北里コーポレーションがこのほど、東証プライム市場に上場した。公開価格の1340円を49.33%上回る2001円の初値を付け、1812円で引けた。代表取締役社長の井上太綬氏が東証で上場会見を行った(6月25日取材)。

ー会社の概要について
不妊治療の事業に特化した会社で、主に消耗品を扱っている。日本だけではなくアジア・欧州・米国など110ヵ国以上、ワールドワイドに活動している。私が東邦大学大森病院で、当時の主任教授・久保春海先生の指導のもとで体外受精、不妊治療を学んだ。私は薬剤師でもあり、試薬や培地の調合などが得意だったので、そうしたことも当社の事業にプラスになったと考えている。医療機器に関わる製品群の開発を続けて、特許を取りながら進めた。国内・海外の先生方にも多く恵まれ、今こうして上場という機会を得た。資材や材料のメーカー、卵子バンクなど周辺領域にもビジネスを拡張して、もっと成功率の高い不妊治療に寄与したい。
ー今期の減益予想についてと今後の利益計画について
鈴木祐尚取締役・経営企画部長:今期は上場のタイミングであり、今後の成長のための人的投資が要因としてある。新社屋、生産性向上や自動化の観点で工場も建設している。そうした先行的な投資・費用を今期は見込んでいるので、その部分で減益となっている。売上は伸ばしていくという形になっている。
ー2023年に商品を自主回収している。今回の自動化というのは、そういったものの対策か
自動化に関しては、即納体制を築くということで、さらに生産効率を上げる目的、そして人件費を抑制させる目的の2つがある。自主回収とは全く関係ない。
ー競合状況について
井上社長:日本には不妊治療施設が600ぐらいあって、不妊治療が世界のなかでも盛んな国だ。ちなみに米国では300~400ぐらい。そのため日本は、競合メーカーが国産品のほか海外の輸入品でも数多く入っている。海外においてクーパーサージカルとヴィトロライフという、米国と欧州に拠点を置く会社だが、同社と当社が世界市場で競い合っていると分析している。それに、日本でもそうだが、ドメスティックの地元のメーカーがいくつか、どこの国の市場でも入ってきている。
ーそうしたなかでの強み・優位性はどうか
もちろん、国内でもクーパーサージカルとヴィトロライフが大きなライバル競合メーカーになる。そうしたなかで当社の強みは、卵子を採る採卵という技術の医療機器がある。受精卵を子宮に戻すカテーテルと凍結卵子の分野。この3つに関しては優位性をかなり保っている。
ー海外展開について
米国に関しては、これから代理店も新しくなり毎年最低でも7%以上、7~10%以上はあると考えており、相当自信を持っている。欧州は比較的シェアが高いものの、まだまだ取りきれていない地域もある。そこを重点的に補強しながら、シェアを拡大していく。市場的には5%以上は伸びていくのではないか。
スペインはいわゆる法律の規制が緩い国で、不妊治療の患者が欧州から集まってくる。このためスペインに拠点を持っている。 ただ、まだまだやるべきことたくさんあるし、ドイツ、イタリア、フランス、イギリスといった主要国を始めとしてしっかりと力を入れていく。
1番力を入れなければならないのが、中国を始めとしたアジアだ。当社はアジアの企業でもあるので、そこでの売上増強に向けての取り組みにはかなり力を入れていく。中国もインドも同じような傾向があり、まず有名なクリニック・病院は海外の信頼があるものを使う傾向にある。中国やインドは、低所得層向けのクリニックがあり、そうした医院は地場の国産品を使う傾向があるが、我々はトップクリニック、トップ病院と組んで拡販していき、値段もしっかりと維持したい。
ー初値の受け止めを
思った以上に評価が高かったし、責任も感じている。事業を今後も拡大拡張させる。プライム市場の一員ということで、成長を続けて、また株価も安定させたい。
ー3つの領域で他社と比べてかなり強みがあるということだが、技術なのか販売なのか、もう少し解像度を上げた説明が欲しい
それは技術だ。商品化する際に特許を取るのでその強みを生かしながら、新しい治療方法の確立を経て業界に提案しながら事業をしている。
ーアジアで製品の強みを生かしていくということだが、どういうイメージか
アジアでは10年以上前から活動を続けてきた。もちろんクーパーサージカルが参入する前からだ。商品を売るだけではなく、技術の提供や講習会・セミナーを開いて不妊治療のレベルを上げるといった取り組みも行っている。それでアジアではどの国でも比較的高いシェアを維持している。また。これから不妊治療が発展する国も多い。そうしたときに、間違いなく当社が優位性を発揮できる。例えば、カザフスタンではただ商品を売るだけではなく、セミナーとか教育ワークショップなどを開いたり、指導的な先生を招待したりといった取り組みをしている。
ーシェアを取っていくとなると、ニーズが増えると予想されるところに参入するわけだから、今の生産体制以上のものが必要になる。その場合には例えば現地でやっていくのか、それとも従前のように国内の拠点を中心にやっていくのか
新工場ができたばかりだが、今の生産体制で困っていない。もちろん将来を見据えて新工場を建て、自動化の機械を投入した。日本の企業ということで、日本人の雇用を守りながら、地域に根ざした活動を続けていきたいと考えている。
ー2026年3月期予想が増収減益となっているが、この売上高は2025年3月期は地域別で日本、中国が減っているが、2026年3月期予想ベースだと、このへんも増える前提か。2025年3月期は、中国におけるカテーテルの認証申請に時間を要して販売が遅れた。また、国内での競争激化で厳しい状況が続いていた。そういった部分が2026年3月期は、改善されるのか
中国ではその影響は一部残るが、それ以外は解決していく。
ー日本市場の成長性やその余地をどう捉えているか
例えば3年前、日本での出生人口は77万人で、その翌年が72万人だった。そして今年は68万人とどんどん下がっている。一方で、体外受精、不妊治療で授かった出生は10%を超えてきている。不妊治療の需要は今後も多くあるとは思うが、人口ピラミッドの関係で市場はそれほど大きくは伸びない。ただ、東京都知事などが推奨している卵子バンクといった新しい市場もあるので、そこで強みを十分に活かせる。このため、成長はまだまだ続くと考えている。
アジアに関しては、どこの国も今後伸びていく。例えば、韓国は出生率が0.78だったと思うが、やっぱり国として向上に力を入れている。1番伸びるのはアジア市場と認識している。
[キャピタルアイ・ニュース 菊地 健之]
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