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上場会見:バリュークリエーション<9238>の新谷社長、解体後のニーズで収益化

22日、バリュークリエーションが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1790円を72.63%上回る3090円を付け、2716円で引けた。同社は、マーケティングDXと不動産DX事業を手掛ける。不動産DX事業の住宅解体マッチングプラットフォーム「解体の窓口」には1500以上の解体業者が登録し、2023年9月にはマッチング希望者数が2万人を突破。2023年2月には、空き家解体促進を見据えた実証実験に向けて川崎市と連携協定を結んだ。新谷晃人社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

リード獲得後の売り上げの最大化の支援まで行うLTVマーケティングに強みがあると話す新谷社長
リード獲得後の売り上げ最大化の支援まで行うLTVマーケティングに強みがあると話す新谷社長

―公開価格を大きく上回る初値だったが、感想は
とても嬉しいが、ここがスタートラインだと思っているので、今後さらに成長できるようにしていきたい。グロース市場に上場した会社は、配当を出さないケースがほとんどだろうが、個人投資家の期待に応えていきたいので最初から配当を出し、少し注目してもらえたのではないか。

―住宅解体のカテゴリーでは初の上場だが、他社が今までやらなかった理由や参入障壁は
「何でやっていなかったのだろう」と凄く率直に思っていて、市場も本当に大きく1兆円を超えている。何で他社が参入しなかったのかは疑問だ。この業界に関して、ちょっと怖いイメージもあるとは思う。

だが、実際に話すと業界にはとても良い人たちがいるし、今までスポットライトが当たっていなかった。解体業界の人たちはとても良い仕事を、日本のために良くなることをしている。当社が上場することによって、そこにスポットライトを当てていきたい。

―後発の企業が出てきた時に先行者メリットがあるだろうが、今、何割程度の解体業者と提携しているのか
解体業者は全国に4万2000~4万3000社あり、そのうちの、選りすぐりの1560社を抱えている。

―空き家問題に関する認識と、それを「解体の窓口」でどのように解決していきたいのか
トライアスロンをするので、千葉県の館山に行ってランニングなどをしていると空き家がたくさんある。走るだけでいくつも見つかるような状況だ。日本には空き家が2023年の段階で、1139万戸あり、2033年になると1890万戸になって、空き家率が30%を超えてしまう。

空き家が増えると、犯罪が増え、治安が悪くなってくるので日本にとって良くない。その地域に住む子供たちも、治安の悪化で不安になると思うので、空き家率を下げて日本を良くしていきたい。

―空き家問題で、官公民の連携を進めるとのことだが、具体的にどのようなことをしているのか。川崎市以外でそのような話はあるのか
川崎市との例では、市に空き家問題の窓口があって、そこに相談が寄せられる。それを当社が受け、相談者とやり取りして、どういったニーズがあって何がネックなのか、実際に成約して完工までしたのか、全部データ化してまとめて、川崎市にフィードバックする。それが川崎市の来年の空き家対策の予算や企画の参考になる。ほかにもいくつか話が進んでいる。似たような形で進めていくと想定している。

―今後の成長戦略で、不動産DXの売り上げ割合を高めていくとのことだが、何年までにマーケティングDX分野との対比で、どのように拡大していくのか
マーケティングDXは安定的な成長をしていく。不動産DXは、現在のシェアが11%ほどで、来年、法改正などもあって追い風が吹くので、業績についても最低でも倍、さらに3倍、4倍という風に狙っていく。来年で20%弱ないしは20%という領域まで持っていき、再来年については、もっと食い込んでいけたら良い。

―空き家に関する法改正が、不動産DX事業の追い風になるそうだが、実際に事業を進めていく上でどのぐらい大きかったのか
法改正がされたばかりで、おそらく12月には正式に決まってくると見ているが、まだ正確な日程が決まっていないので詳しくは伝えられない。来年ぐらいからこの需要は一気に増えてくるのではないか。

―体感としては、問い合わせ件数が増えているのか
件数としては増えている印象だ。何%アップとまではまだ伝えられないが、けっこう増えている。「うちの場合は固定資産税がかかってしまうが、どうなんだ」という相談を受けるケースが多い。

―不動産DX事業で、土地情報の集積/活用に紐づく周辺事業を拡大し、土地IDの総合市場を構築するとのことだが、どのようなもので、どのように収益に貢献するのか
「解体の窓口」で、解体後に何をするかというアンケートを取っており、「家の建て替え」が27%で、「そのままにしておく」と「土地の売却をする」がそれぞれ22%、「駐車場にする」が9%といった具合に、解体後のニーズを把握している。

それらを個別にID化して、建て替えを希望する顧客に関して、例えば、積水ハウスやヤマダホームズなどと連携して送客し、キャッシュポイントとなる部分もある。土地の売買については、742社の不動産会社と連携しているので、そこへ送客してのキャッシュポイントもある。駐車場については、ある事業会社と話をしている。そういったものを当社でまとめていき、いろいろなエコシステムを連携していくことによって収益を上げていきたい。

―2020年に上場したかっこ<4166>と提携したが、具体的にどういったことに取り組むのか
マーケティングDX分野での提携で、かっこが得意とする不正検知の部分を、アド(広告)のほうにも転用できないかと考えている。研究段階だが、アドも不正クリックなどアドフラウドがあるので、それを検知して、マーケティングDX事業のクライアントにメリットがあるようにできれば良いということから事業提携をした。

―調達資金の使途について、どのぐらいの金額をどこに使うのか
まずはオフィス移転などで使用し、あとはM&Aに使いたい。具体的に何億円をどこの会社にとはまだ決めていないが、買収の資金としてちょっと強く使いたい。

―M&Aの話が出たが、補完したい機能はどのようなものか
ともにやっていく仲間と共創という形で行いたいので、マーケティングDXの部分で、一緒に大きくしていこうというM&Aをしていきたい。

―マーケティングDXで、レガシー領域の企業を支援するなかで、不動産以外の新しいプラットフォームが出てくるだろうが、どう考えるのか
マーケティングDX事業に、マーケティング情報が集まってきて、それが肝となっている。そこから不動産DX事業が生まれた。マーケティングDX事業で今狙っているところとしては、解体の悩みのところで相続や、例えば、父親が亡くなってしまい葬式をどうしようかと考えている人がけっこういる。新領域については、「お墓の窓口」や「相続の窓口」、「葬儀の窓口」というものを展開していきたい。

―いろいろな情報を載せている「Mola」というサイトは、今後どのように育成していくのか
そのデジタルメディアについては、業績インパクトなどは全くと言っていいほどない状況だ。だが、そこにもマーケティングの情報が入ってくるので、気長にというか、ゆっくり育てていきたい。

―組織としての株主であるエアトリやベクトル、アンビション・ベンチャーズ、グローバル・タイガー・ファンド3号投資事業有限責任組合についてそれぞれ聞きたい
事業会社に関しては、IPOの経営の相談などをするのがメインとなっている。今後、事業の連携などもあるかもしれないが、基本的には経営の相談をさせてもらうことがあった。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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