5日、ブリーチが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1340円を19.63%上回る1603円を付け、1500円で引けた。成果報酬を顧客と分配するレベニューシェア型のインターネットマーケティングを手掛ける。広告活動で獲得した新規ユーザー数に、顧客と事前に合意した報酬単価を乗じた額を受領する。大平啓介社長と松本卓也CFOが東京証券取引所で上場会見を行った。
―初値の受け止めは
松本CFO:今の市況では、IPO価格からすると20%弱の上昇だったので、まずまずだった。一巡した後に終値が1500円ほどになっているが、我々としては初値や初日の終値に囚われず、今後中長期的に株価を伸ばしていけるように業績を伸ばしていく。IRも実施してしっかり伝えていきたい。
大平社長:適正な形で終えられたのではないか。株価を意識はしていくが、中長期的なところに重きを置いて、市場価値を上げていきたい。
―上場の目的や狙い、資金の使途は
資金調達の拡張性と信用力の向上で、さらに取引先を拡大していく。信用度が上がることによって採用もさらに加速していく。加えて、創業からずっと長くいる社員もいるので、彼らに対するインセンティブの3つがある。資金は人材採用とITシステムへ投資して強化し、さらに大きく展開していきたい。
―レベニューシェアだが、商材ごとに異なり、収益性が異なるのか
そこは関係がなく、クライアントが実際に儲かるのはいくらで、それに対して自分たちがROAS(Return On Advertising Spend=広告投資額に対する投資収益率)をどの程度高められるかがポイントになる。収益性が低かったとしても、自分たちがROASを高く獲得できれば、支援の拡張は成立し得るので、そこはポイントではない。
松本CFO:レベニューシェアの単価が単純に高ければ良い、低いから駄目ということではなく、130%程度のROASを目安にしており、そのぐらいを確保できるのかと、広告利益の絶対額を確保できるか検討したうえで、商材を取り扱うかを判断している。
―この3年ほどで経常利益や純利益が大幅に伸びたが、何が大きく寄与したのか
ひとえにコア商材が増えていったということだ。売り上げの大きいコア商材の数と、商材当たりの売り上げの双方が伸び、過去四半期ごとでは、人員増とともに概ね右肩上がりに伸びてきた。直近でコア商材当たりの売り上げを伸ばせた要因としては、利用している広告媒体の拡大があった。
これまではLINEやヤフーを使うことが多かったが、加えてByteDanceのTikTokの活用が進んだ。1つの商材について勝ちパターンを横に展開していくことで、今まで100だった売り上げを150にできている。それがいろいろな商材で起きている。こういったことを含めて我々のマーケティング力の向上と捉えており、業績を大きく伸ばせた。
―ネット広告代理店のアールを経由しての売り上げが多い。商材は分散しているだろうが、特定の企業や商品が、売り上げに占める割合が大きいと心配する声も聞いた
具体的な商材ごとの売り上げは開示できないが、コア商材のうち当社の月商が1億円を超えているAランク商材だけで、直近では6つある。商材ごとの売り上げの分散は一定程度進んでいる。この6商材もジャンルがばらついており、1つに依拠しているものではない。
―手をかけ始めてからAランクのコア商材に育つまでの期間は
Aランクになるものは出だしが良い商材が多く、2~3ヵ月目で月商1~2億円を超えるケースが多い。一般的に、戦略を考えて広告を配信するまで、早いもので2~3週間で商材の立ち上げが可能だ。その直後から新規ユーザーを獲得でき、即座に我々の売り上げになる。そこまでは1ヵ月以内にできる。初期の反応が良ければ2~3ヵ月目で1億円を超えることもある。
―これから有力なターゲットとなる新規ジャンルは。既に始めているのであればそれは何か
大平社長:我々が扱う商品のメインは、化粧品と日用品、機能性表示食品領域で、既存領域だけでも多くの市場がある。まずはここを深掘りしていくことが前提になる。既に実績がある新しいジャンルである美容の店舗サービスや金融サービスも実績が出ている。この2つを同時に加速していく。足元の新規では、美容の店舗サービスは良い形で進捗している。
松本CFO:前提として、特定のターゲットとなるジャンルを決めているというよりは、そのジャンルのなかでも勝てる商材なのかを判断したうえでスクリーニングをかけている。必ずしも「マクロ的にここが伸びている」という見方はしていない。あくまで商材ベースでの、他の商品と比べた競争優位性を確認したうえで、取り扱うか決めている。
