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上場会見:monoAI technology<5240>の本城社長、目的特化型メタバースで差別化

20日、monoAI technologyが東証グロースに上場した。初値は公開価格の660円を93.94%上回る1280円を付け、1351円で引けた。仮想空間共有技術プラットフォーム「XR CLOUD」を運営する。仮想空間内で行われるライブ・展示会などに対し、顧客ごとのシステムやオンラインゲーム開発、イベント運営、集客代行、運営支援を行う。本城嘉太郎社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

コロナ禍で、東京の人材が地方に戻り、そのタイミングで、完全リモートワークで出社の必要がない条件で求人することで、当社を選んでくれる社員もいて、高知と神戸だけでなく、福岡や山口などいろいろな場所に社員がいる状況になり、採用面でプラスになったと話し地方人材を活用したいと話す本城社長
コロナ禍で、東京の人材が地方に戻り、そのタイミングで、完全リモートワークで出社の必要がない条件で求人することで、当社を選んでくれる社員もいて、高知と神戸だけでなく、福岡や山口などいろいろな場所に社員がいる状況になり、採用面でプラスになったため、地方人材を活用したいと話す本城社長

―初値について、公開価格から2倍以上になった感想や印象は
非常に高く評価されて身が引き締まる思いだ。その期待を裏切らないように上場企業としてしっかりコンプライアンスや開示をこなしていきながら引き続き力強く業績を上げていきたい。

―本社が神戸にある意義やメリットは。また、医療関係のメタバースは神戸と関係あるのか
東京本社で上場というのはけっこうありがちだが、神戸という土地で上場するのは、地方都市からの上場に対して行政のバックアップや支援を厚くしてもらっているからだ。神戸本社の上場というメリットがあったと考えている。医療系のカンファレンスや、先端機器の研究開発は、神戸が非常に積極的に行っているので、今後連携できたら嬉しい。

―メタバースの領域はすごく期待感がある市場で、競合の参入も増えると思う。市場の成長を上回って成長できる要因や成長戦略を具体的に聞きたい
機能拡充とサービス拡充、アライアンスマーケティング、R&Dと捉えている。特にビジネス向けのイベントを多く手がけているというところが違っている。株主総会や社内懇親会、採用説明会などをどんどんパッケージ化して、法人の顧客に、「既に確保された予算でリアルのイベントを行うと地方の人も来られないので、バーチャルでやりませんか」と、リアルの会場と同じような形で、バーチャルで行うという営業を広げている。

今後いろいろな職種にも適用していきながら顧客を広げたい。メタバースを柔軟に目的ごとに増やせる特徴があるので、それによって自社のプラットフォームを使ってくださいというよりも、「一番使いやすいプラットフォームで考えましょう」という提案ができる。一緒に目的特化型のメタバースを増やしていけるのが最大の差別化ではないか。加えて、基本性能が高い。教室で100人入りたいと言ってほかのプラットフォームで断られたものでも、我々では1000人でも同時接続が可能なので、基本の体力というか、技術面でも差別化できる。

―メタバースを使っている時の遅延はどの程度まで抑えられているのか
基本的にはボイスの遅延は回線に依存するのでZoomと同じぐらいというと抽象的だが、光回線であれば、コンマ1~2秒ぐらいで通信しており、0.1秒以下の通信もできるが、ボイスではノイズキャンセルなどいろいろな処理が入るので少しだけ遅延する。アクションなどに関しては相当小さくしている。

元々、低遅延などはモノビットエンジンで研究してきたので、相当深掘っている。(同じメタバース内にいる)人によって遅延というか通信頻度を変えているので、近くの人に関しては、オンラインゲームと同じように遅延を全く感じないレベルになっている。遠くにいる人は特に問題ない範囲であえて遅延を起こして通信を削減している。

―各社にとってデジタル人材の確保が課題だが、特色のある採用・育成法はあるか
元々十数年間ゲームの開発を行ってきて、人材の育成などをずっと続けてきた歴史がある。このため、他社のように中途採用に頼るわけではなく、新卒・中途でバランスよく組織を大きくしていけると考えている。

―サーバーの専門技術は、ゲームエンジンの開発で培われてきたと思うが、人材に求める要件は
ゲーム畑出身のエンジニアが多い。メタバースとゲームは技術がほとんど同じで非常に相性が良い。そういう意味ではゲーム業界や近しい業界の人材に入ってもらえれば良い。通信技術に関して非常に特殊なので、中途で採用するよりは、素養のあるプログラマーとして質の高い人を採用してきて教育をする。

―最近、オンラインゲームのなかでアバターが着る服のデザインなどにかなりこだわってデザイナーを起用するケースもある。デザイン面でクリエイターに頼む、あるいは力を入れている部分はあるのか。今後はどうか
デザイナーズブランドの洋服では、JM梅田という阪急阪神のバーチャルライブイベントでは、アダストリアという日本のかなり大きな服飾の会社と組んで、実際の洋服のデザインをそのままアバターにして着られるサービスを行った。

