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上場会見:インテグループ<192A>の藤井社長、仲介報酬は明朗会計

インテグループが18日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の3960円を50%上回る5940円を付け、5480円で引けた。完全成功報酬型のM&A仲介を手掛ける。アウトバウンド型営業へ2019年に転換した。バイアウトファンドの情報を集めた「PEファンド.JP」も運営する。2024年5月期の売上高は21億円(前期比70.2%増)で、純利益は6億5000万円(同282.5%増)の見込み。藤井一郎社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

当初は500万円だった最低成功報酬額を1000万円、1500万円と段階的に高め、その過程で案件規模も大きくなってきたと話す藤井社長

―株価の受け止めと、今後の推移をどう見守っていくか
初値も付いて、一定の評価は得られた。ただ、今日明日の株価に一喜一憂するわけではなく、中長期的に企業価値を向上するために、業績を上げることに邁進していきたい。今後の株価についてもまずは業績を出して、それに結果が付いてくると考えている。

―一気通貫の支援体制について。売り手の話はしたが、コンサルは両方を担当するのではないか。買い手側は
コンサルタントは売り手にずっと伴走していくが、買い手に当たる際も同じコンサルタントが全てに当たっていく。基本は1人でその案件を担当する。例えば、1案件に対して数十社ぐらいに当たっていく場合が多いが、1人のコンサルタントがやる。社内のシステムで、案件に対して買い手をマッチングしていくことができ、最初はそこからメールなどで当たっていく。

―1人だとその人の体調が悪い場合などは
もちろんその時に体調が悪くなることはあるが、せいぜい1日、2~3日程度だと思う。

―2人でなくてあくまでも1人で担当するのか
経験が浅い者には、マンツーマンで教える上司を付けているので、それは指導役や部長と日々相談しながらになる。

籠谷智輝副社長:業務や使う資料が標準化されている。実際に前期であったのは、育児休暇を取ったコンサルタントが1ヵ月休んだが、引き継ぎはかなりスムーズにできるので、別のコンサルタントを充てて短い引き継ぎ期間でスタートできる。

―あくまで1人で入れ替わるのか
入れ替えは全く問題なくスムーズにできている。

―2019年にアウトバウンド型に転換したが、現状のインバウンド型とアウトバウント型で獲得している案件の割合は
イメージとしては半々ぐらいだ。

―アウトバウンド型営業への転換に際して、成果を出せるコンサルタントとそうでない人がいたそうだが、その最たる違いは
藤井社長:インバウンド型からアウトバウント型に変えていくなかで、積極的に自分を律して営業活動していかなければならないで、そこを徹底してできないようなコンサルタントもいたということだ。我々は元々けっこう自由な会社だったので、あまり強くKPI管理をしていなかったのもあるが、KPI管理をしっかりやるようになり、人も自然に入れ替わったこともあり、この2期は業績がかなり安定して成長した。

―ノルマ設定はないそうだが、KPI管理とは
手持ち案件がある程度ある人は自分の案件を進めていけば良いが、案件がない人については「しっかり営業活動しましょう」というところで、そこは指導をしている。

―完全成功報酬制について顧客企業から見たメリットはよく分かった。一方で、1人のコンサルタントが担当できる案件数は、時間に限りがあり決まってくるだろう。そうした場合、譲渡金額が大きい案件のほうが、採算性が高い。中小型よりも大きいサイズを手掛けたほうが業績へのインパクトが大きい。中小企業のM&A需要を満たすことと、インテグループの採算性向上のバランスでは、案件をどう取捨選択しコントロールしているのか
大きな案件を狙ったほうが良いという話もあるが、大きい企業ほど数が少なくなってくる。小さいほうが圧倒的に多い。大きいほうは他社も狙うので競争が激しくなる。我々は、最低成功報酬額を大手より低く設定して、ボリュームゾーンの案件を取りやすくしている。

