16日、eWeLLが東証グロースに上場した。初値は付かず公開価格の1700円の2.3倍となる3910円の買い気配で引けた。主力SaaSサービスである訪問看護専用電子カルテ「iBow」を提供し、効率化を支援する。勤怠システム「iBow KINTAI」や訪問看護ステーション用レセプトシステム「iBow レセプト」を投入し、事務管理代行サービスも始めた。中野剛人社長が東京証券取引所で正午に上場会見を行った。 ![]() ―このタイミングで上場した狙いは ―広告費をあまりかけずに集客でき、利益率が高いとはどのようなことか 利益率に関しては、SaaSのビジネスで、利用者が増えても、サービス提供する我々の人件費が増えるわけではない。広告費をかけずに原価もそれほど必要がない。今のリソースで利用者を増やすことができるという2つの理由がある。 ―昨年にリリースした「iBow KINTAI」を無料で利用でき、製品画面に自社製品の広告を表示することがもたらす効果は、もう少し先に表れてくるのか ―競合にはどのような会社があり、それらに対する強みや参入障壁は 他社は、国に保険請求をするレセプト請求システムを中心に行っており、訪問看護ではなく訪問介護のシステムを例外なく転用している。我々はレセプト請求システムを作らずに、訪問看護師が日々訪問した際に使う部分をしっかりと作り込んできた。そもそも棲み分けがなされている。 システムの特徴として、電子カルテの部分は、日々の業務を入力していく結果、その情報が自動的に(他社と連携した)レセプト請求システム(や昨年に投入した自社製のシステム)に流れて計算が立ち、保険請求できる仕組みになっている。他社は、レセプト請求システムに情報を直接入力する点で決定的に大きく違う。月末・月初に入力が必要になる。我々のシステムを利用してもらうことで、間違いが起きない正確なレセプト請求ができる。 ―数年以降先にデータビジネスに参入するとのことだが、具体的にどのようなことをしたいのか ほかにも慢性期医療は、これまでにデータとして存在しなかった。あるとすれば病院の中に眠っている情報で、これが自宅で展開されることで、新たにデータが蓄積されていくので、このデータと、急性期医療の情報を足すことで、本当の医療の情報提供ができる。 急性期医療の情報は短期的なもので、例えば、手術をした瞬間の情報がこれに当たる。慢性期は長期的に回復していくような長時間にわたっての記録の蓄積なので、この2つを足して初めて医療情報になると考えている。そのような強力な情報をこれからデジタルデータとして提供していくことは、今後非常に楽しみな領域と見ている。 もう少し踏み込むと、パーソナル・ヘルス・レコードという領域も、場合によっては行うことができると想定している。これまでデータ化できていなかったことが、やっとデジタル化でき、いろいろな解析が進んでいくのではないか。長期的なデータを持つ点で優位な立場にあり、活用して展開したい。 ―今の質問に関連して、終末期の患者を対象とする複数の会社がここ何年かで上場してきた。例えば、パーキンソン病を扱う会社も含めて施設型が多いが、そういった会社が持つデータとの連携や協業の可能性はあるのか ―事務管理代行サービスの提供を含めて、訪問看護ステーションとのつながりが今後ますます強くなると思われるが、訪問看護業界がレッドオーシャンの状況であると聞いているところ、ステーションなど訪問看護業者のM&Aがあり得るのか。そうするとeWeLLがその仲介を行うという事業モデルはあり得るのか ―自社のM&Aについて ―新事業の方向性は 地域包括ケアの連携を実現するには、絶対に必要なポイントが1つある。それは訪問看護ステーションの情報の共有で、これがないと、在宅医療での連携をしても意味がない。例えば、ドクターと介護の事業者がシステムで情報連携をしたとしても、多分、お互いにその情報は必要がない。ドクターが介護側の情報が必要かというとそうではなく、介護側ではドクターの言語を聞いて理解できるかというと、医療従事者ではないので分からないという齟齬が実際に生じている。 訪問看護は医療保険も介護保険も両方使うので、医師と介護事業者の間に両方に精通する訪問看護士が入ることで、連携がうまくいく。システムの世界も同じで、情報連携の仕組みを作っても、そのなかを行き来する情報がない。そこに訪問看護の情報が入ることで連携がうまくいく。我々はおよそ2000ステーションの情報があるので、シェアを広げながら活用したい。 ―マーケットはあくまで国内なのか ―あくまで慢性期医療のデータなど今まで手書きで管理していた情報を扱う点で海外でも使えるということか ―株主還元は [キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平] |
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