29日、BlueMeme(ブルーミーム)が東証マザーズに上場した。初値は公開価格(2820円)を1.06%上回る2850円を付け、3330円で引けた。同社は、プログラミングを簡素化・自動化できる「ローコード技術」と、短期間で設計・開発・テストを繰り返し行う「アジャイル手法」を組み合わせた独自の方法で、コンサルティングから開発までの全工程を少人数かつ短期間で提供する。松岡真功社長が東京証券取引所で上場会見を行った。
―初値の受け止めは
市場の評価だと捉えている。今後は企業価値の向上に努めるとともに頑張っていくので応援をよろしくお願いしたい。
―上場の狙いや目的は
当社が行っているローコードとアジャイルだが、日本企業の競争力を上げるために必要で、まずは認知度の向上のために上場を目指した。また、当社グループの成長を考えた場合、優秀な人材の成長が急務であるので、人材の採用を目的に上場を目指した。
―プログラミングに人手が不要になると、2030年に79万人が不足するという見通しに対する処方箋になるのか
当社は人材不足にローコードを活用できると考えている。我々は自動化をメインにしており、今後ローコードの技術が発展すると、AIの技術が入ってきて人の作業が減ってくる。人の作業が減ることが人材不足の解決の1つのカギになると考えている。
―成長戦略として複雑なシステムや大規模なシステムに対応していくとのことだが、複雑・大規模なシステムは開発が大変ではないか
ローコードはシンプルなものに対してはあまり意味がない。シンプルなものは手作りで十分だ。我々の顧客のシステム開発は複雑で大きなものが多い。特に、ローコードを適用して効果が出る物は内容が複雑なものなどだ。ローコードにすると設計がシンプルになる。複雑・大規模な領域はローコードに適していると考えており、既存のビジネス領域はやや大規模な企業向けになっている。
小規模向けの開発は中小企業のほうに伸びていくが、中小企業は規模が小さくても独自の業務プロセスを持っており、システムが複雑だ。小規模であっても複雑な中小企業のシステムは、ローコードの特長からすると非常に価値がある。
中規模から大規模のシステムは複雑なサービスだが、ローコードの技術的な発展があるので、例えば、金融機関などに向けた金利計算はローコードには難しい面があるが、ソースコードが自動的に変わるものなどに対応できれば、複雑なシステム開発の領域に進むことができる。
―AI技術が入るとソースコードが変わるものにも対応できるイメージなのか
AIが入ることで、具体的にはその部分はまだイメージできないが、人の作業として残るのは業務の知識だ。プログラミングの知識は自動化していくので、「ソースコードを変えてはいけない」という業界のルールや、ビジネスモデルを設計できるアーキテクトがいればAIと連携していける。
―中小企業にまで広げるのか
現在は大手企業中心だが、中小企業に広げていく。
―中小企業向け開発を広げると、収益形態はどうなるのか
今の顧客基盤は大手企業が中心になっている。その理由は当社が販売するライセンスは、安くても年間700万円程度で、高くて3000~4000万円するので、5年間で3000万~数億円のライセンス料がかかるためだ。中小企業には当社のローコード開発ツールはやや重たい。
中小企業に関しては当社が保有するライセンス上でシステムを作り、それを月額利用してもらう形で展開する。既に5社ほどがトライアルしており、1~2人の開発者が数ヵ月間という短期間で開発して月額課金でサービスを提供するモデルを考えている。
―ソフトウェアを自社開発する計画はあるのか
自社開発はしているが販売していない。サービスを提供するうえで効率化のための自社開発ソフトウェアはある。ライセンスはしていない。ただ、販売しているOutSystemsのローコードツールの拡張モジュールやSDK、コネクターなどは当社が開発して販売している。既存の製品に組み合わせる部品として販売しているものはあり、今後も拡大していく。
―開発の前提に各社ごとのビジネスアーキテクチャを確定させるが、このプロセスで、企業がデータをどう取得するか定義できるため、ローコードやアジャイルでの開発だけでなく、データを可視化する基盤としても使えるのか
その通りだ。今、多くの企業がデータ基盤やデータ統合基盤の導入を検討しているが、どこにどんなデータがあるのか把握してない顧客が多い。その整理にビジネスアーキテクチャの定義が有効だ。この部分だけをコンサルティングサービスとして提供した実績もある。今後は上流工程だけを提供することも考えている。
―他社との提携はするのか
ビジネスアーキテクチャの定義手法やツールをオープンにして提供することを考えていて、数社のコンサルティング会社とパートナーシップの検討を始めている。
―海外展開は
現時点では未定だ。
―財務上のKPIは
市川玲CFO:まず、数字に関しては売上高しか掲げていない。財務になるとROEなどが挙げられるが、まずはトップラインの成長を第一に考えており、財務や資本政策のバランスから、最終的にどのようなKPIを立てて目指していくか改めて検討したい。
―調達資金の使途は
当社の成長の大きなカギが人材だ。ワンチームでシステム開発を提供するキーとなるのは、業務分析や要件定義を行う上流の人材だ。このような人材の育成と登用に資金の大部分を充てたい。
―株主還元は
剰余金配当と内部留保とのバランスを考えて行う方針だが、成長過程にあることを踏まえて、当期の配当を未定としているが、中長期的には配当を検討したい。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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