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上場会見:アクシスコンサルティング<9344>の山尾社長、リカーリングを推進

28日、アクシスコンサルティングが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1950円を55.38%上回る3030円を付け、2754円で引けた。コンサルタントなどハイエンド人材の紹介サービスを手掛け、マネージャー以上の採用支援に強い。スキルシェア事業として、フリーランスのコンサルタントへのプロジェクトの斡旋に加え、相談プラットフォーム「コンパスシェア」の運営を昨年7月に始めた。山尾幸弘社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

事業会社に向けた拡販にも注力していくと話す山尾社長
事業会社に向けた拡販にも注力していくと話す山尾社長

―初値が公開価格を上回ったが、その受け止めを
株価はマーケットが決定するものと心得ている。しかし、高い期待を得たと受け止めて、マーケット・株主の期待に応えるように、今後もしっかり取り組んでいきたい。

―上場の目的は
成長事業戦略を推進するための手段として捉えた。祖業であるコンサルティングファーム向けの人材紹介事業だけでは、IPOを決断していない。2020年当時に、上場の方針を決議したが、人材紹介事業とスキルシェア事業、2016年からはフリーランスの事業に参入した。

そして昨年からデジタルプラットフォーム事業に、コンパスシェアというブランドで参入した。事業基盤が整ったこともあり、また社会情勢の変化もある。人的資本経営や働き方の多様化・改革など政府の後押しもある。そのなかで、今がそのタイミングである、成長戦略を実現したいとビジネスモデル的に対事業会社を意識したということもあり、前提が整った。その方向感で上場を決断した。

―1つのサービスの継続利用に加えて、ほかのサービスの利用へ転換するリカーリングの循環ができているとのことだが、事業全体で、きれいな形で循環しているケースはどのぐらいあるのか
伊藤文隆常務:一例で言えば、フリーランスの「フリーコンサルBiz」の事業が大体年間700本ぐらいの案件を引き受けてもらっている。そのうち110本ぐらいは元々(コンサルタントの紹介の)候補者だった人からオーダーを受けて増え続けている。これは今後、デジタル化や広告投下によって割合が増えてくると見ている。

また、人材紹介では、2回目、3回目と支援する人がハイレベル人材のなかで割合がかなり増えている。こちらもシステム化や広告投下でさらに増えていくと想定している。

山尾社長:補足するが、過去3年間の人材紹介の実績がある。そのうちの半数近くが、継続性という観点では、当社の中長期的なフォローは1年以上だ。だが、業界のスタンダードが長くても3~4ヶ月だと思う。1年以上フォローしてる人が全体の半数近く、そのなかで、約3割が当社の利用が1回ではなく、2~3回利用する。これも1つのリカーリングだと思う。

―コンパスシェアは1時間の相談だけで完結するものなのか、それともほかのサービスへの入り口になっているのか
伊藤常務:1時間のなかで主に課題の整理や抽出を主に置いているので、そこから必要があれば、次の人材紹介やフリーランスプロジェクト化の支援も可能なサービスになっている。

―昨年7月に始めて、そのようなケースは出ているのか
1回目のセッションが終わって次のフェーズをどうするのかと相談を受けるケースが増え続けている。

―コンサルティングをもっと活用してもらいたいとのことだが、コンサルは海外の企業が凄いイメージだが、山尾社長がイメージしている具体的な事例は
コンパスシェアが、最もライトにコンサルタントを活用できる仕組みで、ワンショット3万5000円から副業スキームを使うことで、プロフェッショナルなコンサルタントに相談できるサービスになっている。一般的なコンサルティング会社ではかなり大がかりな、数千万~数億円という料金になってくるが、我々の仕組みを使うと現役のコンサル会社に勤めている人に3万5000円から相談できる。およそ国内にある法人は全て活用できるぐらいの料金設定にしている。

山尾社長:外資系のコンサルティングファームだけではなく、日系のコンサルティングファームも含めて、ほぼ20年手掛けているので、そのソリューションやネットワーク、アセットがある。4分の1が登録をしており、コンパスシェアを展開することで2分の1に引き上げたい。

事業者にとっては活用しやすい価格帯とサービスメニューを用意しながら、まずは課題の発見、フリーランスの活用、そして内製化の支援へ繋げていきたい。

伊藤常務:当社のプロフェッショナルのフリーランスのサービスを、年間で活用すると、数千万、場合によって億円規模になることもある。いきなりそこから入るのではなく、まずは3万5000円からプロフェッショナルなコンサルタントが状況を整理して、「そもそもこれはプロジェクトにするべきなのかどうか」から相談して、必要であればプロジェクト化していくという繋がりを活用できる。

山尾社長:例えば、足元の事例で1つだけ言うと、事業会社から「システムのベンダーの選定をしたい。いろんな提案を受けているけどよく分からない。過去にもシステム投資をしたけどうまくいかなかった。それを判断できる人がいない」というオーダーを受け、当社のコンパスシェアを利用してもらいながら、現役のコンサルタントが、副業を解禁されているなかで(顧客を)支援しながら、ベンダーの選定に協力する。

全ての経営・事業課題をDX化に繋げるという括りだが、我々はそれに対応できる。コンサルタントとはそういう手段だと理解してもらいたい。

―関連して、労働力人口が減っているなかで、そういったリカーリングやスキルのシェアの市場は、今後日本で広がっていくのか
広がっていくと思う。それほどDXの課題でマーケットが逼迫している。例えば、事業会社でDXについての調査をすると、有効求人倍率は7~8倍。コロナ禍でもそれで推移している。7~8社に1社しか人材が活用できてない。

我々の元には、事業会社やコンサルファームから「どうしたらいいんだ」という声が届いているので、何とかしなければいけないと課題解決のためにコンパスシェアというブランドで副業支援サービスに参入した。高い需要は、今後も2030年ぐらいまで継続していくと見ている。

―今後の成長戦略としてどういった分野に力を入れて投資をしていくのか。対事業会社ということを強調したが、今思い描いてる成長戦略は
2025年6月期までということでは、2つの事業と4つのサービス、リカーリングスタイルのさらなる拡充・充実を図りたい。成長戦略のうち、副業サービスはコンパスシェア(を指す)と理解してもらいたい。そこを通じて、コンパスシェアからフリーランス、そして転職の支援に繋がるリカーリングを強化したい。集客効果を高めていきたい。

現在8万人の登録者数があるが、この副業支援サービスを導入することによって、(コンサルタントの)マーケットの4分の1(の人数)が登録済みだが、それを2分の1に引き上げて推進したい。あるいは営業の強化だ。リカーリングを推進するためにも、人材紹介事業としてスキルシェア事業は、コンサルティングファームのなかで成功事例を出してきている。足元ではそれをコンサル業界のなかで横に広げたい。

同時に、事業会社には高いポテンシャルがある。コンサルティングをもっと活用してもらいたい。フリーランス・正社員紹介という複合型のソリューションを持ちながら、事業会社の経営・事業課題の解決にしっかり取り組んでいきたい。

マーケティング強化や全社的なブランディング強化、システム投資、大胆に資金調達したものを適切に投資したい。フロントエンドやバックエンド、データの整備・充実、サービスの統合に向けてしっかり取り組みたい。

―上場で調達した資金は主にどのように活用するのか
主に広告投資やシステム投資、人的投資に充当したい。

―株主還元の考え方は
配当政策は、重要と認識しているが、当面は財務・事業基盤の拡充を優先したい。その後、継続的に配当できる体制を作りたい。その時期などについては今明示する段階ではないと判断している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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