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上場会見:クラシコム<7110>の青木代表、コンテンツで顧客づくり

5日、クラシコムが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1420円を7.04%上回る1520円を付け、1760円で引けた。ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営する。北欧ヴィンテージ食器に始まり、北欧雑貨や一般雑貨、オリジナルブランドである「KURASHI&Trips PUBLISHING」のアパレル・雑貨をD2Cで販売。ナショナルクライアントのブランディング支援も手掛ける。ロイヤリティを高める読み物や動画などのコンテンツを内製し、サイトやSNSなど複数のチャネルを通じて届ける。青木耕平代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

青木耕平代表と佐藤友子取締役
青木耕平代表と佐藤友子取締役

■フェアバリューを探す
―初値が公開価格を上回ったが、受け止めは
我々と同じようなビジネスモデルの会社が既にたくさん上場していれば、どのぐらいのバリュエーションが、我々にとってフェアであるのか見付けやすかったのではないか。ただ、そのような会社が世界を見回してもなかなかない。どのぐらいが適正であるのか、フェアだと思ってもらえるプライスをどう付けるかが、今回の上場で最も心を砕いたポイントだった。

幹事証券やいろいろな人と議論するなかで公開価格が決まり、それを上回る初値が付き、20%程度の上昇で終値も付いている。当初想定していたベストなシナリオ、上に行き過ぎるでもなく、下に行くわけでもなく、最適なレベルで着地した。我々がぱっと決めるのが難しかったフェアバリューを、試行錯誤し時間をかけて付けたことが、一定程度評価してもらえた。嬉しいというよりはほっとしたのが率直なところだ。

―このタイミングに上場したのは
準備してきたらここが上場できるポイントだった。マーケットが良くない状況になったことは、我々にとってもある意味で不幸なことだったが、この時点でどのぐらいのバリュエーションになるかよりも、我々が上場した後も健やかに事業を発展させていける環境づくりが重要だと考えていた。

むしろ、投資家の期待値が極限まで下がっている時に上場して、マーケットの回復とともに投資家と一緒に、果実を分け合っていけるタイミングで上場するのは、長い目で見たらそれほど悪いことではない。

想定していたストーリーからは大きく変更を余儀なくされた部分はある。ただ、上場の目的として高いバリュエーションは必須だったわけではない。いい部分ばかりではないが、結果的にはすごく良い形でできるタイミングだったと振り返っている。

■成長するニッチ市場
―世界観について、「フィットする暮らし、つくろう」というのは2007年からとのことだが、「ウェル・ビーイング」や「自分らしく」というものが、この 5~6年で言われるようになった。当時から、その流れが来ると思うポイントはあったのか
その当時、何で会社を作ったかといえば、当時の社会のなかに自分たちがフィットする居場所を、多分見つけられていなかった。自分たちも「フィットした暮らし」をしたかったし、「フィットした暮らし」をしたい人のために何をしたらいいか分かるようになった。

ただ、フィットしている人で「別にフィットとかどうでもいい」という人の要求には応えられる自信がなかったので、自分たちみたいな誰かのために事業をやろうとした時に、「フィットする暮らし、つくろう」というのは自分たちとしてはやりがいがあるテーマだった。

一方で、SNSやCGM(Consumer Generated Media)が発達する過程で、アルゴリズムでコンテンツに遭遇することで、多くの人がそれまで会ったことがなかったが、「自分がこういうものが好きだったんだ」と気付ける世の中になった。

自分の好みがあまりよく分からないマスの人と、今までは好みがはっきり分かっている人たちのことを「ニッチ」としてきた。マスのほうがまだ大きいかもしれないが、好みが分かる人たちの方が相対的に増えて、ニッチが成長市場になっている。(そのような状態が)十数年後にやってきて、結果論として(それが当時)感じていることだった。

―どこかで飛躍する点があったわけではなく…
やはりSNSとスマホの普及がすごく大きなポイントで、ちょうどその頃に、たまたまメディアに舵を切ったことが、完全に運だが、2012~2014年ぐらいの3年間ぐらいでスマホが一気に増え、SNSを使う人も著しく増えて、コンテンツとの出会い方が能動的に検索して探すだけでなく、アルゴリズムでどんどん当てられるようになった恩恵を確実に受けた。

