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上場会見:タウンズ<197A>の野中社長、総合診断企業に

タウンズが20日、東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の460円を6.52%下回る430円を付け、419円で引けた。血液や唾液などの検体に含まれる物質を検出・測定し、疾病の判断を補助する体外診断用医薬品を扱う。主力製品は、抗原抗体反応で標的抗原を簡易・迅速に検出する「イムノクロマト法」を用い、インフルエンザやアデノウイルス、溶連菌、新型コロナウイルスなどに対応する。2024年6月期の売上高は175億円(前期比12%増)、営業利益は79億円(同58.9%増)を見込む。野中雅貴社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

自社開発の抗体ライブラリを持ち、独自開発の白金コロイド粒子を標識物とするなど視認性と検出感度の高い検査キットを開発していると話す野中社長

―初値が430円で、公開価格を下回っている
市場からの当社に対する現時点の評価と受け止めている。今後に関して、市場からより評価されるよう業績面をさらに頑張ることで期待に応えられるようにしていきたい。

―上場で市場の評価を受けることになるが、決意や覚悟は
パブリックカンパニーになるので、社内のガバナンス体制や内部統制の充実に時間をかけて整備し、期待に応えられる体制を整えてきた。そのうえで、株主に対しては当社が持続的な成長をすることで、その投資に対する適切なリターンを返すことが何よりの恩返しと思っている。そこに関しては既存ビジネスを伸ばすことに加えて、新規の部分に取り組むことで、期待に応えるような持続的な成長を遂げていきたい。

―CITIC Capitalが資本参加したタイミングと経緯を知りたい
2016年に入ってもらったが、当時我々の戦略としてIPOと、中国市場への取り組みの強化があった。ともにIPを目指すパートナーとして、また中国市場での展開におけるサポートなどを期待して資本参加してもらった。

―現状は
IPOに向けてガバナンス体制の整備などに関しては、これまでの間に非常に多くの指導を得て無事にIPOを迎える大きな力になってもらった。これまでに十分な指導があり、現在は自走できるだけの体制となっている。中国市場に関しては、当時様々な会社を紹介されディスカッションを重ねてきたが、途中で中国の市場の状況がだいぶ変わってしまい、日本からの輸出品でやっていくことが難しく、一旦保留となっている。

―株式の売り出しのみだが、株主との関係も含めてどのような判断だったのか
マーケットの状況や株主の意向、我々の資金計画を総合的に判断した結果だった。一方、我々は目標としてなるべく近い将来にプライム市場に行きたいので、タイミングによって、成長戦略次第ではあるが、新たな分野への進出に向けて成長資金が必要であるという判断に至れば、売り出しに加えて新株の発行で資本市場から資金を調達していくことも並行して検討したい。

―今後の新型コロナ関連製品の需要見通しはどうか
新型コロナウイルスの、特に抗原検査に関して、我々の調査によると例えば、2022年から2024年にかけて検査需要が特段落ちていることはなく、検査需要は増える傾向にある。

昨年5月に新型コロナの感染症分類が2類相当から5類に変更され、それ以降の診断需要はどうなのかと関心を持っていたが、特に抗原検査に関して需要はむしろ高まった。その結果として売上高に関しても、2023年6月期の157億円に対して今期見込みは176億円だった。市場がきちんと伸びていることによって売上が伸びてきている。今後に関してもある程度安定的な需要が見込めるのではないかと見立てている。

―需要は堅調だが、コロナ関連の売上依存度が5割以上となっている。今後の事業戦略としてはそこに注力するのか、他分野の開拓は
今後の注力領域については、新型コロナとインフルエンザの同時検査キットで、1回の検査で両方分かる「コンボキット」とも呼んでいるが、これが今非常に伸びている。市場シェアを伸ばす余地があると見ている。

中期的に見た場合には新しい事業にも出ていきたい。感染症のなかでも性感染症、HIVや最近問題になっている梅毒といった部分に出ていきたいし、感染症以外でも慢性疾患、がんのコンパニオン診断や、慢性腎臓病の早期検査、歯周病の検査など感染症の流行の波に左右されないような新しい安定的な事業基盤も今後作っていきたい。

