリーディングカンパニーなので、今後もいろいろな仕事の需要を控えており、それ自体も安定して取っていきたい一方で、個社ごとに見た時には何か起こるリスクが当然に控えているので対策を取っている。

コンサルタントとは別に営業専任部隊がおり、彼らが新規営業のドアノックをして、案件のリードを獲得する。そこにパートナー陣を引き連れて、初回でいろいろな経営の課題をヒアリングしながら、我々のハンズオン、スコープレスといった支援形態でまず小さく入り、その現場で価値を認めてもらって、大きくしていく。そういった形で毎月数件新しいアカウントを開拓できているので、そこを次の大口顧客になるように転換しながら、比率も適正にバランスを取るスタイルで普段から経営を行っている。

―今年の見通しの稼働率が90%で、前期と比較して落ち込むが、理由としてプロジェクト外の活動がある。具体的には
まず、稼働率は、顧客のプロジェクトを担って売り上げが立っていることによって計算される。創業以来コンサルタントは常に現場に出て、有償契約でプロジェクトを運営し、それで高い稼働率を維持してきた。

今は社員数が200人を超えていくなかで、次の顧客、次のテーマを開拓して取っていかなければならない状況なので、プラクティスというチーム・活動を中心に、我々がターゲットとしている業界や顧客にどういう経営課題があって、何が求められているかという提案の準備・仕込みを行って、プロジェクト化に繋げる。そこはまだ有償化の手前であり、売上原価には反映されないコストとして見るため、稼働率が多少下がる要因になっている。

―コタエル信託の件はいろいろと話題になっているスキームだろうが、どうするのか
税務的なところは、数ヵ月前からニュースになっているが、我々自身は、その比率自体も少ないし、対象としている社員も役員以上となっているので、税金面の負担が発生しても、必ずプラスになるような設計になっているので、還元を受ける社員にはメリットでしかない。当社がそこに対して損益計算書上の補填をすることも、現状では考えていないので、大きなインパクトはない。

―いつ頃から配当を出すのか
明確にその時期などを伝えるのは難しいが、株主還元の重要性を認識しており、上場を起点に経営基盤を今一度安定させ、経営陣で議論しているので、メドが見えたタイミングで、適切に開示をして還元の計画・方針を伝えたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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