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上場会見:ジャパニアス<9558>の西川会長兼社長、デジタル人材を際限なく

13日、ジャパニアスが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1020円を97.35%上回る2010円を付け、2416円で引けた。IT・通信や製造業界に現場常駐型の開発支援と受託開発を行う。ソフトウェアとインフラ、メカトロニクス、エレクトロニクスを軸に、大手メーカーを中心としたプロジェクトに参画する。西川三郎会長兼社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

通常であればエンジニア1人当たりの採用コストは150~200万円であるところ、85万円程で採用できていると話す西川会長兼社長
通常であればエンジニア1人当たりの採用コストは150~200万円であるところ、85万円程で採用できていると話す西川会長兼社長

―初値が公開価格を上回った感想は
投資家の支持を得たことは望外の内容で、私の想定した以上に終値も上がった。初値が付いたら下がるのが普通だが、セカンダリーの投資家にも喜んでもらえた。その後の展開については分からず、いろいろな要素があるが、ベンチャーキャピタルがなく、売り圧力が全くなかったことが、株価を支えた大きな原因ではないか。

また、当社の今後としては、DX人材を底辺から数多く育成して、細やかながら、グロース(銘柄)といえども人材を育成することで日本の成長に役立ちたい。これは必ずやりたい。数で多くのIT人材を育成し、市場に出したい。そうしたことから、さらに上の市場を目指すために配当も高くしている。

―市場の評価をどう受け止めているか
当初は1800円ぐらいの初値予想だったが、蓋を開けてみれば今日の終値は2416円と時価総額にして、当初40億円ぐらいだったものが、100億円近くになった。非常に支持されたことで、我々が今後推進していくIT化に多少でも理解を得られたものと喜んでいる。

いろいろな企業が今後上場するだろうが、IT化やDX化は、対面業種でも旅行業者でも農業、証券・金融業界、全ての業界で必要だ。特に若手に期待することが大事だ。

―このタイミングで上場した狙いは
日本が、森喜朗内閣の時にIT国家になると言ってからもう22~23年になる。ITバブルもあり、森首相が高らかにIT国家を宣言してから、日本のITやDXは先進国で最も遅れている。

役所に行っても印鑑や現金(を使い)、自動化もなされておらず、相当遅れている。これをデジタル化していかないと、人口が減るのは移民でも受け入れない限りどうしようもないので、日本の将来は人口の問題ではないと見る。

1人当たり生産性が低いことは、紙媒体をまだ使っていることが大きな問題だ。今回のコロナ禍で得た教訓としては、リモートワーク(が可能であること)や、会議もZoomなどで行えば距離は縮められ、家にいても仕事はできる。そうなると、一般家庭にいる高学歴の主婦が IT分野に参入でき、家でアルバイトもできる。今の政府もデジタル田園都市構想など、そのような方針であり、地方自治体も含めて、当社は小ながらも、そのような支援を行い、日本の国力をデジタルで高める一助になっていきたい。

当社の知名度を高めることで、広範囲で未熟なIT・デジタル志向の学生、既卒の人、就業している人を再度結集し、ブラッシュアップしたい。資本も多少集まってきたので、教育(に取り組む)。日本はIT・DX教育が学校教育から遅れているので、根本的に変えていくことに多少とも役に立てる会社になりたい。そのようなことを目指すために上場してスタートラインに立った。今後は際限なくデジタル人材を増やしたい。

―即戦力の中途採用に非常に強みがあるとのことだが、AI人材に求めるものは何か
AI人材は幅広く、ハイエンドの人材から、Pythonという言語を使ったプログラマーに少し毛の生えたような人材まで、そのランクは非常に多岐にわたる。当初はレベルの高い人を採用していたが、世の中の獲得競争が激しく他社に移ったこともあった。

従って、将来的に全ての業務は AIに連動していくことは間違いない事実なので、低レベルのAI技術者を中程度(の技術者)に大量に育成する手法で世のなかに貢献していきたい。

―関連して、AI人材の育成方針はどのようなものか
1つは、AIを必要とする顧客に送り込んで、OJTで勉強させてもらう。それから、もう1つは、社内e-learningによってPythonの言語習得から始まり、様々なシミュレーションをこなす。

