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上場会見:エッジテクノロジー<4268>の住本社長、組織・採用強化で受注を加速

17日、エッジテクノロジーが東証マザーズに上場した。初値は公開価格の350円を98.29%上回る694円を付け、668円で引けた。同社は、自社保有のデータベースに登録したフリーランス人材と連携してマーケティング支援などでのAI実装を行う「AIソリューションサービス事業」を主に手掛ける。住本幸士社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

住本社長は、特定業種に依存しない顧客基盤を構築し、リスクを分散できていると話した
住本社長は、特定業種に依存しない顧客基盤を構築し、リスクを分散できていると話した

―初値が公開価格を大幅に上回ったことについての感想は
株価についてはマーケットが決めるのでコメントが難しいが、当社としては企業価値の向上のために一丸となって取り組んでいきたい。

―足元でマザーズの環境が悪く上場を延期する企業が出ているが、中止は検討しなかったのか
当社は設立時に上場を意識して取り組んで、2019年頃に本格的に管理体制や組織の構築を始めており、そこから最短での上場という意味で今日(の上場)だった。上場することで採用力が向上し、優秀な人材の採用によって事業成長が加速すると考えているので、それを優先した。

―サントリー酒類など(の案件)を具体例として挙げているが、より具体的にどのようなプロジェクトがあるのか
サントリー酒類のAI導入事例は、キャンペーン応募のOK/NG自動判定システムのAI活用支援だった。顧客の課題としては、消費者がキャンペーン応募のためにアップロードしたレシート情報の目視確認にコストがかかっていた。

解決策としてGoogleの文字を認識するAIを活用してレシートの文字を読み取り、構造化データとして保存してキャンペーン条件の合致を判定するシステムを提案して開発した。その結果、2つの効果があった。

コスト削減という意味で、約8割については文字認識で目視確認が不要になったので、レシート確認やデータ入力する人を減らすことが可能になり業務効率が改善した。2つ目は顧客満足度の向上だ。消費者がレシート(の情報)をアップロードしてキャンペーン適用の判定結果を受け取るまでに、最大で2週間ほどかかっていたものの約8割については5秒程度となり、顧客満足度向上につながった。

このプロジェクトは運用フェーズに移行予定で、とても満足してもらっており、サントリー酒類の他部門や関連会社への展開も予定している。

―「リカーリング型顧客」の定義について、4四半期以上の契約が継続していることを要件とした根拠は何か。また、クライアント間でプロジェクトの性質や要素共通するものなのか
(契約が)過去4四半期連続している顧客をリカーリング型顧客と定義する理由は、これまでの他社の事例を鑑みて、当社でもそういったところが適切ではないかと外部の機関と相談して決定した。

また、リカーリング型顧客の継続性といった観点で、クライアントの性質に依存する部分があるのではないかという点はその通りで、大きな顧客の場合では、1つのプロジェクトに成功すると、他のプロジェクトもあるため広がりやすい傾向がある。一方で、小さな企業の場合、ほかのプロジェクトが多数あるわけではないので、クライアントの性質に依存する。

当社の主要な顧客基盤となっているのは大手企業がメインであり、基本的にはリカーリング型になりやすい性質であると考えてもらいたい。

―フリーランス(との連携)が特徴だと思うが、今後、人材獲得競争の激化や人件費高騰の懸念はないのか
当社のAI人材データベースは、現状十分に大きいものと理解しているので、それほど課題感を持っていない。一方で、組織力・採用を強化して、より多くの案件を獲得することで成長を加速させたい。どちらかといえばそちらを意識して取り組みたい。

―AI人材フリーランスといってもいろいろなレベルの人がいると思う。どのような水準のエンジニアを集めることができているのか。期間が長くなるとそこにアサインされる人の稼働が長くなっていくと思うが、今後、安定・継続的な供給をどのように実現していくのか
データベースの規模や中身については、目論見書や成長可能性に関する資料に記載していないので、詳細については話しにくい。レベル感としては、ジュニアからハイクラスの10年選手のベテランの人も多くいる。実際に稼働しているフリーランスのうち半数以上は10年以上の経験者であるので、経験豊富な人が一定程度いることを理解してもらえると思う。

安定供給という観点では、2025年には、AIサービスを提供するAI人材が、需要が16万7000人に対して供給が7万9000人、2030年には需要が24万3000人に対して、供給が12万人で、需要に対して半数ほどしか供給できない外部環境がある。当社でもAI人材の確保が非常に容易というわけではない。

設立時からAI人材の獲得に努めており、「BIGDATA NAVI」のようなサイトの運営は、日本で最初に開始したと考えている。既にデータサイエンティストやAI人材のなかで一定程度の知名度を獲得している。そういった背景から、今後継続的に獲得し、データベースを拡大できるのではないか。

―上場しているAI関連の新興企業が最近市場から厳しい評価を受けており、株価も下がり気味になっている。AISaaSに事業の軸足を移す動きもあると思うが、AIプロダクトにシフトしていくのか、それともコンサルの事業を継続的に続けていくのか
短期と長期の観点がある。短期では既存事業の強化に努めたい。中長期的には、AISaaSや、特定領域に特化した形のソリューションサービスがある。具体的には不良品の検知などのソリューションを、AIライブラリを活用して、短納期で提供していくことも長期的には検討したい。

―将来的には、AISaaSが、例えば売り上げの半分以上を占めるといったことになるのか
現在、AIソリューションサービスは、上半期実績で前年同期比60%以上の高い成長を実現しており、既存事業が今後も一定程度の高い成長を実現すると考えているので、ソリューションサービス事業の売り上げが多くなると考えてもらえるとよい。

―顧客によっては、オンプレミスで対応してもらいたい要望もあると考えるが、リモートワークを前提としてクライアントに(リモートでのサービス提供を)依頼しているのか。どのような運用となっているのか
全てがリモートワークではない。一方で、95%ほどがリモートワーク化しているので、それが中心だ。もちろん、直接対話する形で対応してもらいたい顧客もいるので、個別に対応している。

―ROEの考え方について
治田知明取締役:具体的な数字までは、今後の具体的な利益の算定見通しのようになってしまうので、明確に答えられないが、市場のなかでのトップ100社に入るぐらいには上げていきたい。

―配当性向の見通しは
住本社長:成長著しいので、高い成長を実現している間は無配当と考えている。株主の期待を上回る当社の成長で企業価値を向上させ、還元していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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