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上場会見:豆蔵DHD<202A>の中原社長、アカデミアの技術を追求

豆蔵デジタルホールディングスが27日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の1330円を1.35%上回る1348円を付け、1648円で引けた。クラウド移行やAIソフトウェア、ロボティクスなどを組み合わせたDXの内製化を支援する。旧豆蔵ホールディングスがインテグラル<5842>をパートナーとして2020年1月にMBOで上場を廃止。SPCである豆蔵K2TOPホールディングスが保有する事業会社10社のうち豆蔵とエヌティ・ソリューションズ、コーワメックスの3社を、2020年11月に新設した発行体が吸収合併して新規上場した。中原徹也社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

再上場と見られがちである点に関しては、「払拭できるように、しっかり説明していかなければいけない、地道にやっていくしかないと思っている」と話す中原社長。積極的に、投資家やメディアに常に私が向き合ってそう言い続けていきたいとも語った

―初値が1348円で終値が1648円だった受け止めを
株価が高い形で推移してきたと思っている。豆蔵を中心とした我々のグループは、とにかくIT業界でユニークな、SIerと対極的なポジションでやっている会社であり、全てブルーチップの顧客に貢献している。十分にそのような期待があってありがたい。それを真摯に受け止めて、中期的にとにかく高めていきたいというのが私としての一番大事な考えなので、短期的なところで一喜一憂することなく取り組んでいきたい。

―社名の由来として、JavaBeansの話があったが、それに続く創業の経緯は
私は2002年に入社しており、当時、オープンソース、特にオブジェクト指向ソフトエンジニアリングという世界が、海外から日本に入ってきたタイミングだった。当時、豆蔵やウルシステムズ、オージス総研というオブジェクト指向に強い会社ができたのが、ちょうどその時代だった。今もそうだが、当時システムの失敗が非常に増えていて、豆蔵を作った技術者3人が話し合ったところ、私が理解しているなかで話すと、システムの失敗の要因は上流工程にあると考えられていた。

間違った要求を正しく作ってしまったために、動かないシステムができてしまっている。要求を基に正しく作るのがSIerの仕事だ。ただ、上流の作り上げた要求が間違っているものものだとしたら、正しくないシステムができてしまう。上流の要件・要求定義をしっかりと正しいものに作ることが、システムの世界で必要だということで、上流工程の特に設計やソフトウェアエンジニアリングに強い会社を作るべきだと3人が話し合って、豆蔵という会社ができたと理解している。

―中原社長はNTTデータや外資系のIT企業に在籍していたが、そのバックグラウンドが豆蔵という会社の経営者という立場にどのように活きているのか
NTTデータに入って、最初は金融のシステムエンジニアリングに7年程度従事していた。その時の上司が、(その後)東証のCIOとして(現物商品売買システムである)arrowheadを作った鈴木義伯氏だった。

システムのエンジニアリングを学び、いろいろな金融機関、当時は金融派生商品のプロジェクトが多く、そういったところを多く経験してきた。ただ、当時大手であるがゆえに使われている技術が古く、自分のなかでも危機感が芽生えたのが転職したきっかけだった。

今では古い話になるが、当時、オープン系やUNIXがこれから来るだろうと日本オラクルに自分で飛び込み、まだ小さい会社だったがオープン系の技術を学んだ。そこでIBM出身の佐野力氏や、新宅正明氏といった日本オラクルの社長と出会い、ERPの立ち上げの営業に関わったらどうかということで、そこから営業への転換が始まり、そのキャリアが始まった。

その後、ウルシステムズを経て豆蔵に入った。コンサル会社のなかでは営業の存在意義がまだ低いと感じた。稼いでいるのがコンサルであり、開発者なのでコンサルの地位が非常に高いが、会社を支えていくうえで技術者が成長できるプロジェクトを供給していくのが営業なので、営業の力を上げなければ会社が成功しないと思った。

豆蔵に入り11年前に社長を引き受け成長へ導くことができた。元々は技術者だが、後半は営業のバックグラウンドが非常に強く、技術者が喜ぶわくわくするような仕事を供給することを第一に、この20年取り組んできた。

