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上場会見:ロゴスHD<205A>の池田社長、家づくりもデジタル化

ロゴスホールディングスが6月28日、東証グロースに上場した。初値は公開価格と同額の2290円を付け、1930円で引けた。中核事業会社であるロゴスホームを、池田雄一社長が北海道帯広市で2003年6月に設立。WebやSNSを使うデジタルマーケティングによる集客や、オペレーションをDXで効率化した注文住宅事業を手掛ける。木造のモジュールを用いる「MCB方式」の拡大や障害者向けグループホームなどにも注力する。池田社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

池田社長は、工場で木造のモジュールを組み立て、トラックで現場に運び組み立てる「MCB」工法は、職人不足の課題を解決すると話した

―初値が公開価格と同じ2290円だったことの受け止めは
値段が付いたことに関して言えば、非常にありがたいというか嬉しい。価格に関しては市場が決めることなので、私がコメントするような立場ではないかもしれないが、率直に言って嬉しい。今後はこの値段を付けた投資家の期待に応えるべく、企業価値をしっかりと向上させていきたい。

―ウッドショックが明けてまだ間もないが、この時期に上場した狙いについて。札証ではなく東証グロースに上場した理由も聞きたい
元々準備をしていて、昨年には赤字となったが、今期は利益が出るように業績が回復してきたことと、その原因であった原価(の課題)が、値上げとコストの削減で解消された。社内の管理体制も整ったことで、このタイミングかと思った。札証ではなく東証グロースを選んだ理由は、北海道から全国に展開するために、当初から東証に上場したいと準備を進めていたので、自然の流れでそうなった。

―ホールディングスとなってから3年と少しでの上場だが、大株主のベンチャーキャピタル(VC)が参画してきた背景は。30年以上の社歴があるが、豊栄建設と一緒になってから3年という凄いスピードで上場したのは、VCとの何かがあるのか
元々単独で上場しようとしていたが、北海道ということもあって人材の確保が難しく、エンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合というファンドに入ってもらい、彼らのサポートを受けて上場しようと考えた。それからは豊栄建設のM&Aや管理体制の向上などが加速して進み、この短い期間で上場できた。

―価格面に強みがあるだろうが、同規模の一般的な住宅会社の価格よりどの程度安いのか
北海道の同業で上場会社の土屋ホールディングス<1840>がある。よく比べられることがあるが、金額でいうと同じ家だと200万円安い。

―割合でいうとどの程度か
1件当たりの粗利が、当社は18%に対して、土屋HDは25%だ。当社に価格で7%の優位性がある。土屋HDだけでなく、タマホーム<1419>やほかの住宅会社と比べてもその程度のコストの優位性はある。

―それを実現させているのが集客の仕方か
それをしているのがデジタルマーケティングとDXオペレーションだ。それによって構造的な販管費が安く済んでいる。

―具体的にどういうやり方をしているのか。ホームページを見たらLINEとYouTube、インスタグラムがあった
集客に関してはリスティング広告をやっている。大手ハウスメーカーもリスティング広告をやっているだろうが、他社は住宅総合展示場があって、それに加えてリスティング広告やSNSを運用する。当社は住宅総合展示場がないので、ネット広告に100%振り切っているところに優位性がある。あとは、公式アンバサダーといって、SNSで家を建てた顧客に、新たな顧客を紹介してもらう活動もしている。

―顧客の流入は、ほとんどがSNSなのか
リスティング広告を使ったWebとSNSだ。

―そういった顧客に対して、その次のステップとしては
インサイドセールスだ。インサイドセールスがメールやSNSでアプローチして、顧客を育てて(ショールームに)来場してもらう。

