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上場会見:日水コン<261A>の間山社長、水管理のプラットフォームに

16日、日水コンが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の1430円を6.22%下回る1341円を付け、1366円で引けた。上下水道を中心とした水に関する建設コンサルティングを手掛ける。調査・計画や設計・工事監理のほか、河川や海域・沿岸などの治水、環境保全といった複数の領域をカバーする。発行済株式の49.65%を保有する野村キャピタル・パートナーズ第一号投資事業有限責任組合がオーバーアロットメント分を含めて全て売り出した。間山一典社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

創エネや再エネ、下水汚泥の肥料化など付帯領域への展開も期待されていると話す間山社長

―初値が公開価格を6.2%ほど下回った1341円への受け止めは
正直に言って高い安いという感覚はほぼ持っていない。上場してこういう値が付いた。これは投資家や株式市場からの評価値になり、期待値だろう。これが出発点なのだろう。我々としては、この期待値を少しでも高め、あるいは評価を上げていくために、企業価値の向上に努めていく。今そのスタートラインに立ったと思っており、責任も感じている。

―新規人材の確保が命題とのことだが、上場でだいぶアピールできたのか
人材は我々にとって資本、生命線だ。その獲得競争はますます激化していく。これまで官に対する知名度はかなり高いと自負しているが、一般の人は知らない。知ってもらう努力もするし、自らが社会的な責任を負っていることを示さなければならない。

さらに今後は付帯事業に関わっていく。“壁を越える”ことを中期経営計画の戦略にしているが、水道や下水道(の事業)だけで持続可能な時代ではない。異業種との抱き合わせ、「バインディング」という言葉が使われているが、そういった場合、異業種の人に来てもらうためにはどういうことが必要か。やはり上場が必要条件の1つではないかと考えた。

―野村キャピタル・パートナーズ第一号投資事業有限責任組合による資本参加の効果は
上場するに当たって、個人株主をどう整理するかが1つの課題で、ファンドである野村キャピタル・パートナーズの力を借りた。これまでは、あまり外部のことを意識しなかった。官からの信頼を得て、それでよしとしてきた部分があったが、そこに外部からの視点で、様々な指摘や指導を得たことで視野が広がった。あるいは違う世界からの人材確保にも協力してもらった。

―同業他社と比べての強みは
これまで65年間、水道・下水道の普及や整備のほか、数々の技術的な相談に応じてきた。水循環全体をフィールドにする様々な技術者を確保している。そのような技術力あるいはこれまで培ってきた官からの信頼、これが強みとなっている。河川部門を持っている。この総合力もこれから生きてくるのではないか。

最近では雨の降り方が変わってきて、ゲリラ豪雨と言われている。これまでの雨対策は、河川と下水と分けて行われてきたが、最近では一体で考えなければならない。「流域治水」あるいは「流域水管理」が言われている。当社であれば、河川部門も下水道部門も持っていて、一体での水管理をサポートできる。

―いろいろな局面で流域治水に関わることがあるだろうが、具体的に受注の側面でどのような長所があるのか
流域治水についてはPPP(Public Private Partnership)案件までの発展は、まだ少し早い段階で、社内では下水道、これは「内水」という言葉を使う。技術的には堤防のなかの水と、堤防の外の河川の水である「外水」を一体的にシミュレーションできる。雨が降った時、下水道に水がどう流れて、河川の流量がどうなるかというところまではシミュレーションできる。

さらに、そこに衛星画像でのデータ取得が可能になってきており、組み合わせて本来的な現象解析をまず切り口にしていきたい。ゆくゆくはPPPに取り組む際にも、技術的なアドバンテージや付加価値の提供に繋がっていくだろう。

―現象解析などシミュレーションは業務委託をイメージしているのか
そうだ。

―水道の管理にクラウドのシステムを使っているようだが、IoTに関しては
これからも人口減少のなかでいかに維持管理の効率化を高めるかは、水道・下水道の持続にあって不可欠だ。我々はそういう台帳や図面の整備にITを使うことを古くから手掛けてきた。

クラウド型のシステムは、通常、あのようなシステムは注文生産のような形で作るとかなり高額になる。億単位の費用がかかるが、クラウドを利用して標準化されたシステムで、システム(そのもの)を納めるのではなく月額数万円の利用契約で台帳サービスを提供している。

現在140ヵ所ほどと契約を結んでサービスを提供しており、こういったクラウドでの図面あるいはそういった情報を持っていることが、流域水管理やほかの分野とも一緒に進める際のプラットフォームになる。今後の成長戦略の1つの基盤と見ている。

―既存株主のクボタや親引けを要請した栗本鉄工所などとの事業上の関係は
通常のコンサルティング業務で特に関係を持つことはない。ただ今後、PPP、官民連携の民側の場合、SPCを組むコンソーシアムとして、一緒に組成することはあろうかと見ている。

北海道でRapidusの半導体工場が誘致されて、大量の水を使うので早く水の手当をしなければならない。通常の事業では何年かかかるところを1年ほどで進めてほしいということで、栗本鉄工とジョイントベンチャーを組んだ。デザインビルド、設計・施工一体型の発注で工事をしている。親引けに応じてもらった企業とは、それぞれ今後、官民連携のなかでシナジーを見据えて引き受けてもらったと考えている。

―小水力も含めて、海外市場は
これまでODA案件を中心にプロジェクトを追いかける仕事の取り方だった。今は中期経営計画では、”壁を超える”、”地域に根ざす”、”足元を固める”の三本柱にしている。海外案件についても、ODA案件はこれからもやっていくが、地域に根ざす考え方が必要ではないかと。フィリピンとインドネシア、シンガポールに拠点を置いて人を配置し、地域との話を始めたところだ。

小水力発電については、宮城県でマイクロ水力発電を始めたが、海外案件で小水力発電はもう少し先と想定している。むしろ海外では、経済成長に伴って、排水処理の規制が高度化されだろう。かつて日本が高度経済成長期に公共用水域の水質汚濁が問題になって、例えば、隅田川で早慶レガッタが中止になる。パリ五輪でも「セーヌ川はどうなのか」という話があった。

豊かになった分、公共用水域の水質保全は問題になるだろうと、排水処理の部分で我々のノウハウを海外で活用できないかと思っている。ただ、成長戦略のなかに占める海外事業の割合はかなり小さく、中長期の将来を見ての取り組みと捉えてもらいたい。

―株主還元の方針について配当性向の数字を踏まえて、優待なども含めて具体的に聞きたい
配当性向50%で考えている。そこに上積みした還元策については、今後の業績などを見ながら検討する段階で、そこについては情報の適時開示で速やかに投資家に知らせていく。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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