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上場会見:インテグラル<5842>の山本代表、期待のオルタナティブ投資

インテグラルが20日に東証グロースに上場した。初値は公開価格の2400円と同額で、2475円で引けた。主に非公開株式会社への投資を目的とする「投資事業有限責任組合」や「リミテッド・パートナーシップ」などを組成し、運用する。プライベートエクイティ(PE)・ファンドのゼネラル・パートナー(無限責任組合員=GP)として管理運用を行い、管理報酬を得る。また、投資先企業に対するハンズオンでの経営支援を通じたバリューアップを経て、株式上場やM&Aなどのエグジットでキャピタルゲインを得る。GPの上場は本邦初。山本礼二郎代表取締役パートナーに事業の強みや今後を27日に聞いた。

3つの強みを核とした今後の成長イメージについて説明する山本代表。海外機関投資家の期待はかなり高いという
3つの強みを核とした今後の成長イメージについて説明する山本代表。海外機関投資家の期待はかなり高いという

―上場から1週間ほどが経過したが、株価の評価も含めてどのような心境か
株主の期待に応えられるように一生懸命働いていこうという決意を強くした。

―ウェルスナビやレオス・キャピタルワークスなど投資を事業とする会社の上場については、比較的懐疑的に見る個人投資家も散見されるが、それを踏まえて、今回の上場の意義は
投資会社をひとまとめにして話すと、そのような懸念もあると思う。だが、PE投資会社では日本で初めての上場であり、例えば、投資といっても(他社の)投資対象はほとんど信託だ。ジャフコとてファンドを集めるというより、ほとんど自己資金で運用している。

PEファンドを運営する会社の上場は、米国や欧州にはあるのに日本にはなかった。例えば、個人でも良いが、日本の株式投資家にとっても待望のオルタナティブ投資機会だろう。PEの投資会社に投資したければ、米国や欧州の会社しかなかった。そういう意味では非常に期待してもらえるのではないか。

―目論見書想定価格(2800~3400円)と仮条件(2300~2400円)の間に相応のギャップがあったように見える。一方で、仮条件を提示する際に、IoI(Indication of Interest=取引意向)を出した海外機関投資家も何件かあった。これは目論見書想定価格を支持した結果であり、打ち出しとしては決して不合理ではないとも考えられるが、その点についての所見は
IoIを提出した海外の機関投資家では、米国や欧州でPE投資もしくはオルタナティブ投資会社に対する(投資の経験から)バリュエーションや期待感がある程度形成されている状態にあった。

一方、日本で初めての上場で、それが「日本の投資市場で適正に理解されるだろうか、自分たちだけで理解しても、株価形成がそうならない恐れがある」と、少し心配になった人たちがいたのだろう。

特に、海外の投資家は、「いよいよ、やっと日本でも本格的なものが出てきたか」という期待感が非常に強かった。IoIを提出した投資家を含めて、よく分かっている何十社かの投資家は物凄く強い期待を持っていた。

そのうち、「ただ、日本の株価形成がその通りになるように、日本で理解が進むのか」と思った人は、少し抜けただろうが、ファンダメンタル分析的には、「本当に将来性たっぷりだね」ということを言う投資家が多かった。

―業界の状況に関する認識を聞きたい。欧州では7月頃に、PEファンドへの投資にリスクがあるとの報道があった。PEファンドを巡る状況をどう見ているのか
PEファンドは、ファンドレイズといってファンドを立ち上げるが、例えば、我々は今4号ファンドまであり、次に5号ファンドを立ち上げる。そのように、それぞれのファンドで「〇号ファンド」というように新しいファンドを立ち上げる。

米国のFOMCやインフレ退治の話があって、米国のパブリックマーケットが不調になった。機関投資家は大抵、パブリック投資がアセット全体の何割、PEが何割、不動産が何割というアロケーションがあり、その比率の調整が必要だという話が起きた。

場合によっては、オルタナティブ投資自体のパフォーマンスが良くても、アロケーションを再調整するために、つまりパブリックマーケットが下がったら、オルタナティブ投資の比率を下げないとその比率が上がってしまう。オルタナティブ投資の割合の引き下げが起きると言われていて、実際にファンドレイズ自体が難しくなったというニュースがあった。それが先の欧州の話だ。