―劇症型の溶連菌など新しい感染症が増加するなか、慢性疾患領域への進出も狙うとのことだが、コア技術の強化の方向性は
既存の感染症領域に関しては、これまでのコア技術をそのまま生かせる。例えば、新しい感染症に対応していくことになったとしても、抗体開発の技術やその標識物といったこれまで培った技術をそのまま生かせる。慢性疾患などに関しては、新しい取り組みになる。我々の技術をベースとしながらも、例えば、資本提携などを含めた様々な提携先がある。そういった外部の技術もうまく導入しながら新しい部分に出ていきたい。

―D-IA(デジタルイムノアッセイ)技術について多少噛み砕いて聞きたい。また、今後どのような業績へのインパクトが見込めるのか
説明がややラフになるが、抗原検査と同じようなレベルの非常にシンプルな操作、早い判定時間で簡単に使えるものをまず目指す。簡単に使えながら検査ラボでやっているような非常に高精度な検査を一般のクリニックでも簡単に実現できるものを目指した製品だ。

様々な用途を想定している。初期的に考えているものの1つとして、感染症の高精度パネル検査がある。新型コロナの蔓延中にはPCR検査という、抗原検査よりも手間も時間もかかるが精度が非常に高いものがあった。パンデミック下では、特に濃厚接触者という「症状はないがリスクがある人」も検査しようとしてPCRをたくさんやっていた。ただ、どうしても手間がかかってしまう。そういったレベルの検査をその場でぱっとできてしまう抗原検査レベルで簡単にできるもので、しかも複数の感染症を同時に測ることができれば、何らかの異常があったらすぐに原因を特定できる。

これは研究の途上階だが、将来的には、血中にごく微量なマーカーがある心筋梗塞や認知症などでは、微量なマーカーを定量化して測ることもできるので、非常に早期の慢性疾患の診断にも使われていく可能性は十分ある。様々な用途に使えるのがD-IAだろう。

技術的な特徴としては、基本的に抗原抗体反応、抗体で抗原を捕まえる部分に関しては通常の抗原検査と同じだが、一番の違いは、マイクロ流路のなかで反応させ、非常に狭い所で抗原抗体反応を起こすことによって検出度を上げていく。もう1点は、目視ではなくレーザーによる散乱光で金コロイドを検出する。抗原抗体反応をする部分と検出する部分の両方に新しいテクノロジーを使って精度をぐっと高めている。

今後の業績に関しては、D-IAが出てくるのがおそらく数年先になる。こういった新しい技術では専用の測定器も必要になるので、その普及から始めなければならない。業績に大きく貢献してくるのは一定の時間がかかるが、普及し出すと非常に大きなインパクトがあるのではないか。

―認知症検査の可能性について
開発初期段階で具体的に言えないが、我々のD-IAの特徴として非常に微量の血中などのマーカーを精度良くかつ定量的に測れるので、それを生かして適切なマーカーに対してそういうことができれば可能性があるのではないか。現状で言えるのはその程度の話だ。

―実際に出来上がるのは、何年か先か
まだしばらく先の話になる。

―新技術やプロダクトを増やし、新しい領域に展開していくうえでの課題は
目論見書などで公開している技術(D-IAやCKDキットなど)に関しては、これからゼロベースで作るものではなく既にある程度開発段階が進んだもの(なので大きな課題はない)。我々がこれまで触れてこなかった慢性疾患という領域で、現場のユーザーがどういったことを本当に求めているのかに関しては、さらに深く調査していきたい。また販売面でも、感染症に特化したチームでは必ずしも対応しきれない面もあるだろう。自社に新しいチームを作るのか、それともどこかと提携するのか、様々な選択肢のなかで最適な販売体制を取っていくことも今後の課題と想定している。

―伊豆の国市に本社工場があるが、それによるメリットは
現在新工場の設置を進めているが、あのエリア(三島市と伊豆の国市、清水町を含む静岡県東部一帯)は不動産の値段などに関しては、あまり高くない。投資効率が良く、様々な新規投資ができる。また、三島市は東京へのアクセスも非常に良いので、研究所は三島に近い清水町にある。各社の研究所や工場が非常に都内からアクセスが悪いところにあるのに対し、都内へのアクセスも比較的良いので、リクルーティング面でもかなり良い立地なのではないか。

