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上場会見:Cocolive【137A】の山本代表、不動産営業にデジタルで寄り添う

Cocoliveが28日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の1780円を124.16%上回る3990円を付け、3295円の買い気配で引けた。不動産業界向けマーケティングオートメーションツール「KASIKA」の開発と提供のほか関連業務を手掛ける。KASIKAはSaaS型のシステムで、不動産会社や建築会社が利用し、年間の解約率は平均1.1%ほど。山本考伸代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

山本代表は、システムと伴走型サポートの組み合わせで、不動産取引の川上や川下に、サービスを順次提供していきたいと話した。
山本代表は、システムと伴走型サポートの組み合わせで、不動産取引の川上や川下に、サービスを順次提供していきたいと話した。

―初値が公開価格を上回った。上場後の株価の動きの受け止めを聞きたい
光栄に感じるとともに身の引き締まる思いだ。期待された部分に長期的にしっかりと貢献できるように、今後もまず目の前のクライアントに良いサービスを作り上げていく、サービスを成長させていく点で、コツコツと貢献していきたい。

―不動産営業が電子化するなど法律が変わっているものの、かなりアナログ的なものが残っているが、その認識について。また、どう成長していくのか
不動産の営業はアナログというよりは人間味がある。買う側からしてもスペックだけでは分からないところもある。住宅を建てる、買うのは、どちらも初めてのケースが多い。家探しは自分の曖昧な理想像を具現化していく作業でもあるだろう。

機械と話してできる世の中がそのうちに来るのかもしれないが、不動産の提案をしながら一緒に見込み顧客の欲しい住まいの形を具現化していく、不動産の営業担当者の仕事自体も伴走型のものだ。それこそが人間が出せる価値でもあるので、我々の考えでは、その部分は数年どころかしばらくの間残る。残っていったほうがみんなの家探しもハッピーなのではないか。

ただ、人間味があるサービスをアナログで全部やって管理するのは非効率だ。人間味があるからアナログでというふうになってしまった部分は、これまでもなぜかあった。人がやっているから全部紙で管理というのがあったかもしれないが、人がやりながらデータで管理できる部分はデジタルで、デジタルの上で人間味があるサービスという姿は、少なくともここから先10年というスパンに関しては、理想像になるのではないか。その人間味は、引き続き我々の強みにしていきたい。

―強みとするカスタマーサクセスのオンボーディングと、人員の採用計画について
カスタマーサクセスの部門は大きく分けて3つのチームに分かれており、導入の段階でオンボーディングをしていくところと、問い合わせに定常的に対応する部門、それらとは別に各クライアントに付く担当制のサクセス担当という3部門がある。

オンボーディングというとツールの説明に終わっているケースが多いだろうが、我々の場合はすぐに成果を出してもらいやすいように、「このクライアントだったら、過去1年間でこの程度の問い合わせがあった」というような話を聞く。どういうニーズがある顧客なのかというタグ付けやセグメント分けができているクライアントであれば、それを分けるだけだが、セグメント分けを支援しながら、各セグメントに対して「どういう自動追客のメールを作りましょうか」と(相談する)。

我々はテンプレートをたくさん持っているので、それを使って、クライアントのホームページに載っている施工事例をメールで見やすいフォーマットに変えて、それを送るといったものまで、制作の手伝いもする。最終的には先方で「ここはこういうふうに変えたい」というところは変えるが、任せてもらうだけでなく我々の導入チームが制作物のサポートまでして、使い始めると早いタイミングで実際に配信が始まって、顧客の反応が見え始めるオンボーディングを意識している。

採用人員数については、今後も経常的にカスタマーサクセスに力を入れるので、人員の採用もカスタマーサクセス部門を中心にしている。今後、サービスが成長するのに合わせて人員を増やしていきたい。

―人材難のなか、人材確保をどうするか
人材の確保を第1に置いている。考え方が合う社員に入社してもらいたい。担当のサポートがいて、徹底的にクライアント・ファーストで、定例会を実施して伴走型のサポートを実施して、導入時にもすぐ使いこなしてもらうという例、成功事例を意識していて、我々の会社としての働きかたを公開している。それを両面で公開している。

1つは当社のホームページなどで公開しているクライアントの成功体験を、サクセス担当者と「こう伴走しながらやっていった」、「こういうふうにクライアントに貢献できる仕事なんだ」というところを公開するとともに、その裏側というか、なかの話としてサクセス担当者としてどういう気持ちで普段の仕事をしているのか、どういうところがしんどくてどういうところが良いのかに関しても、サクセス担当者のストーリーもまとめて公開している。

当社で働くとこういうことができて、こういう成長が描ける、こういう実体験で良い経験が持てるという点もうまく使うことで、我々の価値観にマッチした人材に来てもらえる。我々の魅力を伝えることで来てもらいやすくなることを狙っている。お金を出すだけ出して採用できるという甘い世界でもないので、我々の価値観に合う仲間に集まってもらいたい。クライアントの笑顔と、社員の人物像をしっかりと見てもらいながら採用している。

