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上場会見:レジル【176A】の丹治社長、“仕組み”で広げるプラットフォーム

レジルが24日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の1200円を0.42%上回る1205円を付け、1140円で引けた。主軸の「マンション一括受電サービス」では、割安な高圧電力を調達して、自前の受変電設備で一般家庭向け低圧電力に変換して供給する。約2200棟が導入しており、解約はこの20年で1棟のみ。蓄電池や太陽光発電、EV充電器などで非常時の電力供給を可能とする「マンション防災サービス」に注力する。将来的に「分散型エネルギープラットフォーム」の構築を目指す。丹治保積社長が東京証券取引所で大引け前に上場会見を行った。

プラットフォーム構築に必要な要素技術は、実績あるベンチャーとのアライアンスで迅速に開発する。会見後に丹治社長は、提携・協業できる会社があれば山本CFOまで連絡してもらえると非常に嬉しいと話した。

―初値と、今、株価が少し下がっているようだが、その評価は
引き続き頑張らなければならない。メディアや当社のIR、広報担当の力を借りて、我々がどれだけ意義深い仕事をしているのか世のなかに広く知らせていく必要があると感じた。内々で「利益が出ている、意義深いことをしている」と騒いでいるだけでは駄目だと反省している。

山本直隆CFO:午前中に無事初値が付いた。株価は、気持ち的にはあと一息だが、我々が考えている真の価値が理解されるよう今後も情報を発信していきたい。

―投資家からの期待という意味では、どう感じているのか
丹治社長:ロードショーでは機関投資家から、特に海外から高い評価を受けており、彼らの期待にしっかり応えていきたい。

―手取金を全て「マンション防災サービス」に使うが、上場の最たる目的は資金調達なのか。人材確保や営業拡大のために上場するところも多いが
社会からの信用性(の確保)が非常に大きい。資金もとても重要だが、大手の会社や自治体からも電気を買ってもらっているので、上場している会社としての信頼性を必要としていた。

あとは人だ。デジタル人材をどう確保しようかという時に、上場企業のほうが確保しやすいので上場を選んだ。そのため、今回は9億円程度しか資金を調達していない。

―「マンション一括受電サービス」は、全国のマンションの1割程度で利用され、そのなかでレジルのシェアは2割だが、市場をどう広げ、そのなかでシェアをどう高めるのか
2つのアプローチがある。“既築”と言われる既に建っているマンションに対してアプローチをしているのが、今のところ主力だ。新築に関してはまだ手掛けていない。

既築マンションに関しては、最近はリプレースが多くなっている。既に一括受電になっているマンションで、電力価格の高騰によって収益を確保できなくなっており、(一括受電サービスを手掛ける)企業が我々に譲渡する。マンション側から、「もう割引がなくなってしまうので助けてくれないか」ということで(引き継ぐこともある)。リプレースの割合は27%程度、20数万世帯ある。それをしっかりしていく。

もう1つは、新築マンションからの需要がある。新築マンションの部材の価格が高騰しているので、新築のデベロッパーから、「マンション防災サービスを最初から入れてくれないか」という話がある。蓄電池や太陽光発電設備の部材代は我々が支出し、デベロッパーには負担がない。しかも、マンション防災サービスを導入すると、マンション全体で脱炭素ができ、スコープ3(企業が間接的に排出する温室効果ガス)がゼロになる。デベロッパーからすると、資金と手間をかけずに自分たちが作ったマンションの脱炭素ができるので、いろいろな問い合わせを受けている最中だ。

―市場はオーガニックに広がっていくのか
分譲マンションは全国に690万世帯あり、そのうち一括受電が入っているのは70万世帯程度なので、市場規模としてはまだある。かつ、年に10万戸ずつ増えている。マンションが増え続けているので、オーガニックにも営業でき、リプレースもできる。新築にも出ていく。