―これまでクラシコムを知らなかった一般投資家にとっては、北欧雑貨のイメージが最初に来るだろうが、「北欧、暮らしの道具店」のネーミングを大事にしてきた理由は
北欧のヴィンテージ食器の専門店として事業を始めたので、その時には名が体を表していた。

ヴィンテージの北欧食器を使っている人は、ヴィンテージの物だけで暮らしているわけではない。それでは現在の北欧の物も一緒に届よう。あるいは、北欧の物が好きな人は、北欧の物だけで暮らしているわけではない。キッチン雑貨を使ってる人は、キッチン雑貨だけを買っているわけではなく、洋服やコスメを買う。目の前にいる顧客の他の必要に応えるうちに、「ここ、何してる場所なの?」と思われるような場所になっているのは、我々も自覚している。

ただ、共同創業者の佐藤友子取締役と一緒に、初めてスウェーデンに行った時に、もちろん我々は表層的にしか見ていないので、本質を捉えているとは思わないが、その時に感じた北欧のライフスタイルや仕事の仕方、社会の在り方に感銘した気持ちと、それを経営に活かしてきた事実は、今も何も変わっていない。北欧のメーカーの商品は、割合は少なくなっているものの、「その名前を使っちゃだめだよ」と言われない限りは、これを使わせてほしい。どうしてもだめならその時に考えなければならない。

北欧に行った時に、スウェーデン人の友達の家に泊まったが、彼が僕にお茶を淹れてくれた。その時に、ヴィンテージの北欧の食器に、南部鉄器の茶瓶で、中国茶を淹れてくれた。つまり、スウェーデン人もスウェーデンの物だけで暮らしているだけではなく、彼らのセンスで非常にチャーミングにいろいろな国の物を合わせ、それでもすごくスウェーデン人らしいなと思った経験があった。

彼がもし日本に来て生活する時に、北欧の物だけで暮らすのか。きっと、日本にある物を彼らのなかにある感性でチャーミングに解釈して、素敵な暮らしをするのではないか。そう思ったことも、この名前のなかで多様な活動をする1つの動機付けになっている。

■レビューとランキングはない
― 「北欧、暮らしの道具店」のECサイトに、商品に関する口コミ(コメント)の機能がないが、その狙いは
コメント欄とは多分レビュー機能のことで、我々のサイトには、(他のサイトには)よくあるのに明確にないものが 2 つある。1つはいわゆるレビュー機能。もう1つはランキング機能だ。これは「フィットする暮らし、つくろう」というミッションに非常に深く変わっている。「フィットする暮らし」を作るというのは、「自分が自分の目から見て、自分らしいかどうかを判断軸に、自分の人生を作ってほしい」というメッセージだ。

その時に、ほかの人がこの商品をどう思ったとか、あるいはほかの人がどのぐらい買っているのかというランキングは、現状としてはノイズになるのではないか。もちろんそのような機能があったほうが便利だという顧客が、一定程度存在するだろうが、ほかの人がどう思うかよりも、自分自身が、(物に)出会ってどう感じるのか、受け入れられるのか必要ないのかというように、物やコンテンツと出会ってほしいので、敢えて付けていない。

―性別でセグメントを分けていないようだが、そのメリットは何か
性別でセグメントしないというよりは、デモグラフィック(人口統計学的属性)な基準でセグメントしない。つまり、性別や年齢ではなく、その人の価値観や思想、美意識で、同じような価値観や好みを持つ人であれば、どのような人でも共感できるようなものであってほしい。

このことによって、ビジネス上のメリットとして実際に何が起きるかというと、やはりライフイベントなどで、顧客が卒業しない。結果的にLTV(Life Time Value)が非常に長くなる。特に今は、顧客を30代、40代、50代以上の3つぐらいに分けると、大体同じぐらいの顧客がいて、非常に幅広い年齢層に支持されている。

