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上場会見:グロースエクスパートナーズ<244A>の渡邉社長、非競争領域に水平展開

26日、グロースエクスパートナーズが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1530円を20.33%上回る1841円を付け、1916円で引けた。大規模顧客に特化したDX支援を手掛ける。コーチングに近いコンサルティングで戦略策定を支援し、顧客と自社社員の合同チームを「出島」に見立てつつ、既存システムを活用する「データ駆動型プラットフォーム」を用いてシステムを開発する。渡邉伸一社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

自社開発のデータ駆動型プラットフォームで、顧客が保有するレガシーシステムからデータを抽出し、新しいデジタルサービスの立ち上げを容易にすると話す渡邉社長

―初値と終値について
株価に関しては我々が決められる話ではないが、一般の投資家に評価されたというのが率直な感想で、この株価をさらに上げていける、あるいは株主の期待に応えられるように業績を伸ばすことで、さらに期待に応えていくしかない。今日の時点では非常にありがたい評価を得ている。

―出島型アプローチはほかの会社ではできないのか
よく混同されるが、我々の業界ではSESと言うが、単純に人を何人か顧客に派遣する、常駐させることと間違えられる。我々は物理的な場所を出島というよりは、顧客のメンバーと我々のメンバーが共に、それはバーチャルな空間であろうがリアルな空間であろうが、ある意味全く対等な立場で同じプロジェクトに取り組むことを出島型アプローチと呼んでいる。

顧客から「これやってください、あれをやってください」ということを下請け的にやるために派遣することとは全く違う。確かに勘違いはされるが、他社が「顧客に人を出しています」ということとは本質的には違う。

―データ駆動型プラットフォームについて、今後同じ業界内で水平展開するとのことだが、プラットフォームは業界・業種ごとに種類があるものなのか、それとも汎用的に使えるものなのか
データ駆動型プラットフォームそのものは、エンタープライズ企業が必要とするようなセキュリティやシステムガバナンスなど大企業に必要な機能が実装されているが、特定の産業向けに特化した機能が実装されているものではない。今後はそれを我々の顧客向けに作った機能を、その顧客のいる業界の他の企業に、非競争領域に関しては一緒に展開していく話を顧客としている。

―意識する競合は
今までは営業も顧客の紹介で指名されることが多く、市場でというか顧客の前で競合することはあまりないのでそれほど意識したことはない。上場というタイミングでは当然、ベンチマークにする企業はあり、だいぶ先輩の企業だが、ウルシステムズで、彼らはテクノロジーを中心にしてコンサルしながらDXを推進することを手掛けていると思うが、事業の内容というよりは事業規模や利益率の高さは意識している。そういった企業の仲間入りができるように頑張りたいという意味ではベンチマークにしている。

直近で上場した企業では、フレクト<4414>で、ここも内容は全然被らないが、エンタープライズユーザーをターゲットにしている点では、非常に近いターゲット層に対してビジネスをしているので意識している。競合先というよりは、似たような領域で違うビジネスをやっているが、共に切磋琢磨できるような関係になるかという意味で意識しているイメージだ。

―ざっくり言った時に、競合になるのはどういう会社か
規模は彼らのほうが圧倒的に大きいので、顧客の前で入札になってコンペになるということはないが、アクセンチュアや野村総合研究所<4307>だ。大手の戦略コンサルもやりつつITの部分でかなり顧客に入り込んでいるという意味においては、コンサルから入って、システムまで、場合によっては、アクセンチュアは顧客と一緒に企業を作るという、我々の出島戦略と似た取り組みをしているので、競合というのはおこがましいが、ビジネスモデル的には似ていると感じている。

―入札でよく出会う会社は
入札でどちらが安いというようなプロジェクトは断ることが多く、我々を何かの基準で選んでもらうところに好んで参入しなくても、ほかの仕事で手いっぱいということもあって、コンペの引き合いは来るが、断り、勝てるような状況であれば行くことはあった。

―成長戦略について、定量的な数字も含めてポイントをいくつか教えてほしい
飛び道具を持っているビジネスではないので、これまで着実に伸ばしてきた既存事業の伸びを、より加速するのが成長戦略の1つの柱になる。ベンチマークにする指標としてエンタープライズ顧客数があり、17社から20社に増加しているが、売上高が1000億円以上で創業50年以上の企業数を毎年3社程度伸ばす。こういったものは今後も定量的な数字として発表し、その進捗を報告したい。

また、年間取引金額が1億円以上の顧客数を着実に伸ばしていく。さらに、その先に2億円以上、5億円以上と1つひとつの顧客との取引を拡大して深掘りし、それによってトップラインを既存のビジネスで伸ばす。

利益に貢献する話で、サービス提供力イコール我々の人材戦略ということになるが、社員数を増やしつつも生産性を上げて利益率を上昇させることに取り組んでいる。今後ともエンジニア数の伸びと、その生産性を1人当たり売上高などの指標で定量的にモニタリングして開示する予定だ。