投資家からよく質問されたが、化粧品や日用品、機能性表示食品のなかだけでも、サブジャンルがたくさんあるので、例えば、化粧品と一言で言っても、国内だけでも消費市場全体では4兆円ほどある。
そのなかで、例えば「スキンケアのこういったものがバズってる」というものがあると、そのなかでより流行っていくものを、チェリーピックして支援していく。既存のジャンルのサブジャンル中の特定商材をピックアップしていくことでも相当な掘り下げの余地がある。
―新規領域の士業分野はどのようなものか
大平社長:そもそも我々がインターネット上で購買・集客できる商品やサービスであれば、事業の対象になる。士業の場合、顧客や顧問先を我々がインターネットから集客することを想定している。
松本CFO:具体的には、弁護士や税理士法人などで商業展開している事務所の新規ユーザーの獲得を、我々が担うこともできる。
―本人たちがホームページを出す程度しか進んでいない感じがするが、どういう流れになるのか
大平社長:一般的な話だが、クライアントの商品やサービスが誰をターゲットにしているのか、そのターゲットに対してどのようなマーケティング施策を展開したら売り上げにつながるのか、新規ユーザーを獲得すると顧客がどの程度儲かるのかということから逆算する。レベニューシェアの単価を決めて、自分たちの実際のROASがどこまで行けそうかテストマーケティングで確認してPDCAを実行していく。
―どんな業態でもやり方は同じか
根本的に一緒だ。具体的なアウトプットは、そのジャンルやサービスによって違ってくるが、考え方は基本的には一緒だ。
松本CFO:例えば、弁護士事務所で既にインターネット広告を積極的に出している会社もあり、問い合わせがあるので、これから新たに開拓していくよりは、やろうと思えばいつでもできる状況にある。インターネットを使って購買だけではなく、集客をする、申し込みのユーザーを増やしたいといったものについては、我々のビジネスモデルに全て当てはめることができる。今までのインターネット通販に限らず、サービスを展開していきたい。
―マーケティング活動を内製化することでマーケッターの業務の担当範囲は広く、クリエイティブの部分はセンスが必要になる気がする。新卒を中心に採用するとのことだが、人材の要件はどのようなものか
大平社長:クリエイティブというと、一般的にセンスの要素をイメージしやすいが、1人ひとりのセンスの影響を可能な限り小さくするように、マーケティングの育成プログラムを構築している。例えば、事業の過程で商品の担当メンバーを交換していく。そうしたとしても、高い売上高を維持しており、人材を入れ替えたとしても、クリエイティブの能力が平均的になるように育成している。
クリエイティブの部分を採用の要件としては定義しておらず、一般的な採用では地頭力や本人のキャリアに求める指向性といったものを要件に、新卒も中途も採用している。
松本CFO:前提として、センスは絵を描く絵心のようなものよりは、論理的な思考や、目標から逆算してどのようなボタンを押せばその目標が達成できるのかをロジカルに導いて、それを戦略に落としていく力のほうが重要だ。
美大などクリエイティブのバックグラウンドがある人は比較的少ない。クリエイティブディレクターにはそのような人材がいるが、マーケッターは、ロジカルシンキングなどのほうがより重視される職種になっている。
―いろいろな媒体を利用しているだろうが、昨今のTwitterの不調で、今後は媒体としてどうなるかという部分があるかもしれない。Twitterに限ったことではないが、媒体のトラブルに対する対応は
大平社長: Twitterを媒体として使っている割合は、全体と比較して非常に小さい。個々の媒体の影響はあると思うが、市場のインプレッション(広告の表示回数や閲覧数)自体はなくなっていないので、違う媒体のインプレッションに寄せていく。消費者がTwitterを見ないのでLINEのインプレッションが上がっているとすると、注力するリソースを寄せていき、一時的なトラブルを回避したい。
松本CFO:Twitterでの売り上げの割合は非常に小さいので、影響は受けていない。
―株主還元は
大平社長:具体的に定まっているものはない。今後検討していきたい。
松本CFO:現状は成長投資が優先で、当面は配当や自己株買いは考えていない。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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