AIの究極的な到達点は、ビッグデータを習得するなかで最適の問題解決を図ることだ。将棋や囲碁のソフトもそうだが、ビッグデータを学習させて最適課題を抽出する高度な能力が必要になる。当社はディープラーニング協会にも加入し、東京大学の松尾研究所ともつながっており、今後、資金が豊かになればもう少し高度なものに傾斜していきたい。

―先端技術分野で細分化して開示している売り上げに関して、AI分野が2021年から2022年にかけて減少しているようだが、背景は

AIについてはハイエンドの人材を採用して、その人が転職して減ったが、セールスフォース分野は飛躍的に伸びている。セールスフォースが得意な会社とタイアップして学習を進めている。クラウド分野も、インフラ技術者を転換して特訓中であり拡大傾向にある。この成果は来期に必ず出ると考えている。当社は11月決算なので来年と見てもらえれば良い。

―人材不足以外の日本のIT化の課題とは
紙媒体でやり過ぎなのではないか。紙を廃止することはパルプ業界に迷惑がかかるのであまり言えないが、インターネット革命から今のスマートフォン革命によって世界の産業構造は大きく変わった。日本はそれについていけていないのではないか。

思い切った政策の転換を図ってほしい。そのような業者を支援し、民の力をもう少し活用してもらいたい。つまり、業界の競争をしている場合ではなく、日本ではせっかくデジタル庁ができたので、一丸となってそういうところに結集し、いろいろなシステムを廃止することが大事だと思う。

紙を廃止する、スーパーもレジを廃止する。そうでもしないと中国に負けてしまうのではないか。廃止したからといって困ることはない。それから、河野太郎デジタル相もやろうとしているが、マイナンバーの使い方では、やろうと思えばパスポートを取ることなどもすぐできる。

―改めてこれからの成長戦略を教えてもらいたい
今のビジネスの可能な限りの拡大と、事務処理など将来AIなどで不要になるかもしれない職業について切り込んでいき、デジタル技術によって生産性を上げていく。

―7エリアで9つの事業所を展開しているが、今後の拡大は
フランチャイズもそうかもしれないが、以前はエリア拡大が業績の拡大につながっている面があった。コロナ禍によって、当社は8割程度が在宅勤務となっている。本社や拠点を一等地に構えてどうだということが生産性につながるのか(と問いたい)。

福岡の人も東京の人の仕事ができるし逆も言える。これからの支店展開が(業績の)拡大につながるかどうかは検討しなければならない。その地方独特の特色のある技術の追求であればいいが、全国一律的なことなら仕事を持ってくれば場所を選ばない。ただ、地元採用をする観点では、(支店展開は)有用なので、否定も肯定もできない。従来のフランチャイズの方法が売り上げを決める発想もコロナ禍でずいぶん変わってきた。

ただ、海外などへ業容が拡大していけば、日本だけではまずいので、そういったことも想定している。

―現時点で海外は
さっきまで時価総額40億円だった小さな会社なので、海外進出やM&Aを行うというのはちょっと意味がない。

―それよりもまずは日本のデジタル人材を(育てるのか)
(時価総額を)200~300億円ぐらいにしないと難しい。そちらのほうを攻めたい。

―株主還元の方針は
企業というものは、主に顧客と社員、株主などステークホルダーの支援を得て株価が上がっている。

今はグロース市場だが、DX人材を強化することによって、将来はプレミア市場に行きたい。規模をより拡大したい。やはり株主に還元して報いるためには配当を厚くする。利益を独り占めせず投資家を大切にしたい。未上場の頃から納税を非常に大事にしており、地方自治体や国の財政に少しでも寄与したい。社会貢献が企業の使命だと考えている。

そのような意味で、顧客の支援、従業員の向上、株主に応える。業績を良くすることで株価を上げていくことが上場した(会社の)人間の使命だ。

―停滞している時には自社株買いを行う企業もあるが、そのようなことも検討しているのか
自社株買いやM&Aを含めいろいろな手法が、その時によって株価を支えるという意味がある。当面は単純に利益を拡大させることで、確実に投資家に株を買ってもらえる。やはり業績だと思う。業績(への期待)を裏切ることは投資家を失望させるので、万全を期したい。

―ROE目標の今後の見通しについて
松島亮太専務:今まで特に目標としてはないが、今期は15%以上なので、一般的に8%以上であれば優良であると言われているなかで、かなり良い数字を出してきた。今の計画では20%程度を目標に進めていくことになるのではないか。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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