戸塚裕二CFO:ミドルマネジメントが育ってきて、必ずしも不動産業種経験者だけに限らないのが特徴としてあるので、候補者の母集団が大きい。それを含めて引き続き注力していきたい。

―後続の競合の登場を懸念する投資家も存在するようだが、参入障壁は
山本代表:2つある。1つは、ITのプロダクトなので、顧客管理システムを作って、そのなかで自動追客の仕組みを作り上げ、かつ顧客分析の仕組みを作り上げてそれを使いやすいものにしていくというプロダクト面での参入障壁がある。簡単ではないプロダクトだと自負している。ただ、ITのプロダクトなので、やろうと思えば作れる。

2つめの参入障壁は、さらに大きいと考えている。プロダクトを使いこなしてもらうためのサポートの組織、サポートの仕組みだけではなく、仕組みを実装に移す組織がある。組織のなかでマネージャーやメンバーがいて、それぞれでどうクライアントをサポートしていくのかという組織作りと、教育の仕組みも含めて意識しており、それが強みになっている。試行錯誤の繰り返しで組織を作ってきた実体験から、簡単に真似することは難しいのではないか。

戸塚CFO:現在1000社以上のクライアントに利用されており、1ヵ月経つと1000社から、(運用に基づく)ノウハウや要望を当社が理解できる点で、先行者利益が働きやすい業種だからこそ参入障壁になると見ている。

―機能の開発は社内か外注か
山本代表:基本的には社内で機能を開発する。
戸塚CFO:プロダクト部門があり、自社開発している。

―来場予約と物件データ提供が開発中だが、いつ頃出てくるのか。物件データ提供はどういったものなのか
山本代表:物件データ提供サービスの内容は、売買仲介会社向けのサービスとなる。自社で取り扱っている媒介契約を持っている物件は提供しているが、自社媒介ではない物件も多数あって、それを買主側に紹介したいとなった時に、Webサイトに載っている物件や、事業者間の流通で売買主を探している物件をまとめる。

他社が持つ機能を当社の機能とAPIで連携して1つの追客サービスとして作り上げている。データ情報は、パートナー企業と連携しながら我々のサービスとして提供し、クライアントが家を探している顧客に、自社で媒介するだけでなく、他社で預かっている物件に関してもマッチするものがあれば自動メールで配信できる。3月中には提供の開始のメドは立っている。会場予約に関しても、今期中にはサービス提供を開始できる予定だ。

戸塚CFO:当社が5月末決算なので、3月から有償利用が徐々に始まって、本格的に収益源となるのは翌期からという想定だ。

―今後の成長戦略に、不動産ドメインのなかでの拡大があり、不動産取引の川上や川下に事業を広げていくようだが、それぞれにバッティングするプレーヤーが存在するのではないか
山本代表:直接的に川上でもバッティングするものとしないものがあるし、川下でもバッティングするものしないものがあると見ている。バッティングしているもので、そのサービスが凄く良いのであれば我々が提供しなくても、課題が解決されている部分だ。

そうではなく、川上の部分でも例えば、来場予約者の管理というところは、基本的にはメールでやり取りして、カレンダーにそれぞれ書き込んでいるみたいなものがあれば、「もっと効率的に予約のキャンセルや変更をできるほうが良いよね」というものがある。

―クライントの規模や、今後狙っていくところは
工務店・ハウスメーカーといった戸建てを建てる会社と不動産の売買仲介、マンション事業者で、それぞれ規模感のミックスで変わる。マンション事業者に関しては、大手が多くなっている。新築マンションを作る会社はそもそも大手が多い。

売買仲介の事業者と工務店・ハウスメーカーに関しては規模にばらつきがある。大手のハウスメーカーも使っているし、家を年間20棟ぐらい建てている会社や、売買仲介であれば1店舗で3~5名の営業担当者がいる店舗でも使っている。見込み顧客との関係が長期にわたるのは同じなので、営業段階における課題は同様で、両方に使ってもらっている。

具体的な配分は全て非公開だが、売買仲介と工務店・ハウスメーカー両方とも、数の比率としては中堅から小規模の会社が多いが、事業が進むにつれて大手の会社による導入も伸び始めている。今後、大手にシフトすることは考えておらず、大手も中小も同じようにしっかりと課題を解決していきたいという思いがあるので、同じプロダクトでもサポートの仕方は少し違うが、それぞれの規模や業務内容に合わせたサービスを提供したい。

―年間の売上高成長率など定量的な成長目標は
公表数値以外で何か数値的なものを話すことはできないが、公表している数値に加えて、それを実現できるように目の前のサービスをしっかりとやっていきたい。

―中長期的な株主還元の方針は
具体的な計画は今後、取締役会や社外取締役も含めて検討していくが、期待を含めた第1の選択肢としては、事業を成長するために、さらなる投資を行って事業を加速していく。まずはそういう投資の機会をしっかりと作っていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]