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上場会見:アルファパーチェス<7115>の多田CEO、MRO市場だけで1兆円

26日、アルファパーチェスが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の880円を1.25%下回る869円を付け、730円で引けた。アスクル<2678>の子会社で大企業向けに消耗品を販売するMRO(Maintenance Repair and Operations)事業が主力。オフィス備品から工具まで、およそ3000のサプライヤーの商品を扱い、品目は6000万を超える。商業施設の内外装や設備機器を一括で請け負うファシリティマネジメントサービスも提供する。多田雅之CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

ロングテールの商材の扱いを得意としており、部屋数の多いビジネスホテルなどもターゲットになると話す多田CEO
ロングテールの商材の扱いを得意としており、部屋数の多いビジネスホテルなどもターゲットになると話す多田CEO

―初値について
株価については、マーケットが決めることなので、初値と足元の価格に関しは真摯に受け止めたい。まずは役職員一丸となって業務を推進し、企業価値を上げることに、とにかく邁進する。そうすることによって、後々、投資家や株主に評価される価値が付いてくれば良い。

―市況が悪いが、IPOの延期は検討したのか
していない。

―この時期に上場した理由は
事業環境が追い風になってきている。この数年の間に、アップデートも含めてERP(Enterprise Resource Planning=企業資源計画)システムを入れ替え、合わせて購買システムを入れ替える会社が多く、当社にとってはビジネスチャンスだった。だが、今までは知名度がないゆえに、呼ばれなかったこともある。ここから数年間は、購買システムが大きく変わってくるところも多いので、知名度を上げて成長を加速させるために、この時期にした。

–今後アスクルやZホールディングス<4689>との関係はどうなるのか
アスクルとの関係は、連結親会社の立場を当面維持する。持ち株比率は下がってくるが
関係は一緒だ。ただ、我々は上場企業として独立性を有することは必須なので、アスクルから来ている取締役は1人だけで、ほかに出向もない。

ZHDとの関係は、連結でいろいろな数字に関しては、当然やり取りするが、それ以上の関係は特段ない。主にアスクルとの間での連結親子関係にとどまる。

―事業間シナジーはあるのか
中小企業向けの再販というのがある。我々の直接のビジネスは大企業向けだ。ところが、そこで揃えた商材もあり、大企業であっても中小企業でも使う。その(総売上高に占める)18%の部分は、アスクルの特約店網(流通ネットワーク)を使って販売している。アスクルの特約店経由で販売することでシナジー効果が出ている。

さらに、我々の購入金額のうち6%ほどで、アスクルからオフィス用品を買っており、それを外に向けて我々が販売することで相互にシナジー効果がある。

―各事業の競合と市場環境を教えてもらいたい。
我々のソリューションは、世のなかでは、例えば、内部統制の強化や生産性の改善、働き方改革に寄与する。市場環境としては非常に追い風だ。我々は、プライム上場企業並みの企業をターゲットにしている。それを全部足すと、MROだけでも需要は1兆円ほどあるだろうと見ている。需要が飽和状況であると想定する状況ではない。

今まではそういった領域は、企業に出入りしている工具商や金物屋がカバーしていた。昨今は情報セキュリティや、さらに言うとコロナ禍もあり、彼らが入り込めない。代わりに我々のようなところに発注しているので、マーケット環境としてほかと競合して非常に厳しいということはあまりない。

例えば、MonotaRO<3054>やアスクルなども(比較対象になることが)ある。そういった企業は、大企業にも出ているが、基本的に中小や中堅企業をカバーするケースが多い。我々とマーケットでぶつかることはそう多くはない。我々が1兆円のマーケットのなかで、もちろん全部取ると言っているわけではないので、今はそこを心配する段階にはない。

また、我々は顧客の購買部の1機能、「プラスアルファの購買(部門)」として位置付けられている。似たような商材を扱うEコマースや通販の会社は、サプライヤー機能も持ち、立ち位置が違う。そこで競合するより、重要なパートナーと思っている。