我々の場合、5号のファンドレイズが間近になっている。ファンドは、大体70%の進捗を超えてくると次のファンドの設定を開始する。既存の4号ファンドの投資家や、「次に投資機会があれば入るよ」と言いながら我々を5年も6年もウォッチして「その次ね」と言っているような投資家が、マーケティングを経て入ってくる。

そういう人たちにはアプローチ済みで、既存投資家については、「マーケット情勢がこうだが、また入るか、ちょっと金額が増えても大丈夫か、興味はあるか」と伝える。まだ入っていないが前から入りたいと言っている投資家についても、「興味は変わらないか」ということを打診済みだ。

アジア全体を見ると、消去法的に中国やインドに投資できなくなってきており、大型のマーケットはやはり日本で、日本のPEファンドのなかでもトップパフォーマンスで運用できているところは数が限られる。インテグラルでも「ぜひやりたい」と、前よりも投資額を増やしたいという打診があることを理解している。

欧米に少し不調な部分があるらしいというニュースがあるのは、マーケット環境がよく分かっており理解できる。だが、インテグラルの、日本のPE投資に関する投資家の意思は確認済みであり、我々については非常に期待してもらえるのではないかという状態だ。

―競合に関する認識はどうか。国内で上場したのはインテグラルが初めてだが、ほかにも国内で活動するPEファンドは存在する。どう見ているのか
まず、欧米に本社があり東京オフィスで運営しているKKRやブラックストーンなどがある。それから我々のような日本本社・日本出身の会社がある。かつ、ゾーニングでは我々が行う中堅企業投資、何十億円以上、何百億円というミドルキャップの投資をして、ファンドサイズが既に1000億円を超えている日本出身のプレーヤーは、我々を含めて3~4社以内だろう。海外に本社があり日本で運営している会社は、我々とはゾーンがそれほど重なっていない。

競争はあるが、米国での同じ業界に比べて、競争状態はまだこれからで、全く競争がないに等しいぐらいだ。これからの業界であり、日本出身のプレーヤーも、海外から来たプレーヤーも皆でマーケットサイズを広げている状態だ。

―強みについて。ハイブリッド投資やハンズオンによる経営支援などいろいろな強みがあるが、その本質は何か
強みは3つで、1つはハイブリッド投資だ。ファンドは長くても10年の期限があるが、それを超える超長期の資金コミットという意味で、自己資金投資ができる。それにファンド投資を合わせて行うハイブリッド投資は、日本で唯一、未だに誰も真似してこない。やりたくてもできないのだろう。これによって「相対でインテグラルと相談したい」という話が強く出てくる。このためマーケティング上の大きな優位性を保つ武器の側面がある。

もう1つが「i-Engine」といい、投資先の会社にプロジェクトがいろいろあって、それを手伝い一緒に汗をかいて、ともに働く。人材のコミットメントだ。これについても、そこまで本気で一生懸命に取り組んでくれるところはないというレピュテーションができている。バリューアップという観点で結果が出ている。会社にとって良し、投資家にとってもバリューが上がって良し、IPO後には株主にとっても良し。さらに、その結果として「インテグラルは本当にちゃんとやってくれる」という評判が、日本の産業界の人々に口コミで伝わることによって、「インテグラルにまた相談したい」ということになる。もしくは、PEファンド業界という市場が、評判が評判を呼んで大きくなっていくこともある。将来の投資機会を作っていく観点で非常に良い。

さらに、ハイブリッド投資とi-Engineを支える「ワンチーム・カルチャー」がある。例えば、投資委員会という、投資決定やデューデリジェンス、会社経営の方針を決める場所に、投資委員という限られた人数だけでなくて、全員が参加する。若い人も皆意見を述べるので、1つには、多様性をもたらす。良い意見が出て、クオリティコントロールという意味で良い意思決定ができる。それ以上に、若い人たちもあっという間に鍛えられていく。

