27日、AVILEN(アヴィレン)が東証グロースに上場した。初値は公開価格の2120円を17.08%上回る2482円を付け、2317円で引けた。AIソリューション事業の単一セグメントで、「AIソフトウェアユニット」と「ビルドアップユニット」の2つのサービスを展開する。AIソフトウェアユニットでは、自社開発技術コアモジュールの「AVILEN AI」を用いて顧客の事業にAIを実装し、データ活用を支援する。ビルドアップユニットでは、顧客企業内部での部門横断的なAI人材育成による組織開発をサポート。ビルドアップからAIソフトウェア開発の受注につながるケースもあり、その逆もある。髙橋光太郎CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。
―初値の受け止めは
投資家からの我々に対する期待の現れだと受け止めているので、今後も株主や投資家の期待に添えるように、一丸となって努力していきたい。
―上場を決めたタイミングについて
創業して5年少しだが、スピードが経営にとって非常に重要だと思う。成長戦略の3本目の柱としてM&Aを考えている。そのためには資金調達や会社としての信頼度を早期に高める必要があった。なるべく早めというタイミングでのIPOとなった。
―公募株式5万株で調達資金1億円は、少ないのではないか
上場の資金使途はM&Aではなく、既存事業拡大の方面に使っていきたい。黒字で来ているので、そこまで多くの資金調達が、スタートとしては必要なかった。今後M&Aを考えるなかで、そういったことを考えていきたい。
―エクイティでの調達か
場合によって使い分けになる。今の時点でこうというものはない。
―売り出しが150万株で、ジャフコも売り出す。大株主の投資回収のIPOに見えなくもないがどうか
ジャフコは、その前から戦略的なパートナーシップで、既存株主に譲渡していたりする。現在は保有比率も低い。そういったことではない。
錦拓男CFO:我々が上場するために資本参加してもらってから、事業会社に株式を譲渡して、その会社との事業シナジーを目指した。それが発現して、このタイミングで上場することができた。今回売り出した株は流通株数を満たすためのものだった。
―ビルドアップからAIソフトウェア開発につなぐ事業モデルは、少し前に上場したアイデミーと似ている印象を受けたが、ピュアコンプスなのか。競合の認識について聞きたい
高橋CEO:ビルドアップからAIソフトウェアに展開している企業は、ほぼ存在していないと見ている。投資家と話した時にはPKSHA Technologyやエクサウィザーズがコンプスとして挙げられたことが多かった。アイデミーと違うところは、我々は社内でAIソフトウェアを開発しており、彼らは確か社内では作っていないと認識している。そういった点ではピュアコンプスにはならないのではないか。
―データサイエンティストなどとして稼働可能な197人が登録している「AVILEN DSーHub」の稼働率はどの程度か。また、今後どの程度の登録者を獲得していきたいのか
ビルドアップとAIソフトウェアを合わせて30~40人程度が稼働していて、まだ余裕がある。一方で、拡大と稼働率向上に関しては、目標を設定しプロセスを設計しているところだ。ただ、日々応募が来ており、今選考中の人も20人程度いるので、増員の点では非常にポジティブな状況だ。
錦CFO:補足すると、今高橋CEOが言ったのは月間の稼働人数だ。全体で均すともっと大きな数字になる。
―登録者との契約形態は業務委託と聞いている。このような人材プールの形成は他社も行っていると思うが、掛け持ちしている登録者もいるのか
高橋CEO:業務委託なので明確に把握していないが、一部には存在すると思う。一方で、この規模かつクオリティの人材をプールするコミュニティは我々だけが作れていると見ている。というのも、彼らもAIを活用して自分のスキルを使って働きたいからだ。
AIの開発はプロジェクトによって波がある。プロジェクトにも画像処理や言語処理など特性があり、常にいろいろな仕事が安定してあるとは限らない。我々にもAIプロジェクトがたくさんあるが、それだけでなく、ビルドアップパッケージもたくさんあるので、それを数多くの顧客に提供する課程で、採点やフィードバック、資料作成など、AIの知見を活かした様々な仕事があり、この規模のコミュニティを作ることができている。
かつ、独自のテストで6%しか合格しない人たちなので、AIやデータサイエンス、アルゴリズム力に関しては極めてレベルが高い人材を集めている。
―カスタマーサクセスの考え方は
カスタマイズ型のAIソフトウェアについては、開発自体がカスタマーサクセスであり、パッケージ型のAIソフトウェアに関しては、いわゆるカスタマーサクセスだが、それぞれを非常に重視しており、我々は営業の会社ではないので、価値をしっかりと届けて顧客を変革する、使われるものを作ることに価値を感じている。データサイエンスやAIを理解している人が関わっていることが1つの強みだ。
―専門の人員というよりは、AIを分かっている DSー Hubの登録者が兼ねているというか、一緒に行うイメージか
例えば、カスタマイズ型AIソフトウェアの開発では、我々のプロジェクトマネージャー(PM)、こちらは正社員で、メンバーとしてDSーHubのメンバーが入ることもある。ビルドアップのカスタマーサクセスも、PMや先方とのコミュニケーションを担っていく部分は正社員が行うが、サポートとして我々のメンバーが入ることもあるし、正社員のデータサイエンティストが入ることもある。これはプロジェクトの性質やメンバー構成で調整し、しっかりデリバリーする。
―成長戦略の詳細を再度聞きたい
既存事業に関しては、黒字化し続けられていて、大手企業を中心に取引を作ることができている。そのなかでビルドアップだけでなく、ソフトウェアにも展開している。大手企業がAIでできることはもっとたくさんある。生成AIが出て、これからおそらくもっと進化していく。そういった技術の発展によって何ができるかという問いを早いスパンで繰り返していかなければならない。そうした支援の規模を拡大していく。
2つ目は、5月にリリースした「ChatMee」シリーズを中心として、既存顧客やパートナーとともに拡販し、解約率を下げていく。ChatGPTの環境を社内に持つことをかなり多くの企業が始めているが、それをしっかりと多くの企業に使ってもらう。これもビルドアップと同様に、こういったプロダクトから入った顧客もLTVを拡大していくことができると見込んでいる。
3つ目には、我々のケイパビリティーを上げる系統のM&Aがある。ニッチな産業などで横断的なデータを持っている企業で、そのデータを活かし切れていない企業はたくさんあるので、そこの経営を担わせてもらう。そして、我々のデータサイエンスの力を使いバリューアップできる先は多くあると思う。資金調達できる体制を上場で実現できたので、これから探していきたい。
―ニッチな産業とは、どのようなところを想定しているのか
今まさにどういったところが良いのか、会社の戦略とともに考えているところだ。
―今後5年間程度で見た時に、高い売り上げや営業利益の成長率を維持できるのか。目標を聞きたい。
これまでどおりしっかりと成長していきたい。具体的な数字に関しては、事業計画をさらに洗練させる過程で作り込んでいけたら良い。
―数字はいつ頃出るのか
12月決算なので、年末や年明けにむけて、計画をさらにブラッシュアップしているところだ。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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