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上場会見:オートサーバー<5589>の髙田社長、会員増で流通台数アップ

26日、オートサーバーが東証スタンダードと名証メインに上場した。初値は公開価格の2670円を14.61%下回る2280円を付け、1916円で引けた。BtoB向け中古車売買の会員制プラットフォーム「ASNET」を運営する。「オークション代行」と売買仲介の「ASワンプラ」がサービスの主軸。萩原外志仁会長が1997年に愛知県豊橋市で創業した。その後、SBIインベストメントの傘下に入り、2014年1月に台湾の新興株式市場であるグレタイ証券市場(GTSM市場)に上場したが、2016年3月にMBOで上場を廃止。髙田典明社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

BtoBのECプラットフォーム「ASワンプラ」では、買い手側が指定価格で車両をほぼ確実に購入でき、在庫リスクを軽減でき、売り手側にも販路を拡大できるメリットがあると話す髙田社長
BtoBのECプラットフォーム「ASワンプラ」では、買い手側が指定価格で車両をほぼ確実に購入でき、在庫リスクを軽減でき、売り手側にも販路を拡大できるメリットがあると話す髙田社長

―初値の受け止めは
株価については我々が操作できるものではなく、そこは市場の評価として皆の期待に応えられるように、業務に邁進していくことに尽きる。

―台湾で上場していたのはなぜか。非公開化する時にどこかのファンドと組んだのか
上場を検討した当時は、日本の経済環境があまり良くなかったなかで、海外上場をしていこうという流れが一時あった。その一環で台湾の取引所から勧誘が来て、我々が1号として上がる話になったのがきっかけだ。上場を廃止した時はファンドと組んだわけではなく、LBOローンで賄った。

―非公開化の理由は
当時、中国でASネットをやろうという話で、我々を含めて3社で組んで「車通天下」という会社を運営していた。システム開発を入れるとだいぶ経つが、サービスを開始して1年半ぐらい運営するなかで思ったように売り上げが伸びなかった。それもあって中国事業を撤退しようと決心した。

また、台湾で上場するに当たり何事にも管理コストが二重にかかってくる。例えば、日本と台湾両方の監査法人の監査を受けなければならない。何をするにしても台湾の商取法と日本の会社法を守らなければならず、リーガルコストも二重にかかり、上場コストが非常に重かった。

中国の事業を撤退するし、このコストをかけて台湾上場を維持する必要があるのか考えた時に、今の段階では重荷ではないか、加えて日本にもう少し注力しなければならないこともあり上場を廃止した。

―日本と台湾の差異が影響したのか
上栁隆裕経営企画室長:当時の中国での中古車の流通は市場ができ上がる前の段階で、我々は市場に魅力を感じて出ていったが、未成熟な市場では流通がうまくいかなかった。そうして撤退を決意した。当時の日本との流通環境とはかなり違っていた。

―車通天下は、上場後に作ったのか
髙田社長:上場前から検討しつつあったが、実際には上場の時期ぐらいに法人ができて、サービスインは上場後だった。

―競合環境の認識について
我々と似たようなサービスを手掛けている企業、ネットをプラットフォームにしている企業は4、5社ほどだが、そのなかでは会員数や掲載台数ともに当社が一番大きいと見ている。

―業績推移に四半期ごとの季節性があれば教えてほしい
上期と下期で言うと、例年52対48や53対47だが、下期にお盆や正月など休みの時期が多いので、その時期には中古車販売店が閉まり、オークション会場が皆休催している。どうしても流通量が減る。それ以外の要因の季節性はほぼない。

―国内141のオークション会場での取引を代行するオークション代行と、中古車BtoBのECマーケットであるASワンプラの利用には逆相関の関係があるとのことだが、その棲み分けは取引ボリュームに関連しているのか
逆相関になる理由は、中古車販売業者がどこからか車を仕入れて、少し手をかけて仕上げたものを小売りに回し、あるいはASワンプラに出品する行動パターンになることが多い。オークション相場がどんどん上がっている時期は、安い時期に仕入れた車両がASワンプラに掲載される。

そうすると、オークション価格と比較すると相対的に安く見えるのでASワンプラで購入する。一方、オークション相場がどんどん下がっている時は、ASワンプラの車両は高い時に仕入れたものなので、オークション相場と比較して高く見える。そうするとオークション代行サービスを使うので逆相関の関係にある。