―業界でのシェアは
どこを競合他社とするかは結構(議論が)ある。例えば、購買のシステムという意味では、大手のERP会社が提供しているシステムと競合することがある。そこと我々が(システムを)つないで、当社が実質的に動かしているケースもある。競合と言える部分もあるし、言えない部分もある。

サプライヤー機能に関しては、我々の扱う商材のなかには、Eコマースや通販をやっているような大手もある。そういったところは、むしろパートナーであるので、シェア割りをするのは難しい。

当社のビジネスモデルはかなるユニークで、この立ち位置で事業を展開している会社はあまりない。シェアという議論になると説明は難しい。

―購買システムであるAPMROの機能強化に調達資金を充て、欠落している情報のある商品も購入できるようになるとのことだが、これまでの機会損失はどの程度か
AmazonもMonotaROもそうだろうが、カタログ販売の宿命というか、例えば、価格や納期、ロット、仕様が決まっている物でないと買えない。

我々が間接材の購買をやっていると、そのような事項が曖昧なままで、オフラインで顧客とサプライヤーが直接交渉して決めるケースがままある。そういったところを我々のプラットフォーム上で、取り引きができるようにしていきたい。

どれぐらいの機会損失があるかは非常に答えにくいが、かなりの量に上るのは間違いない。少なくとも今よりも多いぐらいの量が流れている。ただ、それを我々が全部取り込めるかどうかは分からない。

―業績に上乗せされるのは時期的にいつ頃か
上場で得た調達資金を含めて、投資をしていこうと一部開始した状況なので、早くて2025年以降と考えている。

―足元のインフレの影響はどうか
サプライヤーもいろいろな値上げの話をしてくるが、我々は原則として転嫁をする方針を固めている。当たり前の話だが、サプライヤーが言ってきた値上げが適切なものなのか、タイミングとしてどうなのかを見据えて交渉し、我々がそうだと判断すれば顧客に説明して転嫁していく。

―物流コストの考え方は
売り上げに占める荷造り運賃の比率が1%ぐらいだ。一部例外を除いて、我々のサプライヤーから顧客に直送してもらう。そういう意味では、インフレが我々の物流費に何か大きな悪さを与えることはあまりない。当然ながらサプライヤーが負担しているので、その分いくらか値上げをしてくることはある。それも含めて合理的であればそれを認めたうえで顧客に相談していく。

―売上高が2019年まで横ばいで、それ以降伸びているが、その要因は
2019年~2020年に関しては、2020年に収益認識の会計原則を早期適用した。元々売り上げに計上していたものが、新しい会計原則を入れたことで40億円弱落ちている。見かけ上、2020年が伸びてないように見える。それを加味すると2020年はコロナ禍の真っ盛りだったが、補正するとそれでも2%ぐらい伸びている。順調に成長している。

―中長期的な業績目標はあるか。利益率があまり変わっていないのも気になる
潤沢な市場規模があるので、まずはトップラインを増やすことだろう。確かに、利益率が改善していないという指摘もある。まずトップラインを増やして、利益額を上げていく戦略を掲げたい。

マーケットが十分にあるなかで、これから売り上げをもっと上げていくと、当然のことながら、サプライヤーに対するバーゲニングパワーも増えていく。その段階から利益率を上げていくフェーズに入っても良い。

―かつて東南アジアなどに出ていたが、いつかのタイミングで海外に進出するのか
今まで、上海や、シンガポールとマレーシアは1セットで考えていたが、そこへ進出していたことはある。その時には、日本と同じようなビジネスモデルで挑戦したが、現地の購買環境やビジネスの環境でうまくいかなかった部分もあるので、一旦閉じた。

ただ、我々が対象とする大企業は海外にたくさん拠点を持ち、日本でグループ企業を展開した後は海外でやってほしいという要望もある。

今は大連に拠点がある。大連では日本と同じ形ではなく、主に情報を管理する形で顧客の手伝いをする。コロナ禍の影響もあって本格展開できないが、今はある顧客とそのようなことでビジネスを展開している。

―中長期的に見て、例えば、ローカルの現地企業を相手にする考えは
当座は、グループ単位全部でまとめて考えているので、日本の大企業が現地に持つ拠点に対して何らかのサービスを提供していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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