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上場会見:GENOVA<9341>の平瀬社長、信頼できる情報と医療DX

23日、GENOVAが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1800円を2.22%下回る1760円を付け、1737円で引けた。医療メディアの「Medical DOC」を運営するメディカルプラットフォーム事業と、クリニック向け自動精算・再来受付機の「NOMOCa-Stand」や、自動会計の「NOMOCa-Regi」を販売するスマートクリニック事業などを手掛ける。平瀬智樹社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

平瀬社長は、医療情報提供のみならず、薬の配送や食事の管理、オンライン相談を通じた良い医師の探索などを提供して医療インフラを作っていきたいと話した。
平瀬社長は、医療情報提供のみならず、薬の配送や食事の管理、オンライン相談を通じた良い医師の探索などを提供して医療インフラを作っていきたいと話した。

―初値の評価は
日経平均が下がっているなかでスタートしたが、1800円の公開価格とほぼ同じような価格でスタートしたことは、評価してもらえていると受け止めている。

―足下の市況が悪いが、この時期に上場したのはなぜか
今年に入って市況が悪いが、我々の事業は伸びていて、上場することで社会的な信用を得られる。もう1つはスタッフの採用が重要になってくる。医療業界で事業を進めるうえでの信用獲得と、事業の成長期に新規に人材を採用したいと考え上場した。

―競合が多いと思うが、強みは何か。医療サイトのページビュー(PV)をどう集めているのか
医療情報を提供するサイトは、クリニックから料金を受け取って一般のユーザー向けに医療情報を提供している。我々の規模で運営しているところで、特にまだ大きいところはそれほどない。ただ、クリニックから料金を収受して、クリニックの情報だけを提供しているところはほかにもある。

(PVを獲得するには)信頼性の高い医療情報を提供する体制ができているかどうかが大事になる。我々は、会社を作ってから医師たちとずっと付き合ってきたので、1つひとつの記事に医師の監修を入れている。必ず監修したドクターの名前が書かれている。

信頼性のさらなる確保のため、契約している医療アドバイザーにもう1度チェックしてもらうダブルチェック体制を取る。信頼性の高い医療情報でアクセス数を確保してきた。

また、Yahoo!ニュースサイトを始めとして、SmartNewsや大手ニュースサイトと提携して、常に医療記事を配信している。そのような形でメディアの露出を増やし、アクセス数を高めてきた。

完全に同じサービスはなく、例えば、製薬会社からお金をもらって医療情報を提供している会社もあれば、我々のようにクリニックからお金をもらっている会社とは、種類が少し違う。

我々はクリニックの紹介をしているので、一般の人にとっては、自分にふさわしい医師を探せることが、ユーザーに対する特徴だ。

―スマートクリニック事業も競合が多いと思うが、強みは
世のなかには医療以外では自動受付精算機がたくさん設置されているが、医療機関では、院内のシステムや電子カルテ、レセプトコンピューター、そのほかのシステムと精算機が連動する必要がある。

我々は、院内のシステムをつなげることに、会社を設立してからずっと取り組んできた。院内のシステムを変えずに導入できることがクリニック側のメリットとして選ばれ、クリニックにたくさん導入してもらっている。

―スマートクリニック事業の対象はクリニックで、大手の病院などにサービスを提供する会社との棲み分けができているとのことだが、大手はカスタマイズで提供し、GENOVAの場合はパッケージを提供するのか
大きな病院では、システムは電子カルテとレセプトコンピューターだけではないので、専用に開発をする必要がある。

我々が提供するのは、その連携の部分と、設置する際の導入オペレーションの部分だけだ。1クリニックに平均1台を設置している。

ただ、(大手が)クリニックの領域に入ってこない理由としては、1クリニックに営業して1台しか提供できないので割に合わないのではないか。

―大きい病院向けに提供する大手企業はSIerか
自動受付精算機の会社がある。例えば、USEN-NEXT HOLDINGS<9418>のグループ会社のアルメックスが、大きな病院に導入している。大きな病院に導入されている自動受付精算機と、我々がクリニックで提供している精算機は大きさもだいぶ違う。

―メディカルプラットフォーム事業とスマートクリニック事業の売上高比率の今後は
2022年3月期は、メディカルプラットフォーム事業が60%、スマートクリニック事業が26%となっている。両事業とも成長していくが、中期で計画しているのは、メディカルプラットフォーム事業が50%近くになっていく。スマートクリニック事業が30%を超えて40%近くになる計画で準備している。

―そのための注力施策は
スマートクリニック事業の比率のほうが高くなる理由は、新しいサービスを多く準備しているためだ。医療現場のDX化は非常に遅れていて、来年のマイナンバーと保険証の一体化も含めて、今後進んでいくだろうと見ており、売上高比率が変わっていく計画を立てている。

―その領域での競合は
スマートクリニック事業では、5年前に自動受付精算機をスタートした時点で、展示会などに競合が1社もいなかった。コロナ禍になったときに自動受付精算機の問い合わせを非常に多く受けたが、年を追うごとにクリニック向けの自動受付精算機を扱う会社が徐々に現れてきた。

調べてみると、自動受付精算機を導入しているクリニックは3000院ほどだが、そのうちの1000院に我々が(導入を)進めている。クリニック側でも自動受付精算機が便利だということが、これから分かるのではないか。我々のようにクリニック専門をメインに事業を行う会社はない状況だ。

―両事業の売上高比率が変わるタイミングは
中期と言ったのは3年の計画の話で、今期と合わせて、来期、再来期に向けた計画では、年に数%の動きになるが、その程度の比率になってくる。

―中長期的な業績の目線は
全体的な計画に関しては、売上高が毎年30%の成長を見込む。営業利益率は、毎年2~3%改善しているが、中期的には30%に到達できる計画で進めている。

―診療所を対象に事業を展開しているが、今後、例えば、他社のように製薬企業を対象にした事業展開はあるのか。
我々のメディカルプラットフォーム事業の「Medical-DOC」という医療メディアで、薬の情報は扱っていない。普段、ライターとの協力で一般の人が分かりやすく記事を書いているが、ユーザーの声で、「薬の情報も欲しい」との声もあり、検討はしている。製薬会社と一緒になって薬の情報も提供できると思うが、まずは、薬以外の情報で進めている。

―株主にチームラボがいるがどのような関係か
元々、医療機関向けにホームページ制作事業を行っていた。チームラボの猪子寿之代表取締役と私の年齢が一緒で、会社をスタートする時に、Webインテグレーションの技術などをチームラボに教えてもらった経緯があった。CMS(Contents Management System)などを提供する際にいろいろと教えてもらい進めてきた。当社の設立時の取締役にも猪子代表に参画してもらい、教えを仰いだ。医療領域で、たびたびと一緒にサービスを作らせてもらう関係だ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]