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上場会見:ウェルプレイド・ライゼスト<9565>の谷田代表、新しいエンタメを生み出す

30日、ウェルプレイド・ライゼストが東証グロースに上場した。初値は付かず、公開価格の1170円の2.3倍の2691円の買い気配で引けた。eスポーツイベントの企画・運営の受託を目的として、ウェルプレイドを2015年に設立。選手や実況者、解説者のマネジメントのほか、インフルエンサーマーケティングやスポンサー仲介も手掛ける。資本・業務提携で2017年にカヤックの子会社となり、買収したライゼストと2021年2月に合併した。谷田優也代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

谷田代表は事業の特長などとともに、eスポーツ市場の特性などについても言及した
谷田代表は事業の特長などとともに、eスポーツ市場の特性などについても言及した

―初値が付いていないが、株式市場からの評価についてコメントしてほしい
eスポーツの価値が高くなっていると思う投資家が多くいることを素直に喜んでいる。個人投資家が増えていくなかで、人生のどこかでゲームをやってきた人たちが多いからというのもあり、ゲームの開発会社の株も投資家の注目が集まりやすい。こういった領域にも「伸びてもらいたい」、「応援するよ」と思う投資家が多くいることで需要がある状態と受け止めている。

―開催したLIMITZ(リミッツ)というオンラインのイベントに関して、最大同時接続22万人を達成したが、注目された理由と、開催予定のオフラインイベントでの成功の再現性に関して聞きたい
成功のタイミングは1つの理由に依存できないところではあるが、今回、LIMITZで協業したZETA DIVISIONの人気の影響力は当然ある。そうでありながら、1つのゲームIPに依存せず、それぞれのゲームIPのことを最も詳しく知る立場として、そのゲームタイトルごとに本当に見たいものを作ることへのチャレンジの積み重ねと見ている。

それは視聴者のためだけではなく、あらゆる仕事や番組に出場していく際に、インフルエンサーにも本気で楽しんでもらえるルール作りを(行った)。クライアントワークと人々のマネジメントの立場で、インフルエンサーたちとのコミュニケーションを密に取ることができた。彼らが本当に楽しめるものをエンターテインメントに昇華させられたことが、気に入ってもらえている理由ではないか。

オフラインのイベントになると、コロナ禍が少し明けてきており、今年はオフラインでのエンターテインメントが凄く求められている年になった。そう考えると、オフでこそできる演者のための面白いコンテンツや、オフラインでなお楽しんでもらえる視聴者向けのコンテンツの企画をこだわり抜く。そうすることで、必ず成功するコンテンツ作りやタイトル選びができていく。

―演者との密なコミュニケーションという点で、オフラインでも、見たいものをより厳選していくのか
そうだ。

―配信者や選手をサポートしていると思うが、例えば、陸上競技の選手と同様に、実業団のようなチームを自社で持つ予定はあるか
社員としてプロゲーマーとして活躍してもらう社員が所属していたこともある。働き方の受け入れ方の1つとして、プロの(活動)シーンを担保しながら仕事としても成立することは、我々のミッションやビジョンにかなり共感できる世界ではある。そういった社員が増えていき、受け入れていくことは引き続きやっていきたい。

ただ、1つの側面として気にしておくべきこととして、チームを持つことの良さと難しさを何となく理解している。我々はいろいろな人たちやチームを助けていく立場も取っている。そうである以上、自分たちがチームを持つこととのバランスなどが難しい。単体での所属や、ゲーミング社員のような形での受け入れ方が、今のところは見えている範囲だ。やりたいことの方向性、思いとしてはある。

―オフラインイベントを運営に関して、大会運営はいわゆる裏方的なことをやってきたが、今後はビジネスデザイン事業をしていくうえで、自社主催の大会を開くのか。その場合、収益は広告収入や来場者のチケット収入、配信券の販売収入になると考えられるが、それらにも進出するのか
何を課題として考えているかといえば、我々自身も何かしらの影響力を持っていられる状態が、仕事を組んでくれている皆さんに対してより良い効果を与えられると見ている。例えば、人という目線では、我々の会社に所属する影響力のある VTuber がいれば、その人たちを起用して仕事をすることで、彼らの広告効果を最大化することもできるかもしれない。

いろいろな企業が企画する自社主催のイベントが、我々の持つイベントのアセットにマインドや目指している方向性が近いのであれば、両者がwin-winになる形で、より収益化しやすい協業の提案もできる。受託の形に依存し切らない事業構造を持つことが当社の収益構造上の強みにもなる。三方良し的に、影響力を持つチャレンジをしていきたいとして、ビジネスデザイン事業部を作っている。

―収益源はやはりチケットなどか
オンラインのイベントでも、既に5回ほどイベントを開催するなかで、かなりの影響力を持っていると評価してもらい、既に協賛を受ける企業がいる状態になった。この影響力があれば、オフラインイベントを開く時に、先日、サイバーエージェントが運営するオフラインイベントで、さいたまスーパーアリーナで1万3000人を動員した状態というオフラインの価値が見えている。その領域でアパレルやグッズの製作、有料チケットの販売を目指していけば、自社での営業を大きく狙っていけると考えている。

