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上場会見:ジャパンM&Aソリューション<9236>の三橋社長、良いM&Aを1件でも多く

24日、ジャパンM&Aソリューションが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1340円を67.91%上回る2250円を付け、2323円で引けた。同社はM&Aアドバイザリーサービスを手掛ける。「相談されたら断らない」をモットーに、商店やラーメン店の1店舗から中規模程度の会社まで幅広く対応する。経験者のみならず未経験者も採用し、原則として2人1組で相談からクロージングまでを一気通貫で担当する。三橋透社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

手数料の単価は1000万円弱で、規模の大小に関係なく案件を受けていると話す三橋社長
手数料の単価は1000万円弱で、規模の大小に関係なく案件を受けていると話す三橋社長

―初値が2250円だが、感想は
株価は、いくらを目標にしていたというのはないが、最初に証券会社に付けてもらった値段よりも上がったのは、投資家に現時点で評価されていることだと思うので、嬉しく受け止めている。

―上場のタイミングに関して
売り上げも人員規模も小さい状況で上場を選択したのは、M&Aをやっていくうえで信用力が非常に重要だと感じたからだ。提携先を増やす、人員を確保するといっても、競合他社はプライムに上場し、大手の証券・銀行(も競合に)になるので、信用力がないと、提携先を増やす、案件獲得する点で競争に勝てない。一件でも多くやるためには上場が必要だと判断した。設立4年でまだ規模も小さく、少し早いタイミングだろうが、上場を選択した。

―参入障壁が低い分野なので、株主も安定的に成長することを期待している。持続的に勝っていける本当の強みを具体的に知りたい
業界的には、競合他社を見ていると、皆さんが単価を引き上げよう、最低でも1案件当たり5000万円以上、それで1億円の案件が何件あるかを指標にしている。我々は、今は平均単価1000万円弱だが、件数を手掛ける。圧倒的に中小企業に対する案件の獲得、多くの数を成約しているので、例えば、買い手のデータベースもだいぶ溜まっている。中小企業に対しては、圧倒的に強い。

特に、M&Aはやれば良いわけではなく、その後会社がきちんと成長していくのが重要だ。他社がそこを全くやっていないわけではないが、きちんとやることで、地域金融機関の地銀や信金の信頼関係を得られて、安定的に案件が入ってくる。

それは、税理士も会計士も一緒で、顧客を凄く大事にする。ただ、我々は、全国の案件を扱うといっても、地銀や信金、税理士とがっちり提携しているのは、まだ首都圏が中心になっている。拡大余地があるので、どんどんネットワークを広げて、安定的に来た案件をきちんとできる人を教育していく。

参入障壁が低くて誰でもできてしまうとされがちだが、金融機関と提携するまでは、そんなに簡単ではない。当社ができる前に、前身でも同じようなことをやってきてメンバーの力もついており、信頼を得るのは、すぐにやろうとしてもできない。案件に対応しながら提携先を増やし、安定した経営基盤を作っていきたい。

―事業承継の中小企業の業態で、特に強いところやこれからについて(教えてほしい)。医療法人の高齢な医師の承継ニーズがあるのは知っている
調剤薬局やIT会社はどこのM&A会社も欲しがる。我々もそういった案件が来ると嬉しい。ただ、逆に弱点を作らないようにしている。医療法人のように地方で1人で営んでいる歯科医院やクリニックは、継ぐ人が歯科医師でなければ継げない。非常にM&Aでも探すの難しいとされている。地方の飲食店もそうだ。

ただ、そういった案件が来たから「うちはやりません」ということはない。人がやらない、断ってしまう案件を、得意とまで言わないが、そういったことをする体制を作っている。

一番良い例が飲食案件だ。飲食案件はやめてしまうと廃業して厨房機器をタダ同然で売って、人を解雇して、また次の人が逆のことをやる。無駄なことで、それが一般的になってしまっている。

ビール会社4社や飲食に関係している人たちとも連携を取りながら、特にビール会社は買い手をけっこう知っているので、連携しながら業界的に無駄をなくす。今は飲食が厳しいと言われていて、少しでも貢献できれば、そういった動きをする。

良い案件が来れば嬉しくて通常通りどんな案件でもやっていく。ただ、やりにくいから断ることはしたくないし、やりにくい案件もできる仕組みをどんどん作っていきたい。

―買い手はどのようなものが多いのか
こういう人だと断定はできないが、多いのは、中小企業で少し大きい会社が典型的だ。事業承継で規模が小さいと、エリアとすると当該県や周辺県で決まると言われており、我々でも大体そうなっている。業種によって、例えば運送業では、2024年問題があり、人や車、拠点が欲しい人が多いので、同業が多い。

あとは垂直で、自動車メーカーの子会社であれば、メーカーの下請けの少し大きい会社が、建設会社も内製化の観点で買っていく。サイズとすると典型的なのは、中小の大きめの会社か中堅企業だ。上場している会社でも、少し機動的に動けるような小さめの上場会社が典型的だろう。

―そうすると、地域の産業の再編にも貢献できているのか
河合寿士取締役:「力をつけたい」、「まだまだ小さいがこれから大きくしたい」という多様な買い手が取引先になっている。

