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上場会見:ネットスターズ<5590>の李社長、決済ゲートウェイとDX

26日、ネットスターズが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1450円を8.00%下回る1334円を付け、1200円で引けた。キャッシュレス決済の一括導入システムである「StarPay」を提供する。加盟店は「StarPay」を導入することで複数の決済ブランドに一括して対応する。提携するQRコードは29社、クレジットカードは6社、電子マネーは全交通系で、QRコード決済に強みがある。キャッシュレス決済に関連するミニアプリなどDX製品のサービスも提供する。主要顧客はPayPayやNTTドコモなど。李剛社長と長福久弘COO、安達源CFOが東京証券取引所で上場会見を行った。

創業の経緯や、日本国内にQRコード決済を初めて持ち込んだ経緯に説明する李社長
創業の経緯や、日本国内にQRコード決済を初めて持ち込んだ経緯などを説明する李社長

―初値が公開価格を下回り、軟調に終わったが感想を
安達源CFO:マーケットからの評価と、IPO市場全般の影響、それから特に決済銘柄という要因があるだろう。決済世界最大手の銘柄であるオランダのAdyen(アディエン)が8月の中旬に半値になっていて、そこからGMOやトランザクションメディアネットワークも大きく下げてしまった。

これがまさに我々のローンチ後にヒットしており、そういった意味で、我々も必ずしも強引なプライシングに持っていっていない認識ではあるが、足元は軟調なマーケットなので、今後より信任してもらえるように、しっかりとビジネスをやりたいと強く思いつつ、外部環境を含めたマーケットの評価は、それが今の回答なので、真摯に受け止めたい。

―世界的に決済銘柄が軒並み下落している背景は
あくまで私見なので留意してもらいたいが、世界最大手とされている決済銘柄としてAdyenやPayPalなどが挙がってくる。Adyenは特に決済領域にフォーカスして、アマゾンジャパンなどのゲートウェイとしてリリースされたことが記憶に新しいが、ゲートウェイ会社としての根幹ビジネスを手掛けており、上場以来、半年単位で25%程度の成長率を維持していたのが途絶えた。

これは、紙面上の話だけだが、解約率が上がり、北米で競合環境がかなり寡占化していた。今まで描いていた成長ストーリーからすると、今後の成長性について疑念がつき、ほかの決済会社も寡占状況になってくる、競合環境がかなり厳しくなると見られた。

一方で、Adyenの株価の落ち方が尋常ではなく、1日で39%が飛び、その後、翌日も含めると綺麗に半分になっているとので、さすがに日本の銘柄も影響を受けた。全決済銘柄がそこから下がっている。日本銘柄に波及するまで、お盆もあったのでラグが1週間弱あったが、その道中、間の悪いことに我々のアナウンスメントもあった。

それはマーケットの動きとしては、決済銘柄で大きく成長すると見られていたものが、海外ではそうではない事例が出たという警告だと受け止めた。同時に、我々にとって非常に良いメッセージだと思っている。日本でキャッシュレスは相当ホットでまだブルーオーシャンと言えるが、これが何年続くか誰にも分からない。そのためのDXや海外であり、先手を打てている状況なので、競争環境が過多になっても対応できる会社になっていくのは、成長戦略の今後の屋台骨になってくる。

―公募株数は70万株で、売り出しはおよそ300万株で、売り出しの方が多いIPOだった。大株主の投資回収のためのIPOに見えなくもない。その辺の考えについては
売出人のポーションを今日ぜひ確認してもらえればと思うが、持分の全部を売却した株主はかなり限定されていた。

事実として伝えるのは、今回売り出しに参加した株主は、ほぼ、我々のプライベートラウンドの参加状況からは等分の比率で売却してもらっている。その相談をするうえで主に意識したのは、「流動性供給の観点をしっかりやる」ということだったので、協力を仰いだ側面はあった。エグジットであれば、ダウンラウンドしないタイミングを狙ったのではないかということを推察してもらえれば嬉しい。

―調達資金は10億円で、やや少ないのではないか
赤字上場ながら手元キャッシュはかなり豊富に残っている。競合他社がクラウドネイティブに移行する前、今あるシステムを仕上げ切りたいというジェネラル・コーポレートパーパスのような使い方で10億円を充てたい。一方で、もはやそれ以上に過度な投資が必要なフェーズではないので、IPOに際して大きくお金を払うものはなかった。

流動性を供給する観点からすると、売出人にもある程度賛成してもらうのが、既存のステークホルダーも含めて、「マーケットと対話できるぐらいの流動性分は供給する」ということが背景にあった。使う10億円は、使い得る金額で表示した通りに消化する。

―QRコードのパイオニアとのことだが、例えば、最も期待する中国は、今インバウンドが非常に弱い部分がある一方、東南アジアの今後の見通しや現状について
長福久弘COO:中国は、団体顧客の解禁はされたが、まだ飛行機が帰ってこないと数字としては大きく跳ねないのではないか。とはいえビジネストリップでは数字として少し反応しているのが今だと思う。

アジア全体では、日本だけではなく、各国でQRがかなり盛り上がっている。そのなかでネットスタートは先んじて、カタールやモンゴル、カンボジアでペイメントを提供している。コロナ禍によって一時期ストップしたが、このタイミングでトランザクションが戻ってきている。将来はクロスボーダーも含めて事業として拡大していきたい。

