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上場会見:tripla<5136>の高橋CEO、これからも業界特化

25日、triplaが東証グロースに上場した。初値は公開価格の800円の2倍強の1620円を付け、1589円で引けた。宿泊施設向けのクラウド型の公式サイト予約システム「tripla Book」や、システムと連携して見込み客へのプラン提示やAIでの応答を行う「tripla Bot」、CRM(Customer Relationship Management)やMA(Marketing Automation)の機能を持つ「tripla Connect」などを提供する。高橋和久CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

―初値が1620円で公開価格の2倍と

高橋CEOは、それぞれのプロダクトの特徴や強み、収益構造などを説明した。
高橋CEOは、それぞれのプロダクトの特徴や強み、収益構造などを説明した。

なったことの受け止めは
多くの株主にその値段を付けてもらえたということなので、今後も多くの株主の期待に沿える形で事業を展開していきたい。

―宿泊業界がコロナ禍の影響でここ2~3年は非常に厳しい状況になったが、この時期に上場を申請した理由は
準備を始めたのが昨年頃からで、申請自体は今年8月に行った。我々も、旅行業界で長年やっているなかで、2020年4月、5月、ここから始まった緊急事態宣言での旅行業界に対するインパクトは非常に甚大なものだった。我々も明日どうなるか分からない、来月どうなるのか分からないという不安を抱えながら毎日過ごしていた。2015年に商売を始めてから、20年の2月にコロナ禍になるまで、契約しているホテルや旅館が倒産することはほとんど聞いたことがない状況だったが、コロナ禍に入ってから非常に苦しい状況が続いている。

旅行業界としては、東京オリンピック・パラリンピックも昨年に終わったが、ちょうどアフターコロナと言われて、宿泊者が少しずつ戻ってきている。10月に入ってからはインバウンドの観光客が徐々に日本国内に入ってきている足元の状況を加えて、業界に新しい元気になるニュースを届けていきたいことは、もちろん強い思いとしてある。今後の旅行事業の活性化と、旅行業界に対してのブランディングの2つを合わせて、今回のタイミングでIPOした。

―クライアントである宿泊施設はOTA(On-line Travel Agent)とtriplaのサービスを併用するパターンが多いのか
基本的に併用している。集客で使っているので、例えば、エクスペディアやBooking.comはOTAと呼ばれているが、OTAにはもちろん部屋を掲載して、なおかつ公式サイトでも販売していくという形で併用していることが多い。

―サービスの継続率は
BookとBotでそれぞれ解約率を出している。2022年10月期の計画ではBookの解約率が月次で0.6%、チャットBotが1.1%となっている。

―tripla Connectはデータ分析などを含めていろいろなことができそうなので、スイッチングコストを高めるというか継続してもらう機能もあるか
サービスを重層化して使ってもらうことによって、tripla Connectの狙いというのが、ホテルや旅館に特化したCRM・MAサービスになっている。BookとConnectを使ってもらうことで、本来であれば、それぞれ別々のメーカーのサービスを提供を導入することによって、導入時のシステムインテグレーションが発生したり、導入時に何かお金が発生する。我々の場合は、シームレスに連携できる点が大きな強みになる。地方の旅館や小規模のホテルでもCRMを入れやすい。

―triplaならではの機能なのか
ホテルや旅館に特化した点は当社ならでは機能だ。本来はCRMならCRM、MAであればMAという形だが、予約システムで繋がっているのが当社ならではだ。

鳥生格CTO:一般的にはCRMやCDP( Customer Data Platform )は数十万円の単位の額で売られているものがほとんどだが、当社の場合は業界を特化することで小規模の宿泊施設でも安価に使えるサービスになっている。一般のIT企業が不特定多数の会社に利用してもらえるような、たくさんの機能を実装しなくても業界特化のサービスにすることで実現できている。

―公式サイトを持っていない宿泊施設の開拓余地はどれぐらいを見込んでいるのか
高橋CEO:日本国内では、公式サイトを持っていない宿泊施設を計算していくと、1万件以上もあるのではないか。こういうところは民宿や民泊など、非常に小規模で運営していることが多く、開拓していくのはフェーズとはまだ考えていない。現在、公式サイトで、自分たちでブランディングして販売していきたいという意思を持つ顧客に対してサービスを重点的に展開したい。

―それをtripla Pageで広げていくということか
そうだ。

―開発中の新サービスのロードマップを教えてほしい
鳥生CTO:明確な時期は答えられないが、今期と来期にかけて採用したメンバーを中心に、これらのサービスを展開していきたい。

