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上場会見:ティムス<4891>の若林社長、パイプラインに拡大余地

22日、ティムスが東証グロースに上場した。初値は公開価格の670円を37.16%上回る919円を付け、769円で引けた。東京農工大学発酵学研究室の研究で発見した化合物を研究段階からヒトPOC(Proof Of Concept)取得完了まで単独で遂行し、グローバルに展開するBiogen(バイオジェン)と提携。パイプラインの「TMS-007(007)」は急性期脳梗塞を適応症とし、現行の治療薬が対象とする患者数の5倍程度をカバーできる可能性がある。若林拓朗社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

資料を示しながら説明する若林社長。TMS-007は現行の脳梗塞治療薬よりも有効性や安全性の面で優位性があり約21億ドルの市場規模は最大で6倍程度に拡大する見込みがあると話した
資料を示しながら説明する若林社長。TMS-007は現行の脳梗塞治療薬よりも有効性や安全性の面で優位性があり、現在約21億ドルの市場規模は、最大で6倍程度に拡大する見込みがあると話した

―初値が公開価格を上回った感想は
非常に良い値段が付いたと思っているが、その後今ストップ安ということでどう捉えてよいのか分からないが、いずれにしても公開価格よりも高いところで今日は終わり、投資家から期待してもらっていると受け止めている。今後も投資家の期待に応えられるように努力したい。

―グローバル・オファリングを実施した狙いと、海外向けに56%程度を割り当てているがそのぐらいの株数を海外に売り出したのか
そこ(海外への売出株数)は目論見書に書いてある通りだ。狙いとしては、医薬品開発は基本的にグローバルな産業であるので、今後の成長を考えていくうえで、日本の投資家に絞る必要がないと考えた。世界で我々のことを理解してもらえる、あるいは医薬品開発や脳梗塞などに造詣が深い多くの有力な投資家にアプローチし、フィードバックを得たかった。

―IPO市況が全体として低迷しているなかで時価総額が300億円ほどだが、Biogenとの提携が評価されたのか
Biogenとの提携も007の臨床試験の結果も、008への今後の期待も全て含めて総合的に評価されたと思っている。

―ロードショーのなかで市況の厳しさは感じたか
基本的にはポジティブな評価を総合的には得られたと思っている。一方で、予想されたことではあるが、日本のバイオテック企業に投資をしたことがある投資家は非常に少なかった。そういった面で、評価はされたが、実際の投資には至らなかった投資家もかなりいたのではないか。

―いわゆるバイオスペシャリストと呼ばれる海外の機関投資家からの評価はどのようなものだったのか
一概に言うのは難しい。我々の主張したいことを非常によく理解してくれた先もいたし、そうでない投資家もいたという理解だ。ロードショーをしていて、いろいろなスタンスや考え方の投資家と話してマーケットライクというかそのような経験をした。

医薬品の開発という面では非常に理解が深い投資家が多かったと思うが、一方で、脳梗塞など特定分野といった個別の特性に関しては、短時間で理解してもらうのがなかなか難しかった側面もあった。

―個人投資家からするとパイプラインが少ないのではないかとの見方があるが
いろいろ人からフィードバックを受けているが、パイプラインがどれだけあってもここまでの結果を生み出す007のようなものが出てくる可能性は低いのではないか。それを既に達成しているパイプラインがあることは、投資をする観点からは逆に効率的ではないかと思う。

矛盾しているかもしれないが、今後の成長という意味でパイプラインを充実していきたいと考えている。それはどちらかというと我々の経験を生かして、優れた研究成果がある場合には、我々がそれをさらにうまく事業化できるのではないかと考えている。その活動は既に開始していて、まだ公表できる段階にはないが、いくつか検討している。

―日本に限らずということではあるが、優れた研究者の成果をグローバルな医薬品市場に橋渡しをしたいとのことだが、アカデミアと連携していく具体的な方策や特長はあるのか
特段何か変わったやり方をしようとは思っておらず、正攻法でいろいろなものを評価して、当社が取り組めると思ったものを取り込んでいく。

おそらく、ほかのバイオベンチャーは自分で開発したものにリソースをほぼ注ぎ込んでいかなければならない状態ではないかと思うが、当社では、007には今後費用がかからず、008も前臨床(の段階)にあるので、逆に言うとパイプラインを広げる余裕がある。良いものがあれば、ぜひ積極的に取り組んでいきたい。

―営業収益で、Biogen(からのマイルストン収入)との関係で今後の進捗に期待する面が大きいと思うが、具体的には大体いつ頃かという感触があれば
そこは公表していない。

―順調には行っている感触なのか
次の治験を開始するというアナウンスもあった。

―それ以外の営業収益は、当面は
予定しているものはない。

―もう1度確認したいが、マイルストン収入に関して、フェーズ3の5症例目の投与完了後に6000万ドルが入ってくることは決まっているのか
そうだ。

―ただ、その前にBiogenがフェーズ2bを近々開始することを発表しており、それに伴うマイルストーン収入があるかどうかは不明である…
不明なのは、フェーズ2bが始まって、元々決まっているものにプラスされて何かが払われることはないと思う。フェーズ2bをフェーズ3と見てというようなことがないとは言えないと思っている。可能性としては非常に低いと見ている。

―脳梗塞の治療薬である「t-PA」よりも高い有効性や安全性を期待できることから、高い薬価を狙える可能性があるとのことだが、どの程度の高さを想定しているのか。期待感があれば聞きたい。
社内では算定しているがそれは開示できない。

―新日本科学との関係で業務委託をしているがどのような関係か
非臨床の実験を依頼している部分がある。

―「TMS-008(008)」は非臨床試験か
そうだ。

―008のフェーズ1を来年にも始めたいとのことだが、自社で行うという認識で良いか
そうだ。

―資金調達の考え方はどのようなものか
今回の調達で、基本的には次のマイルストーンが入ってくるまでの必要資金を確保した。もちろん、途中で事業結果なり開発費が変わることで、資金計画が変わる可能性はあるが、現時点でのシナリオとしては、追加の資金調達は当面必要ない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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