また、ファンドにもメンバー個人が投資している。これはアライメント・オブ・インタレストといい、利益関係が一致しており、懸命にファンドのために働く。そのファンドの成績が良くなるとファンドの投資家だけではなく、インテグラルという投資会社に投資する株主にとっても、リターンを返していく機会になる。

超長期のコミットをする資金のコミットメント、汗をかいて働く人のコミットメント、それを支えるためのワンチーム・カルチャー。これが我々の競争力の源泉として、将来にも繋がっていくのではないか。

―プリンシパル投資やGP出資の割合を伸ばしていきたいとの話だったが、それはどこまでできるのか。居心地の良い水準はどのぐらいか
プリンシパル投資は、全案件に対してミニマム3%の投資をするというルールを決めて行っている。これは最小限であり34%まで投資できる。仮に今回の上場がなくオーガニックグロースで進めていくと、キャリードインタレストなどいろいろな仕組みで年間100億円程度のキャッシュが入ってくるが、その範囲でしか投資できない。上場での公募増資の資金を得て投資すると、もう少し投資のキャパシティが強まる。

ミニマムの2~3%ではなく、5%や8%、10%、場合によっては15%、20%という割合での投資が可能になる。ポイントはここだが、投資先の経営陣や、売却することになるオーナー、大企業によるカーブアウトでの親会社(事業の切り出し元)の立場からすると、「インテグラルは超長期のこんな資金をこんなパーセンテージで出してくれる」として「お願いします」と言われることがある。その要求にもっと応えられるようになる。

心地良いという意味では、3%が30%になるというものではなく、3%で良いという人も15%が良いという人もいるので、平均するとプラス5%になるというように、柔軟性を持ってキャパシティが増えていく。

それから、我々の運営会社がコミットするGPコミットメントという金額がある。今後、ファンドの拡大をしていくと、「現在の2%のGPコミットメントがもっと上がっていくといいな」という海外の投資家が現れる。GPコミットメントの上昇に伴いファンドサイズが上がっていく。そうすると先程の自己資金投資とも合わせて、ファンドの消化が早くなる。それがファンドサイズの拡大にも繋がり、ファンドの投資のスピードも速くなる。そうしてAUM(Asset Under Management)の拡大に繋がっていく。

オーガニックグロースだけでできていたものに比べて、公募増資を使って心地良いレベルで、自己資金投資をし、GPコミットメントをもう少し高くして運用すると、我々が戦略として描いているファンドの拡大スピードがさらに速くなる。

―業績の公開範囲として、リカーリング収益など見やすいものに限定している開示方針について。上場時の決算情報の開示でもその方針を維持していると思われるが、今後も変えないのか
いや、3つの大きな指標を四半期ごとに開示していく。リカーリングの収益に何があるか、これはすぐに分かる。それから、キャリードインタレストについて言うと、「未実現キャリードインタレスト」の残高を、ファンドごとにどれだけ積み上げたか公表する。それは先行指標として「実現キャリードインタレスト」の源泉となるため、「このくらい貯まってきた」という開示に繋がる。

もう1点同じことについて言うと、過去の事例では、「フェアバリュー」という個別の投資先のバリュエーション自体が、例えば、簿価の1.2倍や1.8倍になり、じわじわとPEの価値が上がり、それをファンドの合計として参加しているLP機関投資家に四半期ごとに開示している。これに基づいて未実現キャリードインタレストが計算されている。

今までは、それがマネタイズ、つまりIPOやM&Aでエグジットする時に、実際にいくらになったかというと、全部のケースでそれを超えている。例えば、1.2倍や1.5倍となり、実現時に3倍になる。15倍になったケースもある。

未実現キャリードインタレストを開示していることと、それがエグジットで実現する際に、どのぐらい上回るのか、四半期の開示で推移を見てもらえると、インテグラルが発表しているクォータリーの未実現キャリードインタレストが、実現する時にどうなっているのかヒストリカルで分かる。

我々は未実現キャリードインタレストの開示を続けていくが、それを継続して見ると、明らかに「バリュエーションがコンサバティブで、それを上回る形で実現している」というインテグラルのパフォーマンスの表れがそこに出てくる。これが未実現キャリードインタレストの開示だ。