―アパレルやグッズなどいわゆるマーチャンダイジング的な話は、キャラクターIP(Intellectual Property)はもちろんゲーム会社が持っているので、いわゆる大会として、例えば、ZETA DIVISIONであればRAGEといったイベントがあれば、ウェルプレイド・ライゼストが持つ冠的な大会か否かは別として、そのようなものになるのか
今回は、LIMITZというものを掲げながらイベントブランディングをしているので、そこを中心にいろいろなゲームメーカーやチームとコラボして、1つのブランドとして掛け算ができるところを目指せたらいい。

―eスポーツを見る人たちという観点から、映画や音楽など競合するエンターテインメントをどう見るか
いわゆるゲームに関連しないエンターテインメントは、オンラインで視聴できるものはおよそ競合に当たる。映画であるとかオンデマンド系のサービスや音楽のサービスは、該当するのではないか。

―多くのゲームに携わってきたと思うが、理想的なゲームとは
それぞれの側面で理想的な状況が変わるので、一言で言うのは難しい。eスポーツの価値が最大化する瞬間を想像していくなかで、シンガポールで来年6月にオリンピックeスポーツウィークの開催が決まった。全世界で競技として採用されることができる種目は、ほかの領域(から)のネガティブな意見を受けにくいもので、既存のスポーツを類推させる競技種目のようなタイトルは、理想的なものの1つだろう。

―関連して、そういった理想的なゲームを(自社で)作っていく、パブリッシャー的な動きは想定しているのか
何度も何度も悩んだことはあるが、やはりゲームを作るのはゲームメーカーの仕事と思っている。市場の特性上、ゲーム会社の持ち物という形で1つのIPとして預かり、仕事をしている。それを考えていくと、製作の先にはフリーIPに近いような形というか、我々が交渉の調整がしやすいようなものが生み出せる世界が来れば、やりやすい大会や建てつけも作りやすい。現状、それを作り切れるゲーム開発は簡単ではないので、やりたい気持ちはあるが、相当未来の話と考えている。

―VRやMR(Mixed Reality)といったXR系の言葉に関しては、どの程度の関心があるのか
最近、メタバースを含めてそういった領域にすごく注目が集まっている。オンラインゲームとともに育ってきた側の人間からすると、いわゆるVR空間や3D空間に自分たちが身を置くことにあまり抵抗がなく受け入れられる世界として育ってきていると感じる。

最近では、Epic Gamesの全世界で有名な「Fortnite」というゲームのなかで、クリエイティブモードがどんどん拡張していくなか、その世界で実現できることが急速に広がっている。そうしたことを考えると、VR空間で人々が同じようなエンターテインメントを見て楽しむ、ゲーム内でゲーム大会を開き、それをゲーム内で皆と一緒に楽しむ世界はさほど違和感がない。その領域が流行してきた際には、フィットできるのではないか。

―今後のeスポーツ市場の5~10年の中長期的な成長性について今考えることは
いわゆるeスポーツの市場の成長では、毎年角川アスキー総合研究所が出しているような市場予測がある。CAGR30%程度の成長が予測されており、まずはその成長に寄与できるように、またその成長についていく売り上げや利益を出していきたい。

市場の成長だけを幅として見るわけではなく、5~10年後で見ていくと、人々の時間をどうやって獲得するかという点がエンタメの本質と考えている。人々の可処分時間、先ほどの質問のように競合の1つのエンタメとして、ゲーム領域やそのライブ領域がインフルエンサーの領域の近くに食い込んできている。ライブエンタメやインフルエンサーマーケティングのような市場にも食い込む形で、一緒に成長していけるのではないか。

VTuberとタレントが、一緒にゲームの大会に参加して、それを10万人以上の人たちが見て楽しむ世界は、5年前には想像できなかった。それが、ゲームやゲームの大会というコミュニケーションツールが存在することで成立するようになった。

運営には、ハンディキャップやルールを作ること、見せ方も必要であるところ、eスポーツがエンジンになって、ノウハウを貯めてきた人たちがそれを成立させることができたことは、新しいエンタメを生み出しているという気がしている。その伸びしろを見ていきたい。

―カヤックとの関係性の現状と今後は
究極のところ、カヤックの思惑(による)ところは当然あるが、いつも話してもらっているのは、基本的に我々にやりたいことをやらせてもらえる、任せてもらっている。コントロールされ、いろいろな方針を受けたりということが現状ない。すごく素直にのびのびした仕事をさせてもらっている。

会社を作って8年目になるが、出資を受けてから4~5年になる。「eスポーツ最高だ」とずっと解き続けていたので、柳澤大輔代表取締役CEOも含めてeスポーツの価値をすごく信じてくれていて、我々以外にもeスポーツに関連する3社がグループ入りしている。それもあり、我々の価値を最大化できるように協力してシナジーを生み出そうとしてくれるところは、引き続き良い関係を築きたいと思ってもらっているのではないか。

―持株比率の維持については
良いタイミングで良い比率にしたいと思っているという話はある。だが、現状どうこうするとは我々も特に聞いていない。究極のところは彼らに聞いてもらえるとベストだ。

―カヤックと兼務する取締役はいないのか
いない。完全に独立している状態になった。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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