―投資家は人材採用と流出について気にしていた。採用と育成については工夫しているとのことだが、リテンションはどうか
三橋社長:入口については未経験者も採用でき、間口が少し広い。我々が手掛けるM&Aは本当に良いM&Aで、売り主と買い主、皆さんに喜んでもらって社会貢献性もある。今の若い人は、そういうことに反応する。また、一気通貫でやるので自分の力がつく。案件サイズは小さいかもしれないが件数をやる。そんなに楽ではないが採用目標は達成できている。

退職の出口のほうも重要だ。どれだけ離職を防ぐかに関しては、我々は件数をやるので力がつく。やはり、力をつけたい若い人間がけっこう多い。あとは、社会貢献性。社会貢献と言えば堅いが、1件1件やることで顧客に喜んでもらう。それをやりがいにする。

ただ、他社では、優秀な人たちが(案件発掘のために)電話をし、DMを送ることが嫌だという人間も多い。無駄な力を使っているのではないかといったことで、当社であれば本当の意味でのM&Aに集中して取り組める。主力メンバーの退職率が低くなっている。ただ、今後そのあたりは注意していきたい。

―売り手と買い手の支援策強化を4つ挙げているが、それらは、損益計算書(PL)上どのように効いてくるのか
PLを意識したものではない。(「ハンズオン支援」では)会社の体制が整っていないのでなかなかM&Aができないことから、体制を整える。また、譲渡後に簡単なPMIはやっているが、例えば、立てた事業計画をフォローしてほしいといったものを有償で支援し、必要に応じてマッチングサイト事業や承継ファンドをやっていきたい。正直に言って、これで収益をぐんと上げるよりは、こういったことで、M&Aの成約件数の増加を主に期待している。

―4つの施策のうちの1つの「M&Aマッチングサイト」は、既存のマッチングサイトとどう差別化するのか
マッチングサイトまでは、まだ具体的に考えているわけではない。今後、経営方針の通り1件でも多くM&Aを断らずにやっていこうとすると、小さい案件やいろいろな案件が出てきて、それぞれを効率的にやっていかなければならない。そんななかで、スモールの案件はマッチングサイトなどが必要になるのではないか。

成長戦略としては、まずは既存の提携先を増やす。それで案件を増やして、成約する人員を増やす。中小企業127万社の事業承継に、当社1社だけでは対応しきれないぐらいの大きなマーケットがあるので、まずはそこをしっかり捉えて、確実な体制を作っていく。その次の段階で、派生的な事業に取り組んでいきたい。

―エリアの拡充について
今は東京一極で、(地方は)出張対応している。今後、地銀が特に影響してくるだろうが、西のほう、特に関西や四国・九州の提携先が増えて案件が増えるようであれば、大阪や名古屋に拠点を構えて、さらに案件を効率的にできるようにしたい。ただ、現状ではまだ具体的にいつ、どこにというのは決めていない。

―中長期的にこのぐらいの成長率を保ちたい、何年後にどの程度の売り上げを計上したいといった目標はあるか
今、中長期戦略を立てている。1つは中小企業のマーケットで非常に需要が多く、我々の数字もそうだが、使命だと思うので、1件でも多くM&Aを手掛けたい。そのために提携先を増やし、人を増やす。明確に売り上げや利益をいくらと定めてはいないが、今までの成長を保ちながら拡大していかなければならない。

―株主還元のタイミングと投資家へのメッセージは
現状では会社の規模は小さく、規模をきちんと整えることを優先したい。ただ、上場して多くの株主の支援を受けることになるので、配当についても前向きには検討していきたい。

―どの程度の売り上げ規模になったら配当したいのか
そこまで社内でも議論ができていない。上場できて、(配当が)必要だと思うので、今後対応していきたい。

―事業法人の大株主との関係性は
会社を2019年の11月に作った。当初は信用力がないと案件が取れないと考えたので、プライムに上場している3社に、信用補完のために株主として参加してもらった。ディア・ライフとエアトリ、ジャパンベストレスキューシステムだ。プライムに上場して、事業をしっかり運営している3社が出資する会社として、案件を紹介してもらうために入ってもらっている。

―日本ビズアップはどういう会社なのか
その後、税理士と会計士のネットワークを増やそうとした。日本ビズアップは約1500の税理士・会計士のコンサルティングを行っている会社だ。代表者に会ったところ、その人はM&Aがあまり好きではなかったが、我々が非常に良いM&Aをやっていることで、「それであれば協力をしよう」と言ってくれた。それで株主として入りながら、相当な数の税理士・会計士を紹介してもらった。税理士・会計士のネットワークが強いのは、ビズアップの紹介・支援があったことも寄与している。

―プライム3社から案件の紹介はないのか
関連当事者取引を非常に厳しくしているので、全くないわけではないが、基本的に案件紹介ではなく、信用補完の観点で参加してもらっている。

―この3社の今後の株式保有については
ビズアップを含めた4社からは長期保有と聞いているが、3社は上場している会社なので、確実なことは話していない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]