最後にプリンシパルインベストメントがある。これは貸借対照表に載っており、フェアバリューとして継続して開示していく。これはじわじわとしか上がらないが、四半期の開示を1年経ち2年経ちとウォッチしてもらえる人がいたら、それがいかにコンサバに上がり、大きく凹んだりしないことが分かってもらえる。

リカーリングのマネジメントフィーなども、ファンドレイズがあると次には多分倍になる。来年になると年間40億円だったものが80億円になる。そういうことを見て取れる。キャリードインタレストの実現性がどうなっていくかという残高も発表しているが、トラックレコードとして、どのように実現しているか見てもらえる。そしてプリンシパル投資も、どのように大きくなってきているかずっと開示される。人間ドックではないが、残高として発表するものに加えて、継続して見ると分かる部分が情報になってくる。

―今後の成長戦略について
AUMの拡大が最も分かりやすい。それが拡大すると、リカーリングのマネジメントフィーなどが増えていく。キャリードインタレストもAUMが大きければ、より大きなものが期待できる。プリンシパル投資もAUMが活発になると同時に伸びていく。3つとも伸びていく。それを簡単に言うと「AUMを大きくする」となる。これが現象面で結果値だ。

未来に向けていうと、AUMが拡大していく意味は、機関投資家からの継続的な信認獲得の証左でもある。投資家は、リターンがしっかり上がったから、再び投資をするというふうにファンドに投資をする。投資をしていくと、また新しいファンドができて、その前号や前々号のファンドが重なってAUMが積み上がる。

PEファンドの次号ファンド、その次号、そのまた次号を運用していく。まだできていないが、不動産やインフラなど、ほかのアセットクラスへの投資計画がある。コーポレートと不動産、コーポレートとインフラにはシナジーがある。また、新しく投資をするために大型のターゲットファンドを組成する。これらを行い順調に拡大すると、フィー収入もキャリードインタレストもプリンシパル投資のバリューも上がってくる。

これらの総合で出てくる結果として良いリターンを得られるが、未来に繋がるという意味では、リターンが良いから大きくなる。仮にこれがシュリンクすると、結果が出ていないということでもあり、投資をする人が減る。無理な拡大をするとリターンが悪くなり、次からは投資が減ってしまう。そうならないようにリターンをしっかり伴って拡大していけるかという目安でもあるので、将来の成長戦略という意味では、全てはAUMの成長に集約される。

―将来の会社像は
ワンチームと言ったが、当社は人材の会社だ。人工の商売ではないが、よく言うのはディールヘッドやチームリーダーといった核となる人材が一体何人いるかということが重要だ。アセットクラスの拡大も、PEの仕事も、バリューアップの仕事も、全てにおいて人材が本質的な要素だ。

人材は、育成するのもリテンションするのも大事だが、磁石のようなものだ。「ここに集まりたい。インテグラルに集まると面白いことがあるぞ」というわくわくする感じのチームができると人が集まってくる。そういうチームを運営していけると、勝つのではないのか。

―株主還元の考え方について
前提として株主総会で決定することで私が軽々に言える話ではないが、来年の株主総会に諮るような方向感としては、基本的には安定配当がまず1つある。それに加えて特別配当や自社株買いを行えるリターンの獲得を追求したい。

安定配当は、今のトレンドや我々の業種のことを考えても純資産をベースにする。DOEで平均の2~3%程度を標榜する。純資産額が増えるに従い、掛けるパーセンテージを一定に保てば増えていくので、その形を取る。

キャリードインタレストなど収入が3種類あり、積み上がってきた資金から、アセットクラスを拡大する時に、1号ファンドは比較的自分たちで大きくLP投資家としても入る。成功して、2号ファンド以降は我々の資金のみならずほかの機関投資家にも入ってもらうことになるが、最初はシーズマネー的に入っていくために資金が要る。それから自己資金投資やGPコミットメントとしてファンドに入れる金額がある。成長に資するような投資機会はたくさんある。これをやり切ったうえで生ずる余剰資金的なものは、特段キープする話ではなく、特別配当や自社株買いに充てていくべきだという考え方を持っている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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