26日、エコナビスタが東証グロースに上場した。初値は付かず、公開価格の1300円の2.3倍である2990円の買い気配で引けた。睡眠解析技術を用いた健康状態推移予測AIを開発。それに基づく介護職員向けの高齢者見守りシステムである「ライフリズムナビ+Dr.」をSaaSで提供する。高齢者の状態を把握するセンサー(ハードウェア)でデータを集め、異常を感知するソフトと組み合わせて職員に知らせる。導入介護施設は200施設以上で解約率は0.02%。疲労回復や認知症、人の予後/余命を予測するAI群も保有する。渡邉君人社長が東京証券取引所で上場会見を行った。
―初値が付いていないが
非常にたくさんの人から期待されていると感じており、それをしっかり受け止めて、事業を成長させていきたい。
―センサーとソフトウェアの組み合わせからなるハードウェアSaaSにこだわる意味は
ソフトウェアだけで取れるデータでは、いわゆる現場が求める正確性やスピード感で限界がある。それに対して、我々のなかでハードまでしっかりと製造・設計のノウハウを持って、ソフトウェアでの解析に資するための1番重要な基礎データ部分を創出する。
そこを併せ持つことで、最も大事な正確なデータの素早い取得には、ハードとソフトを両方持っていないと実用面で難しい。最終的には、そこが収益率の高さに結びつくが、まずは一旦ソフトウェアとハードを持つことによる製品の信頼性アップが重要なポイントだ。
―取得できる睡眠のデータは、脳波やウェラブル端末で取れるものと比較した時に、こういう数値を取れる、あるいはエコナビスタのハードでなければ取れないものはあるのか
我々の睡眠センサーで取れるデータの種別として、リアルタイムの心拍値と呼吸数、睡眠の深さ、睡眠深度と言われているものと、寝返りの頻度やどのぐらいから動き始めたかという体動値、中途覚醒の回数、無呼吸の回数までが睡眠センサーで取れる。種類としてはかなり多い。
―中途覚醒を捉えるのは難しいそうだが、エコナビスタの製品なら取れるのか
そうだ。取れるようになっている。
―睡眠ビッグデータを解析するAIの学習の仕組みは
具体的な解析アルゴリズムに関しての説明は控えるが、AI開発に資するための基礎データというものがあり、睡眠深度と心拍数、呼吸数、体動値で、あとはトイレに何回行っているかなどいろいろな要素が入ってくる。そうしたビッグデータのなかで特徴量を見つけて、その特徴量をアルゴリズム化していく仕組みになっている。
―認知症発症予測AIや余命予測AIは、どのように使われているのか。また今後の展開は
認知症予測AIに関しては、睡眠センサーで眠りのデータをおよそ1週間分取れば十分だが、そこから、その人の認知症がどの程度進行しているのか、今どの程度なのかという可能性を示唆する。点数で出す予知・予測の機能になっている。
予後/余命予測は、特に余命予測AIという点だが、介護の現場では看取りというタイミングがある。これは最期のタイミングに家族や医師を呼ぶことになる。ここも、「もうそろそろ看取りのタイミングではないか」というタイミングの可能性を画面上で知らせる機能だ。
これらのAI群をどのように開発したのかという点だが、元々、我々は認知症にしても余命予測AIに関しても、亡くなる直前まで睡眠データと心拍数、呼吸数などのデータをベッドセンサーで取得している。そうなっていく人の幾多のパターンのなかで傾向値のようなものを掴んで、その傾向値とどれぐらい近似しているのかで判断するAIとなっている。最も基本となる部分は、亡くなっていった人や認知症が進行していった人のデータを参考にしながら推定・推計するアルゴリズムになっている。
―どう使うのか
まずはライフリズムナビの画面のなかに実装されていて、看取りのタイミングで光って知らせる機能になっている。
―これから全国展開が始まり、さらに、1施設だけに導入した介護事業者が利用施設を増やすとのことだが、ペースは加速するのか
新規で取得した顧客で、その法人の残りのリピートがどれぐらい残っているのかという部分を伝えたいところだが、数字をこの場で出せないところも、今いろいろレギュレーションが掛かってできない側面もあるが、相当な数がある。まずは1つの法人のなかの1施設で試してもらった顧客で、「これは良いので次に展開する」という残りのバッファ数というか残っている部分にきっちり納めていくところと、それとは違い、新規で取り組みたいという顧客も相当数あるので、合わせると加速すると見ている。
―今は1%未満で最終的に15%程度に広げるが、その時間軸は
中長期の計画では、ライフリズムナビ事業単体のCAGR30%を会社の目標値として一旦設定するので、まずはそういったところでの計画値だ。
―今後、全国展開に向けて(ハードウェアの)出荷台数が増えるだろうが、費用が下がる見込みや、コスト面について聞きたい
話したいところではあるが、事業戦略的な部分も絡むので、正式な発表としては話すことは難しい。ただ、220万室がポテンシャルとして待っている状態なので、そこに広く使ってもらうために何が必要なのかという観点からは、価格面もそうだし、正確性など品質面もそうなので、そこをきっちり満たす製品に取り組みたい。
―最近、睡眠をテーマにしたアプリケーションである「Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)」が出てきた。睡眠のデータの取り方とゲーミフィケーションがトピックとして現れた印象だが、そういったものを率直にどう見るか
一般の人が利用して、エンターテインメント的な要素で利用する可視化の方法と、プロフェッショナルの介護職や病院の人が使うものとは、色合いが少し違うと捉えている。ただ、両方が、それぞれの分野で成立し、発展していくのではないか。
今は介護領域に取り組んでいるが、もう少しいろいろな、エンターテインメントに限定するものではないが、別分野というか一般の人が使うようなサービス展開も検討している。エコナビスタもいずれタッチしていくと思っている。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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