UGC(User Generated Contents=サービスの利用者が作り出すコンテンツ)の文脈で、ユーザーが作った服を着られるかという点に関しては、オンラインの即売会「NEOKET」では、自分でデザインしたアバターも持ち込める機能も搭載している。ビジネス向けのイベントでは、服を自由に持ち込めてしまうと場違いな服装をする人もいるので、今はデフォルトの少し真面目なアバターを、主催者がアバターを選択する機能でカバーしている。

今後そういったクリエイター向けのメタバースを作りたいという話も受けており、オープンな、ユーザーがアップできるメタバースを作っていくのではないか。

―そのなかでの課金も、ニーズがあれば柔軟に対応できるのか
阪急阪神のプラットフォームでは独自のゲームコインのようなものを購入してアバターやアイテムを買ったりできるようになっているので、そういった対応も柔軟にしている。

―海外展開だが、例えば中国やアジアから始めるのか。あるいは米国の本丸に一気に乗り込むのか
現在でも、海外で展開したいという声も受けており、顧客によっては北米のニーズがあり、アジアでのニーズがあったりバラバラだ。その時までにはおそらくもうノウハウが貯まってしまっていると思うので、その時の政治状況など諸々の状況を判断して出すプラットフォームを決めていきたい。将来的には基本的に全世界に出したい。

―日系企業と組んで出るのか、現地のいろいろな企業と組むのか
イベントを開催するのであれば現時点では日系企業の問い合わせが多い。将来プラットフォームとして自立していくような形があれば現地の企業と組む可能性もあるのではないか。

―直近で特定の販売先2社への売り上げが6割程度というとで、今後どのように分散していくのかパイプラインも含めて見通しについて聞きたい
既存の取引先からの継続の受注は今後もある予定だが、新しい顧客からの問い合わせも毎月どんどん増えている状態にある。まだ公表できないが、今もパイプラインとしては、既存ではないところの話が入ってきている。将来的には既存の顧客の売り上げ比率は分散していくのではないかと考えている。

―今期に黒字浮上の予測だが、継続的に黒字を確保していくのか。それとも積極的な投資が必要であればこだわらないのか
黒字で上場したので、研究開発投資を行いながら今後ともその黒字幅は広げていきたい。トップライン自体もどんどん高めていきたい。
美濃裕司CFO:研究開発に関しては、来期も今期同様に1億円程度をかけていく。ただ、黒字も増加させていく。

―サービス供用が終わった後のメタバースはどうなるのか。単純にデータとして消えてしまうのか
本城社長:2種類ある。当社が元々持ってる会場を使ってもらう場合には当社が持ち続けるが、例えば、顧客がオフィスを作りたいという時に、作ったオフィスに関しては、当社でデータを保存しており、それをもう1回使いたい場合には、制作費を受け取らずに再構築費のちょっとした手間賃だけでもう1度開催できるというサービスをしている。

―XR-CLOUDの向かう先について、いろいろなデバイスで使われているが、最終的にはVRヘッドセット的なものに収斂していくものなのか。それとも、いろいろあって良いのか
デバイスに関しては、VRモードとARモード等も作ってはいるが、ひとまずはスマートフォンやPCデバイスに注力している。

今はVRヘッドセットの普及がまだまだ進んでいない。そちら向けに特化して作ってもけっこうニッチになってしまう。一旦はスマートフォンだが、将来的にはマルチデバイスを中心に考えており、アプリに関わらず、最先端のデバイスもどんどんキャッチアップしていくと考えている。

―開発視点とユーザー視点からそれぞれ聞きたいが、メタバース利用が普及していくうえで、現状課題になっていることは何か。技術的な課題でもマインドセット的なものでも構わないが、どのようなものか
言葉は聞いたことはあると思うが、おそらくまだサービス自体が新しく、実際にメタバースイベントに参加したことが非常に少ないので、いろいろなものをメタバース上で開催して様々な人が参加できる市場を作っていかなければと考えている。

参加者の視点からは、3D空間では小さい画面でも目的に合っていれば楽しめるが、将来的には、やはり没入してしまうXRデバイスで入ったほうが臨場感があり、できることも大幅に増えるので、そういったデバイスが来ることによって魅力が向上する。現在は持っている人が少なく、デバイスの普及もまだ現時点では課題と考えている。

―デバイスの普及に関して、最もネックになることは何か
Google Glassが数年前に出て、今はちょっと沈んでしまったが、今後またApple Glassが出ると言われている。コンシューマー向けにメジャーなメーカーが素晴らしいデバイスを出してくることによって、一気にひっくり返ると思っている。最近ではMeta QUEST2やMeta QUEST PROも非常にできが良いので、キラーコンテンツが出た瞬間にガラッと切り替わるのではないか。

―株主還元の方向性は
現時点では、配当というよりも再投資をして株価そのものを上げて還元したほうが良いと思うため、配当は今のところ考えていない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]