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上場会見:シマダヤ<250A>の岡田社長、進化する麺

1日、シマダヤが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の1880円を6.38%下回る1760 円を付け、1667円で引けた。麺類の製販を手掛ける。家庭向けに「流水麺」や「太鼓判」といったチルド麺や冷凍麺を、業務用では外食や中食向けに冷凍麺を主に扱う。メルコホールディングス<6676>からの「株式分配型スピンオフ」で、コングロマリット・ディスカウントを解消する。株式分配型スピンオフとは親会社が特定の事業部門や子会社を独立させるもので、メルコHD株式1株につき、シマダヤ株式1株の割合で現物配当を行う。岡田賢二社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

岡田社長は、主力商品である茹でずに食べられる「流水麺」の開発の経緯に触れ、地球温暖化による気温上昇と残暑の長期化を商機として、同商品を年間商品とすることで、夏場に偏るチルド麺の販売を平準化していくと話した

―場中ではあるが、今日の株価について
厳しいスタートだったというのが正直なところだ。ただし、市況などの影響もあり、我々がコントロールできるものではないので、これからどう企業価値を上げて株主や投資家の期待に沿っていくか、今日始まったばかりなので厳粛に受け止めながら進めていきたい。

―7~8年前にメルコHDの子会社となった時に、IT技術を使って食の安全などへの取り組みを志向していたが、今後メルコの技術を使ってDXやデジタル化を進めるのか
これから画期的なものが出てくれば、独立して活用していきたいが、2018年に100%子会社になってから、当初の目論見では生産工場におけるIT化が大きかった。特にカメラの導入などを検討していたが、11工場あると能力の大きさや作っているチルド麺・冷凍麺、スープ付きの製品など、細かい対応が必要となる。

装置産業とは言われながらも細かい対応をしていくなかで、なかなか合うものが提案できなかった。これまでシナジーに繋がらなかった。本当に素晴らしいものが出れば別だが、現在ではシナジーが生まれないだろうということで今回の形に至っている。

―メルコグループに入ってから、IT化以外の例えば、組織の面でプラスになったことは
内部統制などを含めた社内管理体制について、上場会社に準ずることでかなり整備してきたので、上場するに当たってそれは大きく活きている。

―流水麵の開発に際し、全国の消費者にアンケートを取ったとのことだが、そこからだいぶ時間が経っている。消費者ニーズの見つけ方をアップデートさせているのか。どのように消費者ニーズを酌み取っているのか
アンケートなどで顧客の声を定期的に取るようにしている。今1番に取り組んでいることは、お客様相談室に、1日に平均15~20件弱集まってくる顧客の声を、個人情報に繋がらない(形で)全ての従業員が閲覧できるようにしていることだ。

直近で嬉しかったのは、30歳の男性から「子供が冷凍麺しか食べていないが、御社のチルドのうどんを食べたら、びっくりするぐらい食べてくれて、良いことだから妻と相談して電話した」との声があったことだ。そのような声が全ての従業員に伝わるようになっている。日配の製品を供給しているので日々情報を吸い上げて、流水麺は特にそうだが改善を続けている。

業務用については、卸店を通して商売をしている。商流・物流は卸店なので彼らに同行して実際にどんなメニューで使っているか、新商品が出たら逆に勧めながら、次のメニュー展開も含めて提案する。

家庭用であればできるだけ消費者に近いところ、業務用であれば外食、店舗側に近いところで商売するようにしていて、5年に1回は大々的なことをしていかなければならず、これからそういうことも含めて取り組んでいきたい。

―食品業界の値上げが相次いでおり、シマダヤも去年、一昨年と値上げしているが、価格戦略は
今年度は減益の見通しを立てているが、大きいところでは人件費、特に製造工場が11あるので労務費や物流費などの高騰が多い。原材料は、添加物などは上がっているが、トータルで見るとそこまでではない。一方で、この下半期から包材やダンボールなども上がる。上がったものについては、今後上げて、しっかり丁寧に説明して、きちんと利益が出るようにしていきたい。その利益で新しい商品や価値創造に繋げたい。

―西日本地区の寡占化が今後進むであろうとのことだが、その構造的な背景や要因について聞きたい
関東では上位3社のシェアが全体の5割を超えている。しかしながら、我々が今攻めている京阪神や東海地方は、その3社で3割しかない。7割が中小の地場の製麺業者で、ここはいろいろな見方があると思うが、我々は製麺屋として93年やっているので、よく分かるのは、老朽化の更新がなかなか厳しい、後継者問題もある。私は5代目だが後継者や老朽化問題についてはかなり厳しいのではないかということで、生産設備や営業人員を整えていく話をしている。

―今後の投資方針について、設備投資は冷凍麺を中心に投資していくとのことだが、地域別に見た場合でも東日本に偏っている現状がある。冷凍麺以外の設備投資に関して聞きたい。また、DX投資やM&Aについては
どちらかと言えば東日本寄りの生産拠点で、売上もそれに準じている。ただ、3年前から西日本エリア、特に家庭用チルドでテレビ広告を入れながら「太鼓判」ブランドが育っている。

西に新たに、増強に繋がることも考えながら、いずれにしてもトータルの生産供給量に鑑みながら、ゆっくり着実に検討したい。当然、安心・安全に繋がる老朽化更新といったものは毎年予算取りしているので、きちんと進めていく。攻める投資については冷凍麺主体になると想定している。

DXについては、構造改革の3ヵ年で今後のことを考えていきたい。M&Aは縁なので、現在答えられるものは抱えておらず話すことはないが、我々に合致するものがあれば検討したい。M&Aが全くないわけではない。よく質問があるところでは、チルド麺、「西の製麺屋さんはどうですか」という話がある。

今ある中小の製麺業者はどちらかというと日持ちのしない製品を作っている。非常に限られたスペースで運営しており、我々はその後工程として殺菌工程や、冷凍麺であればフリーザーを入れる。そうした設備を導入できるそれなりのスペースがある製麺業者はない。

同業であるとすれば冷凍麺のところだが、これも本当に簡単ではない。我々としては今のところ飛び地(が生じるM&A)をするつもりはない。麺を主体とした、強いて挙げれば添付するスープやつゆ(を扱う業者を買収対象にすること)はあるかもしれない。

―海外事業の現状と今後の方向性は
基本的に冷凍麺が主体で、全体の売上構成では5%もない。日系の、特に国内の商社と商談しながら、引き合いがあれば取引している。過半数が香港で、次に大きいのは北米だ。

引き合いのなかでやっているので、今後どうするかはこの場では話せないが、ポテンシャルはあると感じているので、この4月から始まっている新中期経営計画における「Change 95」という構造改革期で、次なるビジネスになる伸び代のあるところを議論している。

―今後の株主還元施策について、優待はどうか
当社は、日持ちしないチルド麺と、業務用冷凍麺で、スーパーに行ってもらうと分かるが、業務用なので5食入りのパッケージでそれほど派手ではないものが主体だ。食品メーカーである以上、株主優待を考えていたが実態に合わない。

一方で、今回はスピンオフ上場だったので、メルコHDの株主が基本的にはそのまま当社の株主になるという見方で、株主還元をしていなかったので、(株主優待を求める)声が、私が想定していたよりも多かった。当初はここまで要望が出るとは思わなかった。今の商品群では難しいが、実施の是非を今言うのではなく、どうしたら要望に沿えるのか考えていこうというところだ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]