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上場会見:FPパートナー<7388>の黒木社長、対面とシステムで寄り添う

22日、FPパートナーが東証グロースに上場した。初値は公開価格の2600円を5.77%上回る2750円を付け、3250円で引けた。「マネードクター」のブランドで、生命保険と損害保険32社の商品を個人と法人顧客に販売する乗合代理店。実店舗の「マネードクタープレミア」を国内111ヵ所に展開する。黒木勉社長が東京証券取引所で正午に上場会見を行った。

廃業する保険代理店からの顧客の移管も進んでおり、今後の成長エンジンとしたいと説明する黒木社長
廃業する保険代理店からの顧客の移管も進んでおり、今後の成長エンジンとしたいと説明する黒木社長

―初値が公開価格を上回った受け止めについて
初値を見届けて一安心した。喜びと、大きな責任も感じている。スタートラインだと思って成長させていく予定なので、今後が勝負だ。

―ほぼ100%の人員がフィナンシャルプランナーの資格を取るとのことだが、どのような意図で、どう育成しているのか
創業以来行ってきたが、保険の販売だけであれば、フィナンシャルプランニングの資格も知識も必要ないかもしれない。ただ、マネードクターとして顧客に寄り添うためには高度な専門知識と、充実したシステムが必要で、全国津々浦々、過疎地域も含めて広げたいとの思いで創業した。

顧客に寄り添うためには、オンラインだけでは駄目で、対面して、顧客の地元で生まれ育った人がプランニングすることを続けてきた。創業以来一貫したことだが、資格を取って、それだけではなく、顧客に対してシステムを使って高度なプランニングをすることでコンサルティングセールスができる。保険販売はプッシュ型営業といわれているが、それを取ってしまって、顧客に本当に良いものを、保険だけでなく住宅ローンはどこが安いとか、携帯電話はどこが安いという情報を提供していきたい。

―競合の認識と参入障壁は
まず参入障壁について。トップセールスを作っていくうえでなかなか営業マンや営業ウーマンが根付かない業界で、特に業界全体は1社専属で1つの商品しか売れない所に70%近くの営業人員がいる。我々の保健代理店業界のシェアは15%程度で、今後伸びていく業界だ。ただ、トップセールスの育成や採用が難しいとされているので、業界の今の地位を生かして、上場を機にさらなる成長をすれば、我々の後を追いかけることは難しい。

保険業界の代理店はトップ 2 と言われており、保険の窓口とFPパートナーだ。同じ保険代理店だが、全く違う業態で、保険の窓口はショップという形で“待ち”の営業スタイルだ。当社は、保険会社の1社専属と全く一緒の、訪問販売で歩合(を得る)社員を雇う。保険業界ではそのように働く人がほとんどだ。上場を機に大きく成長できる。

―アクサ生命保険と東京海上日動あんしん生命保険、メットライフ生命保険に関する販売実績が直近では60.7%で、前々期、前期と比率が上がっている。商品性や各社の販売施策の結果などいろいろな要素があるだろうが、どのような背景でこのような構成になっているのか
コロナ禍の影響もあり、顧客の貯蓄・投資志向がすごく強まっている。当社は保障系の商品を中心に販売をしてきたが、このところ、アクサ生命保険と東京海上日動あんしん生命は、変額保険といった将来に向けての保障を踏まえた投資系の商品、そしてメットライフに関しては、ドル建ての保険で、両方とも貯蓄であり投資でもある商品となっている。

これらは1件あたりの単価も高く、全体のシェアを貯蓄性商品や投資系商品で大きく伸ばしている。商品が優れていて販売が集中していく。全保険会社で出している商品ではないので、そのなかで優れている3社に集約している。今年度の末にも新しい商品が出る可能性もあり、シェアは変わっていく。

―投資信託や住宅ローンの紹介など保険以外の金融サービスも強化するとのことだが、成長戦略について改めて聞かせてほしい。
黒木社長:12年間で43万人の顧客を保有している。ファイナンシャルプランニングをやってきた結果、自社システムに、どこに何を預けている、どこの携帯を使っているといったビッグデータをかなり蓄積している。今、IFA(Independent Financial Advisor)の資格を取得して証券代理を行う準備をしている。

新規顧客への販売だけでなく、既存顧客への販売も強化していく。顧客に寄り添う商品があれば、住宅ローンや投資信託だけでなく、いろいろなものに挑戦したい。上場までは保険の姿だが、今後は総合金融として新たなチャレンジをしていく。

―マネードクターの店舗展開は
マネードクタープレミアとして、コロナ禍の時期から始めたが、大型商業施設、東京ではコレド日本橋や東武池袋百貨店、博多・天神の三越、名古屋のラシックと全国の主要都心にコンセプトショップを置いている。保険の窓口のショップとは違って、顧客のプライベートの空間を守りつつ、おカネの話をしっかりした空間でしてもらいたい。

それができる誰もが分かる施設へ展開したい。3年間で、約30店舗まで広げていく。これも上場後の大きな成長戦略として検討している。既に全国で7 店舗開設して、顧客が順調に集まっており、コロナ禍で通常のショップが厳しいなか、多分誰もやったことのないサロン的な新しい業態だ。

田中克幸専務:マネードクタープレミア店舗に予約をする顧客の約4割が資産形成の相談目的で、残り4割が保険の相談を絡めた資産形成、残りは家計の見直しやお金の使い方だ。今までの、保険の見直しのみであった層から、我々が察知し得なかった新たなマーケットの顧客が来店している。現状を見ると、ひとまずはマーケティングとして成功しているのではないか。

―調達した資金の使途は
調達資金は、設備投資に充てる予定で申告している。1つは、42万人程度保有している顧客へのアフターフォローを充実させるためのシステム開発費用。それから、顧客が利用するアプリの開発を使途の2つめに入れている。そのほか、最近流行っているマルウェア対策がある。従来、システムのセキュリティについては十分に対応してきたが、昨今の状況に鑑みさらに強化する。また、大阪と名古屋の自社ビルの建て替え資金に、財務部門では借入金の返済に充てる。

―社外取締役に大蔵省(現財務省)出身者が2人いるが、そのような人材を迎える戦略やメリットは
黒木社長:保険代理店は金融業の管轄で、経営者としては、そのような立場の人からいろいろな意見を聞き、指導を受けながら新たに大きく成長していきたい。上場を目指すなかで、会社を総合企業にしていくための助言を受けているので、タイミングが合って2人に来てもらえたのは非常に喜びを感じている。今でもコミュニケーション(を取り)よく指導を受けている。

―ROEと配当政策について
松下涼也管理部長兼経理財務課長:ROEについては、経済産業省で出している8%を最低限超えていこうと思っている。今は開示していないが、計画のなかでROEの基準などを設けて開示していきたい。

配当に関しては、重要な課題と捉え、財務戦略上も重要な項目だと考えている。ROEとの絡みもあるが、まずは内部留保を溜めていく状況だ。ただ、財務諸表では順調に積み上がっている。一方で、あまりに多いキャッシュも警戒するところであり、株主へ還元する政策を取りたい。明確なところは、今後の有価証券報告書などで開示していきたい。

黒木社長:経営者として話すと、今でも既に配当ができるような留保体制ができている。ただ、今後成長するための上場なので、成長に生かしつつ、できるだけ早く配当も出していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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