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上場会見:Liberaware<218A>の閔代表、既存建築のBIM化を開拓

29日、Liberawareが東証グロースに上場した。初値は公開価格の310円を46.45%上回る454円を付け、401円で引けた。屋内狭小空間点検ドローン「IBIS」シリーズの開発と、「狭く、暗く、危険な」環境下での点検サービスを手掛け、ドローンのレンタルや販売も行う。JR東日本との合弁会社であるCalTaでは、ドローンの運航によって収集したデータを3次元化するクラウドソフトウェアの「LAPIS」で処理・解析する“デジタルツイン”のサービスを提供する。閔弘圭(ミン・ホンキュ)代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

粗利率の高い機体販売の開始と、リカーリング収益の積み上げによる黒字化の見通しについて話す閔代表。現在の収益構造に関して粗利の部分が大きく変わってきているという

―初値の受け止めは
皆さんの期待値をもっと上げたいと思っていた。ドローンに関して、どこと比べるかというのはあるが、宇宙に関しては非常に期待がある。一方で、ドローンは「そうでもない、どうかな」というところもある。

我々が入るような空間は、ほとんどの人は知らない空間だ。そういう所に使われて浸透していることをもう少し理解してもらえれば、応援してもらえるのではないか。
―元々エンジニアだったが、創業して上場に至った際の思いや意気込みなどは
ドローンと関わりを持つきっかけとなったのが、福島第一原発のなかを調査することにエンジニアとして参加したことだった。それがもう十何年も前だが、当時の技術では限界があり、チャレンジはしたものの、ただの実証実験で終わってしまったのが非常に心残りだった。研究員という立場でできることには限りがあったので、それをプロダクトとして作っていきたいと創業した。

そこから8年経って、我々が作ったプロダクトが現場で活用されたこと自体、個人としては嬉しく、次も期待に応えられるプロダクトを作っていきたい。

―現在のマーケット環境について聞きたい。プライムやスタンダートと比較してグロース市場は苦戦しているが
グロース市場に関しては非常に不安定だと考えていて、そのなかでもディープテック系や技術系に関しては皆が期待を持っていると受け止めている。当社は赤字上場だが、将来への期待もあり、それがあってこそ初値が付いた。市場全体としては不安定ではあるが、事業を成長させることが、株主に還元できるポイントだと考えている。

―閔代表は千葉大学出身で、千葉市で勤務して今も市内に本社を置いているが、本社を置く理由は。例えば、創業するうえでやりやすい、支援を受けられるものはあるのか
元々、千葉市はドローン特区があり、事業をサポートしてもらえるので千葉市で創業した。最初は都賀という場所だったが、特区に含まれる場所で、今ある場所も特区として支援を得られる。

千葉大では、上場しているACSL<6232>があるが、そうした縁もあって、千葉市がドローンを支援する背景があったので、活用していきたいと創業し、今もなお本社を置いて、技術開発をメインとして活動している。

事業に関しても連携が始まっていて、千葉市が所有している歩道橋や水路のなかの調査などいろいろなインフラの点検でも活用してもらえるようになっている。このような事例を千葉市だけではなくどんどん増やしていきたい。

―2022年度に千葉市のアクセラレーションプログラムに採択され支援を受けたが、その成果と、今日まで活きていることがあれば聞きたい
その成果があって、市のアセットの点検を実証実験でやらせてもらって、実際に見てもらい実感してもらったので、それが今も継続できているのではないか。

―基本的に空中を飛ぶマルチコプター型のドローンを作っているが、点検の領域が広がると水中も視野に入ってくるのか
開発するプロダクトのベースは「IBIS」のみだ。鉄道型ドローンは別物になるが、根本的にはドローンで撮ったデータを解析していくことをメインとしていて、デジタルツインソフトウェア「TRANCITY」に関しては水中ドローンで撮ったデータを連携している。

いろいろなところでいろいろなデバイスがCalTaを通じて自然と連携しているので、我々がそうした特殊なデバイスを開発しなくても、データも狙えるのではないか。

―デジタルツインがいろいろなところで使われようとしているが、今後使われてほしい分野はどこか。特に損益にインパクトが大きそうなものはどんな領域なのか
BIM化も含めて、スマートシティという概念で様々な建物の図面化が求められているが、デジタル化していくうえで、まだできていないことが非常に多い。

目指していく安全な社会の構築にも、データを取って活用し、展開できる。市場でもデータを取りに行く領域が手付かずなので、しっかりと狙っていきたい。

―岡野バルブ製造<6492>が親引け先となっているが、どのような事業上のつながりがあるのか
福島第一原発の案件に関して、岡野バルブ製造はいろいろな電力会社にバルブを提供している会社で、電力会社とのコネクションが非常に強い。我々としては、営業の強化という意味があり、彼らとともに福島関連のプロジェクトを何個か進めている。それも含めてこれから連携を深めるために、親引けに参加してもらった。

―調達資金の使途について
人材確保や設備投資がメインになっている。物凄い金額を取っているわけではないので、まずは適切な範囲で資金を充てていきたい。

―東京に営業所があるが、都内への本社移転や、開発拠点や工場を都内やほかの地域に設ける考えは
どこに対して行くかははっきり決まっていないが、成長とともにしかるべき場所で活動したい。東京の営業拠点は、JR東日本との合弁会社であるCalTaと連携して使っている場所でもある。このような連携を増やすことによって拠点を増やすこともできる。そういうことも今後考えていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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