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上場会見:キッズスター<248A>の平田代表、子供のデータで親を支援

26日、キッズスターが東証グロースに上場した。初値は公開価格の2560円を13.67%下回る2210円を付け、2300円で引けた。子ども向け社会体験アプリ「ごっこランド」の開発と運営を主軸とする。アプリのダウンロード数は2013年の開業から累計710万以上で、月間平均で2000万回以上遊ばれている。ベトナムでも普及が進んでいる。2024年7月には大型商業施設でのイベント企画と運営を始め、ネット上とリアルの双方で企業や団体などの事業開発支援を行う。平田全広代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

基本的にはBtoBtoCの事業モデルだが、将来的には保護者に情報を提供して課金するタイプのBtoCを拡大していきたいと話す平田代表

―初日の株価について
現実としては厳しい部分もあったが、我々はまだまだこれからの企業なので、成長をして、また、市場との新たなコミュニケーションを取る機会はこれから何度もあると思う。行うことは変わらず、今指し示している中長期の戦略の通り、しっかり拡大していくことを説明したい。

―出店料は月額定額制だが単価は
現状では月額100万円の2年間契約となっている。

―出店企業はナショナルクライアントがメインなのか、中堅中小企業の利用もあるのか
現状は全国規模のナショナルクライアントがほとんどだ。地方の企業が参画するものとしては、「ジモトガイド」がある。地方自治体と組んで地元の子供とワークショップをして、子供目線での「我が町」の自慢をまとめている。広島県呉市では造船業を手掛ける企業がタイアップして一緒に出している。

全国展開を目指している企業も出店する。ラッキーホールディングスがまさにそうで、中部地方から拡大していく前に「ごっこランド」で広げていく。そういった思いと合致するか否かでは、一定規模の企業になってくる。

―出店企業は78社だが、継続率は
継続率は公表していないが、年に数社退店が出ている。2ケタではなく、1ケタ台前半の退店があると見ている。商品やプロダクトごとに「ごっこランド」を出しているが、その商品が事業戦略上、差し控えることになった、あるいはなくなったものもあるので、我々が原因というよりは、企業の考え方のなかでどうしても(予算を)充てられなくなる状況が出てくるのではないか。

コロナ禍の時は、飲食店を含め、打撃を受けたところに関しては、料金を半年間減免で対応するなど寄り添ってやってきたつもりだが、そこでも難しかった。出店維持の傾向があったが、コロナ以降は増加ペースが上がってきている。

―競合の参入を投資家は注視しているようだが、参入障壁は
類似サービスでは、タカラトミー<7867>が出している「FamilyApps」やauの配下のmedibaの「まねぶー」がある。FamilyAppsは当社と同じ時期に始めているが、おそらくダウンロード数を含め参加企業数に関しても、我々が圧倒的に有利な状況にあると見ている。参入については、出店企業を一気に獲得できることもあるかもしれないが、ユーザーもしっかり集めることを含めたアプリ開発を企業に対する価値として返していかなければない。そういった両面を育てていく点では、時間と投資に耐える側面があるので、簡単にそこを乗り越えてこられるかといえば、そうではないだろう。

―「子供の特性データ」を利用することで、その親に対して課金をすることができるとのことだが、もう少し具体的に
今の「ごっこランド」は、150以上のゲームを子供が自由に遊べる状況で、その子供がどのようなゲームが好きで、どういった類の形式のものが得意か、それぞれの違いが出てきている。

AI周りでは、昨年度にPKSHA Technology<3993>からの出資を得たが、AIを開発するノウハウを持っているところと、どういった市場を作っていくか詰めている。「ごっこランド」内に、いわゆる対話ロボット的なものを実装し、子供と会話を重ねることで、子供が最近感じていることや、質問、インタビュー形式のものを被せ合うようなものを考えている。

親だからといって子供のことを何でも知っているわけではないので、利用データとAIで得られた特殊な情報を掛け合わせ、子供がどのようなものに対して興味が高いのか、抽出した情報を、毎月あるいはリアルタイムで親にも共有できるようなものを検討している。その先に、「このような子供には、このような学びもある」と、増加している受験系以外の学びをマッチングすることで、親を支援していけるサービスを将来的には作っていきたい。

―保護者向けの課金サービスは、どういったコンテンツを考えているのか
父親や母親が見るページのなかで、子供はこういったゲームの種類、例えば、「計算系やパズル系、論理思考が凄く得意です」といったような分析データとともに、「もの作り系のゲームが好きです」とか、「パズル系が好き」、「計算系が好き」、「アドベンチャー系が好き」といった特性がある、子育てのヒントにしてもらうような情報を出していく。

また、親が見たなかで勧めるものは選択肢としてはあるが、子供が「これをやってみたい」と言っても、親が見えるものが少ないので、やってみたいものの候補をマッチングしていくような情報を提供していきたい。