―「マンション防災サービス」の顧客層の拡大について、DER(Distributed Energy Resources、分散型エネルギーリソース)のサービスをオフィスや工場に広げたいとのことだが、段階的に進めるのか
“着実”が会社のモットーになっており、まずはマンションのなかで、自分たちで仕組みを作る。それをオフィスや工場に広げたい。ただ、オフィスに関しては、既にある会社と実証実験のようなものを始めている。段階的にと言っても、いきなり切り替えるというよりは徐々に進めていく。

―工場では数年後になるイメージだろうが、レジルのビジネスがうまくいくと、他社が先に工場に導入する懸念もあるのでは
先に工場に蓄電池を置いている会社もあるが、制御しておらず、そうであれば「制御部分を(レジルに)やらせてもらえないか」ということがある。また、「設置も制御も自分たちがやる」としても、運用する人員がいないこともある。それならば「運用を我々がやる」というように、自分たちが独占するよりは、一緒に分散型エネルギープラットフォームの社会を広げる。皆がパートナーと考えている。

―再生可能エネルギーを中心とした電力小売サービスである「グリーンエネルギー事業」に関して、いわゆる新電力の業態だが、世のなかでは新電力が価格だけでは大手と戦えなくなってきている。生き残っていくために必要なことは
価格選好の会社もあるだろうが、日本には電力の切り替えができていない会社もたくさんある。企業によっては、市場連動型が良いのか固定型が良いのか、自分たちの状況が分からずに電力を切り替えてしまったところがある。顧客に合った電力使用の最適化を的確に提案できることが大事だろう。

あとは、電力を提供するだけではなく、それが再生可能エネルギーなのか、提供した電気を例えば、蓄電池などで制御することによって使用量のピークを下げられるか、様々な企業の裏側を聞かせてもらい、必要なソリューションを提供して事業を拡大したい。

―「マンション一括受電サービス」は2200棟が導入し、「グリーンエネルギー事業」では7500の企業・自治体と契約している。これらがどの程度の規模になると、「分散型エネルギープラットフォーム」といえるものになるのか
外部にまだ言えない情報なので、今のまま着実に増えていけば、数年後にはある程度のものはできると見ている。

―そういったプラットフォームを構築した後の話だが、電気の需要者と電力会社の間に立って需給バランスを調整する電力アグリゲーター各社との関係は、競合環境なども含めてどのようになるのか
アグリゲーターに我々が仕組みを提供していくのではないか。顧客を持っているアグリゲーターも、ソフトウェアしか持っていないところもいる。蓄電池を持っていないが仕組みだけを持っているところもある。

顧客もソフトウェアも持ちながら業務運用ができる会社がないので、ソフトウェアが足りないところにはソフトを、蓄電池の制御が足りないところには制御をという形で、我々の仕組みのうち必要なものを提供することで、アグリゲーターも広げていきたい。

―収益が非常に安定しているとのことだが、今後の課題と、それへの対応は
人ではないか。

―事業面ではどうか
安定しており件数も増え、今のところは事業面の不安はない。マンションの分散型エネルギー事業に関しても、既存や新築など新しい種はある。あとは人だ。事業の拡大に合わせて、デジタル人材の確保が肝になる。そこが一番怖いところだ。

会社として働き方を変え、制度を変更している。先日、パーソルキャリアが主導している「キャリアオーナーシップ経営AWARD 2024」のファイナリストに選出された。これから人の確保に関してはしっかり取り組んでいきたい。

―昨年の秋に始めた脱炭素サポートサービス「CNaaS(Carbon Neutral as a Service)」が、企業や地方公共団体に好評だそうだが、発表してからの引き合いについて聞きたい
大変好評で問い合わせがあり、成果に関してはどこかのタイミングで発表したい。

―成約しているものもあるのか
まだ公表していない。

―企業と自治体双方からの相談があるのか
どちらかといえば自治体向けのサービスなので、自治体と話をしている。具体的には市営・県営住宅の活用や、地域でどのように脱炭素をしていくかという相談を受けている状態だ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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