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上場会見:ライスカレー<195A>の大久保代表、リアルな声を活用

ライスカレーが19日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の1420円を9.86%上回る1560円を付け、1428円で引けた。自社開発したSNSデータ収集・分析基盤であるツール「CCXcloud」を用いた企業のマーケティング支援や、自社ブランドでの販売を行う「コミュニティデータプラットフォーム事業」を手掛ける。コミュニティデータとは、SNSで支持を集めている投稿や、インフルエンサーなどに関する情報で、消費者の興味・関心や需要の核心を反映しているとされる。大久保遼代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

自社ブランドに関しては、ECのみならず、リアル店舗での販売なども含め多様な顧客接点を展開していると話す大久保代表

―株価の受け止めを
初日ではあるので、いろいろな要因があるが、公募価格を若干だが上回る形で1日目を終えられた。凄く良い株価推移かというと客観的には分からないが、これからしっかりと業績を積み重ねていくことでまだまだ伸ばしていけるようなスタートラインに立ったのではないか。

―ダウンラウンドIPOだったが
当社に限らず2年ほど前は市況も良かったので、そのなかでは上場後の業績推移のなかで足元、数年と言わず、もっと短いスパンで取り返せるぐらいのレベルのダウンラウンドではあった。あまり深刻に捉えておらず、上場後の株価で十分に取り返せると想定している。

―社名の由来は
SNSの一般ユーザーの投稿画像を活用してマーケティングに還元していくことを祖業として始めた。創業メンバーに画家のゴッホが好きだった人がいて、Googleでゴッホを調べると絵が出てきたが、その当時インスタグラムで調べると、カレーの写真が出てきた。それは「ゴッホ」という名前のカレー好きコミュニティには刺さっている美味しいカレー屋さんだった。

Googleのアルゴリズムだと上位には表示されなかったが、インスタグラム上ではそういった情報が上に出てきた。一般ユーザーのリアルな声というか最新のインサイトが写真や動画といったリッチな形で投稿されていく。このゴッホとカレーが結びつくようなものを活用していけばいろいろなことができる、そういう組み合わせが面白いというエピソードに絡めてこの社名になった。

―起業当初から上場が目標だったとのことだが、IPOが設立の意義のように聞こえたが理由は
IPOをしたいから起業したというよりは、起業した会社の可能性を最大化する手段として、日本国内では特にIPOは有力な選択肢であると考えている。1社目をM&Aで売却した経験もあり、そこに関してはやはりIPOが日本では企業価値を最大化させる手段と考えていた。会社の可能性を高める手段としての最初のマイルストーンとしてIPOを置いていた。

―コミュニティデータについて。今の時点では、この情報は無料だ。これから「私の情報を勝手に使われている」という議論が生じると見ている。このリスクをどう見ているのか
1社目でアドテクノロジーの業界にいたので、その情報に関してはいろいろと理解を深めていたが、コミュニティデータは例えば、SNS上の○○好きのコミュニティの集団の人たちが、どういったリアクションを取るかというような統計的なデータの要素が強い。統計データの形で活用していくスキームで運営している。個人を特定して何かをやっていく類のものではないので、当社のやり方ではそういったリスクはないと見ている。

一方で、アドテクノロジーをやっていた頃は、今はだいぶ規制されたが、Cookie情報を取ってきて個人を特定して広告を出す動きもあった。アドテクノロジーの境界が技術的に難しくなっていく部分を自分で体感している。そういった経験を踏まえて今のようなデータへの取り組み方をしている。

―投資家の一部からは、BtoBのマーケティング支援の部分に関して他社との差別化が分かりにくいという意見もあったが、その点に関して、データクラウドの話と絡めて、競争優位性が高いのはどのような部分か
SNSのマーケティング領域での競争優位性で極めて重要になってくるのが、企業とのやり取りで得られるデータよりは、一般の消費者やインフルエンサーなどから取れるデータをいかにマーケティングに活用していくかという一連の流れだ。

当社は「CCXsocial」を無料で提供している。月額5万円を一般の消費者が払うのは難しいので無料で提供し、一般消費者やインフルエンサーのデータを取ることができる。そのデータを取るだけではあまり意味がなく、そのようなデータを活用してどのようなSNSを中心としたマーケティングを行い商品を販売して売上を作っていくか。その一連の流れを自分たちでしっかりと持っている。

そのなかで生まれてくるやり方が競争優位性として、結果として大企業から直接仕事を受注し、継続性の高い売上を作っていける結果にも結びついている。そこが競争優位性と見ている。

自社でサービスを持ったうえで、マーケティング側に対してノウハウを還元しながらビジネスを作ってきた前例があまりないので、聞いたことがないような競争優位性という意味で、一部の投資家には直感的に少し理解しにくい部分があるのは事実だろう。

そこは今後の事業成長や、当社のBtoC、BtoB両輪であることの意義を結果で示していく部分だと思っている。

―一般的に定量的な成果を計測しにくい一方で、大企業向けサービスでは成果が見やすくなっているとのことだが、理由は
マーケティングの領域が広告と最も違うのは、広告は単純に広告を打って、(表示される広告を閲覧者が)クリックして、ECで物を買うという形で費用対効果を一直線に測ることができるものが多い。

