29日、Waqooが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(1920円)を23%上回る2362円を付け、2170円で引けた。同社は自社サイトでオリジナルブランドの「HADA NATURE(肌ナチュール)」シリーズを消費者に直接販売するD2C企業。サブスクリプションで販売するストック型ビジネスモデルで、「HADA NATUREクレンジング」が売上高の7割を占め、粗利率は8割を超える。井上裕基社長が東京証券取引所で上場会見を行った。
―初値の受け止めは
公募を上回る初値が付いたので、期待されていることに非常に感謝している。ただ、中長期で事業を成長させ、本質的な取り組みをしていくことこそが我々に求められている。目先の株価に一喜一憂することなく、少数株主に配慮しつつ情報を開示しながら、市場の判断に株価を委ねる方針だ。
―本質的とはどのようなことか
今は化粧品を販売している。顧客は化粧品を買っているので、その機能的な価値を満足してもらえるよう上げる。他社にない独自の商品価値を作り上げる。また、感情的な価値もある。「好き」や「かわいい」で多くの人々は購買行動に出る。特に化粧品のような嗜好性があるものはそういった傾向が強い。顧客が心地よく商品を購入し、当社のブランドのファンになってもらえるよう中長期で取り組む。機能的・感情的な価値を中長期の目線で上げることが本質的な価値の向上につながる。
―このタイミングでの上場に至った考えと、コロナ禍の影響を知りたい
この数年間、上場準備をしてきた。そのなかでガバナンスを含めてパブリックカンパニーになるのにふさわしいレベルに整い、売り上げも安定してきたことから世に出しても恥ずかしくないところに来たと感じたタイミングで承認が下りたので上場した。
コロナ禍の影響に関してはECやインターネット業界全体が追い風を受けており、ドラッグストアも売り上げが伸びている。我々が今後店舗での販売に注力していくうえでは、プラスになっていくのではないか。
―女性がメインターゲットと思われるが、男性向けにも商品を増やすのか
現在、F2層(35~49歳の女性)をメインに事業を展開している。我々の成長戦略の1つにはターゲットの水平展開があり、M1層(20~34歳の男性)やM2層(35~49歳の男性)もターゲットにしたい。この時にそれぞれ層に応じた商品を企画・販売するのが一般的だが、我々の特長として、同じ商品を、コミュニケーションを変えるだけで男性にも女性にも販売できている。例えば、炭酸のシャンプーは男女とも買い、洗顔も同様だ。インターネット特有のコミュニケーションや見せ方を変えることで同じ商品を販売できる。これをますます伸ばしていきたい。
―データを活用してマーケティングを行うが、男性向けの製品を投入するとマーケティングは変わるのか
当初はデータがなかった。F2層向けの化粧品の販売実績がない時は当然データがない。そこで化粧品を仕入れて売った。そのデータを活用して、何が一番売れるのかデータを見ながら商品を作った。
ラインアップを揃えるなかで、洗顔やシャンプーといった性別を問わない商品をリリースして、男性にも販売してみる。そうするとデータが少しずつ貯まっていくので、それを活用する。
―ネットからリアルに販売を広げる成長戦略だが、双方の間でカニバリゼーションが起きないのか
店舗で購入した後に、ネットでも購入する顧客が一定数存在し、逆もしかりだ。むしろシナジーがある。
―海外戦略に関して、他社は髪や肌質の近いアジアに出るが、なぜ米国やブラジルに進出するのか
今、グローバル的にはジャパンビューティーがトレンドになっている。特にブラジルでは日本の商材が出ておらず需要と供給にギャップがある。アジアは既にいろいろな会社が進出している。他社が進出しているエリアも市場があると考え、当然出ていくが、我々は69人と小さい所帯であるので、競争優位を作るために効率的にレバレッジを掛けられるエリアに優先的に投資したい。
―既存商品を展開するのか、それとも海外向けに新商品を作るのか
段階があると思う。土地柄もマーケットも分からない場所でいきなり新商品を出すのは不確定要素が高いモデルと考えている。将来的にはそのようなこともやるだろうが、日本で成功したモデルを展開するほうがKPIの比較ができる。上手くいっているのか失敗しているの分からないのは数字上では良くない。まずは日本で上手くいったものをグローバルで展開する。
―ベンチマークとなる会社は
同じクレンジングということもあるが、プレミアアンチエイジング<4934>を非常に意識している。今後はヘアケア商材に取り組むので、I-ne<4933>を意識していきたい。
―ROEやROAなどの財務指標は
現時点でどのような株価になるか見えていないため、公表できる指標はない。
―株主還元の方針が未定だが、今後の戦略は
上場して資金を調達したことで財務内容が改善した。これまで借り入れが多かったこともあり、今回の調達が非常に重要な意味を持つ。利益を株主に配当還元することを視野に入れたいが、短期的には利益を事業に優先的に再投資し、トップラインを伸ばすことに今後数年は注力したい。その成長が事業として成熟した状態になってしまった場合には、配当も視野に入れて検討したい。
―配当を始める基準は何か
少なくともマザーズ市場では、売上高と営業利益の2ケタ成長を目指す。粗利率が非常に高いビジネスモデルなので、トップラインが伸びて広告宣伝費をコントロールすることで営業利益を捻出できる。市場の特性に合わせて成長できなくなったタイミングで配当を視野に入れなければならない。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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