実際には、買い物をしてもらっている大半の顧客は女性という状況だが、継続的な認知度調査などをしていると、徐々に男性の、特に20~30代の認知度が上がってきている。昨年頃に、ユニセックスのアパレルブランドを展開している。ミッションあるいは、我々が表現する世界観が好きで、共感できる人に広く利用してもらいたいので、何か狙いがあってとか、ビジネス上の損得でというよりは、そのような人たちの役に立ちたいという気持ちでやっているのが率直なところだ。

―顧客層に女性が多く、広げられる可能性があるようだが、具体的なコンテンツや商品で、届く人の幅を広げていくためにどのようなことをしたいか
今、性別をすごく広げていかなければならないかといえば、男性から求められている感覚がない。求められていたらもっと進めていくが、今のところ、ユニセックスのアパレルブランドを運営するなかで、そこまで強く求められる感覚がないので、本気を出すフェーズではない。

一方で、50 代以上の人が増えていることは肌で感じるリアクションがある。例えば、アパレルのオリジナルブランドを作るなかで、30代ぐらいの人と60代ぐらいの人をダブルモデルで使い、そのような人も見え(視野に入れ)ていて、「どうせ30~40代の人しか見ていないでしょ」と見られるよりは、むしろ60~70代ぐらいの顧客にも喜んでもらいたいと考えて活動していることを分かってもらいたい。

ただ、我々側から、「あなたもどうですか!」という形で広げるよりも、最近男性が来ているが、何か買いたいのに買えるものがないということが起きているのであれば、「待ってました!」という感じでやらせてもらう。

事業の世界観として、温泉を中心としたリゾートパークのようなものを展開したいと話す青木代表
事業の世界観として、温泉を中心としたリゾートパークのようなものを展開したいと話す青木代表

■クリエイターを育てる
―より魅力的なカルチャーアセット作りや、質の高い顧客に喜んでもらえるコンテンツを継続的に届けるために、クリエイティブも1つの大事な要素になるが、事業におけるクリエイティブの立ち位置や、今後の取り組みがあれば聞きたい
クリエイティブは、我々の事業のパワーの源泉で、最も重要なポイントだ。特に、クリエイティブの大半を内製しているところに大きな強みがある。経験者を抱えて実現するのではなく、ポテンシャル採用で教育して、クリエイターを育ててコンテンツを作っている。引き続き、この体制や価値観、認識に共感できるポテンシャル人材を集めて、ノウハウを投入し、我々の世界観を支えるクリエイターに育てるプロセスをより強化したい。

コンテンツでは、これまで映画やドラマ、アニメーション、音楽などいろいろなパッケージのコンテンツを作ってきた。代表的なコンテンツパッケージで、全く触ったことがないものはほとんどなくなってきている。

作ったことがないものは、ゲームぐらいだ。作るかどうかは分からないが、「まさか作るとは思わなかった」というものを、顧客が喜ぶものにして届けることで成長してきた会社ではある。作ってみたら確かに今の顧客に喜ばれるものを、良い意味での驚きを持って受け取られるコンテンツを模索したい。水面下でいろいろ考えている。

―コンテンツには初期投資が必要で、リターンがあるか分からないギャンプル的なところがあるが、取り組む際の指針はあるのか
コンテンツにギャンプル性があるとはあまり思っていない。顧客創造プロセスのなかに埋め込むが、コンテンツを代替するものは広告で、広告費の方がよほど割高だと思う。例えば、 2000万円ぐらいの広告でできることと、年収500万円ぐらいの人が4人でできる価値では、後者で全然違うことができると創業の頃に切実に感じた。

(コンテンツ作りを)外注でやっていこうとするとギャンブルになってしまう。時間はかかるが、人材をしっかりと育てると、単純に比較して人件費のほうが、構造上圧倒的に割安になるはずなので、ギャンブルとは見ていない。

―いろいろなチャネルがあるが、流行っているものは…
全部押さえにいく。何も起きないものもある。向いてるものも向いていないものもあるが、「これは自分たちに向かない」とか「これはやらなくていいよね」と決めつけずに、何でも小さく触ってみて、そこからのシグナルで、やるものと何も起きないものを判断する。恐らく、これからも今やってないチャネルやコンテンツの種類も、小さく、ギャンブルにならないように、「どうせ失敗するよね」というぐらいで試してみて、「失敗すると思ってたら、ちょっと良かったじゃん」ということを繰り返して徐々に大きくして育てるのがよいのではないか。

