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上場会見:AnyMind Group<5027>の十河CEO、クロスセル・クロスカントリーで成長

29日、AnyMind Groupが東証グロースに上場した。初値は、公開価格の1000円に対して1009円で引けた。ブランド構築や商材の生産管理、メディア運営、ECサイト構築・運営、マーケティング、物流管理などをプラットフォームで一気通貫に支援する「ブランドコマース事業」や、オンラインで活動するクリエイターの成長を助ける「パートナーグロース」事業を手掛ける。2022年2月と12月に上場承認を受けたが、取り消していた(想定価格:1150円、970円)。十河宏輔CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

これまで未開拓であったエリアに関しても積極的な展開を目指すと説明する十河CEO
これまで未開拓であったエリアに関しても積極的な展開を目指すと説明する十河CEO

―初値が公開価格と同じ1000円だが
無事に上場の日を迎えられて、初値がしっかり付いたことは、ほっとしている。アジアを含む成長産業・市場でビジネスを展開しているので、中長期で成長することをしっかりと市場に対しコミットしていきたい。そのうえで、株主を含めたステークホルダーに中長期で還元できる会社になっていきたい。

―今まで上場を2回中止していて今回は3度目の正直だったと思うが、現在の気持ちは
3度目でようやくここまで来られて素直に嬉しい。継続的に成長していくために、創業時から上場することを1つのマイルストーンとして事業を展開してきた。ただ、我々の事業は成長の余地がある。特に、東南アジアやインドを含めアジアは、向こう5~10年と伸び続ける市場だと見ていて、この上場を新たなステップとして、中長期でしっかりと成長していける会社を作っていきたい。

―上場の目的やタイミングは
企業として認知度や採用力を上げていきたいという目的が1つある。IPOを通じて資金調達の手法を増やすことができるので、成長資金を、しっかりと確保していきたい。この2点が、今のタイミングで上場することを決めたポイントとなる。

―本拠地がシンガポールだが、東証に上場した理由は
シンガポールで創業したので、当初は海外上場を含めてあらゆる選択肢があった。客観的に見たうえで、東証は仕組みや規制もしっかり整っており、国内や海外の質の高い機関投資家が存在するマーケットだと感じている。いろいろな選択肢を考慮したうえで、アジアで事業をしっかりと展開していくなかで、東証に上場することが今後の事業成長に繋がるのではないかと判断した。

―昨年末に上場申請を取り下げた理由は
上場間際のタイミングで、確認が必要なことが発覚した。そのなかで、時間的制約もあって取り下げる必要があった。今回は短期間で確認をして、問題ないことを判断できたので、上場まで持って来られた。詳細に関しては、関係各所と相談して問題ないので開示自体を控えている。

―日本での売上高の割合が47%ほどだが、日本以外の成長する地域や国は
直近で日本での事業も非常に伸びている。元々シンガポールでスタートしたこともあって、本格的に稼働し始めたのが大体3年半~4年前だ。日本での事業に関しても全然成熟している状況ではない。国内市場の拡大余地も多い。ただ、中長期の目線で言うと、5~10年先のようなスパンでは、東南アジアやインドの市場はさらなる伸びが予想されている。そこでしっかりとシェアを取って、国内市場を海外市場とともに成長させていきたい。

―ECなどの事業環境は
EC市場も、デジタルマーケティングやインフルエンサーマーケティングの市場も、国内市場でもまだ伸びているが、そこと比較してもアジアの成長率は倍以上であると想定している。特に、インドネシアやベトナムは、高い成長率を実現している。東南アジア以外では、インドはECの市場も、デジタルマーケティング市場も双方が力強く伸びている。

―国内で正面から競合する会社はないが、グローバルでベンチマークとするところは
ビジネスもプロダクトも多岐にわたっているので、完全に同じような事業を行っている会社は、国内外でなかなか見当たらない。プロダクトごとに、それぞれローカルの会社や、グローバルのテックのプレーヤーは、競合にあたる部分はある。そこは、テクノロジー×アジア各国の運用力で競争に勝っていきたい。

―ベンチマークはないと言ったが、社内で共有する将来的な会社像は
例えば、事業ドメインは異なるが、日本で言うとリクルートのような会社がある。彼らはM&Aを通じてチャレンジをしてグローバルでのプレゼンスをしっかりと確保できている数少ないインターネットの会社と考えている。

海外では、AlibabaやTencent Holdingsといった会社だ。特に東南アジアやインド市場でも、積極的に投資をして事業を拡大しているので、そういう会社を意識しながら頑張っていきたい。