―コングロマリット・ディスカウントの解消などのためにMBOを行ったが、その後どのような経営改革を行ったのか
元々豆蔵は収益性が非常に高く、順調だ。コーワメックスは400人を超える技術者がいる。車載ソフトの開発事業が中心で、単価もまだ100万円に満たない状況だった。東海地区でも、車載のシステム開発だけではなく、豆蔵と同等のコンサルのビジネスニーズは絶対あると、社内に豆蔵に類似したDXのコンサル組織を新たに作った。

例えば、デンソーやアイシンの仕事のなかでも、新しいDXのコンサルに人を配置転換して収益性向上にこの3年の間、取り組んだ。その結果として、収益性が高くなる世界を我々は感じ取ることができ、それが今軌道に乗っている。具体的な成果としては、コーワメックスは約3年前、営業利益率が12.5%前後だったが、昨年度末に17.5%、営業利益を約5%が伸ばすことができた。

エヌティ・ソリューションズに関しては、同業他社からの仕事、つまりセカンダリービジネスが全体の売上の9割を占めていた。エンドユーザーと直接仕事をするほうが収益性も高いし、技術者もエンドユーザーと直接対峙できると成長できる。そういう意味で、プライム化比率を上げていくことが大事だった。新しい顧客をどうしていくかというのは、豆蔵が持っている顧客をエヌティ・ソリューションズに紐付けて、新しい顧客とのビジネスを増やしていくことで収益性を上げていくことを、約8年前から私が社長になり取り組んでいる。今だいぶ軌道に乗ったので、非常に順調な立ち上がりを図ることができている。

―DXを推進してきた会社にはうまくいっているところと、そうでもないところがある。現状と課題、伸び代について
AIは確かに進歩しており、新しい技術が日々生まれている。ただ、日本でDXビジネスがうまくいかないのは、我々が顧客の現場と話していて感じるところとしては、技術やテクノロジーにフォーカスした課題ではなく、豆蔵の原点にも繋がるが、上流工程にあると考えている。

生成AI然りだが、AIの技術をどう使うのか、技術を使って何を解決していくのか。その目的や課題を制定していく能力に日本の企業は欠けている。生成AIのプロジェクトを進めるうえで、そのプロジェクトの目的や課題をどう特定していくのかしっかり論理的に定めることが、これから日本企業がDXを進めるうえでは非常に大事なところだ。

どうしてもAIや技術に目が行きがちだが、それを使って何をしたいのか、その課題の設定能力が非常に問題だろう。

―IT企業でありながらロボティクスまで手掛けるのは珍しいが、2025年の崖問題やDX人材の需要という面では、競合がいるだろうが、差別化のポイントは
豆蔵の創業の原点に関わるところだが、ITのプロジェクトで大事なのは、設計段階と企画構想といった上流にある。これからデジタルビジネスを進めていくうえでは上流工程において革新的なアイディアを実現し、製品・サービスに落とし込めるかどうかが、デジタルビジネスにとっては大事だろう。

上流工程を成功に導くための技術は、AIソフトエンジニアリングやロボットテクノロジーというアカデミアな要素技術が、とにもかくにも大事だ。その技術に関しては、会社ができてからずっとそこを追求している。IT業界でそこに着目して追求してきた会社はないと思う。そこが圧倒的な競争優位性と見ている。

―売上について、スポット収益がメインなのか、ストック収益的なものもあるのか
人数×単価、人月単価のビジネスの積み上げになっている。ストックという意味では、クラウドコンサルティングでは、毎年4月から7月に新人教育がある。例えば、ニッセイ情報テクノロジー向けに年間で3~5億円の新人教育を行っている。これは季節性が非常に高く、毎年リピートで受注している。また、同事業では、基幹系システムを3~4年かけてコンサル開発をして、その後保守フェーズに入る。また5年経つと新たな基幹システム刷新が生み出される。そこも非常に継続性とリカーリング性が高い。クラウドコンサル事業とモビリティー・オートメーション事業では、(その割合が)非常に高くなっている。