―その自社のショールームというのは
ショールームの1つである北海道クラシアムがあり、そのような施設がいくつかある。

―数はどれぐらいか
店舗兼ショールームが29ある。

―その29拠点のうちに北海道クラシアムがあり、宿泊してもらえる施設だが、そのようなものはここだけか
今年の秋にもう1ヵ所オープンするが、現在はそこだけだ。

―2023年4月から2024年5月までの引き渡し棟数の1076棟のうち、注文住宅は
7%が分譲で70~80棟ほどなので、注文住宅は1000棟ぐらいだ。

―全国展開のスケジュールは。例えば、東京には何年後、九州まで進出するのは何年後までになるのか
ざっくりは検討している。今は1000棟ちょっとだが、2030年には5000棟にしたい。何年までにエリアをどこまでというのは考えていないが、規模としてはそれぐらいを目指している。

―関東の進出エリアは群馬県だけか
関東は栃木県と埼玉県だ。

―東日本のみならず日本全国か
そうだ。

―5000棟の棟数を売るためにはどのぐらいかかるのか
まずオーガニックで3000棟ぐらいを目指している。残りはM&Aで実現する。

―全国展開するために地方の有力な工務店をM&Aするのか
面で広げていく。

―M&A戦略について。グループ化していく企業の社名は変えないとのことだが、ロゴスHDの事業ノウハウを各社に導入していくことになるのではないか。その際に、各社がその地方でそれまでに培ってきた仕事の仕方や技術などはどうなるのか
住宅は、M&Aしてもシナジーが生まれないとよく言われている業態だ。その会社が元々持っている工法や営業手法に関しては尊重して、そのまま運営してもらう。ただ、当社は販管費を抑える広告手法や、家作りのプロセスといったもののデジタル化が進んでいる。それは導入してもらえるのではないか。そうすることで構造的なコストが下がって、生産性が上がっていくと想定している。(当社と)工務店の独自のやり方をうまくミックスさせていく。

―M&Aは何社ぐらいを想定しているのか
200~300棟前後(を販売する)会社を中心にしたい。そうすると7~8社程度と想定している。

―これからエリアを広げるにあたって、人材の確保が必要になるだろうが、そこで生じるコストについて
注文住宅は、どんな人が作ってどんな人が売っているかという点で決まる部分が多いので、採用は非常に重要だ。当社は新卒を中心に採用して、継続している。近年は非常にうまく採用ができている。家を買ってもらうには信用が凄く重要だが、人を採用する時、働いてもらう時も信用が非常に重要で、今回の上場を機に、採用活動でも非常にプラスになるのではないか。

池田俊執行役員:新卒を中心に人数を増やしてコストを抑えたい。中途採用市場は非常に高騰している。毎年15~20人の新卒者を採用してきたが、年間30人、40人、50人のような感じで採用できるように力のかけ方を変えて販管費とのバランスを取りたい。

―少子高齢化で市場縮小の懸念はあるとしても当面は安定だそうだが、当面とは
池田社長:10~20年のスパンではそれほど大きく下がることはないと見ている。住宅の市場は、車や鉄骨のように寡占プレーヤーがいない。日本で最も販売している会社でもシェアは1%にも満たない。自社の努力次第でシェアを高める方法はいくらでもある。

―現時点での課題は
採用の部分は今も苦労している。北海道ではブランドが確立していると思うが、北関東など本州のエリアに出店していった時に、名前を知って入社して一緒に仕事をしたい人を獲得するのはなかなか大変なので、そこが一番大きな課題だろう。ただ、今回の上場で、そちらも大きく前進できるのではないか。

―調達資金の使い道は
あまり大きな金額を調達していないので新しい土地の造成やモデルハウスの建築に充てるぐらいだ。

―2024年5月期の特別配当・実施済分がVCに対するもので、1株当たり259円19銭だった。1株当たり当期純利益が236円9銭で配当のほうが高いと見る投資家もいるようだが、どのような背景があるのか
岩永武也取締役:ファンドの要請があって配当を最初にするという結論に至った。ファンドが関わってからいろいろな支援を受け、特にウッドショックといった困難のなか、いろいろな支援を無配で続けてきた。今回、IPOをする段階で、それに報いるために累計での配当を計算した。当期の利益だけではないものが計算に入っている。

―配当性向は30~50%とのことだったが
池田社長:そのつもりでいる。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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