M&A仲介会社のコンサル1人当たりの売上高は、成約1組当たり売上高×コンサル1人当たり成約組数だが、我々の成約1組当たりの売上高は4200万円で、大手と比べて低い。その代わりに我々のコンサル1人当たりの成約率が1.7で、大手が1.0前後なので、ここは非常に高い。この掛け算で左側のコンサル1人当たり売上が7200万円となっている。これは仲介会社のなかではかなり上位に位置している。我々は小規模案件でも、1人当たりの成約件数が多くなることで高い生産性を出す戦略だ。

―コンサル1人当たりの年間の成約件数を高めるための仕組は何か。3件ぐらいある会社もあるが
3件のところは、成約1組当たりの売上高が非常に低い。1組当たり売上高が一定にあるところは、当社以外は大体1.0だ。

―1人当たりの組数を高めていくためにの仕組み化されているものは
まずは完全成功報酬制や最低報酬額が低いことで、入口の営業段階で案件を非常に獲得しやすい。例えば、当社では、売却対象となる企業の経営者十数人と会えば大体1契約取れる。他社のデータははっきり分からないが、他社から入社する者もいて、30社、40社、50社と会って1案件取れるというような話も聞いている。最初の営業の取りやすさがある。

あとは、我々は業界のなかで比較的業歴が長く、17年ぐらい行っている会社なので社内のデータベースが非常に充実している。マッチングの能力が非常に高い。案件が取れてマッチング力も高いので、生産性が上がっている。

―最近、M&Aについて規制を強めていくという報道がされているが、実現していくと、どのようなインパクトがあるのか。または競合他社対比で、インテグループが有利になっていく可能性もあるのか
どのような規制があるのかよく分からない。今言われている1つは、報酬体系をもっと明示・透明化しようというものだ。我々はM&A仲介協会に入っているが、その自主規制ルールのなかでも既に謳われている。我々は元々会社設立時からホームページに報酬体系を明示して、明朗会計でやってきた自負がある。

例えば設立以来、(仲介の)後で「こんなに報酬を取られると思わなかった」ということを言われたことは一度もない。それは、売買金額に対してパーセンテージをかける極めて分かりやすく、誤解しようのない報酬体系だからだと思う。

他社の場合は、移動総資産といって売買金額ではなく、そこに負債を乗せる。いつの時点の負債を乗せるのかどうか多少ややこしいところがあり、後で「こんなに報酬を取られると思わなかった」という批判があったと聞いている。おそらくそれが中小企業庁に苦情として寄せられた。我々は明朗会計で分かりやすい報酬体系を設立以来やってきた自負があるので、我々にとってはむしろ有利に働く可能性は十分にあると見ている。

そもそも規制の話が出ている背景としては、中小企業のM&Aをもっと活性化しなければならないという政府の方針のなかで、手数料も透明化しなければならないという議論だと見ているので、特段ネガティブな要素はなくむしろ追い風になる可能性もある。

―規制の根本にあるのは、買い手からも売り手からも取るということもあり、FA(ファイナンシャル・アドバイザリー)業務も一部手掛けているが、業界はほとんど仲介会社ということで、両手取りの指摘については
利益相反の問題は、私の認識としては、売り手と買い手で利益相反があるのは当たり前の話で、売り手は高く売りたい、買い手は安く買いたいという点に利益相反がそもそもある。これは仲介であろうとFAであろうとある。

仲介会社に対しては、「仲介会社が買い手を有利にしているのではないか」という批判がある。買い手はリピーターになり得るが、売り手は基本的に1回売却したらそれで終わる。買い手は場合によって2回、3回(買う)。そういう顧客は実際にはそれほど多くないが、あり得るので、買い手有利になっているのではないかという批判がある。

我々はそうならないようにしていて、1つの売却案件に対して、売り手の許可を得たうえで、かなりの数の買い手に当たるようにしている。売り手にとって選択肢をなるべく持ってもらえるように相当数の買い手に、「こういう会社に当たらせてください」と当たっていく。ケースバイケースだが5~10社ぐらいと面談したうえで売り手への条件提示を経て、どこを選ぶか決めてもらっている。

