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上場会見:プログリット<9560>の岡田社長、“1段上の英語”を法人に拡大

29日、プログリットが東証グロースに上場した。初値は公開価格の730円を61.64%上回る1180円を付け、899円で引けた。英語コーチングサービス「PROGRIT(プログリット)」を手掛ける。「ビジネス英会話コース」など4つのコースを2~12ヵ月のプラン(43万5600円~220万円)のほか、サブスクリプション型でシャドーイングを添削するサービス「シャドテン」を提供する。岡田祥吾社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

コンサルタントは全て正社員で、恒常的なスキル向上のために就業時間の15~20%を研修に充て、高品質なサービスを提供すると話す岡田社長
コンサルタントは全て正社員で、恒常的なスキル向上のために就業時間の15~20%を研修に充て、高品質なサービスを提供すると話す岡田社長

―初値が公開価格を上回ったことの受け止めは
初値が公開価格を超えたので、投資家から一定の評価を得られ、嬉しく思っている。一方で、今後我々がしっかり成長していくことが、株主になってもらった人たちに対する責任でもあるので、身が引き締まる。さらに責任を感じている。

―4月にグロース市場ができて、上場前から意識したことと、この半年間準備を進めてきたうえで、グロース市場をどう見ているのか、マザーズからの変化について
マザーズからグロースになったことで私自身が会社として意識したことはない。ただ、マザーズであろうが、グロースであろうが、基本的には成長を求められる市場であり、しっかり成長していけるように事業基盤を整えた。グロースだからというわけではないが、上場企業として経営管理をしていくことは、上場準備でも実践してきたが、この半年社内で仕組みをしっかり整えた。

谷内亮太CFO:市場のシステムが変貌し、プライムに残っている会社がたくさんあり、「きちんと機能しているのか」という声もあるが、くら替え時の基準が新規上場を直接各市場に出すことと同様に扱われることになっているので、マザーズに入ってから1部に行くハードルに対して、グロースからスタンダードやプライムに上がっていくほうがハードルが上がった。先々を見通すと、次のスタンダートやプライムを見越して、内部管理体制を従前よりさらに厳しく、自分たちで律していく意識は高まった。

もう1点は、グロース市場になって、成長可能性資料の毎年の洗い替えを行うので、期待に対して進捗を毎年応えていく責任がより明確になった。成長ストーリーを社内で、メンバーを含めて意識していくように変わった。

―PROGRITを使うと必ず喋られるようになるのか。何らかの保証があるのか。どの水準の英語力がつくのか
岡田社長:システム上は、英語力が伸びる保証はしていない。しかしながら、30日間全額返金保証をしている。これは期待値の高いサービスであるPROGRITを始めてもらい、もし満足がいかない、「3ヵ月でそこまで伸びそうではない」と思った場合には無条件で全額返金する。顧客にはそれで納得してもらう。

スタートする英語力によるが、3ヵ月続けてもらうと、自分の英語力が明らかに1段上がった感じ、別の景色が見える。レベルが1段階上がるのが何となくのイメージだ。点数で言えば、Versantというスピーキング試験では、3ヵ月の受講で5.8 点伸びている。TOEICのコースでは、3ヵ月で150点伸びるので、6ヵ月で600点の人が 900点になる水準だ。

―2021年8月期の営業赤字の背景について
第5期目が営業利益マイナス4500万円で着地した。シンプルに言えば売り上げが下がってしまった。コストをなかなか削減できず赤字になった。売り上げに関しては、コロナが来て海外駐在がほとんどなくなった。出張も一時期はほとんどゼロになった。我々はビジネスパーソンの本気でやりたいというニーズに対してサービスを提供していたので、そのようなニーズが激減したことで新規流入者が減った。

当社はコンサルタントを全員正社員で採用しており、当時は全国に校舎が全国で12店舗あり、コスト構造的に固定費が重かった。それによって売り上げのへこみに対応し切れず赤字になってしまった。

