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上場会見:Atlas Technologies<9563>の山本社長、価値の移動や交換に商機

26日、Atlas Technologiesが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1440円を61.11%上回る2320円を付け、2000円で引けた。決済関連を中心としたコンサルティングやプロジェクト実行支援サービスを国内外のクライアントに提供する。「戦略策定・事業企画」から、「要件定義」、「システム設計」、「業務構築」などの実行フェーズまでを一気通貫で手掛ける。山本浩司社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

これまでのプロジェクトの経験を活用しつつ、裾野の広いフィンテック領域で新規クライアントの獲得をさらに推進すると話す山本社長
これまでのプロジェクトの経験を活用しつつ、裾野の広いフィンテック領域で新規クライアントの獲得をさらに推進すると話す山本社長

―初値が公開価格を上回った
値段自体に関しては、マーケットあるいは個人投資家や機関投資家の判断によるものであるので、コメントできるところではないが、公開価格の1440円に対して終値は2000円で、本日時点では収束している意味では、これまでの業績と、これからへの期待を一定程度持ってもらえた。評価された結果だと思っているので、情報開示を適切に行って信頼を獲得していきたいというのが初日としての実感だ。

―上場の意気込みを
フィンテックのマーケットの大きさ、あるいはいろいろな企業からの引き合いの強さを日々感じている。調達資金を有効活用しながら人材に投資し、副次的に得られる社会的な信用などをクライアント企業や社会にしっかりと提供できる立ち位置で、信用を積み重ねていきたいという気持ちを新たにしている。

―先週に、ふくおかフィナンシャルグループ傘下の「みんなの銀行」が、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス<3222>とBaaS(Banking as a Service)領域でのサービス開発に関する基本合意を締結したが、競合するのか。この動きについてどう見るか
BaaSが国内は元より海外に広がっていくことで、むしろ我々のビジネスチャンスにつながっていくと見る。BaaSの機能を、フィンテックを取り入れていく文脈で広い意味で捉えると、取り入れる側あるいはそれを導入する側の双方で、フィンテックの知見を活用したビジネスの立ち上げや、その後の運営が求められる。

BaaSやEmbedded Finance/Fintechといったいろいろな言葉が飛び交っているが、本質として、金融機関や非金融事業者がフィンテックを取り込む文脈では、我々の活動に十分資する動きになる。

―いろいろな領域に決済の社会実装を進めていくとなると、経済圏が乱立していくイメージになるが、そのような状況になった場合、それらの間で統合や連携もあるとも考えられるが、そのような時に商機はどのように広がり得るのか
非常に重要なポイントで、歴史を振り返っても、フィンテックのペイメントだけに注目しても、収束しては解き放たれる。収縮と発散が繰り返されている。その時々に、我々が現状注力して支援することが多い国内通信キャリア、NTTドコモやau、ソフトバンク、楽天、この範囲だけを見てもそれぞれに大きな経済圏を成している。

これからも、ソフトバンクのPayPayやLINE、ZOZOとの連携、Yahooの動きなど、1つの経済圏のなかでもそうだし、経済圏の間でもそういったバンドリングやアンバンドリングは引き続きあると今後のトレンドを捉えている。

そのなかで大きな流れとしては、経済圏を大きく成していくうえでも、フィンテックやペイメント、価値の移動や交換といったものが必ず付いてくるので、どのような離合集散があったとしても、ビジネスチャンスがいろいろなシーンで生まれてくるという風にマーケットを見ている。

―コンサルティングサービスで、人材が肝になるだろうが、採用や育成で工夫している点や力を入れていることは
採用が、経営課題としても最重要トピックの1つだ。そういった意味では、採用そのものに関しては、育成という意味合いでも、調達した資金を活用したい。採用のソーシング・チャネルとしては、リファラルやエージェントの人たち、ダイレクトリクルーティングなどがある。まずはそこにしっかりと投資を行っていく。

入社後に関しても、給与など雇用条件や、何よりも働きやすい環境が重要だ。VISAやMastercard、JCBといった大手カード会社、SIer、コンサルティングなどいろいろなバックグラウンドの人たちが集っているが、チャレンジングなプロジェクトに入っていける機会を、経営としてはしっかりと準備していきたい。

―取り引きしている相手の(売上高の)比率が高いとのことだが、それを含めて上場して以降、何を課題として認識し、どのような解決策を描いているのか
クライアントの開拓とそれを支えるコンサルタントの採用が、まずは当社の最重要課題のうちの2つだ。国内通信キャリアを大手クライアントとしているが、業種のポートフォリオは元より、売り上げに占めるクライアントの構成比率の適正化が非常に大きな課題だと思っている。

ただ、非常に多くの引き合いやフィンテックのマーケットからのニーズが、クライアントからのパイプラインを含めて我々のリソースを上回る形で寄せられている。サービス品質を維持しながら応えていくことが重要と思う。

足元でも、今期の実績として数社が新規のクライアントになっており、来期以降に売り上げと収益の積み重なりに貢献していく形でサービスを提供していきたい。

2つ目は採用だ。今活躍している30人のメンバーは、事業会社の出身者が非常に多いので、コンサルティングをとフィンテックを掛け合わせるといった形で引き続き採用を強化しながら非常に旺盛なニーズに応えていきたい。

―今後の強化分野を、もう少し具体的に教えてほしい
いくつかあり、決済・送金や融資は、今我々が注力しているペイメント・決済だ。加えて、投資やバンキング、保険・証券については、我々のコンサルタント自身が、まだペイメントプラスαが得意領域ではある。そういった(ほかの分野にも)強みのあるコンサルタントの採用を行い、そのような領域に入りたい。

また、最近の活動のなかでは、ブロックチェーンや暗号資産に関する引き合いや相談もある。テクノロジーの軸でも、採用と研究開発を進めながらキャッチアップして、サービス化していきたい。

―配当政策・株主還元は
現時点では開示できる形での方針は有しておらず、しっかりと事業成長への投資に、まずは資金調達のキャッシュや、これまで蓄えた現預金を事業投資に振り向けたい。そのなかで総合的に事業成長や外部環境を考慮しながら、配当政策が策定された暁には速やかに開示して情報を届けたい。

―ROEの考え方は
今回(のIPOでは)、経営コンサルティング会社を類似企業として見ており、そういった企業のROEやPERを1つの基準として見ている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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