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上場会見:JRC<6224>の浜口社長、コンベヤの安定性、ロボの成長性

9日、JRCが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1110円を7.93%下回る1022円を付け、980円で引けた。コンベヤ部品の設計・製造・販売と、課題解決型の運用改善・メンテナンスを行う「ベルトコンベヤ事業」や、自社での産業用ロボット活用経験に基づき自動設備などを設計・製造・販売する「ロボットSI事業」を手掛ける。初代社長の浜口匠氏が1961年に大阪市で浜口商店を創業し、コンベヤ製品の製造・販売を始めた。浜口稔社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

ロボットの使いやすさや使いにくさを把握しており、使いやすい形に仕上げて、中小企業が簡単に導入できるようにしていると話す濱口社長
ロボットの使いやすさや使いにくさを把握しており、使いやすい形に仕上げて、中小企業が簡単に導入できるようにしていると話す濱口社長

―初値について
残念ながら初値は少し低めで初日としては(低めの終値で)終わっているが、それはマーケットの評価として受け止める。業績をしっかり上げて、事業や企業の価値を粛々と上げていくように取り組んでいく。

約束をきっちりこなしていくことを繰り返しながら信用を上げていくしかない。そこに関して役職員一同しっかりとした成果を挙げられるように活動していきたい。開示に関しても、やるべきことはしっかり投資家に開示して、開かれた企業として進めたい。

―筆頭株主のインテグラルについて。2020年1月に資本参加してそこから3年という、ファンドとしては短期での売却と見るが、当時は資本参加するというリリースを見ても理由が分からなかった。その背景や理由、成果は
資本参加の背景は、ちょうど2018年にロボットSIの事業を開始し、2019年辺りから少し手応えが出てきた。コンベヤ部品事業は非常に安定性があったが、会社を永続的に発展させていくためには、成長性のある事業が必要でやりたいと常々考えていた。そのなかで社会課題として労働人口減少の問題が顕在化してきた。

ロボットに関する自動化ノウハウを長年蓄積してきたので、それ自体が事業になり得るのではないかとロボットSI事業を始めた。少し発展が見えてきて、会社を永続的に運営していくためには、オーナー企業であるよりは上場企業であるほうが良いのではないかと考え、上場を目指そうとしたのが2019年のことだった。

上場企業を目指すのであればスピードを速めて、早めに上場したいという思いを持ち、上場のノウハウを持つファンドと組もうと決めた。いろいろなファンドと面談し、インテグラルとは最も相性が良かったし、我々の事業に対する理解も非常に高く、ぜひ一緒にやらせてもらいたいと取り組んだ。また、2020年1月に契約した後、すぐに人材を派遣してもらい、事業の成長や発展に、しっかりと働いてもらった。IPOも目標通りできることになった。非常に期待通りの内容だった。

インテグラルとしては、投資の時期が、ファンドの期限の最初に投資したわけではなかった。期間としては中間ぐらいの時点で我々に投資しているので、期間が十分に長いかというと、そのような感じではなかった。株式上場を早める目的で一緒に取り組み、インテグラルとしてもエグジットはそこでと考えていたと思うので、このタイミングになった。

―インテグラルの保有株式が数%残っているが、それは今後どういう流れになるのか
オーバーアロットメントを含めて売却が進めば、ほぼなくなる予定だ。

―親引けでは安定株主を作っていくのか
そのような考え方だ。

―上場の目的は何か。公募による調達も少ない
基本的にフリーキャッシュフローは潤沢にあると考え、調達をあまり意識していない。どちらかというと将来の発展性の部分で、オーナー企業であるよりは上場して社会に開かれた企業になって、優秀な人材の採用や、M&Aにしてもそうだが、信頼性が高まる効果に重きを置いて、上場を目指した。

―ベルトコンベヤといえば、構成部品にベルトも入ってくるが、JRCはあくまでもアイドラやプーリが主戦場のようだ。ベルトの位置付けはどのようなものか。沿革上作ってこなくても問題がなかったのか
長年の歴史があるなかで、我々の製品であるローラやプーリなどの品物を販売してもらうのが、ベルトの販売店というケースも多かった。そういった形で顧客のマーケットに対して出ていくことは、現在まではしてこなかった。

ただ、エンドユーザーが求めるのは、ベルトコンベヤのトータルメンテナンスであるというのは十分に感じている。そこに対して、今後は、エンドレス加工というベルトをつなぐ加工や修理に関してはしっかりできる体制を作っていきたい。そういった加工もできるというグループ会社の大成もある。そのようなノウハウを持って、今後もそういう企業があれば、M&Aなどの手法も含めて広げていきたい。ただ、ベルトの製造は非常に大がかりな話になるので考えていない。販売に関しては、中期的な話としては十分あり得る。

―コンベヤ事業のソリューション拡大のなかの、予知保全サービスについて。展開することで収益モデルは変化するのか。収益に上乗せしていくのか
まだ具体的にできているサービスではないが、やはりサブスクリプションのような売り上げ形態を検討している。物を販売して終わりではなく、継続的に遠隔でベルトコンベヤ全体のメンテナンスをできるサービスで収益を上げていくモデルにしたい。

―コンベヤの海外事業の見通しについて、インドネシアと北米向けとのことだが、製品が石炭などいわゆる「バラ物」に強いということで、搬送機器の需要が増えるのではないかとして進出するのだろうが、2つの地域を選んだ理由は
インドネシアと米国は、中国とインドに次ぎセメントや石炭などの産出量が多い。そういう物が現地で産出できることは、長距離のベルトコンベヤの使用量が多いことに直結すると見ている。マーケットとして非常に大きいと想定している。

特にインドネシアでは、現地で有力なメーカーが育っていないこともあり、我々が進出することで、かなりの優位性が保てるのではないか。また、バイアングループという現地の資源大手と取り引きがあり、そちらからもぜひインドネシアでものづくりをして欲しいと言われている。

―M&Aについて。近年に実績があるが、今後は
ベルトコンベヤ事業もロボットSI事業も周辺領域においてぴったりくるような事業で、しっかりと技術を持つ会社に関しては凄く興味がある。積極的にグループとして一緒にやっていける企業があれば、ぜひ取り組んでいきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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