あとは、新規顧客の開拓になるだろうが、今まではどちらかというと顧客からの指名や、顧客から顧客を紹介してもらうことで、あまり営業せずともここまでのビジネスを伸ばすことができた。

今後は上場を機により高い成長力を株主から期待されているなかで、我々自身が営業力をたくさんつける、営業社員を増やすというよりは、そういった共創アライアンスの営業企画力やマーケティング力を強化することによって新規顧客を開拓する。

例えば、日本マイクロソフトにはAzureというクラウドのプラットフォームがあるので、これを我々のデータ駆動型プラットフォームと連携させて、ビジネスをすることで、マイクロソフトはAzureのライセンス数を増やせる。大成建設はマイクロソフトが営業して獲得した顧客であり、外部のベンダーに営業を手伝ってもらう、マーケティングを共に行い彼らのソリューションと組み合わせることで、新規の顧客とのタッチポイントを増やす。

IBMやヒューレット・パッカードもあり、日系のベンダーはあまりないが、こういった企業と営業協力をして、彼らのソリューションと我々のDXビジネスが補完関係にあるものが多い。我々のパワーを彼らに営業してもらう。

既存の顧客とのビジネスに関しては、海外出身社員を増やしている。我々の顧客では、これから売り上げを伸ばすには、日本市場での伸びに限界があるなかで、既に海外に展開しているものを、特にグローバルサウスの領域で伸ばしていくことを計画することが多いので、我々も現地で伴走する取り組みを既に始めている。

そういった時に、海外出身人材はそれぞれの母国や言葉の面でも活躍し始めている。こういった人材を採用することで補強するだけではなく、顧客のビジネスを海外で伸ばすのに際してサポートできることを考えることで、既存顧客の基盤を拡げる。既存ビジネスを伸ばす考え方については以上だ。

特定の顧客の業界の非競争領域に関しては例えば、25日に三菱UFJ銀行が地銀のシステムを統合するという記事が出ていた。我々の顧客には業界のリーダーたる企業が多いので、競争しなくていい領域に関しては、データ駆動型プラットフォーム上で我々の顧客向けに作ったものを、その先の顧客に向けて、我々の顧客と一緒にビジネスを展開する。そこでは人を増やすことによるビジネスではなくて、一度作ったものでライセンス収入を得られるようなビジネスとして強化していく。

それが共創型事業の拡大で、既にニプロでは、我々が作ったソフトをニプロのブランド名で病院に売ってもらっているが、そういったことをより増やすのが共創事業だ。

既存事業と共創型事業の拡大でトップラインを伸ばし、かつ共創型に関しては人への依存がより低減されるもので利益率を改善していく。

―人件費がそれほどかからないで展開できるBtoBtoCあるいはBtoBtoBのプロダクトは、具体的にどんなものか
データ駆動型プラットフォームのコアになる機能として、自社開発プロダクトの「GxDiste」がデータ連携する最下層のレイヤーを司る。この上に、エンタープライズ向けの標準的なセキュリティやシステムガバナンスといった機能が実装されている。このライセンスを既に顧客に提供している。

また、「GxWagora」も自社プロダクトだが、開発するに当たって、いろいろな社内でのコラボレーションを出島型組織で行うなかで、そのなかのウェルビーイングなどDX組織で働いている人たちの生産性を向上させるためにモニタリングする機能が実装されている。

この2つを自社プロダクトとして展開している。これ自体は我々の目の前にいる顧客に展開するものだが、こういったものを使って作られたものを、その先の顧客に売っていくのが我々の共創型ビジネスだ。

―オーガニックで成長するのか。M&Aは
上場して得た資金は既存ビジネスの強化に充てるが、過去から自社として利益を出せる体力がついていて手元資金もある。提携先でもあるアイティーファームが株主にもなっていて、彼らがかなりアーリー段階のスタートアップ、特に海外、シリコンバレーを中心とした企業にコンタクトがあるので、そういった企業のシードの段階でビジネス上の協業をすることが多い。今後、場合によってはそういったところに投資をして我々が持っていないテクノロジーを持つ会社にグループに入ってもらい、その事業をテコとして我々の事業を伸ばす。

あるいはそういった企業が上場した際にキャピタルゲインを得ることも考えてはいる。ただ、具体的に何か決まっているわけではないので、そういったことにも今後はチャレンジして、業績をさらに大きく伸ばしていきたい。オーガニックなビジネスを伸ばすにも人がキーになるので、同業を仲間に入れていく意味でのM&Aも検討したい。

―株主還元方針について
当面は成長戦略に投資をするので、事業全体のボリュームを、トップラインと利益を共に伸ばすことに集中したい。それによって企業価値を上げてまずは株主の期待に応えるのが最優先だ。その先では例えば、配当や自社株買いもタイミングがあれば検討する。まずはグロース市場ということもあり、成長に寄与する投資を優先し、企業価値を上げることで株主の期待に応える。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]