例えば、仲介会社のなかには、一部の、高く報酬を払ってくれる買い手に優先的に話をするという批判もあるが、我々はそもそも現状で、一部の買い手から高い報酬を取ることは社内で禁止している。高い報酬を払うところに優先的に話を持っていくことができない仕組みを取っている。買い手有利に進めることはなく、複数の条件提示を得たうえで、売り手にどの会社とM&Aを進めるか決めてもらう。

―規制の必要性について。今は無資格でもできて参入障壁が低く、協会では自主規制もある。規制の必要性については、ありなしで議論することはなかなか難しいかもしれないが、必要性についてはどうか
業界の健全化という意味では、必要なルールはあってしかるべきだ。

―金融機関などに対してのような法規制は必要か
具体的な規制の内容が分からないと何とも言えない。

―少なくとも、今以上に踏み込んだ規制はあっても良いのか
例えば、今言われている報酬を透明化して、売り手に対しても、「仲介会社が買い手からどれぐらいの報酬を取るかちゃんと説明しなさい」というのは、そこまでのことが実現していなかったこともある。売り手に対して買い手からいくら補償を取るか、買い手に対して売り手からいくら報酬を取るかを説明するルールになる可能性があると言われているが、そういうところは当然やっていくべきだろう。

―トラブルがいろいろと出ているという報道もある。進行中の争訟案件はあるのか。開示できるようであれば聞きたい
籠谷副社長:朝日新聞の記事で我々のコメントとして出ていたが、ルシアンホールディングスの件については我々も1件紹介した案件があり、それは売り主が買い戻したので、クレームにならずに終結している。

そういった悪質な会社の案件が、業界で今問題になっている。我々でも悪質な会社の排除の仕組みを整えているし、業界全体として、今データベース化して、属性の悪い買い手を排除しようという動きをしているので、今後も業界全体で取り組んでいく課題だろう。

―そのケースが起きた後に、各コンサルタントが共有して、一定の客観的なステップで買い手側のデュー・ディリジェンスのような仕組みを作ったのか
それ以前からもかなり前から運用はしている。ルシアンの件も、我々がクロージングさせた後に契約不履行があったので、その時点でストップがかかる体制にはなっていた。

他社であれば不履行があるにも関わらず情報が共有されずに何社も紹介してしまったケースがあったようだ。そういった仕組みがあるのと、マッチングプラットフォームと連携してそういった悪質情報の交換をやっている。これがおそらく業界全体、仲介協会を中心によりオーソライズされたデータベースとして構築されていくのではないか。

藤井社長:そこまではっきり決まっていないが、そういう動きが仲介協会のなかで少し出てきている。

―その方向性は正しいのか
少なくとも顧客にとってもそれは良いことで、仮に被害が出たとしても1回で終わる。情報共有されないと、いろいろと引っかかる可能性がある。

―PEファンド.JPを運営することでネットワークもあるだろうが、メリットについて。業績に与える影響は
このサイトは、日本の企業に投資しているPEファンドやその投資先企業を簡単に検索できるが、これを運営することで様々なファンドとの接点やコミュニケーションが日々発生する。我々はファンドに強いM&A仲介会社として業界中で知られている。

過去3年程度の成約数のうち十数%程度はPEファンド絡みの案件だが、そうした案件は規模が大きくなりがちで、売上ベースでは3~4割ぐらいになっている。PEファンドが買収する案件や、ファンドが持っている企業の売却、あるいはPEファンドが投資している先の追加買収(ロールアップ)を比較的多く手がけている。

―他社は進出しにくいのか
他社も取り組んではいる。我々は売上比率について3~4割と話したが、この割合はおそらく高い。他社はデータを開示しないので、はっきりとは分からないところだ。

―広告宣伝費が14.4%(2023年5月期)だが、今後の支出イメージについて
籠谷副社長:広告宣伝費は大体85%が固定費的な経費になっていて、2024年5月期については7%まで下がっている。これは売上高が前期比70%増となったからで、今後も特に固定費部分を大きく増やすことを考えていないので、売上高の増加に比例して割合は低減していくと想定している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]