―人材確保にどう取り組むか
今回上場した目的の大きな1つあり、社会に認知され信頼されることによって、これまで以上に、特に新卒者を中心に人材確保・強化に取り組んでいきたい。今のところ必要な人員に関しては充足しているが、さらに業容拡大していくうえでは、研修や教育体制に力を入れて既存の人員の底上げにつなげつつ、新しい人をどんどん取っていきたい。

―2025年6月期の業績に関する想定は
具体的な数字は答えられないが、市場規模に関しては、感染症なので一定の変動はあり得る。過去1年間ぐらいの市場規模が予測のベースになって、そこからどのぐらいの変動を見込むかということになる。

市場シェアに関しては、インフルエンザと新型コロナの同時検査キットを中心に拡大の余地があると見ている。市場規模が急激に伸びないと仮定したとしても市場シェアのレベルでは伸ばせる余地があるので、市場規模に関わらず、粛々とシェア拡大に取り組んでいきたい。

―シェアの目標値は
日本のPOCT(Point of Care Testing)市場で圧倒的ナンバーワンになりたいので、主要な製品において日本で抗原検査、POCTといえばタウンズだと言ってもらえるポジションまで行きたい。

―まずは感染症からか
そこから先の分野に関してもだが、POCTに関してはタウンズだと言ってもらえるようになるのが中長期の目標だろう。

―海外展開についてどの市場を狙うのか
現在既に20ヵ国以上に代理店を持っており、インフルエンザなどの抗原検査製品を展開している。海外売り上げは10%未満にとどまっており、今のところポーションとしては大きくない。

日本と海外の市場特性があり、風邪症状を非常に熱心に検査する国はかなり限られている。例えば、欧州や米国ではコロナ禍ではたくさん検査していたが、コロナ禍が去って以降はコロナもインフルもそんなにかかっていないというのがある。

我々が今後考えている新製品、例えば、性感染症や結核、がん、慢性腎臓病に関しては、海外市場でも十分なニーズがあり得る品目だと想定している。結核であればアジアやアフリカが主戦場になり、慢性腎臓病やがんであれば米国や欧州が大きなマーケットになると見ているので、プロダクトによって適切なターゲットマーケットが変わってくる。

―具体的には
新製品の開発の順番は日本でレジストレーションを取ってローンチし、そこから海外での申請になるので、日本での申請が通ってから海外展開を具体的に進めていくことになる。

―大切にしている経営方針と10年後にはどうなっていくのか
品質重視を一番に掲げている。製造業であればいわゆるQCD、クオリティ・コスト・デリバリーという概念があるが、タウンズでの順番はクオリティ・デリバリー・コストという話をしていて、まず品質を最重視したうえで安定供給を実現する。コストはその次でいい。

命に関わるプロダクトなので、品質の問題はあってはならないので、そこに最大限取り組む。感染症の流行が著しくなった時に安定供給できる体制が必要となる。質を重視したうえで安定供給を実現していく。そのためにコストも重要だが、コスト以上にそういったところを重視したい。生産側も開発側、営業側も一致した見解として、この部分の優先度は間違いないとして取り組んでいる。

10年後に関しては、診断薬、医療機器の業界でもやはり、レジストレーションとか保険点数を取るのにかなり時間がかかる業界なので、我々が開発している新しいプロダクトではPMDA(医薬品医療機器総合機構)から承認を得る、場合によっては新しい保険点数を付けてもらうことになると、数年単位の取り組みになる。そこから新しいものを医療機関や一般ユーザーに提案して普及していくには、やはり数年かかる。

今開発しているものが全て花開いてくるのが10年後だろう。そうすると感染症以外の事業ドメインにもきちんと出ていって、それらで収益の柱が立って総合的な診断企業となる。感染症も慢性疾患も、疾患の診断も予防医療も扱い、日本にとどまらず海外にも出るということを全て達成できている状態が10年後であれば望ましい。

―それまでの過程でのM&Aは
今のところ具体的なM&Aはないので、可能性として、我々が必要としている技術や知財を持っている会社で、資本的にも提携したほうが良いと判断できる場合には、M&Aもあるかもしれない。今は海外に販売網を展開していく時に代理店として資本関係がなく現地のディストリビューターに依頼しているが、他社の事例では重要な国に関しては子会社を立ち上げ、あるいは現地の会社を買収することがある。我々もそれに倣う可能性がある。技術面の補完か海外での販売面でのM&Aは検討の余地がある。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]