例えば、SNS上で商品を配布して、そこでたくさんの人に投稿を促すことで、オフラインの商品が売れるか否かは、結果が出るまでにある程度時間がかかり、直接計測できないが、当社は一般ユーザーの写真の投稿がどの程度出てくると、実際のオフラインのPOSも動くか、動画の再生数がどの程度伸びていけばAmazonや楽天の購買に実際に結びつくインパクトのある“バズ”なのかという点も、自社のブランドを中心に測ることができる。それを応用して顧客のマーケティング施策のなかに定量的な評価を入れることができている。

―今のところライスカレーが提供するサービスは、マスにアピールしていくものだが、今後データがさらに蓄積すると、1to1マーケティングに関与していく可能性はあるか
現状、当社がどのような予算を顧客から受け取っているかという背景として、例えば、テレビCMに使っていた予算を、スマートフォン上で見ている回数が多いSNS上のマーケティングに活用していく。マス側の予算が当社側に移ってくるケースが多い。

単なるマスマーケティングの手段の1つとしてSNSを活用していくところから踏み込んで、コミュニティごとに区切った形や、商品の売り方としても、マスよりも細かく1to1で当てていく動きは出てくると思い、そういった世界になればなるほど当社の優位性がより出てくると考えている。

―売上や利益率についてどう見ているか
2024年3月期は、当社のポテンシャルとして作っていける利益率に対してはまだ改善していける余地は十分にある。業績予想でも11%程度の営業利益率を想定しているが、エンタープライズとデークラウド、コンシューマーでそれぞれ利益率がミックスしていくが、最終的な仕上がりとしては、営業利益率を伸ばせる幅はある。

―営業利益率を伸ばすために、今後どうするか
人員の増加に対しての粗利をより増やしていく。そのレバレッジがまだ効くので、そこで1人当たりの粗利生産性を高めていく。特にエンタープライズ領域のマーケティングDXを中心に取り組んでいく。また、データクラウドはかなり少ない人数で回せるので、このツールの売上や、有料ツールを増やすことで利益率を高めていける。

ブランドサービスも、オンラインだけではなくオフラインでのクリニックプロデュースまで含めたマネタイズポイントを増やすことで、全体の利益水準を底上げしていくことができている。利益率も利益の絶対額も同時に大事になってくるが、その両方をについてどの領域でも、伸ばす余地は十分にある状態だ。

―個別の営業利益率などは
非開示だ。

―どこが儲かっているのか知りたい
売上収益の割合として多いのはエンタープライズだが、コンシューマー事業はブランドによって利益率が異なってくるので、コンシューマーの部分の利益率がポテンシャルとして著しく低いというようなことは特にない。足元はエンタープライズ側の売上・利益の割合が大きい。

―課題は
今後の課題としては、顧客基盤を拡大していく点で、潜在的にたくさんリード顧客を取れている。そこに対して粗利生産性を改善し、より高めながらトップラインを伸ばしていけるのかは、課題というかチャレンジしていく。

全体で見た時に、ソーシャルメディアマーケティング市場や各市場で、市場自体は成長しているが、中長期的に見た時に鈍化していく可能性がないわけではない。新たな市場を作るために、コミュニティデータの活用先としてマーケティング以外の部分で成長市場を作っていく。足し算していく動きは必要だ。

―マーケティング以外というのは、ブランドなど実業のような部分のことか
それに限らず、言い方としてはオールドな業界、商品企画やOEM/ODMと呼ばれる商品企画の業界は、自社でブランドを作りコミュニケーションを取っていく際に、コミュニティデータを活用する余地が十分にあるが、まだできていない業界というか、ほとんど取り組んでいない業界だと見ているので、そこに対して当社のノウハウをマーケティング領域に還元していったように、OEM/ODMといった業界にも還元する余地がある。これはこれでかなり巨大市場なので、当社が参入するには、期待できるような市場と想定している。

大南洋右取締役:生産性については業績予想にも定量的に記載しているが、売上成長率119%、粗利成長が22%に対して、人件費の増加幅は14%としているので、生産性を高めつつ利益率を高めていく動きを取りたい。

―ベンチャーキャピタルや純投資以外の法人株主は丸井グループぐらいか。そういった立場の会社との今後の事業上の関係性は
大久保代表:丸井グループはベンチャー投資の段階から純投資というよりは、どちらかといえば共創投資で、当社がコミュニティデータを活用してオンライン/オフラインを含めて展開していくなかで、両社のアセットをうまく組み合わせる取り組みや期待を持っている。

物流系のSBSホールディングスやECカート/物流を手掛けるGMOメイクショップなどは、現状はマーケティングを中心にしているが、その先のサプライチェーンのほかの部分についても既にノウハウを持っている会社と掛け算をしていくことで、当社のコミュニティデータの活用先をもっと生み出していけるのではないかと期待している。

―丸井グループは、当初は純投資的なものだったのか
純投資と協業であるところは明白にはしていないが、引き続き協業も含めて取り組んでいく。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]