―2022年8月期にかけての回復という点で、利益予想が2億9000万円となっており、この背景として、ほかの英会話教室を手掛ける企業がコロナ禍で苦戦するなか、体質を変えてきたという話があるが、どのようなことか
2点あり、1点目は、サブスクリプションサービスを成長させたことにある。新型コロナウイルス感染症が2020年3月頃に広がり始めて、その頃からコーチングが厳しくなることは読めていたので、その時に、シャドテンという名前にして一般公開した。サブスクへ投資をして成長させた。粗利率が高いサービスで、これを伸ばした。

2つ目にPROGRITのサービスを方向転換した。具体的には、以前は急成長を志向しており、コンサルタントをどんどん採用し、店舗も積極的に開設する形だった。コロナ禍が来て、今の方針としては、コンサルタントの数をニーズに合わせた適正な数で運営する。また、あまり必要ではない3校舎を閉校して、適正な数に戻した。これによってコストが下がり、利益が出る体質になった。

今はコロナ禍が来る前のタイミングよりも、相当に利益体質なビジネスをこの2年間で作ることができた。

―語学学習の国内マーケットの見通しは。今後も一定の底堅い需要があるのか
大人の英語学習マーケットという観点では、従来2100億円ぐらいの市場規模だったが、コロナ禍で英語需要が減退しマーケットが少し下がった。今はまだコロナ禍の影響があるが、今後海外との行き来がより活性化することで以前の水準に戻ると見ている。昨今の状況では、Web3(Web3.0)など国境が関係なくなってくる世界になる。Web3の業界では英語が基本で、日本人でも日本語でWeb 3に携わることは考えられないという話もよく聞く。そういった流れを受けて英語力を身につける需要はさらに上がってくるのではないか。

―PROGRITを法人研修で急拡大させていきたとのことだが、具体的にはどのような方法によるのか
我々のサービスは、まだ個人を主体としてサービスを提供している。法人では、やっていることはあまり変わらないが、企業の研修として会社がお金を払って社員がPROGRITを受けてもらうことになる。社内ですることは基本的には営業体制の強化で、人員の増強だ。上場で調達する資金もそうだが、法人営業部隊の人員増強に投資していく。

―シャドテンを個人から法人に販路を広げること、学校でというのは教材として使ってもらうということか
シャドテンは現状では99%が個人顧客なので、実現しているものではないが、いくつかの学校法人から問い合わせを受けているものの、今後どうなっていくか我々自身も分かっていない。シャドテンの月額利用料は2万円なので、普通の学校教材としてはさすがに高すぎる。私立中学・高校で希望する一部の生徒に対して提供することが現実的と思う。

具体的に進めているのは塾だ。塾では英語を教えているが、話しているとリスニング力に関して塾側が困っている。文法や長文の読み方は教えられるが、リスニングをどうやって教えたらいいかよく分からないということは結構ある。そこにシャドテンを使ってもらうことで話を進めている。

―今後の成長戦略の重要な軸としてM&Aを掲げているが、どのようなものか
今はPROGRITが主力サービスで、英語学習マーケットでは、最も高単価な部類になる。これはこれでしっかり伸ばしながら、もう少し単価が低く、顧客ターゲット層の広いサービスを手掛けていきたい。この第1弾がシャドテンで、今後はシャドテンのように自社で新たなサービスを出していき、ほかの企業が持つ素晴らしいサービスがあれば、仲間になってもらい、一緒に成長するのも1つの方向性だろう。

英語学習以外の領域に関しては、我々自身にノウハウがあるわけではない。当社のミッションに資する、シナジーがある企業があれば、新規事業としてM&Aで進出する可能性がある。

―先の話なので具体的なことは難しいかもしれないが、英語学習以外のサービスの具体的なイメージは
具体的にどのようなスキルか現時点では模索中だが、基本的には、PROGRITはコーチングという手法によって英語のスキルを身につける。学習の仕方を教えて、モチベーションや学習の管理をする方法なので、うまく活用することで英語以外のスキルで似たようなことができるのではないか。

確定ではなくおぼろげながら考えていることは、スキルだけではなくて、ビジネスパーソンが活躍するためのメンタルなども領域としてはあり得るのではというレベルだ。

―コーチングを核に何かを考えていくのか
その通りだ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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