―事業の強みの源泉としてLTVの高さがあるとのことだが、新規顧客からリピーターになる転換率はどの程度か。この数年の推移は。それを伸長させる方針は
転換率は開示していないので、直接的に答えることは難しい。既に目論見書で開示した情報では、3年LTV(3年間の平均収益)は1年LTV(1年間の平均収益)の大体倍ぐらいになる。これは、獲得した顧客が3年間継続的に買い物を続けることで起きることだ。年数を重ねても平均が伸長し続ける状況を確認できている。かなり長い機会にわたって、顧客が買い物を続けている。

なぜそれができているかというポイントの1つは、普通のECやD2Cの事業者では、(消費者は)商品に興味があるか、買い物をする予定がない限り、サービスに触れてもらうのが非常に難しい。CRM(Customer Relationship Management)のような形でアプローチする時に言えることは、「クーポンあげます」というように「お得です」か「新商品あります」しかない。

我々の場合、顧客は元々コンテンツに触れるために我々と接点を持ってくれているので、商品として欲しい物や買い物の予定がない場合でも、サイトやアプリ、SNSに触れてくれる。一義的に買い物をする予定がない、自分に向いた商品がないと思う間にも関係が切れない。それが我々のLTVを伸長させ続けていく大きな源泉になっている。

―買い物以外でも顧客との接触があるとのことだが、月にどのぐらい接触があり、それはほかと比べてすごく多いのか。買い物以外も含めてどの程度のインターアクションがあるのか
インターアクションのほかとの比較で定量的な数字を示すのは難しいが、一方で、エンゲージメントアカウントと呼ぶ、我々からコンテンツを届けることが可能なアカウントは、足元では500万を超えている。アプリだけでも200万ほど、Instagramだけでも百数十万ある状況だ。

インスタだけ、あるいはLINEだけというところはあるだろうが、代表的なコンテンツ・デリバリーチャネルのほぼ全てで、日本でもトップクラスのアカウントを保有しているのは、同業者でもなかなかいない。当然のこととしてインターアクションの頻度や質は高まると想像できるのではないか。

■ブランドソリューションの価値
―持続的成長の土台にする点に上場の目的があるそうだが、戦略として、「複利と蓄積のパワーが使える分野にフォーカスする」とは、もう少し噛み砕くとどのようなことか
基本的には、やればやるほど仕事の効率が上がるような分野にフォーカスして事業を行うということだ。

ブランドソリューション事業、いわゆるクリエイティブビジネスをただ闇雲に増やしていかないというのは、蓄積と複利というよりは、今のところ、単純に人数を増やして横に広げていく方法しか考えにくい部分がある。そこは我々が大きく踏み込んでいく分野にはなっていない。

一方で、いわゆるD2C的なものであれば、1つの商品ページで100(個の物を)売るのも1000売るのも、1万売るのも、そこまで工数的な差が大きくないとなると、顧客とのエンゲージメントを増やせば増やすほど蓄積と複利が効いていくタイプのビジネスだと考える。今後手掛けるビジネスとして、その要素があるか否かは参入するかどうか判断する1つの基準となる。ただ、蓄積と複利がないとやらないかというとそうではない。そうでないものにも明確な役割を持たせられることもあるので、そういったものに関しては価値とプレゼンスを高めながら、運営することはあり得る。

―ブランドソリューション事業の構成比はこのままなのか、増えるのか。増やすことで顧客の離反リスクはないのか
いわゆるブランドソリューションビジネスは、ピュアなクリエイティブビジネスだ。小売りを中心にしたD2Cビジネスとは、そのスケーラビリティー(拡張可能性)に仕組み上の大きな差がある。

収益規模や収益性はもちろん大事だが、特にブランドソリューションでは、国内のナショナルクライアントとの間のアカウントを持てることが非常に有利な点になる。例えば、某食品会社と一緒に、その会社の商品パッケージをコラボで作っているが、そうすると日本中のスーパーに我々とコラボした食品であることを謳ったものが並ぶ。これは収益性以上の価値がある。