―最近、決済周りのネットワーク障害が多くなっている。それに対し、ネットスターズのサービスは、そうではないという強みはあるか
李剛社長:ネットスターズの特長として紹介したいのは、技術力が強い会社であること。あと1つは我々の決済事業は、日本を見ることだけではない。中国や米国を見ながら、米国で流行っているいろいろな最先端技術をいち早く日本に持ってくることは我々のやり方だ。

当社のCTOは、元々米国のある有名な決済会社での経験があり、彼の指揮のもとクラウドネイティブやコンテナという技術をいち早く日本で導入した。それがあるからこそ当社のプラットフォームは非常に強い。決済の成功率は99.99%だ。実際は小数点以下の9がもっとあるが、既に業界のほとんどトップになっている。

さらに言うと、1回の決済にいくらかかるかというサーバーコストは非常に重要な話になる。これが0.18円であり、業界のなかでも極めて低いコストで決済サービスを運営できる。

安達CFO:止まることが永久にないかと言われると、可能性としてはあるが、開示していない会社のほうが多いなかで、99.99%の決済成功率というファクトを公表している。

そもそも導入しているのが、クラウドネイティブインフラで、コンテナ技術、サーバーを仮想空間で輪切りにして、各コンテナをサーバーと仮想認識させる。詰まるところ、これだと同じサーバー容量で、極限まで100%に近い使用効率を追い求めることができる。サーバーは脳味噌と一緒で、7~8割がブランクだが、コンテナ技術を使うとそうではない。

また、コンテナ技術を使うとどこがガンかすぐ分かるので、そういった技術の種類の違いで、そもそも安定性などでは他社対比で負けないと強く思っている。

―競争環境の認識は
長福COO:大きく3つのビジネスに取り組んでおり、まず、キャッシュレス決済ゲートウェイサービスだ。日本では複数のいわゆる収納代行会社、決済ゲートウェイ会社があり、必ずしも完璧なブルーオーシャンではない。一方で、キャッシュレス比率では、日本はまだ34%程度しかない国で、G7でドイツを除けば最下位であり、まだまだキャッシュレスがフル装備でない加盟店が、巷に多くいる状況だ。どこまでが寡占状態と取るかによるが、いずれにせよ物凄いタフな競争環境にはなっていないが、プレーヤーは複数いると感じている。

DXの分野は、決済ゲートウェイ会社でいわゆる加盟店に対して10個以上のDX商材を提供できる稀有な会社だ。DX商材に決済機能を直結で載せている業者のうち、単一業者で提供できる会社が数少ないので、競合環境は強くない。

グローバルの決済では、カタールとモンゴル、カンボジアでビジネスをしている。それらの国は、日本よりもはるかに透明性の高いブルーオーシャンというか、競合がほとんどいない状況で、かつ地場の大手商業銀行やナショナルバンクに販売パートナーシップ、OEM先となってもらっているので、そうした意味でも、海外に関しては競合性は相当低い。

―事業パートナーのNTTグループやLINEなどいろいろな会社と組んでいるが、今後の展開として、さらに新しいサービスが出てくるのか。見通しについて聞きたい。
長福COO:今後もサービスをより拡充していきたい。DXの領域で省人化をキーワードにしている。キャッシュレスもその一環だと思っており、今後は日本は人口が減っていくので、DXはより拡大していく。マーケットやパートナーとしっかり連携を取って、これからもニーズがあるプロダクトを出していきたい。

―DXやミニアプリを使ったDX支援に関して、現状や展開、今どんな分野が盛り上がっているのか聞きたい
DXに関しは、省人化がキーワードになっていて、ミニアプリのほか、「スターペイオーダー」というキオスク型の端末とセットになったものを、イオンシネマに導入してもらっている。もちろん効率化できた。映画館は開演時間が決まっているので、その効率化ができることによって売り上げも上がっている。省人化と売り上げ拡大の2点で考えながらプロダクトを出していきたい。

安達CFO: DXで補足だが、我々はBtoBビジネスなので知られていない部分も多い。例えば、神奈川県の消費還元アプリ「かながわPay」は、当社が運営・開発している。横浜銀行やコンコルディア・フィナンシャルグループの名前が取引先として挙がっているのは、このコンソーシアムで運営しているパートナーになっているからだ。

また、例えば、PayPayを開くと吉野家の企業ロゴが出てきて、牛丼を店に行く前に買える仕組みも、我々が提供しているものだ。意外と身近なところで、我々のDXが複数ある。いろんなことがあるので、今後とも注力したい。

―BtoBで、企業間決済のステーブルコインが今年6月に施行された新しい技術が出てきている。そういうものが普及した場合の影響は
ステーブルコインに限らず新しい決済手段、かつBtoBを含む、例えば、デジタル給与払いの文脈もそうだが、我々はゲートウェイ会社なので、基本的には手段や新しい支払・送金手法が増えれば増えるほど、繋ぎ込みができるものが増える。いち早く繋ぐのは至上命題だが、我々のビジネス選択肢が増えるイメージなので、繋ぎ込みの余地を探っていきたい。

いずれにせよ決済マーケット全体、BtoB送金も含めていろいろものに取り組んでいる。そういった意味ではポジティブに映っている。ただ、ステーブルコイン自体はどこまで商用化して流行るかは、しっかり注視しなければならない。

―黒字化のメドは
単月黒字は既に実績として達成しているので、通年の黒字化は、来年以降いち早いタイミングで目指している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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