―ロボティクス分野で、食品メーカー向けにサービスを提供していくとのことだが、いろいろと難しいことがあるだろう。どういったところを乗り越えていくとうまくいくのか
食品メーカーも非常に幅が広く、私も例えば、惣菜や麺を作っている顧客の工場を見に行った。外国人の労働者が数多く働いている。今非常に問題なのはインフレや特に円安により、外国人労働者が日本に根付かないことがある。

工場の責任者から見ると、ロボットを入れた自動化が最優先で求められる。ただ、従来型の大きいロボットを入れてしまうと、生産ライン、需要量やそこで作られる食品の種別に合わせて生産ラインを変えていかなければならない。大型のロボットでは柔軟にシフトできない問題がある。

今は人とロボットが共同で作業するいわゆる「協働ロボット」が大事だということで、三井化学が持っている非常に柔らかい樹脂がロボットの外骨格に適しており、豆蔵が持っているロボットテクノロジーと組み合わせることで新しい世界が作れるのではないか。そういった研究投資開発プロジェクトが今、2つ3つ動いている。外国人労働者がいなくなることを前提に協働ロボットが求められている。

―生成AIの利用に関して、工数の削減だけではなく質も高まっているとのことだが、具体的にどういったことを示し、業績にどのようにインパクトがあり得るのか
生成AIに関しては、開発やテスト工程という下流の分野で活かされるだろうと言われている。逆に、我々は上流工程のほうが、生成AIのインパクトが非常にあるのではないかと考えている。

昨年末に、豆蔵のホームページで生成AIの上流の取り組みのサービスを発表した。いわゆる要件定義や業務分析をしていく上流を、顧客自身が例えば、(業務をシステム化していくうえで可視化しつつ整理する)モデリングの技術を持って取り組まなければならないが、そこに技術的な壁があることで、顧客自身がそれを取り組む部分がうまく進んでいない。

ただ、そこに生成AIと、豆蔵が持っている上流を簡易的に進めるソリューションを発表して、生成AIとの組み合わせで、技術力に課題のある顧客でも対応できるものを発表した。

既に自社の顧客で今取り組んでいて、半年ぐらい経つとその成果が出てくると想定している。開発・テスト工程での生産性を上げて、来期以降の収益に貢献していきたい一方で、豆蔵の強い上流工程に生成AIをあえてしっかり組み合わせて、新しいイノベーションを作っていきたい。

―中長期の経営計画で、売上高と営業利益がいずれも2ケタ成長を見込んでいるが、どの事業が牽引するのか
4つのセグメントで説明すると、クラウドコンサルとモビリティー・オートメーションで全体の売上の7割を占めている。残りの3割はAIコンサルティングとAIロボティクス・エンジニアリングだが、それらの利益率が高く伸びている。クラウドコンサルとモビリティーは継続性が高い事業で、とても安定している。その安定を前提に、AIコンサルとAIロボティクスを伸ばしていくのが大きなポイントになっている。

モビリティーは社員数が多いので、1人ひとりの収益を上げていくことで、15~17%という営業利益の伸びを達成できる。そういうことをしっかり確認して中計を出した。全ての事業を事業部採算制で運営しているので、それぞれが大事だが、裾野が広いのがクラウドコンサルとモビリティー、収益が一番伸びると見ているのがAIコンサルとAIロボティクスだ。

―投資家のなかには、中期経営計画は保守的な見方であり上乗せに期待している向きもあったが、その点は
既に豆蔵とエヌティ・ソリューションズは単体で見ても営業利益率が20%を超えている。コーワメックスは18%近くなっている。3社平均でも18%を超えている状況だ。中計で18%以上と謳っているので、そこが本当に保守的かは、そこで理解してもらいたい。

―航空宇宙分野について
AIコンサルにコンピュータサイエンス、AIを学んだ人材が約40人いる。東京大学や名古屋大学の大学院で航空宇宙を学び、例えば、JAXAで働いていた人間やそういうメンバーが5~6人いる。昔日経新聞に連載記事を出したが、宇宙関連に非常に興味を持っているコンサルがいる。

SDGsやESGをやる時に、衛星データを活用したモニタリングの精度を上げていく仕組みがこれから求められるので、一部そのような取り組みをしたり、サービスを立ち上げている。夢がある世界だが、そういったところをやっている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]