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上場会見:CaSy<9215>の加茂CEO、ブランディングでキャストを拡充

22日、CaSyが東証マザーズに上場した。初値は公開価格の1350円を48.22%上回る2001円を付け、1501円で引けた。同社は、清掃や料理の代行のほか、ハウスクリーニングや整理収納のサービスを提供するマッチングプラットフォームを運営する。顧客である個人や世帯と、サービススタッフである「キャスト」が規約に同意し登録する。登録顧客数は2021年11月末現在で13万人超、キャストは9000人ほど。加茂雄一CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

加茂CEOによれば、定期利用者数をKPIとしており、売上高の75%を定期利用サービスによるものが占めている
加茂CEOによれば、定期利用者数をKPIとしており、売上高の75%を定期利用サービスによるものが占めている

―公開価格に対する初値の上昇率が5割であり、足元では公開価格が低過ぎるのではないかという議論もいろいろある。初値を受けて、公開価格に関してはどのような受け止めをしているのか
市場の評価だと考えている。

―初値が上がったことに関してでも良いが、値段の差をどのように受け止めているのか
池田裕樹CFO:公開価格と初値は需給の状況によっても変わる部分もある。純粋に会社の価値を市場に評価してもらった結果であると受け止めている。

―そもそも公開価格に関してはどのような受け止めか
現状の公開価格を決めるプロセスに従って決め、会社としても納得感を持って上場に踏み切っている。初値がどうだったから公開価格がどうというところではないと考えている。

加茂CEO:補足すると、上場するのでもちろん資金調達も(目的としては)1つありながら、我々の上場する目的は、顧客が(キャストを)家のなかに招き入れるサービスなので、広がっていくためには顧客にすごく信頼してもらうことが必要だと思っている。信頼してもらうために上場という手段を取った。それが一番の目的だったので、公開価格にはあまり囚われ過ぎずに来た。

―コロナ禍の影響について、テレワークで自宅にいる時間ができ、自分で家事をできる時間が増えた一方で、自宅にいるからこそ他人を招き入れる代行サービスを頼みやすいというパターンもあると思う。それらを差し引きしての影響はプラスマイナスでどのようなものか
結論から言えばプラスマイナスゼロと考えている。一回目の緊急事態宣言の時は、最初ということで利用控えが影響した面もあるが、全体として見ればプラスとマイナスの両面があった。マイナスの面としては、人が家に入ってくることへの抵抗感もあったが、プラスの面としてはリモートワークの人が増えて、家で過ごす時間が増えてくる。部屋も汚れやすくなり掃除が必要になる。家の中に皆がいると料理をするタイミングが発生し、家事負担が増えたという顧客も増えた。(これによって)プラスマイナスゼロで成長を続けている。

―ネット上の口コミには、評価が高いものとそうでないものがある。その認識や評価、それらを活かして対応策につなげているのか
我々が検知できるところでは、改善すべき点や、評価されている点を把握して、サービスの改善に活かしていきたい。ネットもそうだが、我々は顧客からも、サービスごとに直接評価を受ける。レーティングだけではなく、定性的なコメントとして良い面もあれば改善するべき点もある。まずは改善すべきポイントを中心に、サービスの改善に日々努めている。

―キャスト向けに、スマホで110番に通報できるシステムが用意されているが、キャストの安全を守る点から、(問題のある)顧客のレーティング(による選別)は、どのようになっているのか
1つは、レーティングではないが、適正に顧客の本人確認を行っている。TRUSTDOCKというベンチャーと連携することで、確認した正確な情報をもとに反社・犯罪歴のチェックを経て、審査を通った人のみが利用できる安心のプラットフォームにしている。

2つ目は、働き手の日報からも顧客を評価しており、それがレーティングのような役割を担っている。

―キャストの増加も成長に向けて必要だろうが、キャストの属性と、その増加に向けた戦略は
キャストの属性は、主婦が半分、副業の人が半分ぐらいのイメージだ。戦略は、広告などを行いながら、根本的には、モチベーションの高いキャストをブランディングして、なるべく憧れてもらえるような職業にしていきたい。