―業界特化はこれからも続けていくのか。
高橋CEO:これからも業界に特化していく。

―観光か宿泊か
当面、宿泊を中心に特化していこうと考えているが、観光業の範疇で考えてもらえればよい。

―中長期的な海外展開のロードマップは具体的なのか、これから検討していくのか、競合関係をどう捉えて、どう進めるのか
海外展開するうえで必要条件があり、特にアジア太平洋(APAC)に出て行く場合と、ユーロ圏に出ていく場合は、そのハードルが全く違う。例えば、ユーロ圏に出ていこうとなると、事前決済を実現させていこうとすると、どこか1つのグローバルの決済システム会社と(契約を)締結してしまえば、ユーロ圏ではほとんどユーロと英国ポンドで40ヵ国以上をカバーできる。

APACになると話が変わる。タイに出ようとすると、サイアム商業銀行のクレジットカード会社と連携しなければならない。インドネシアに行くと、DOKUというペイメント会社と繋がらなければならない。決済に関しても国ごとの制限がある。PMS( Property Management System )というホテルの基幹システムも国ごとに大きな特徴がある。例えば、インドネシアではコマンチェというPMSがある。市場を調査したうえでどの市場から出ていくのが最も優位性が高いのか判断したうえで、一つひとつ進めていく。

―台湾有事に関しては、ある程度織り込み済みか
当社が台湾に展開した2020年1月時点では、台湾有事のことはよく考えていなかった。現在は、もちろん足元の状況として、テスト分析をするなかで、ポリティカルファクターとしては、起こり得る内容だと考えているので、現地のスタッフたちとよく話をしながら、コミュニケーションを取りながら状況を確認していきたい。今は、営業や開発活動を行うなかで、何か問題が発生しているかというと、足元では特に大きな障害にはなっていない。粛々と目の前のことを進めていく形になっている。

―今後のリスク面で、今顕在化しているもの、例えばコロナの第8波や競合他社サービスなど事業環境を取り巻くものは
今、マクロ的な要因でのリスクでは、これまでは第1波から第7波まで味わってきたが、第8波がどのような影響を与えるのかに関してはまだ見えていないので、潜在的なリスクとしてある。ただ、足元の数字を見ていると、そこまで大きなリスクとなっていないので、非常に潜在的かつ限定的と見ている。先ほど話していた台湾のリスクも当社を取り巻く環境としてはあると見ている。

台湾に支店を持ち、営業人員も数人いるし、開発部隊もいる。人員の安全性や成長性を踏まえて注視していきたい。2つがソーシャルとポリティカルで非常に大きなリスクファクターとなる。

―競合他社サービスや、ビジネス環境におけるリスクは
これまでも競合はたくさんいた。競合が提供するサービスをベンチマークにしながら、当社でも鳥生格CTOが中心となってサービスを改良し、改善し、拡張していくことで、より多くの顧客に使ってもらえるようサービスを改善していき、競合優位性を作っていくことは非常に重要だ。

過去2年~2年半は、コロナ禍の環境下になっている。この環境下で、ホテル業界向けのITサービスを新しく作ってスタートアップとして出てくる会社はほとんどいなかった。ただ、アフターコロナに差し掛かると、旅行業界が元気になってきているので、スタートアップの会社が競合として出てくる可能性がある。そのような会社や業界の動向は、引き続き注視する必要がある。

―黒字確保を念頭に置くのか、成長投資やシェア拡大のために黒字にはこだわらないのか
基本的には、限界利益率が非常に高いので、ここから大きく(赤字を)掘っていくことは想定していない。ただ、コスト管理に関して、一定の数は成長のために、従業員を、特に開発部門を中心に増員していく。

それに対して、赤字になるとか利益が大きく減少することは想定していない。(自前の資源によって)成長するなかで、コストも使いながら、利益を確保しつつ成長していくことを想定している。

―3~5年の中長期的な成長戦略に関して導入施設数やROEのような投資指標でもよいが、数値目標があれば聞きたい
現時点で非公開としているが、来期は11億7400万円というトップラインになっている。日本国内の成長に関して、同じような形で成長率を加味してもらえればと思う。

―かなり多くのベンチャーキャピタル(VC)などが入っているが、成長に役立ったのか
私も鳥生CTOも、これまでスタートアップで働いた経験がなく、大手の外資系企業を中心に仕事をしてきた。そういったスタートアップ界隈の知識がなかった。シリーズA以降、VCの人たちに投資してもらう、かつ、ハンズオンでサポートしてもらえるVCがけっこういた。IPOまでの道のりをある程度指南してもらった経緯もあるので、非常に感謝している。

―長期的な株主還元の方向性は
長期的には株主還元に関しても検討していこうと考えている。足元の状況では、23年10月期に関しては、成長のための投資も踏まえながら利益を出していくことを想定しており、無配を予定している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]