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上場会見:モンスターラボHD<5255>の鮄川社長、統合は慎重に

28日、モンスターラボホールディングスが東証グロースに上場した。初値は公開価格の720円を45.83%上回る1050円を付け、1075円で引けた。同社は、大企業や自治体のDXを支援するデジタルコンサルティングを展開。新規事業の創出や既存事業の変革などによる売り上げの向上やイノベーション支援を特徴とする。積極的なM&Aで世界20ヵ国に33拠点を置き、売上高に占める海外の割合が半分近い。鮄川(いながわ)宏樹社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

家庭教師のトライやクボタのDX導入事例からクロスボーダーのサービス提供など幅広い事業内容を説明する鮄川社長
家庭教師のトライやクボタのDX導入事例からクロスボーダーのサービス提供など幅広い事業内容を説明する鮄川社長

―初値が公開価格を上回った
これから事業をしっかり伸ばしていくことが何より大事なので、初値にそこまで一喜一憂することは考えていなかった。期待している人が非常に多いということと、市場としても大きなところでしっかりと我々のグローバル展開も含めたユニークさが伝わった結果として良いスタートが切れた。

―欧米での金融不安や、ロシアによるウクライナ侵略などがあり、相場がかなり軟調な展開になっている。この状況下で上場することになった理由は
確かに市況としては必ずしもベストとは言えなかったかもしれないが、理由は大きく3つある。1つ目は、BtoBで事業をやっているなかで、会社としての認知度や信頼感を高めて、顧客やパートナーからより信頼される会社になっていきたい。2つ目として、我々は、M&Aを含めて今後も成長のためには引き続き資金が非常に必要になった時に、上場することで資金調達の手段を多様化できる。

3点目は、我々は既に30都市(に展開し)子会社の数も30社ほどあって、組織が大きくなって複雑化していくと、上場の難易度も業績以外の面で高まっていく。それに対してガバナンスや内部統制なども、このタイミングでしっかり整えることで、その後のM&Aも(行い)、企業としても拡大できる状況になると思い、このタイミングで上場した。

―ウクライナにも拠点が2~3ヵ所あるが、ロシアによるウクライナ侵略で、事業への影響や今後のスケジュールへの遅延が発生しているのか
直接的な影響は極めて限定的だと見ている。ウクライナにも人員がいるが、元々キーウとリビウに拠点があり、キーウのメンバーは、ロシアのウクライナ侵攻が発生した日に、リビウや、女性などに関しては海外にも移転してもらい、移転先から引き続きリモートワークで開発業務などを行っている。このため、ビジネスへの直接的な影響は限定的だった。欧州全体の経済といったところまで含めると不安定な状況にあるので、この紛争の一刻も早い解決を望むと同時に、市場が安定化することも願っている。

―今2ヵ所あるウクライナの拠点にはスタッフがおらず、実質的に閉じているのか
そもそもリモートワークが可能なビジネス業態なので、オフィスがあったとしても、コロナもあり、チームでミーティングをする時などにオフィスに来る形態を元々取っていた。そういう意味でオフィスは、今は解約しているが、ビジネスとしては継続しているし、雇用も続けている。

―エンタープライズレベルのサービスを提供できるとあったが、今の顧客の規模はどういう層がメインなのか。強い業種やこれからアプローチしていきたい業種は
8割以上がいわゆる大手企業、上場企業や大手の企業のDXで、1~2割はシリーズA以降のスタートアップや、中堅企業も顧客になっている。ほとんどが直接の契約になっていて、サブコントラクターのような仕事はほとんどやってない。

日本に関しては全方位的に行っている。中東では政府系のプロジェクトが多い。グループ全体としてよりフォーカスしている領域でいうと、金融が1つ。それからライフサイエンス、ヘルスケアといった領域。3番目にテレコムやテクノロジー領域だ。この3つを特にフォーカスする産業として捉えている。

―これだけ多くのM&Aをしていると、PMI(Post Merger Integration)では、いろいろなことがあったと考えるが、大事にしていることは
我々は、人材が全てのアセットと言ってもいい。人材を基盤としたビジネスなので、対象企業を選ぶ際にカルチャー的なフィット感や、マネジメントチームなどはしっかり吟味しているものの、M&A後に人材が去っていかないことが最も大事だ。このため、インテグレーションに関しては、非常に慎重に行っている。まずは、緩やかにオペレーションで協業できるところからスタートして、現地の経営チームや創業メンバーを、モンスターラボグループとしてサポートするやり方を取っている。

現場も含めた、カルチャー的なフィット感や、共に仕事ができる状況が分かってきた段階で徐々にインテグレーションをかけていく。財務関係や法務的なガバナンスは最初からしっかり取り組むが、オペレーションの統合は、マネジメントチームや、現場も時間をかけている。

―2023年12月期から営業黒字化する見込みだが、この後、売上高成長率や営業利益成長率をどの程度にしたいのか。メドがあれば知りたい
今後の財務的な目線では、年成長率を売り上げで言うと、35~40%を実現していきたい。ざっくり30%がオーガニック成長。M&Aで5~10%(という考え方)。利益に関しては、成長率とのトレードオフも多少あるが、営業利益ベースでおおむね10~12%がマーケットのベンチマークの水準で、今期の後半から来年にかけてそのような水準に持っていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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