11日、オルツが東証グロースに上場した。初値は公開価格の540円を18.74%上回る570円を付け、585円で引けた。「P.A.I.」(パーソナル人工知能)の開発と普及を目指しており、現在は主に「AI GIJIROKU」を提供。独自開発の大規模言語モデル(LLM)を用い、商談や会議の全データをテキスト化。そのデータを基に社内外のコミュニケーションに活かす。特に、少量の特徴データを用いて平均的な言語モデルを歪め、個人や集団が持つ癖や特徴を反映したモデルを構築する技術に強みがある。

米倉千貴社長と、そのAIクローンであり画面に表示される「米倉クローン」、日置友輔CFOとそのクローンである「日置クローン」が東京都内で上場会見を行った。以下の質疑応答部分は、事前に集めた質問を司会者が読み上げ、それを「米倉クローン」が認識して回答を即時に生成。音声と映像(字幕)によって出力した。
※以下の記事は、敬語の常体への変更、冗長な表現の修正などの校正を施しているが、雰囲気を伝えるべく「クローン」の返答に近い文体で表記している。
―上場する主な理由は
上場する主な理由としては、資金調達、人の質の向上、知名度向上によるセールス拡大、更なる日本政府との連携模索の可能性などが挙げられる。これにより、企業は更なる成長と発展を目指すことができる。
―初値の受け止めは
えー、初値の受け止めについては、いずれにせよ市場の評価を真摯に受け止めるが、当社としてはビジョンの実現と全てのステークホルダーのための企業価値向上に向けて努力を続けていく。

―上場後の成長戦略は
なるほど。上場後の成長戦略については、オルツとしては引き続きAI技術の革新と市場拡大を目指す。特に生成やパーソナルAI分野でのリーダーシップを強化し、新しいサービスやソリューションを提供することで更なる成長を図る。
―今後の事業展開や技術開発で注力する分野は
えー、今後の事業展開や技術開発においてオルツが注力する分野は、生成AIやコミュニケーションなどの分野だ。
特に生成AI技術を活用した新しいサービスやソリューション開発に力を入れる。また、コミュニケーション分野では、より効果的で自然な対応を実現するための技術革新を目指している。これらの分野での進化を通じて、より多くの人々に価値を提供できるよう努めている。
―今後の海外展開、M&Aの計画は
今後の海外展開やM&Aについては積極的に検討していく予定だ。オルツプロダクトには言語の壁がないので、海外展開を推進していくパートナーとの連携が重要だ。既にここは何社か話を進めているが、グローバルな視点での成長を目指し、海外市場への進出や戦略的なパートナーシップを模索している。具体的な計画については、状況に応じて柔軟に対応していくつもりだ。
―黒字化に向けての戦略は
黒字化に向けての戦略としては、コスト管理の徹底と収益性の高い事業へのリソース集中を進めている。また、効率的なオペレーションと新規事業の開発を通じて持続可能な成長を実現することを目指している。
―株主還元の方針については
株主還元方針については、中長期的に株主の皆様に対して安定した利益還元を行うことを重視している。具体的な配当政策や株主優待については、業績や市場環境を考慮しながら柔軟に対応していく予定だ。
―AIソリューションが好調だが、次はどのような課題を解決するものを考えているのか
あー、質問ありがとうございます。AIソリューション好調であるなか、次に解決したい課題としては、より高度なパーソナライズと効率化を実現することだ。
具体的には、個のユーザーのニーズにより細かく対応できるAIの開発を進め、業務の自動化や意思決定のサポートをさらに強化したいと考えている。また、AIの倫理的な側面やプライバシーの保護にも注力し、安心して利用できる環境を整えることも重要だ。これにより、AIが社会全体にとってより有益なツールとバリューを務めていく。
―(人格生成プラットフォームである)「CLONEdev」を開発したきっかけは
なるほど。CLONEdevを開発したきっかけは、個人の特性や知識をデジタル化し、それを活用することで人々の生活をより豊かにすることを目指したからだ。