―循環しているのか
相場の上げ下げによってどちらがどう強くなるか決まってくる。

―ビッグモーターを巡る動きの影響は。同じ中古車業界として現状と今後について聞きたい
ビッグモーターの影響をさほど受ける業態ではない。あくまでも流通業なので、流通台数が増えれば増えるほど売り上げや収益が増える構造になっている。現状を見ていると、新車の供給状況や、ビッグモーターがいくらか在庫を処分していくのだろうが、流通量が増えれば増えるほど売り上げが増える。どちらかというと影響がないというよりは、量が増えるという意味ではプラスに働くのではないか。

―ビッグモーターが持っている在庫をオークションに出していけば(流通は増えるわけか)
流通量が増える。流通量×単価で売り上げが決まり、単価が一定なので、流通量が増えれば売り上げが増えていく仕組みになっている。

―プラスになるのか
そういう認識を持っているが、実際には中古車を買う人が減るのではないかとか、いろいろな話はあるだろう。だが、需要が減れば価格が下がっていく。価格が下がれば需要が増えてくるという需給のバランスになっているので、そういう意味では、一概にネガティブな状況ばかりではないと見ている。

―ロシア向けの中古車の輸出規制の影響は
ネットで流通を行っているが、会員に輸出業者は少ない。各国で輸入に対する規制が違うので、日本の検査とは違い、輸出に必要な検査をしなければならない。そういう意味では、現車を見てから購入する人が多い。ネットで買うよりは現車をオークション会場で買うケースが多い。

―成長戦略で流通台数と会員数増加などいくつかあったが、もう一度聞きたい
取引台数を増やすためには会員を増やしていかなければならない。会員制だが定額コストを取っていないので、とりあえず会員を集めて、「誰かしらが使ってください」という戦略を取っているので、とにかく会員を集めていくのが1つのポイントだ。

単価上昇に関しては、相場によってはオークション代行とASワンプラのいずれを使うかという話はあるが、ASワンプラを使ってくれやすい人たちを集める。ASワンプラは有り体に言えばメルカリのようなもので、オークション代行はヤフオク!のイメージを持ってもらうと分かりやすい。

最近はヤフオク!で相場を分かりながら買うよりも、メルカリで買ったほうが早いということも多いかもしれず、中古車販売業者もそういう雰囲気だ。中古車事業の周辺の整備・板金業者やガソリンスタンドの事業者は、相場が分からないなかで、秒単位で価格が上昇する競りに参加するのは怖いという話がある。ASワンプラを主力として使ってもらっている。

出品側としては中古車販売業者も集めなければならないが、加えて、周辺で業務を行う人たちも会員にしていこうという戦略で動いている。それらを強化することで手数料単価を上げる。ASワンプラを使ってもらい、トータルの平均単価を上げていく。

あとは、中古車リースに参入したいが実際に在庫を持っているわけではない人に対して、我々の流通情報を提供して、サイト上でリースが1台成約すると、ASワンプラから1台買ってもらう仕組みを取る。

また、輸出業者向けのサイトを運営する会社と組んで、海外のバイヤーがその情報を見て買った場合にはASワンプラのトランザクションが1つ増えるというように、いろいろなことをしている事業者と組むことで、ASワンプラの取引台数を増やす仕掛けに注力したい。

―成長戦略に付帯サービスの収益化を掲げているが、各種アプリのことか。現状は
今は全て無料で提供している。

―収益化に向けての具体的な取り組みは
まだ具体的にどうこうというのは考えておらず、まずはアプリをどんどん広めて使ってもらう。そのなかで利用者の声を拾いながら収益化するにはどうすれば良いか検討したい。

―結果的には手数料ビジネスなのか
そうだ。

―メルカリが過去に自動車のパーツをCtoCで取引する仕組みを作ろうとしていたのを思い出したが、オートサーバーでは、カニバリゼーションを起こす可能性はあるし成立するか不明だが、CtoCは事業としてはどうか
車両自体のCtoCは誰かが何かしらの担保をしないと難しい部分がある。ただ、CtoBtoBtoCのようなBが適正に仲介するCtoCは成立するのではないか。現状を見ていると、いきなりCtoCは難しい。BtoBを主戦場としていく。会員と市場を食い合うからというのもある。将来的にどういうサービスをどう展開していくかはこれから検討したい。

―筆頭株主の朝日ホールディングスは
萩原会長の資産管理会社だ。

―株主還元はいつから始めるのか
従来、期末配当を行っており、12月末を基準に3月末の配当を計画している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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