―企画から販売、物流まで手掛けていて、生産の部分について、顧客であるインフルエンサーが販売する商品を見ているとアパレルなどがあるが、サプライチェーンにどの程度踏み込んでいくのか
インフルエンサーと一緒にD2Cのブランドを作る事業があるが、そこに関しては基本的には我々が生産から物流まで一気通貫で支援する。ものづくりは、当社のチームがソリューションを活用してアパレルやコスメのプロダクトを取っていく。

一方で、法人ブランドの支援は、サプライチェーン周りでは、特に物流の部分で支援することが多くなってきている。昨今、越境ECの分野が非常に伸びており、ソリューションが必要になっている。我々の「AnyLogi」という物流のソフトウェアでサポートできる。

―3つの事業領域で順位付けをすると、どこが伸びてくるのか
最も伸びているのはD2C、Eコマースの分野だ。ここは1番新しい領域であり、開始したばかりで成長のポテンシャルが大いにある。国内市場を中心に立ち上げた事業だが、昨年の下半期から東南アジア主要国やインドでも展開できる体制を整えたので、全ての事業に注力するが、2023年以降は、ECやD2Cに特にフォーカスして戦略的に伸ばしていきたい。

―今後、具体的に注力する分野、伸びる分野は
マーケティングテクノロジーのプラットフォームから創業しており、そのプロダクトで培った顧客基盤、法人ブランドの基盤がある。そういった法人ブランドに対して、物流やECマネジメントのソリューションを持っているので、そのプロダクトのクロスセルをしっかりとしていく。それだけではなく、グローバルブランドと取引をしているケースが多いので1ヵ国で契約があるブランドに対して、ほかの、例えば東南アジアやインドでも同様のプロダクトを提供していく。クロスセル・クロスカントリーで成長していける余地がある。

―売り上げや利益の中長期の伸びは
成長国×成長産業で事業を行っているので、市場自体が凄く伸びている。前年比で少なくとも30%程度の売上高成長率を向こう3~5年ぐらいのスパンでは、しっかりと維持していきたい。それに伴って利益も改善しながらその成長率を維持していくことを目指す。

―第4四半期に受注が偏っているようだが、そこに対するエンジニアの人材不足の話もあり、失注しないようにどう人材を確保していくのか
まず、エンジニアの確保は、日本とインド、タイ、ベトナムに4拠点を構えているので、国籍は一切気にしない。英語を喋れるエンジニアであれば皆が受けることができる。グローバルで採用している。

エンジニア以外のビジネスサイドやコーポレートサイドは、各国にリクルーティングのチームがあって、そのチームが、ローカル人材を確保している。グローバルでマネジメントしている人事の責任者もいるので、その地域でリクルーティングのトレーニングや、採用基準を徹底し、常に採用力強化に努めている。

―M&Aのスタンスは
M&Aは創業以来7件手掛けている。買収した会社の業績を全て伸ばすことができている。グローバル展開するうえで、各国の経営人材の確保は特に重要になってくる。買収した会社の社長を当社のローカルのマネジメントに組み込むことで、社長として採用できる点でも活用している。我々の業界はチャンスが多い。上場後は、これまで培ったM&AやPMI (Post Merger Integration)のノウハウを生かしながら積極的にチャレンジしていきたい。

―PMIで大事にしていることは
創業者や先方のキーマンと相互認識をしっかり取ることだ。特に、ディールの前に一緒になった時にお互いにどういうアセットを提供することでシナジーを最大化できるのか、創業者を含めてキーマンの人たちと擦り合わせる。信頼関係の構築や、その後の迅速な執行が非常に重要だ。

―多国籍の人員がいるので組織の求心力をどう維持しているのか。気を付けることや方針は
とにかくオープンにコミュニケーションを取ることが大事だ。国籍も文化も違うメンバーが集まっている会社であり、かつ英語でコミュニケーションするので、複雑な言い回しをするのではなくて、極力率直な表現を使いながらオープンに対話する。同じ認識を皆が持ちながら一緒に働くことで、より共創性を保てる。

今後、組織を拡大していくが、よりオープンなコミュニケーションを各国のマネジメントやキーメンバーとしっかり取っていく。自分自身がそうすると、おそらくその下のメンバーや事業部長クラスもそういう形でジュニアのメンバーともそうなると思うので、今後も意識していきたい。

―今後、海外のどのエリアを攻めるのか
今はアジアの主要国のほとんどに進出しているが、東南アジアや中華圏、日本、インド・中東でしっかり伸ばしていく。韓国やオーストラリアには拠点を持っていないので、その市場はどこかのタイミングで検討したい。中長期ではアジア以外の国への進出も考えている。

新興国で先行者メリットを取りながら事業を拡大してきたので、今後伸びると言われているアフリカなどは、展開の可能性がある。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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