最近では、サントリーの、映画をコラージュしたようなCMのなかに、我々が制作した「青葉家のテーブル」が、対価を受け取って採用してもらったことがあったが、そのようなことが、ブランドソリューションビジネスの収益だけには表れない非常に大きい価値だ。実際には収益の割合として見たときに小さくみえるものが、当社のブランドを支える重要なチャネルの1つになる。質が高く、求められるプロダクトであることが重要で、大きくすることで質が下がるのであれば、それほど大きくならなくとも良い。

大きくしたら離反が起きるかどうかは、我々のコンテンツのなかから、スポンサードのものを、タグを見ないで探すのは非常に難しい。スポンサードのタグが付いているが、ざっと見てどこに広告が出ているのかとよく聞かれる。数年前ぐらいにネイティブ広告という言葉があったが、これがネイティブだろうというぐらいに自然な、場合によっては通常のコンテンツ以上に工数をかけて顧客に喜んでもらえるものにしている自負もある。全部が広告になるような場合には違うかもしれないが、今の数倍ぐらいの規模であれば増えたことにさえ気づく人がいないのではないか。

■海外とリアルは
―今後、越境ECで海外にチャネルを求めていく可能性はあるか。また、実店舗での販売の可能性は
我々は、「これはやらない」と決めている事はない。「何でもやってみたら分かるでしょ」という、「顧客に求められてるから何でもしたいでしょ」というところがあるので、例えば、海外の顧客に求められるとか、実店舗が求められるチャネルであると分かる機会があれば、社内のリソースなどとの兼ね合いにはなるが、可能性としてはある。

一方で、求められてもいないのに、自社の都合で海外もやりたい、リアルもやりたいとは思わない。例えば、今、ドラマに注力しているが、ほぼ全ての代表的なドラマは中国語や韓国語の字幕が入るなど多言語化している。映画は台湾や韓国などで配信が始まり、海外で見られるようになっている。

以前、海外に視察に行った時に、コンテンツが先に流行る所が出てきたら、その国には行ってみたいと思った。ドラマがある国でたまたま大ヒットするようなことが偶然起きて、「ドラマを作ったのは僕たちなんですよ」という感じで出ていけたら素敵だと思う。リアルに関してはいずれ、顧客にとって一度はここに行きたいという聖地のような場所を、作って差し上げたい。

そういう場所を作った時に、顧客のリアクションが非常に良ければ、「1ヵ所だけではなく」と考えることは、きっとあるだろう。我々の戦略上やりたいというよりは、顧客が求めることであれば、ぜひ喜ばせてあげたい。

■資本効率を高める
―直近のROAの25.5%だが、ROEに関しては、今後どのような水準を見るのか
明確なターゲットを持つわけではないが、我々の強みの1つは、資本効率が非常に高いことだ。それを支えている1番の理由が在庫のコントロールにある。在庫回転率が非常に高いが、売り上げが増えても在庫がそれほど増えないことが、資本効率を高める。

逆に、在庫以外に、いわゆるフィジカルの資産をそれほど持たなければならない事業ではなく、今回、自己資本が増強されたことで、上場前のROEに比べれば低くなると見る。ROEを高くするというよりは、効率的に収益を上げられる体質を、いかに維持・向上していくかが、我々の最も重要な命題の1つとなる。

成長や利益率よりも資本効率が、我々にとって最も重要な、自分たちのコンディションを示す数字だと捉えている。その意味では、具体的なターゲットを設けてるわけではないが、極めて重要視している観点と理解してもらいたい。

―株主還元の方針は
今は、割と良く成長できているフェーズだと思う。どんな事業も、成長著しい時もあれば、停滞する時期もある。成長している時期には、それが株価に反映されることで投資家に経済的なリターンを得てもらいたい。

一方で、我々は高収益でキャッシュリッチだという特性があるので、停滞している時期には、利益として得られた果実を株主とフェアに分け合いたい。そのことで、オーガニックに成長できる機会を、一緒にしっかりと待ってもらい、停滞している時期には、しっかりと配当や自社株買いで還元する。無理な短期の成長を急がされるよりも、次のオーガニックな成長軌道を一緒に探そうと株主に言えるようなスタンスで、株主還元にしっかりと向き合いたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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