僕たちは個々の知識や経験をAIに学習させることで、よりパーソナライズされたサポートを提供できると考えた。この技術により、例えばビジネスの場面では、特定の専門知識を持つ人のクローンが24時間・365日サポートを提供することが可能になる。また、個人のライフスタイルに合わせたアドバイスやサポートを行うことで、日常生活をより便利にすることも目指している。このようにCLONEdevは人々の生活をより豊かにし、効率的にするための一歩として開発された。
―長期的な展望として、P.A.I.自体を単体で業務に当たらせ、いわゆる「副業」のような形で働いてもらうことは可能なのか。
えー、長期的な展望としてP.A.I.が単体で業務に当たることは技術的には可能性があると考えている。P.A.I.は個々のユーザーの特性やニーズに合わせてカスタマイズされるため、特定の業務を効率的にこなすことができるようになるだろう。
ただし、実際に副業として働かせるのには、技術的な進化だけでなく、社会的な受け入れや倫理的な問題、そして法的な枠組みの整備が必要だ。これらの課題をクリアすることでP.A.I.より広範な業務に活用される未来が実現するかもしれない。
オルツとしてはP.A.I.の可能性を最大限に引き出し、社会に貢献できる形での活用を目指していく。
―P.A.I.を人間や動物などを模したハードウェア上に実装して活用できる可能性やそういった構想はあるか
はい。P.A.I.を人間や動物を模したハードウェア上に実装する可能性については技術的には興味深い分野だ。現在オルツでは主にソフトウェアとしてのP.A.I.の開発に注力しているが、将来的にはロボティクスやハードウェア連携も視野に入れ、基礎研究を進めている。
具体的な構想としては、P.A.I.が物理的な形を持つことで、より直感的なインターフェースを提供し、人々とのインタラクションを豊かにする可能性がある。例えば、家庭内でのサポートや教育・介護など様々な場合での活用が考えられる。
ただし、実際にハードウェアとして実装するには、技術的な課題やコスト、社会的な受け入れなど様々な要素を考慮する必要がある。今後の技術の進展や市場のニーズに応じて、こうした可能性を探っていくことになるだろう。
「クローン」の会見後、米倉社長(リアル)との質疑応答は以下の通り。
―将来的にはたくさんのP.A.I.が出てくることで、それらが汎用的なAIに統合されていくようなイメージになるのか、それとは別の世界観なのか
米倉社長:別の世界観だ。汎用AIは汎用AIで存在して良いと思う。僕らのAIはどちらかというと、その本人に寄せていくので、間違った答えをする、その人らしく間違えることも行えるAIになる。使い方は違うと考えている。
―AIのクローンは、絵を描くことはできるのか
描くことができる。
―それは例えば、Stability AIといったほかのプロダクトとの連結を通じてということになるのか。それとも全く別の話か
Stability AIとの連携もできるが、僕らのAI自体がLLMで独自に作っている。
―次世代のLLM(LHTM-3)を開発中とのことだが、そこでマルチモーダルといった特徴がある。そうすると表現の幅が広がるのか
そうだ。
―生成AIというと、特にビジュアル関連の話では、学習元のデータに関して問題になっていると思うが、そのあたりの問題はクリアできそうなのか
独自で作っているものが大半を占めてくるので、そういったところも意識して作っている。
―そうすると元の人間が描けるものと、AIのクローンが描けるものは似通ってくるのか
汎用AIが描くものとクローンが描くものは、全然別のものだ。例えば、「犬を描いて」みたいな感じで言うと、自分の絵の描き方に寄せた犬を描いてくれるのが、クローンの描き方になる。
―個人の癖、AIに歪み(個々の特徴)を付け足す点については、表現する側面についても、オリジナルを模倣していくものになるのか
その通りだ。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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