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上場会見:ダイブ<151A>の庄子社長、好きな場所・環境で働く

ダイブが27日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の1820円を77.20%上回る3225円を付け、3050円で引けた。リゾート求人サイト「Resort Baito Dive」を通じて日本全国のリゾートホテルや旅館、飲食店、レジャー施設などのリゾート地に人材を派遣する。主な登録者は都市部在住の25歳以上の社会人で2023年6月末には7845人となった。受入態勢が充実している施設に派遣先を絞り、主要派遣先は2000社程度。グランピング施設などを企画・開発する地方創生事業も手掛ける。庄子潔社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

リゾートバイト先での仕事内容や職場環境といったアナログのデータが精度の高いマッチングにつながると説明する庄子社長

―初値が公開価格を大きく上回ったが、その受け止めは
投資家からの大きな期待を胸に、事業に一生懸命専念していきたい。

―人口減少や人手不足に影響されずにサイトの登録者が増えているとのことだが、その要因は。人口は今後減少していくが、長期的には問題ないのか。
日本の労働人口が右肩下がりなのは事実だが、我々のサービスはそれと反比例しており、登録者や勤務するスタッフ数は右肩上がりになっている。リゾートバイトという働き方が支持されていると考えられるためだ。

型にはまった働き方ではなく、一定の期間、自分の好きな場所や環境で仕事をして、自分の価値観や世界観が広がる。そうした経験が人生の転機になる。

リゾートバイトの仕事を生涯の仕事とする人はそれほど多くない。例えば、転職と転職の間のこのモラトリアム期間で働く、留学やワーキングホリデーをしたいので、その期間の資金を貯めるために例えばニセコに行く。職場では英語を使うので、仕事をしながら英語を学べる。お金も貯めることでき、貯まったお金でワーキングホリデーに行く人たちもいる。

今はリゾートバイトで休みの時間にリモートワークをしている人も増えている。いろいろなバックグラウンドの人たちがリゾートバイトを通じて羽ばたいていくので、世間に理解されて増えている。

シニアの人も増えている。積極的にマーケティングしていなかったが、データを検索すると、年々自然に増えている。例えば、アーリー・リタイアして、自分の人生をどのように生きようという感じの人で、お金はある程度持っている。自分の趣味や生きがい、広く言うとウェルビーイングになるだろう。その人はバイクが好きなので、長野のホテルリゾートホテルで勤務し、休みの日はツーリングをし、家族を自分が働いているホテルに呼んでもてなす。

学生時代にスキーが好きなシニアの人たちがスキー場に勤務して、週3はスキー三昧で残りは仕事をする。ゴルフ場もそうだ。ゴルフが好きな人が、ゴルフ場で仕事をして休日はそこでゴルフ三昧という例も増えている。

ただ、日本人の労働人口が全体的に減っているので、次の打ち手は外国の人たちではないか。特定技能という新しい宿泊業向けのビザが2019年に開設された。コロナ禍でなかなか入ってこなかったが、明けてから積極的に採用しようと考えて、毎月20人前後が日本に来ている。我々を通じて全国各地のホテル・旅館に正社員として勤務しているので、引き続き力を入れたい。

―コロナ禍はどう乗り切ったのか
コロナ禍の前に、我々は新規事業をいくつか手掛けており、全て意図的に移動をフックにするものだった。例えば、オフサイトミーティングを手配するサービスや、旅人に特化した新卒事業だった。コロナ禍で移動するなという話で、事業を見直し、ダウンサイジングのために本社を移転するなど守りの経営をコツコツとやっていた。

それだけではなく、我々の人材ビジネスの労働集約的要素が強いところや事業の流れを全部可視化して棚卸して、仕組み化・自動化できるところと、あえて人でなければ駄目な部分を整理した。多数の社内エンジニアがいるので、コロナ禍期間中に自社でオペレーションを構築した。

―求人サイトの登録者には能力面でいろいろな人たちがいるだろうが、マッチングでデータが集まることで、定量的な評価を行い管理しているのか
宿泊施設と働いているスタッフが相互にレビューする機能がある。例えば、スタッフは宿泊施設の勤務環境などをレビューする。宿泊施設は、「仲居の仕事で着物を着られるから即戦力だ」、「レストランの仕事で皿を両手に5枚持てるから即戦力だ」とレビューする。そのデータをもとに、スタッフが次の仕事をする時に我々が、「皿が5枚持てるので、通常の人よりも単価を上げてください」と交渉する。

―スタッフに関しては難しいだろうが、宿泊施設に関するデータを外販する予定は
今のところ、全く考えていない。

―サイト登録者1人当たりの就業期間や売上高などは
派遣ビジネスの売上構成はとてもシンプルで、単価×労働時間×期間だ。まずは人を増やすこと、それ以外には単価を上げていく。上げ方としては、レビューなどをもとに1人ひとりに見合った単価を交渉していくことなどがある。