新幹線の清掃をしているTESSEI(JR東日本テクノハートTESSEI)という会社があるが、単純に掃除をするのではなく、7分間という短い時間で旅行者の旅を快適にする役割を持っており、「7分間でお掃除する天使たち」というブランディングをして、ハーバード(ビジネススクール)のケースなどでも取り上げられていた。

我々も、キャストを、掃除をして料理を作るというだけでなく、「顧客の時間を作り暮らしを支えている」役割に向けて、高いモチベーションのキャストをブランディングして、憧れてもらえるような職業にしていくことを1つの戦略として考えている。

―今後、提供するサービスの幅を広げていくなかで、訪問介護やベビーシッター、ペットシッターのようなものがあると思うが、どのような時系列で追加していくのか。また、家事代行をできる人材と、新しいサービスを提供できる人材は重複するのか
具体的な日程は未定だが、今も、家事代行のキャストが顧客とコミュニケーションを取るなかで、どんなところに困っていることが多いのか、また、どのぐらい困っているのかを拾い上げることができている。必要なサービスをニーズが多いタイミングで提供したい。

(同じ)キャストが対応できるかという点は、できるものとできないものがある。できるものについては、同じキャストが提供しながら、できないものはほかの会社と連携していくことも考えている。

―3年後の売り上げや利益、3年後でなくとも良いが、売り上げ・利益は
3年後に関してはまだ開示していないので、具体的な数字は伝えられないが、年々成長していきたい。

―利益面で損益分岐点を超えたが、今後、新しいサービスを追加していく場合に、例えば、ベビーシッターでは保育などの資格保有者が望まれると思う。採用や宣伝コストが必要になる場合、常に利益を拡大する見通しを持てるものなのか、それとも先行投資が必要で、利益よりも売り上げ拡大を重視するのか。売り上げと利益のバランスをどう見るか
暮らしのプラットフォームへのサービス展開の方法は、どのような形が最適なのか選定しているところだ。自分たちで提供していくのか、ほかの会社と協力するのかで、利益と売り上げに与える影響が違ってくる。

我々は、中長期的に株主に還元できるように、成長のためには何が最適かサービスの種類によっても違うので、その時に応じて判断したい。

―利益の出方だが、今後サービスが拡充したとしても、黒字を確保するスタンスなのか、それとも家事代行という勝敗がまだ決まっておらず競争が激しい(業界で)、面を取るために先行投資を重視するのか
利益は戦略的な部分と紐付いて、戦略が状況に応じて変わる側面もある。コロナ禍を経たので、利益を大事にしながらではあるが、マーケットを取っていくために必要なタイミングになったら、そのような投資を株主にも説明しながら行う可能性はある。

―エリア戦略に関して、今は9都府県で展開しているが、今後どのような形で広げるつもりか。それともしばらくは今のところで固めていくのか
広げていきたいとは思っているが、我々のサービスは、どうしても顧客の家に働き手が移動するサービスであるので、一定の密度が重要になる。密度の高い所から展開して、時期は未定だが、状況を見ながらエリアを広げていきたい。

―株主である事業会社のワタキューセイモアやマイナビ、千趣会とはどのような協業関係にあるのか
我々はプラットフォームなので、いろいろな人を巻き込む必要があり、顧客と家事代行スタッフを両方大勢集める必要がある。集めることに貢献してもらうのが1つだ。特に株を多く保有しているワタキューセイモアは、高齢者に広くチャネルを持っており、家事代行サービスのニーズが出てくると見ている。CaSyの顧客を広げるために協力してもらっている。

―株主還元としての配当のメドは
株主還元は、お金を出してもらっているのですごく大事なことで、中長期的には考えていきたい。今後、マーケットが広がっていくサービスなので、まずは、一旦投資を視野に置きながら、時期を見て還元していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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