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上場会見:POPER<5134>の栗原CEO、業界特化で塾を支援

15日、POPERが東証グロースに上場した。初値は公開価格の700円を58.57%上回る1110円を付け、999円で引けた。教育事業者に特化したSaaS型のコミュニケーション&業務管理プラットフォーム「Comiru」を開発・運用する。学習塾が行う保護者との連絡や入退室管理などのバックオフィス業務をデジタル化(DX)し、教える時間をより多く捻出できるよう効率化。大手教育事業者等向け基幹システム機能を持つ「ComiruPRO」などの関連サービスも扱う。栗原慎吾CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

塾の業界内でこれまで手作業で行っていた業務を自動化、電子化することで効率化し、作業時間を大幅に削減できると説明する栗原CEO
塾の業界内でこれまで手作業で行っていた業務を自動化、電子化することで効率化し、作業時間を大幅に削減できると説明する栗原CEO

―初値・終値が公開価格を上回ったことの受け止めは
本当にマーケットからの評価を受けたと考えており、この評価や期待に応えていけるように今後も精進していきたい。

―今後の展開サービスの余地について
これまでは入会した後の管理を中心に行ってきた。今後は入会前の、例えば、見込み顧客の管理や入会時の手続きをオンライン上でできる機能といったバリューチェーンのなかの手前の部分を開発していくことが1つ目だ。あとは、いろいろなデータを分析していく機能に、主に大手学習塾を中心にニーズがある。いわゆるBI(Business Intelligence)と呼ばれるものを提供していく。

これによって、これまで教室ごとの運営の評価を手で集計していたものを、かなり素早く確認できる点や、「保護者とこういうコミュニケーションをしているところは、退会率が低い」といった今まで見ることができなかったようなデータを可視化させていくことで、学習塾の新しい運営戦略を支援していきたい。

―競合は
大手塾は、数十年前から5000人以上の生徒を抱えていて、当時はクラウドサービスもなく、ほとんどはSIerに頼んでフルスクラッチでシステムを作っていた。この領域の競合は基本的には、地場にある上場企業ではないようなSIerが競合になってきている。ただ、これまでオンプレミスでやってきたところと、クラウドでどちらがいいかというこの比較のなかで今我々が少しずつひっくり返してきている。

中堅塾は、システムが必要になってくるが、今までSIerに頼むほどの投資余力がなく、社内でマクロを組み、アクセスで賄ってきたところが中心となる。そういったところは今、我々が提供しているComiruPROでシェアを取ってきている。

個人塾の主な競合は、エクセルなどで目立つ競合はいないが、LINEを使っていたりする。そのため、100%業界特化ならではの良さを打ち出してシェアを安定的に拡大したい。

―目立つ競合がいないなら無理に広告宣伝費を投入しなくとも良いのか
その通りだ。

―今の営業活動は
大手中堅に関しては、展示会やアウトバウンド営業をかけて開拓している。個人塾に関してはインバウンド中心、マーケティング中心で大きく網をかけて取っていく。

―成長戦略として、講師の空き時間を利用した個別指導のマッチングに関して、それで講師が売り上げを上げられるようになると所属している塾を離れてしまう懸念はないのか
現状では、社会問題になっている不登校児に対してのアプローチとして考えている。塾の講師は、学校が終わった夕方からの授業を行う。

不登校の子供たちは学校に行っておらず、その時間帯は、親としては勉強してもらいたいというニーズがある。講師は午前中の時間が空いていて、主業務は塾にはなるが、不登校の子に教える点では、副業的に行ってもらえる形で進めていきたい。

姚志鵬CFO:補足すると、塾にもベネフィットを一部還元する形にしている。講師の空き時間にこのようなネットワークに参加すると、塾にも講師にも児童・生徒にも良い関係になるのではないか。

―公教育領域への進出イメージについて聞きたい
栗原CEO:現在、例えば、自治体による児童・生徒の入退室システムの公募などが複数ある。今後、そういったところにも力を入れていき、応募して実績を作っていく。それ以外にも、現状、地方の教育委員会から問い合わせを受けており、しっかり対応して学校に導入してもらえるよう動いている。

―学習塾と公教育以外の習い事の分野でのサービス提供に関して、最近の社会人の学び直し需要との関係では商機はあるのか
このマーケットのなかで1つの価値としているのが、保護者と子供と講師との三者構造で、その形のなかでの付加価値が大きい。預けている保護者と会話している子供というなかでの、絶妙なコミュニケーションの部分だ。

社会人向けのサービスとなった時に、本人がお金を払って、自分で行っていることから、使い方が違ってくる。直近でそういったところに参入していくことは検討していない。習い事に関しても、基本的には子供向けの習い事が、直近で参入していく領域になる。

―事業リスクとしてのカントリーリスク、開発体制の話だろうが、海外の人にコーディングやプログラミングを依頼している状況を個人投資家が気にしていた
姚CFO:現状、台湾と中国のリモートエンジニアを起用しているが、今後、徐々に日本におけるエンジニアを増やしていこうと思っている。また、中国以外の、例えばベトナムを含めた他の国でのオフショア開発体制も検討したい。これによって、カントリーリスクを低減していきたい。

―M&Aなどのスタンスは
栗原CEO:学校領域については、全く異なる商習慣などがあるため、M&Aを行うことによって、今後我々が参入していきたい私立・公立学校にスピーディーに参入できるというところであれば、M&Aも積極的に考えていきたい。

―ベンチャーキャピタルの資本参加による資金面以外でのメリットは
例えば、証券系や生命保険系の会社からは顧客紹介もあり、たくさんのメリットを受けた。

―長期的な株主還元は
短期的には株価で貢献し、長期的には配当を含めて利益を還元していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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