期間を延ばすことでは、さまざまな取り組みをしている。例えば、LINEでスタッフ1人ひとりと状況に合わせたコミュニケーションを密に取れるシステムを自社開発した。そこで延長を促す、あるいは勤務期間満了後すぐに、別の場所での就労を促す。そうして1人当たりの派遣期間を延ばしている。具体的な単価や期間は営業戦略上開示できないが、この2つを伸ばして売上を全体的に伸ばしている。

―リゾートバイトに特化した人材派遣ビジネスの競合状況は
日本全国に20~30社ぐらいはあるのではないか。九州エリアだけで展開、北海道エリアが強いといった会社が大半で、競合として認識する会社は2社ある。具体的にはヒューマニックという小田急電鉄の子会社で、我々と同規模だ。もう1つがグッドマンサービスで、我々やヒューマニックの6掛けといった規模だ。

―事業環境を踏まえたうえでの成長戦略は
観光業が日本の成長する産業のなかでも数少ない市場の1つと見ているので、国策としてインバウンドをもっと増やすことや、国内の市場も底堅く22兆円あるので、昇りのエスカレーターにいると考えている。

成長戦略は大きく2つある。1つ目は観光HR事業で、年次で120%ぐらいは伸ばしていきたい。伸ばす方法として、外国人の登用などがあるが、リゾートバイトは知られていない。「ノバセル」を使い20~30代の人たちに、リゾートバイトの認知度調査をしたが、80%を超える人たちが知らないという結果だった。上場資金などを使って、リゾートバイトの宣伝広告をすることで、そうした層を獲得していく。あとはシニアの人たちだ。

もう1つは、観光業・宿泊業には大きな課題がある。一部で上場企業もあるが、中小企業も多い。例えば、自社で集客できない、労働集約型で紙文化が根強くDX化や業務効率化ができていない施設もある。我々はIT化や効率化が得意なので、そうした部分をクロスセルすることで手伝うことができれば全体的な価値向上につながる。これから一生懸命やっていきたい。

―リゾートバイトを通じて人材不足の解決に加え、情報システムやIT関係、ソリューションをセットで出して解決していきたいのか
そうだ。

―今手掛けている情報システム事業についてだが、観光関係の中小企業に向けて、ダイブのシステムのようなものを販売するものなのか
今は自社サービスを提供しているわけではない。情報システム部門は、観光・宿泊施設に向けてのサービスは提供しておらず、都内の顧客に提供しているので、実力を付けながら、ゆくゆくはそういったことを検討している。

―そうすると現時点で収益にどのような影響があるかといった定量的なものは出せないのか
そこまで大きな事業ではなく、売上や利益に大きくインパクトを与えるところではない。この先どこまで進めていくかは、我々の経営課題というよりは計画の話だ。

―今期の業績予想は増収に比べて増益が非常に大きいが、これは一過性のものなのか。中長期的にはどの程度の年間成長率を見込むのか
20年間やってきてコロナ禍で一気に下がったのもあるが、20年間でCAGRが24%になっているので、これは無理な数字ではない。売上は年平均で24%は成長できると想定している。

前期に、計画的に宣伝広告などに投資し、地方創生事業のグランピング施設を2つ開設した。貸借対照表よりも損益計算書にヒットする項目も多かったので、利益が圧縮されたように見えるが、通常では、この程度の力はある。

―株主に西江肇司氏がいて、社外取締役に山口豪志氏が入っており、この界隈の著名人が関わっているが、どういう考えで加わったのか
2016年頃に、我々の会社のなかで広報を強くしたかったが、社内に全くなく、ゼロから立ち上げた。知人の経営者に広報を立ち上げたいと話したところ、山口社外取締役を紹介された。それがきっかけだった。

まずは広報で仕事を手伝ってもらい、上場を目指すなかで、中小ベンチャー企業の成長請負人として当時から活躍していたので、そういった知見などで引き続き協力を受けたいと社外取締役として迎えた。

西江氏は私の経営者の大先輩で、時折、経営相談や壁打ちなどをさせてもらうなかで、株主の一員となってもらって、もっと自分自身の成長にもつながるアドバイスを仰ごうと思った。

―コタエル信託に関する特段の対応は
1年前にいろいろなことが起きただろうが、当時も危惧したが、その時点でコタエル信託を通じてSO(ストックオプション)を付与している実績はなかった。今年に入ってコタエル信託が国税庁とのやり取りのなかで問題ないというスキームを提示してもらった。有効だと示されたので残している。

―スキームについて途中で契約変更したのか
山本拓嗣取締役:本来、信託型SOを役職員に付与するが、そうではなく、コタエル信託が信託内で一旦新株予約権を行使する。その株を従業員に渡す「株式交付型スキーム」と説明を受けている。そのスキームでは給与課税が必要ないことを国税庁と握っているというものがある。今後、必要に応じて使っていきたい。

―今後のアライアンスやM&Aについて
庄子社長:自社のサービスを磨き上げていくが、自社で持っていないものを作っていくのか、買収していくか、成長戦略にM&Aも入っているので、観光・宿泊業に特化した会社と良い縁があれば話し合って進めたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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