―保護者向けに情報を発信するのではなく、子供がどんなことに関心を持っているかに関する情報か
そうだ。

―企業向けのインナーブランディングやインナーマーケティングにも使われているとのことだが、事業が拡大した時に、子供だけではなく成人向けのeラーニング的なものに発展する可能性は
そういった問い合わせを受けることもある。ゲーム化に当たって、低年齢層向けであっても、どういった思いで作られている商品なのか、何がメッセージなのか理解してもらうものを作る力はある。

だが、対象者が高校生以上になった時に、我々の技術ベースがどこまで活かせるのかといえば、どうしても陳腐に感じてしまうところがある。違う観点で説明していける点や需要はあると思うが、どういった接点で子供たちと通じるかだ。今、対象としている年齢層の子供は保護者の端末で遊んでおり、そのダウンロード数も子供向けのアプリのなかではかなり上位のほうだろう。

これが小学校高学年ぐらいなると、Nintendo Switchが出てきて自分のメディアができてくると、時間をどう取り合うかが非常に難しい。今の働きかけとしては学校のなかで我々の事業と一緒に何かやらせてもらうといった展開が可能であれば、どう接点を作るかが1番の課題ではないか。

―ベトナムで日本以上に伸びている理由は
ほかの子供向けのサービスが少ないと見ている。我々の無料アプリのダウンロード率が、日本の倍以上になっている。小さい子供のうちからスマホを使っているため、ベトナムやインドネシア、東南アジアのほうが、より活発であり、プレー回数が多い。日本では子供が父親や母親の携帯を土日に使っている場合が多いので、土日に回数が伸びて平日は少し落ち込んでいる。ベトナムでは平日もある程度高く、土日も伸びる状況にあり、ユーザーの利用シーンは日本より多い。

―ベトナムとインドネシアの話が出たが、今後海外でどのような成長を思い描いているのか
各国の子供にとっての選択肢を提案していきたいので、アジア版1個で片付けるよりも、ベトナム版やインドネシア版、マレーシア版、フィリピン版というように1つひとつ作っていこうとしている。

ゲーム性に関して、アジアで受けるのか課題があったので、試行してもらったところ、ベトナムでは高い効果が出ている。インドネシア版も、ローカライズせずに日本語版で試したところかなり高い反応が得られた。ゲーム性においては違和感なく展開できる。ユーザーの獲得面では、各地域で攻めていける領域はある。

そこに参入してもらう企業の説得は、各国の事業規模や経済規模にも依ってくる面もあるが、実際にベトナムでも、「ごっこランド」に参画している日系企業でベトナムに展開している企業が複数、参加の意欲を持っていて、1社は決定している。

日本企業で事例を作りつつ、その後に現地企業に参画してもらう。ベトナムでも現地企業にいくつかアポイントを取ってミーティングをしたが、ゲームやYouTubeを積極的に活用している国民性があるなかで、マーケティングやブランディングに使うことへの興味は非常に高いと感じている。

日本でも、最初は(企業側からすれば)「何でここにお金がかかるのか」という側面があった。例えば、ライオンの歯磨きを毎日使っていても、ライオンのファンになっているわけではないと思う。だが、子供がライオンのゲームで遊ぶことで歯医者が怖くなくなったといった出来事を通じてライオンのファンになっていく。そういったファンが作られていくことの良さ、ブランド価値の確立に関する点は、10年間事業を続けてきたなかで、評価されているので、アジア地域でも消費者と企業の接点を日常的に持つ事例を作って同様に展開させていきたい。

―くふうカンパニー<4376>との上場後のシナジーは
特別に何かが今見えているわけではないが是々非々で、くふうカンパニーが子共向けのサービスに取り組んでいることは我々も理解しており、コミュニケーションも取っている。我々が独自の成長を描くなかで組んだほうがWin-Winになるものはぜひ検討していきたい。

―くふうカンパニーとPKSHA Technologyとの今後の関係性、くふうカンパニーの穐田誉輝代表執行役とは今後どう連携するのか
くふうカンパニーと穐田氏に関しては、我々の独自の成長について支援を得た。相談事があれば是々非々で進めている。今後当社が拡大していく過程で例えば、商業施設で行うリアルイベントである「ごっこランドEXPO」を拡大していく際には、どこと組んだ方が良いかも含めて展開するうちに、穐田氏の立ち位置が変わっていくかもしれない。長期保有がくふうカンパニーを含めて穐田氏の考え方だと思う。

PKSHA Technologyに関しては、AIを子供向けにどうアジャストしていくか、彼ら自身もアンテナを立てて取り組んでおり、700万ダウンロードされているアプリで子供が日常的に遊んでいる場所にそういった施策を打っていくことが、彼らのノウハウにもなる面もあるので、手助けをしてもらえればと考えている。ファウンダーで入っている浅野氏が、アジアを含めた投資で動いているなかで情報も持っており、アジア展開でもいくつか紹介を受けている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]